【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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八代駅の縁者6

八代駅奪還完了から3日後、勘太郎を含む八代駅当番にあたる者達が、蓬莱城に乗せられ出発して行った。

ついでに菫に奪還した八代駅を一度見せておこうと、菫も護衛の武士3名と共に同乗させ、蓬莱城が戻る時に一緒に戻って来ることになっている。

 

顕金駅では、派遣員の当番により各所で多少人員の減少はあるものの、大きな問題は発生しなかった。

 

蓬莱城が戻り次第、最上を城主として甲鉄城が出雲の各駅へと行商に周ることになっている。甲鉄城には行商の為の武器等が大量に積み込まれていく。流民を採用した生産ラインが確立してきたことで、生産量はかなりのものになっている。とりあえず最初は3駅程周ってくる予定で、顕金駅奪還時に協力した駅であることから安価に提供することが決まっている。

武器の他にも、熊やウサギの毛皮や猪などの革、木材などが積まれている。

木材は駅の外には沢山あるが、気軽に外に採りに行けるのは顕金駅くらいであるため、需要の割に供給が少ないことからそれなりの値段で売れる。乾燥が不完全のため多少安価に売ることになるが、木材など腐るほど用意できるので全く問題がない。

 

 

蓬莱城が日暮れころに戻ってきたことから、甲鉄城は入れ替わりで顕金駅を出発して行った。蓬莱城の面子には出かける直前に最上から、明日以降は周辺のカバネ討伐と秋の実りの収穫をするように指示が出された。

 

「夏の間に目をつけた柿や栗の収穫だな。」

 

「柿は干し柿にもなるし沢山欲しいなぁ。」

 

「集落跡地に沢山あったな。背負い籠とか準備しとかないといけないな。」

 

「そろそろ城の川魚も補充しなきゃじゃないか?」

 

「これからの季節は冬に向けて獣も肥えてくる季節だな。」

 

武士達がわいわいと話しているのを聞きながら、菫はこの駅の人達は当然のように外に出て食糧を得る話をするのだなと感心した。

 

 

菫は道元に呼び出され、道元の執務室室まで護衛と共に来ていた。

 

「菫殿。言っておかねばならぬことがあるのだ。まあ自覚があるかもしれんが、君たちは八代駅の民人を見捨てて逃げ出した以上、顕金駅に住む八代の者達には恨まれている可能性が高いと考えておいてくれ。屋敷の立地からそう襲撃されるとは思ってはおらんが、街を歩くときは気をつけたまえ。」

 

「はい。承知しております。」

 

「それならいいがね。君だけではない。武士達も気をつけたまえよ。まあ民人達も得た生活を棒に振る真似はせんと思うが、感情は時として損益を無視出来る。」

 

「…はい。」

 

「わかっているならもう下がって構わん。」

 

菫は護衛達と共に道元の執務室を後にした。城にいた時は、家老陣から冷たい目線を受けていたが、他の者達は労り暖かく扱ってくれていた。武士達は長屋に住んでいたため、時折向けられる冷たい目線には気がついていたが菫はそうではない。襲撃されるかは別としてもこれからは冷たい目線を受けながら生活していかなければならない。

顕金駅の武士達と行動していると、自分達がしたことを忘れそうになるが、忘れてはならないのだ。

菫も武士達も気を引き締めた。自分達の身を守ることも当然だが、民人達に復讐をさせてはならない。今の生活を失わせてはならないのだ。

 

 

道元から忠告を受けた翌日、検閲所と城の鐘が鳴った。蓬莱城が獲物や収穫物を持ち帰ってきたのだろう。武士達は菫に柿などを食べてもらいたいが、流石に民人達が集まるあの場に行くのは憚られた。

 

駅では民人達が、沢山の背負い籠に入れられた柿や栗に大喜びしていた。

集落跡地には柚子の木もあったことから、柚子も背負い籠に詰め込まれていた。

アケビやサルナシ、ヤマボウシなど甘味を感じられるものも沢山収穫されており笑顔が絶えない。

猪も群れを見つけたらしく、何頭か解体されており其方も民人達に人気であった。

 

八代の武士達が残念に思っていると、吉備土が訪ねて来た。城に献上に上がる前に立ち寄ったらしい。

 

「買い取るなら多少融通しても構わないと言われています。どうですか?」

 

武士達は柿や栗を多少買い取らせてもらうことにした。

 

吉備土に対する指示は道元からのもので、不特定多数の集まる操車場に八代の者が買いに行くのは難しいし、全く与えないとなれば菖蒲が黙ってはいない。となれば城への献上品を一部買い取らせてしまうのが一番問題にならない。菖蒲から無償で与えられるのが一番拙いのだ。

菖蒲の指示であれば表立って批難する者は民人にはいない。なにせ菖蒲のそういった立ち振る舞いで受け入れられて来た者達ばかりである。しかし、不満は確実に溜まっていくことになるのでこの形が一番問題にならないのだ。

 

菫は属領の領主ではあるが、肩書きだけであり実務は代理の勘太郎がこなすことから何かと肩身が狭い。

武士達は自分達の力が及ばないからと申し訳なさそうではあるが、菫は満足であった。

カバネに襲われる心配はなく、食べ物も得られ、武士達も共にいてくれる。城に行けば菖蒲や静が勉学や教養を教えてくれる。かつて駅で得ていた生活とは程遠いが幸せなのである。




八代駅の民人も菫達もとっても幸せ!大団円!ではない。仕方ないよね。
でも許される範囲でみんなそれなりに幸せ。
再興は大変だぞ。
菫は菖蒲様と違って嫁入り前提だったので、覚えることが沢山あります。まあ10歳なので尚更ね。

八代駅の駿城が逃げたのか、そもそも出払ってたのか、どこかでカバネにのまれて失われていたのかはわからないけれど、逃げたのを採用しました。

顕金駅もあの時生きてた全員が乗れたとは思ってませんが、八代駅の駿城が可能な限り民人を乗せたら生き残れないので早々に見捨てた方向になりました。この設定でもよく今まで生きてたなってレベルですが、そこは許して…。
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