「そういえば最上はなかなか金属被膜刀を使わなかったな。何故だ?」
「美馬に警戒されたくなかったのもあるが、純粋に刀の重さも重心も変わったから慣れるまで使いたくなかった。」
「確かに。前より先に重心がきたな。」
「お前には関係なさそうだったけどな。」
「そうでもないが、己はあのくらいの重量でよかった。だいぶ研いで軽くなってたからな。」
「私は元が丁度いい重さだったからなぁ。」
「最上の刀は軽い方だろう。」
「お前と一緒にするな。」
来栖と最上の会話を聞いていた生駒は、近くにいた仁助に声をかけた。
「刀ってそんなに繊細だったんですか?重心とか特に気にしませんでした。」
「まあ。でも均等に纏わせたんだろ?最上様のは手元に重心がきてるから、刃体自体が重くなればやっぱりちょっと重心が先に行くんじゃないか?」
「重心ってそんなに大切なんですか?来栖と最上さんの刀そんなに変わらないと思うんですが…。」
「最上様!来栖!生駒が後学のために刀振りたいそうです!」
「えっ!ちょっと!」
最上と来栖が近寄ってきた。
「なんだ。また真似事か?流石に刀は…。」
「後学とは?」
「刀の重心の話です。口で説明するの難しいので。」
「なるほど。じゃあ来栖のから振るか?」
「そういうことなら構わない。手を切るなよ。」
来栖が鞘ごと刀を渡す。
「大丈夫だよ!」
生駒がそろそろと刀を抜いて10回ほど素振りをした後、そろそろと納刀したのを見て今度は最上が刀を渡す。
先程と同様に素振りをした。
「あれ?最上さんの刀の方が振りやすい。軽い?」
「まあそうだろうな。重量自体も多少軽いが、重心が手元にあるから余計軽く感じるんだ。」
「手元にあるから?」
刀を納めながら生駒が聞く。
「ふむ。ちょっとまってろ。」
最上は刀を受け取って腰に戻した後、木刀を二本持ってきた。木刀の刃先に工具をくくりつけたものと、手元付近にくくりつけたものを見せてきた。
「極端に言えばこういうことだな。」
「ああ。なるほど。でもそれなら軽く感じる方がいいんじゃないですか?」
「いや。叩き斬る分には重心が先の方がいいんだ。こっちで叩かれるよりこっちの方が絶対痛いだろ?」
先程の木刀を見せながら最上が説明する。
「元々カバネを叩き斬る想定とかしてなかったからな。人は腱を切れば動けないし、骨を切断しなくても死ぬしな。」
「気にせず叩き斬る方が早いし、行動不能になるのも早い。」
性格もだが戦い方も極端な二人である。
「なるほど。戦い方で使う刀も違うんですね。」
「まあな。とはいえ金剛郭で戦って思ったが、単騎でカバネと戦うなら来栖の戦法の方が有効なのは確かだな。」
「だろう?」
「いや。でもそもそも普通の人間は単騎で戦わないから。」
「お前だって金剛郭で一人で彷徨いてただろうが。」
「ほとんど屋根の上だし。地面に降りたら、囲まれてすぐ死ぬから。」
「お前はあれだ。多対一を練習した方がいいな。」
「この先私はカバネに囲まれる想定なのか?鬼かお前。悪いが私はまだ人間なんだ。」
「己も人間だが?」
「まあ重心についてはそんなところだ。来栖はあまり関係なさそうだし、私ももう慣れたから問題ない。ただ今後あの加工を施す機会があったら重心の説明はあった方が親切かもな。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「構わない。では私はこれで。」
最上は木刀を戻して出て行った。
「無名も最上さんくらいわかりやすく説明してくれれば助かるんだけどなぁ。」
「無名?」
「前に戦い方教わったとき、くるっと回ってちょんちょんぱって言われたんで…」
「…くるっと回ってちょんちょんぱ?」
来栖の刀より最上の刀の方が反りが深いです。
刀の話はちょっと調べて書いただけなので刀剣に詳しい人は突っ込まないで下さい。
私は一応剣道初段は持ってるんですが、六段だか七段の人に稽古つけてもらった時に異次元を体験しました。地稽古?で何連コンボ決められたかわからないですw
私が弱いのもありますが、達人ってやべぇです。