【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

79 / 153
【小話】カバネリ

最上の執務室で服部がふと口を開く。

 

「生駒達は人間に戻れるでしょうか。」

 

「現時点では無理だな。」

 

「そんなはっきりと…。」

 

「無理なものは無理だ。来栖が金剛郭で放逐した莊衛がいたとしても無理だ。」

 

「ええ…。」

 

「私から見たあれも、来栖から聞いたあれも、到底人間に戻す研究をするような性格ではない。鵺とかの研究とかなら喜んでするだろうがな。まあ奇跡的に協力したとしても、信用していいのか検証出来ない。奴の方が頭がいいだろう。」

 

「じゃあ莊衛とやらから研究内容を聞き出して、最上様と楓様と生駒で研究するとか。」

 

「何度でもいうが私は武士だ。医者でも研究者でもない。ついでに楓殿と生駒にも無理だ。」

 

「最上様無理無理言い過ぎでは?」

 

「…はぁ。解剖図ってどうやって作ったか知ってるか?」

 

「なんです急に。」

 

「人間を切り開いて書き写して作られたんだ。じゃなきゃ書けるわけないよな。」

 

「…。」

 

服部は露骨に嫌そうな顔をする。

 

「通常医学において、病気や薬の研究をするときは動物で実験する。だがカバネウイルスは動物には感染しない。」

 

「はい。」

 

カバネウイルスが人類を滅亡に追い込まない利点であり、厄介なところは人間以外が感染しない点である。

小動物や虫が感染したら、駅などという形で生き延びることすら出来なかっただろう。だが人間以外に感染しないことから動物実験もできない。

 

「病気や薬の研究も最後は人間で試す。カバネウイルスは最初から人間で試すしかない。ついでにいえば、まずカバネリを作るところから始めないといけない。生駒曰く、感染した時に首を絞め、脳にウイルスがまわらないようにすることでカバネリになれるそうだ。正直にいえば、脳にウイルスがまわってないなんて私は信じてない。切り離さない限りまわるだろうよ。しかし絞扼することでカバネリになった実例がある。今のところ実例は生駒と景之殿だけだがな。」

 

「カバネリを…作る…。」

 

「実例はいるものの、本当にそのやり方で、10人中10人がカバネリになるのか分からない。もしかしたら1000人に1人しか、カバネリになれないかもしれない。」

 

「それは…。」

 

「美馬の方法でもそうだ。もし10人中10人がカバネリになれるなら、狩方衆にもっとカバネリがいてもよかった筈だ。」

 

「…そうですね。」

 

実験をするなら人間の検体は必須である。日の本のためとあらば、罪人やその辺の流民を使うことも可能といえば可能である。

 

「そして、成り立ちの違う無名殿と生駒は同じカバネリなのか?似て非なるものの可能性もある。まあそれは置いといても、まず罪人でも使ってカバネリを作るとする。この過程で何人死ぬか知らんがな。とりあえず5体用意できたとしよう。白血漿なるものが一番効きそうだから、それをなんやかんや改良したとして、まずカバネで試す。カバネで効果を感じられたら、5体のカバネリに試す。この過程でも誰も死なないかもしれないし、全員死ぬかもしれない。成功にしろ失敗にしろ、全員同じ結果なら良いが3人死んで2人生き残ったら?何が違うのか解明しなくてはならない。さらに情報が必要になるから、またカバネリを作る。その繰り返しだ。全部で何人死ぬかな?それは楓殿と生駒にできるかな?」

 

「無理…だと思います…。」

 

研究者やそれに関わる者には、人非人となってもらわねばならないのだ。

 

「だから無理だと言っている。莊衛が協力した場合も同じだけどな。実証実験は必要だ。顕金駅は善人の比率が高すぎる。どうせ実証実験は通らない。」

 

「じゃあ2人は一生カバネリのままなんですか?」

 

「さあ?もしかしたら外国でカバネリの事例があれば、人間に戻す方法も持ってるかもしれんがな。お祓いやらで治るなら色々試しても良いが、ウイルスであるならうちじゃあ何にも試せんよ。菖蒲様も楓殿も生駒も無理だろう?そういうの。ならば我々が目指すのは外国の情報を得ることだな。」

 

「外国…ですか。」

 

「そもそもカバネがウイルスによるものであると突き止めたのも外国だろう。病原菌を持ち込んだのも外国の船かもしれんがな。」

 

「なるほど。」

 

「病原菌を持ち込んだのは過失か故意か知らんがね。」

 

「…どういう意味です?」

 

「日の本は海に囲まれた要塞であり、カバネを外に逃がさない籠でもある。良い実験場になるな。…まあ最初に落ちたのが西海道だ。カバネが泳いで来たか流れ着いた可能性もあるがね。」

 

「実験場は穿ち過ぎでは?」

 

「あくまで可能性の一つだよ。どうあれ、現時点でカバネを捕らえて実験出来るような駅はうちくらいしかないだろう。だが研究できる者はいない。研究者を確保できても倫理が邪魔をする。となれば余所の研究結果を貰うしかない。外国が滅びてなければ研究は続いているだろう。」

 

「ではまずは日の本を平定しなければ話になりませんね。」

 

「そういうことだな。」

 

服部が処理済みの書類を持って執務室から出て行く。

 

(まあどこかの島にでも罪人と莊衛をぶち込んで色々研究させる手段もあるといえばあるんだが、そこまで私が暗躍する価値はない。戻し方より殺し方の方を検討してると言ったら軽蔑されそうだな。警戒さえされていなければ、無名殿を殺すことも不可能ではない。)

 




マジでどうやって戻るんでしょうね。莊衛あたりなら人間に戻れる薬とか作れそうですけどマッドサイエンティストが信用できない。むしろ騙されて黒血漿みたいなの投与する羽目になりそう。怖いわ。
海外からが一番可能性あるかなって思います。顕金駅だけじゃ絶対無理でしょこれ。
ホモ君はいざというときのために殺し方を常に検討してます。無名を殺した後に、事故に見せかけて自分ごと爆発四散するくらいは考えてます。殺すなら無名から。
八代で瓦礫の下敷きになったり、克城で麻沸(麻薬的なやつ?)が効いてたので正面切らなきゃ殺せなくもないだろって思ってます。
ホモ君が戻れば生駒に警戒されますが、証拠隠滅も兼ねて諸共爆発四散すれば生駒はキレるより絶望しそう。
その場合、生駒を殺せる協力者は必須ですけどね。正面切らなきゃ来栖以外でもいけるでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。