【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】お医者さん5

ことの始まりは小太郎が体調を崩したことからだった。小太郎が発熱して数日で口の中に発疹が出現したのを最上が発見したのだ。麻疹である。数日前に立ち寄った駿城には体調不良者が乗っていたらしいので、駿城経由と思われる。小太郎は鰍塾に通っており、駿城で立ち寄る者たちと交流することも珍しくない。

 

小太郎以外も体調不良者は出ており、麻疹は感染を拡げていった。

楓、最上は幼少期に麻疹に感染したことがあるため、駅内で診察に走り回ることとなった。

最上の屋敷では子供らが全員感染し、使用人見習いにも感染者が出た。穴子と鯉は感染したことがあるらしいのでそのまま看病にあたっている。

 

駿城を受け入れた検閲所の武士は、症状の有無に関わらず数日自宅待機となったが、それ以外の業務の武士達の中にも感染者が出ており、各業務に支障が出始めている。最上は本来政を担うべきだが、医者は楓しかおらず見習い兼護衛の仁助も蓬莱城と外に出ており、手が足りないことから医者側で走り回ることになったのだ。

 

かつての顕金駅であれば、医者も数人いたし、貧しい民人が多少死のうがどうでもよかった。それどころか流民が減ってくれるので駅中をまわる必要もなかったし、主に政をしていた上侍だけでも100人以上いたので、多少感染症が流行したくらいでは政にも支障はなかった。しかし今の顕金駅は武士の数も足りなければ、仕事の10割をこなせている者もいないのだ。他の業務の手助けなどもってのほかである。さらにいえば放置など菖蒲が許すはずもないし、なにより労働力の足らない顕金駅で、バタバタと死なせる訳にはいかないのだ。

 

駅の跳ね橋には赤い旗が立てられた。立てられたという話は殆ど聞いたことはないが、感染症などで駿城の受け入れが不可能な場合に赤い旗を立てる決まりがあるのだ。

なにせ駅自体も閉鎖空間ではあるが、駿城で感染症など死活問題である。

元々は金剛郭まで、結核や天然痘などの重大な感染症が届かないようにするために考えられた決まりである。

 

感染者は、病院として使っている楓の屋敷と最上の屋敷と、鰍塾として使われている建物で受け入れている。臨時の隔離施設となり、それぞれの場所で麻疹に感染したことのある者が面倒を診ている。

蓬莱城が丁度出払っていたため、蓬莱城も一度戻ってきたが、体調不良者がいないのを確認後、食糧を検閲所で積み込むことのみが許され、八代駅へ行くことになった。

 

八代駅の駿城も勿論立ち入らせる訳にはいかないため、蓬莱城は伝令の役目も負うこととなった。八代駅は有事の為に多めに食糧が運び入れられているので、蓬莱城に積み込んだ食糧もあわせて、その辺りの采配は勘太郎に任された。

 

数名の死者が出たが、感染者の山場は10日ほどで過ぎた。快方方向の者が多くなってきたころ、蓬莱城が再度戻ってきたが、受け入れは難しい為再度食糧の受け渡しのみが行われた。

 

2人で駅全体を対応するのは無理があり、楓が体調を崩してしまった。麻疹ではないが疲れから風邪をひいたようで、現在使用人のみが在宅する仁助の屋敷で世話になることが決まり、最上が1人で駅全体を対応することとなってしまった。山場は越えていることから大事には至らなかったが、主力の楓が抜けたため、1人で3箇所をまわる羽目になり、最上は疾風で駅内を疾走していた。民人は最上を見ると道を開け、邪魔にならないように協力し始め、現代の緊急車両みたいな扱いである。2人で担当していた時は、楓の屋敷と最上の屋敷を楓が、鰍塾を最上が担当していたので支障はなかったが、1人で周るとなると遠い。隔離場所の設定を誤ったと思っても既に遅い。

 

先に感染者を受け入れていた楓と最上の屋敷から感染者が退院し、残すは鰍塾の建物のみとなり、5日後に再度戻ってくる予定の蓬莱城は受け入れ予定となった。

 

「無理だ。もっと医療従事者を増やそう。死ぬ。」

 

「そりゃ甲鉄城の三倍居ますからね。今の顕金駅。」

 

「結局仁助がいても一人当たりの負担が変わってない…。楓殿に任せたっきりすっかり忘れてた。」

 

「下手したら最上様も不在の可能性ありますし、増やしておいた方がいいでしょうね。」

 

手伝いにかり出された雅客が同意する。雅客は甲鉄城で感冒が流行した時に手伝っていた上、麻疹の既往歴があったので、鰍塾に割り振られていた。最上はぐったりしながら、未だ発熱のある患者のために鰍塾で待機をしているが、うとうととし始めたため、雅客は最上に休憩する様に促した。最上は了承し、横になってすぐに夢の世界へ旅立っていった。

2人は交代で休憩をしながら、なんとか楓が戻って来るまで対応し続け、蓬莱城が戻る日に楓は仕事に復帰を果たした。感染者から数日離れていたことから、蓬莱城の者の診察は楓に任せることになった。

楓が復帰し仁助が戻ったことで、最上はやっと解放された。

 

顕金駅における麻疹の流行は終息したが、1500人を越える住民に対応するには、医療従事者が足りないということが浮き彫りになったため、流民の中から簡単な読み書き計算程度の学のある者を選んで、その中からやる気のある者に楓が医学を教えることとなった。医者まで名乗れずとも、せめて本格的な看護が行える程度までは医学を教えることとなり、希望者も随時募集するため、医学も鰍塾の講義に仲間入りすることとなった。




旗の件は勝手に設定しました。

医療従事者が足りないのは完全なる失策。甲鉄城でてんやわんやしてたのに、自分の手から離れたからってすっかり忘れてたホモ君。
普段は楓が精力的に頑張ってくれてたのと、有事でもなきゃ割と浮いちゃう人員になるので優先度が低かったのもあります。
医学を教わった奴らは、各職場に産業医みたいな感じで割り振られます。有事の際は召集。八代駅にも当番で行きます。今は八代駅の武士達がちょっとかじった程度の医学知識で頑張ってます。

職業選択の自由?申し訳程度にありますが、指定された職業につかないなら、顕金駅からのアシスト無しになります。実質ないのと一緒。指定の仕事しながら、鰍塾で勉強して転職はOK。
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