隔週交代で入れ替えられていた使用人が1人固定配置となった。固定配置となったのは鯛である。
勘太郎からの書面で如何にもらしい理由が書かれていたが、要は良い仲になったらしい。勘太郎は立場があるので道元は良い顔はしなかったし、最上も同様であった。結婚とは政略の一つであるので、元々身分のある勘太郎をただの民人とくっつけたくないようであった。
雅客の家に集まって、武士達は勘太郎の件を話していた。
「最上様って俺達には好きにさせるのに、勘太郎様は駄目なのか?」
「元々俺達は下侍だからな。今の身分はどうあれ、家の名は一度落ちてるからなぁ。」
「でも最終的に許可されたんだろ?」
「手紙で道元様と勘太郎様がやり合ってたらしいぞ。」
「道元様が許可すれば最上様は関係ないか。」
「信用できない他家より、信用できる民人をとったらしいな。」
「確かに害はないだろうな。余所から嘴を挟まれることもないし。勘太郎様は結婚適齢期だから、そろそろ世継ぎも欲しいけど、下手に力のあるところから嫁入りともなれば、八代にはおけんしな。」
「へぇ。…世継ぎと言えば菖蒲様も適齢期に入ってしまったぞ。どうするんだ?」
「立場と能力からすれば最上様なんだよなぁ…。」
「最上様は適齢期じゃないだろ。」
「多少早くても問題ないだろ。」
勘太郎の件から、菖蒲の配偶者の話へと変化した。菖蒲は結婚適齢期であり、顕金駅奪還も果たしたことから、余所の駅からそれとなく話も振られているらしい。しかし菖蒲から実権を奪われては敵わないので、道元達は余所から迎えることに良い顔をしていない。
「来栖は駄目か?」
「駄目ではないだろうが…そもそも菖蒲様はどうお考えなのだろうか。」
一方菖蒲の執務室にて
「勘太郎様はやっと叔父様に認められたようですね。めでたいことです。」
「菖蒲様。他人事ではありませんよ。そろそろ菖蒲様もご結婚相手を決めねばなりません。」
「えっ⁉︎わ…私ですか?」
「当然です。世継ぎは作らねばなりません。」
「よ…世継ぎ…。」
静に言われて菖蒲は動揺した。今まですっかり自分のことを忘れていた。総領としての教育を施されてきたため、他駅に嫁に行くことは昔から考えたこともなかったが、婿を取らねばならない。漠然とお父様の決めた相手と一緒になるのだと認識はしていたが、決めてくれる堅将はもういないのだ。
「どっどうしたらいいでしょう?」
「勘太郎様か最上様か来栖様かと思っておりました。年齢的にも能力的にも勘太郎様が最有力かと思っていたのですが、此度のことでそれもなくなりました。最上様か来栖様か余所の駅の方ということになりますね。」
「最上も来栖もまだ適齢期ではないのでは?」
男性の適齢期は二十代半ばであるので、当然の疑問ではあった。
「では余所の駅から婿殿を迎えますか?」
「えっ…ええっと…。」
「それとなく他駅から話も来ておりますよ。道元様が切って捨てておりますが。」
菖蒲はおろおろと困っているが、静はそれをただ眺めている。
翌日の午前中、雅客は最上の執務室を訪ねた。
「菖蒲様の結婚相手?なぜ私に聞くんだ。聞くなら道元様だろう。」
「いや何か知ってるかなと。」
「私はその話に関わりはない。」
「因みに最上様が指名されたらどうしますか?」
「誠心誠意努めさせてもらうが…。私はちょっとなぁ…。」
「ちょっと?なんです?」
「ただでさえ菖蒲様はお若く手弱女と見られるから、婿には威厳がある方が望ましいな。私は見た目がな…。」
「はは…。」
最上の遠い目に雅客も乾いた笑いを返した。どうやら八代駅の話の時の威厳の話が堪えているらしい。
「本来適齢期も10年近くは先だしな。道元様に婿に入れと言われれば否やはないが、威厳ばかりはどうにもできないからな…。」
「確かに最上様は適齢期まだ先ですもんね。…来栖はどうです?」
「……別に構わないとは思うが。」
「なんです?今の間は。」
「来栖があの様子で、世継ぎはちゃんとできるのか?」
「ぶはっ!あっはっはっ!そこですか⁉︎」
「大事だろう。世継ぎは。」
最上は呻く様に言葉を吐き出して、じとりと爆笑する雅客を睨んだ。
その日の夜の雅客の家は、笑い声で賑やかであった。
雅客。笑い事ちゃうねんぞ。
勘太郎独身だったことになりました。
菖蒲様のお相手を考えた時に、独身ならば最有力候補だと気がついて、丁度八代に送り出してしまったのでもう誰かとくっつけようと思いました。(安直)
道元様は金剛郭で家族死んでそうですよね。流石に老中ともなれば城下に家族住んでるよね。そう考えるとノータイムで菖蒲様を選んだ道元様やべぇなって思います。