行商に出る日、最上は籠を二つ程抱えて操車場へと来た。籠の中には鳩が入っていた。瓜生は籠を覗きながら口を開く。
「なんだその鳩。」
「道元様が伝書鳩を訓練中でな。一里位先から放してほしいらしい。」
「へえ。」
「宍道駅で世話になってた頃から、宍道駅の領主と話を進めてたらしい。とりあえず、うちと宍道駅と八代駅を行き来できるようにしたいみたいだな。」
「使えるようになりゃあ便利だろうな。」
「将来的には出雲の駅は全部対応できるようになると助かるな。」
「おっさんの屋敷が鳩屋敷になりそうだな。」
「現時点で既に10羽はいるみたいだがな。」
甲鉄城が出発し一里程度の位置から鳩を放すと、鳩は空高く羽ばたき一直線に顕金駅へと飛んで行った。
車上から最上と瓜生は鳩を見送る。
「私は鷹でも飼おうかな。」
「鷹ぁ?鳩じゃねぇの?」
「道元様の鳩以外を狩れるだろ?」
「鷹なんか使わなくても撃ち落とせば良いだろ?」
「精度の問題もあるが、間諜に銃声で勘付かれるのも良くない。」
「…無名に石でも投げさせたら良いんじゃねぇの?」
「⁉︎」
「たぶん当たるだろ。無名なら。」
「確かに。今度その辺の鳥を狩りついでに撃墜してもらうか。鷹も調教に時間がかかるし、何より私は素人だからな。そのうちどっかから鷹匠でも連れて来たいな。」
「鷹は諦めねぇんだな。」
「そりゃ無名殿は常駐してるわけじゃないし、将来的には出雲どころか遠くまで出かけてもらうことになるからな。」
いずれ間諜などに鳩を使わせるつもりであり、余所の駅も使うのは当然なので鳩の狩り方は検討しておく必要がある。天鳥幕府なき今、各地の駅がどう動くかわからない。
困った時はお互い様などと言う領主など非常に稀なのだ。戦こそカバネがいるからできないものの、暗殺や謀略を駆使して属領にする程度は既に起きていても不思議ではないのだ。
今回は最上が鳩を頼まれたが、吉備土も度々頼まれるようになり、徐々に距離を伸ばしていき、一カ月で宍道駅や八代駅と顕金駅の間を行き来できるようになった。八代駅はしょっちゅう駿城が行き来しているためそこまで必要ではないが、宍道駅は伝書鳩が使えるならそれに越したことはない。
行商先は出雲の国の生きている駅をまわりきり、余程小さい駅以外には掃射筒を売ることが出来た。噴流弾については唯一カバネを殺せる術として全ての駅が購入している。
カバネに落ちた駅もまだ存在しているものの、出雲の国のカバネを蓬莱城で殺して回っているため、出雲の国を行き来する駿城はカバネに遭遇することが極端に減っている。
勿論他の国の地域から流れてくるカバネもいるので、もう出雲の国は安全です。とはならないのだが、運行表もなくなったことで、必要の他行き来しなくなっていた駿城の行き来が増加した。
食糧を主産業としている駅など、生きるのには困らないため運行表がなくなってからは、殆ど駿城を走らせない駅もあった。他の産業を請け負った駅は、食糧確保のために駿城を出さざるを得ないが、可能な限り自給自足をした上で行き来していたのだ。
依然より安全になった道行きを互いに交易する様になった為、今年の冬は大過なく過ごせると喜んでいる。
食糧を主産業にしている駅以外は、中々に苦労をしていたのにも関わらず、道元に脅され顕金駅奪還時に食糧を提供していたので、それなりに恨んでいたのだが現金なもので、そういう駅ほど今となっては顕金駅にすり寄って来ている。
猛禽類に狩られることがあるから、確実性はないけどこの世界だと有効な連絡手段ですよね。
そもそも使ってそうだけど、小説の暁では周防城が無駄足踏んでて、その辺の情報のやり取り出来てなさげだったので、連絡手段として採用しました。
短い日常話ばかり上げて、カバネリ感あんまりないけど大丈夫なのか時々気になります。ゆるっと続けていきますので、片手間にでも読んでいただければと思います。