顕金駅には大鍛錬場から出る熱を利用した公衆浴場が存在する。
管理費や人件費などの都合があるため、無料とはいかないが非常に安価で利用することができる。
上侍の屋敷には浴室が存在するが、ずっと公衆浴場を利用してきた武士達からすると、自宅となった屋敷の浴室を使うより公衆浴場を使う方が慣れている。
「城務め面子は公衆浴場来ないよな。」
「あれ?これもしかして俺らも使ってるとまた怒られるやつか?」
「…上侍は公衆浴場来てたの見たことないな…。」
「服部とかに聞いてみるか?」
「また呼び出されるかもしれんと思えば確認したほうが良いな。」
武士達は、城務めの武士達が公衆浴場に姿を見せていないことに最近気がついた。示し合わせて行くこともないので、気が付かないのも当然であるが、気が付いてしまえば気になってしまう。寄り集まって暮らしたり、使用人を雇わなかったことで怒られた記憶が新しい。あの時も城務めの面子は、既に使用人を雇って生活していたのだから、今回も何かあるかもしれないのだ。
樵人や雅客は連れ立って、今日は休みの服部の家を訪ねることにした。
「は?風呂?屋敷にあるの使ってますけど。帰宅するの遅いことが多いですし。」
「…すまん。…屋敷にあるの使わないとまずいと思うか?」
「あー。…いや別に直接どうこうとかはないと思いますけど、流民は気を使うんじゃないですかね。」
「…それもそうか。甲鉄城からの民人は気にしてなかったしいいかと思ってたけど、新しく入ってきてる流民からすれば気になるか。」
「俺たち前でいう上侍と同じ立場だしな。」
「でも自分しか使わないのに用意するのもなぁ…。」
「風呂使う時は集まれば良いのでは?どうせ雅客さん家溜り場になってるんですし。」
「「⁉︎」」
「いや。それだ!みたいな顔しないで下さいよ。」
「今度からそうしよう。助かった。ありがとう。服部。」
「身綺麗さえしとけば、最上様達も別に文句は言わないと思いますけどね。」
「また呼び出しされたくないんだよ。」
「それはわかりますけど。」
元々武士達が定期的に集まっていた雅客の家では、風呂まで入るようになった。雅客の家以外も武士達は普段集まっている家で風呂を済ませるようになり、家主の設定した風呂の日になるとその家に集まり、互いに薪の具合を見る決まりができた。
「相変わらずより集まる奴らだな。」
ことの顛末を服部から報告された最上の言である。
最上の屋敷では、最上より前に子供らや穴子達も使っている。
風呂の日は最上もいつもよりは早く帰って来るが、それでも最上の帰宅が遅いのでそうなった。穴子達は最初断固反対していたが、効率の話を最上に淡々と説明され折れることになった。
後から入ってきた流民は別としても、甲鉄城時代からの民人は、武士達を殆ど見かけなくなり少し残念であった。というのも以前の上侍と違って普通に話をするからである。
割と武士達は民人と交流があった。純粋に会話を楽しむこともあるが、それとなく質問もしていたのだ。ここで提供される情報は特に重要なものではなく、民人達に公開しても問題ないものである。
民人に通達される事項は、御触書のように通達されるか、六頭領経由である。偶に失敗した伝言ゲームのように内容が少し変わることもあるため、風呂ついでに武士達に確認していたのだ。公衆浴場での質問が出来なくなったため、巡回中の奉行所の者達が呼び止められる機会が増えたのは余談である。
奉行所の武士達も、呼び止められることが増えたなぁ。くらいの感覚であるので特に問題もないのだ。
ホモ君が休みの日なら一番最初はホモ君ですがそれ以外は最後。
効率重視なので穴子さん達は胃が痛い。