【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】駅外

甲鉄城は出雲の各駅に武器を売ってはいるが、いざという時の為に購入している駅ばかりで、継続購入している駅はあまりなく、多少駿城で使用した分を補充するために購入しているのが精々である。噴流弾でカバネが殺せるとはいえ、顕金駅のように積極的に外に出て、カバネを殺してやろうなどと考える駅は出雲にはなかった。

 

「なんで戦う力を得たのに戦わないんだ!臆病者ばっかりだ!」

 

生駒は操車場で憤慨し声を荒げる。

 

「仕方なくない?弱いんだから。」

 

憤慨する生駒に無名は返すが、生駒の怒りは収まらない。

 

「噴流弾でカバネが殺せるのは最上さん達が実演してるじゃないか!態々前衛の2人はカバネを引っ張ってくるだけで、殆ど蒸気筒だけで対応してるのに!閉じこもってばかりじゃカバネから土地を取り戻すなんてできっこない!」

 

無名以外の者も宥めようとするが、生駒は納得がいかないようでむすりとした顔をしている。蓬莱城は山間部などを中心に出雲をまわり、他の駅には補給に寄るのが殆どであるが、このままではそのうち他の駅で無礼な真似をしかねない。困った吉備土は最上に相談することにした。

 

「…何故私に話を持ってくるんだ。お前がなんとかしたらいいだろう。」

 

最上は至極面倒くさそうな顔で、吉備土の話を聞いていたが、返した言葉がこれである。

 

「そうなんですが、どう説明しても納得いかないみたいで…。」

 

「お前は蓬莱城の城主だろ。そういうのをなんとかするのもお前の仕事なんだがね。…まあいい。より面倒なことになる前になんとかするか。」

 

最上は翌日、流民上がりの武士を1人伴って操車場へと向かった。

この流民上がりの武士は糸賀という25歳の男で、普段は甲鉄城に乗っている。甲鉄城に乗っていない時は、奉行所で働いているのだが、生駒とあまり仲が良くない。糸賀は蓬莱城ができる前から有志で甲鉄城に乗っていたが、なにかと生駒と性格が合わない。生駒も糸賀もお互い合わないと理解している為、関わらないように過ごしている。

 

「糸賀。お前は生駒の何処が気に入らない?」

 

「結構自分勝手だし、武士でもないのに仕切り始めたりするところですね。元々甲鉄城に乗ってた方達が認めてるのはわかってるので、普段口には出しませんが子供の我儘に付き合わされてる気分になるので嫌です。」

 

「そうか。今から操車場で生駒と話すが、お前はただいるだけでいい。退室は認めないが、生駒と話す必要もない。わかったな。」

 

「承知しました。」

 

最上と糸賀が操車場に入ると、生駒が最上に近寄ってきた。

 

「最上さん。他の駅のことでお話があるんですが。」

 

「生駒。その前に私の用件を済ませていいか?」

 

「あっはい。大丈夫です。」

 

いつもは遮ることなく、生駒の話を聞いている最上が、先に用件を済ませたいと言ったため生駒は素直に引き下がる。

 

「生駒。お前は糸賀と仲が良くはないよな?何故だ?」

 

「えっ?あー…。性格が合わないからです…。」

 

「試しに今から少し話してみろ。」

 

「「えっ?」」

 

「はい始め。」

 

糸賀は困惑した。操車場に来る前、最上は話す必要はないと言ってはいなかったか。それなのに舌の根も乾かぬうちに話してみろとは一体どういうことか。

 

生駒も糸賀と同じく困惑していた。最上は普段生駒に対して誰かと仲良くしろと強要したことはない。むしろ組ませる相手を選んでくれており、衝突しそうになることがない。糸賀と仲が良くないのをわかっていて、話してみろとはどういうことか。

 

「「…。」」

 

生駒も糸賀もお互いを見たまま一切喋らない。糸賀は、操車場に来る前に話す必要はないと言われたのだから、いっそ黙っていようと開き直った。生駒は元々社交性は高くない。逞生と仲良くなったのも、カバネの研究の話で意気投合したからで、それまで逞生のことは捨ての仕事をサボるデブだと思っていた。社交性が低いから同僚に仕事を教えるのも、自分がやった方が早いからしてこなかった。そんな生駒であるので、いきなり話せと言われても何を話せば良いのか分からず困ってしまった。2人で黙りこくっていると最上が手を叩いた。

 

「はい。止め。生駒。何故仲良くしない?」

 

「えぇっと必要ですか?糸賀さんは普段甲鉄城だし、あとは奉行所じゃないですか。みんな仲良くお友達ってなる必要はないと思うんですが…。」

 

「そうだな。特段生駒が糸賀と仲良くしなくても困らないよな。」

 

「は…はい。そうですね。」

 

「もし、必要があればお互い譲歩するだろう。だが今仲良くする必要はない。」

 

「じゃあ今のなんだったんです?」

 

「お前が最近他の駅が外に出て戦わないのが不満で愚痴を言っていると聞いてな。規模こそ違うが、今お前と糸賀がしてたことがその答えだ。」

 

「…どういう…。」

 

「生駒は糸賀と仲良くしなくても困らない。切羽詰まれば仲良くもするだろう。他の駅も外に出なくても、生きていく分には困らない。切羽詰まれば戦う。同じ考え方だろう。お前は好戦的だが、交流を図るのは得意じゃない。だから交流を強要されても困ってしまった。他の駅も戦うことを強要されても困ってしまう。ここまではいいか?」

 

「…一応。」

 

生駒は少々納得がいかず、不貞腐れた顔で話を聞く。

 

「生駒。戦うつもりのない者を、外に叩き出して戦わせることは出来ない。外に出たいと思わせなければならない。」

 

「そんなこと言ったって10年以上も引きこもってて、自分から外に出たくなるんですか?ならないから今も引きこもってるんじゃないんですか?」

 

「例えばだが、もし糸賀が私と白露屍人考の話をしていたら糸賀と話してみたくなるだろう?」

 

「はい。でもそれって駅の場合どうやるんですか?」

 

「甲鉄城で一番売れている物がなんだか知ってるか?」

 

「えっと。塩ですか?」

 

「いや。木材だ。10年以上引きこもってるんだ。民人達の建物にガタもくるし、冬場に暖を取るには炭や薪がいるが、駅内の木なんて必要以上にはない。駅を出ればすぐそこにいくらでも生えているのに、うちから買っている。」

 

「甲鉄城から買えるなら出ないじゃないですか。」

 

「木材も炭も売ってはいるが駅内を満たせる量じゃない。今までは命がけでカバネがいない時に枝拾いに行くか、年々値段の上がるお高い木材を買うしかなかった。だが今年はカバネを殺せる術がある。しかも蓬莱城が殺してまわっているおかげで、大群に襲われる可能もかなり低い。事実駿城に取り付くカバネも格段に減っている。」

 

「はい!それで外に出てみようってなる訳ですね!」

 

「ちょっと早いがそうだな。続けるぞ。こうなってくると、今度は今まで余所より安いと飛びついていた甲鉄城の販売する木材の値段に不満が募る。そこまで危険じゃなくなってきたんだから、もっと安くて良いじゃないかと。」

 

「はっ?なんですそれ。自分勝手過ぎます!」

 

「そうだ。人間なんてそんなものだ。まあ甲鉄城は私が城主だ。勿論値下げなどせんし、あまり煩ければ暫くよらん。そうなれば民人達はこう思う。"目の前に木があるじゃないか。カバネを殺せる武器を買ったんだったら採ってこい。"ってな。武士達もそこまできてやっとやってみるかとなる訳だ。領主だって買わずに済むならその方が良い。今までだって命がけで採りに行くことはあった訳だからな。そこで上手いことカバネを殺せることが分かれば武士達に自信がつく。自信がつけば欲がでる。最初は枝拾いが精々だろうが、木を切り倒し、狩りや釣りで食糧を得るようになる。そこまで出来て初めて土地を取り戻したくなる。」

 

「…そう上手くいくでしょうか?」

 

「勿論最初のうちはそれなりに死者も出るだろう。だが今みたいに段階を踏めば外に出る者は多くなる。今お前はそう上手くいくのかと言ったが、お前が元々言っていたことはこの段階すら飛ばしている。実現しようとするなら美馬が磐戸駅でやった壁を取っ払うことと同じだ。」

 

「ゔっ…。」

 

美馬と違い、戦いを強要する為に強硬手段に出はしないが、言っていることが同じだと言われて生駒は言葉に詰まる。

 

「そもそも好戦的な武士は、美馬が率いた主戦派として死に絶えた。残ったのは穏健派だからな。段階を踏まねば中々難しいのは理解してくれ。私は引きこもっていたままで良いと言うつもりはない。ただ時間はかける。人は劇的なことがなければ急には考えを変えられない。甲鉄城の武士達はその状況だっただけだ。家族がいれば養わなきゃならない。家族と一緒に生きていたい。そう思うのが普通だ。心から納得しろとは言わん。ただ理解はしてくれ。」

 

「はい。わかりました。騒がせてすみませんでした。」

 

生駒はしょんぼりとしながら返事と謝罪をした。自分だって妹があんなことにならなければ、きっとみんなと同じだった。普通に家族がいて、それなりの生活をしている者が外に出たいと思わないのも理解できた。最上は引きこもったままを良しとしないとも言った。最上がそういう風に考えているなど、微塵も考えてなかった自分が恥ずかしくなった。

 

「お前はもう少しまわりの意見を聞いた方がいいな。言葉だけをとらえて違うと反発するんじゃなくて、どうしてその言葉が出てきたのかを聞いてみると良い。掘り下げたら納得するかは別としても理解は示せるかもしれん。少なくとも今回の話題は、吉備土達からも諌められていただろう?」

 

「はい。気をつけます。」

 

「お前の用件もこれで良かったか?」

 

「あっ!そうです。」

 

「では私は仕事に戻る。糸賀。行くぞ。」

 

「はっ。」

 

最上は糸賀を連れて操車場を出て行った。

 

「あそこまで懇切丁寧に説明してやる必要はありますか?」

 

糸賀からすれば、家老の最上がいち蒸気鍛治の為に、出向いて説明してやったことに納得がいかない。強いのは見たことがあるからわかるが、ご機嫌をとってやる必要性がわからない。

 

「ああ。あれは感情に素直過ぎるからな。こちらでたまにブレーキを引いておかないと、どうなるかわからん。私はあれに臆病者と詰られたことがある。」

 

「は?」

 

「その時は私も余裕がなくてな。あれを止めることを放棄した。その結果死人が出た。死人が1人で済んだのが救いだったが、下手をすれば皆殺しにされていたかもしれない。あれには中々に扇動者としての才があるらしい、だから私も反省した。あれが扇動し始めてからでは遅い。賛同者が出る前にあれのブレーキをかけねば危険だ。」

 

最上は生駒に懇切丁寧に説明し、武士がするとは思えぬ程に優しく対応していた。本来なら家老である最上が、白だと言えば黒でも白になるのにあの対応である。だから最上も吉備土達と同じように生駒を特別視しているのだと思っていたが、どうやら特別視の方向性が違うらしい。

 

糸賀は吉備土達が生駒の実力を認めていること自体に文句はないが、生駒に主導権を握らせることがあるのは納得していなかった。吉備土の指示で死ぬのは仕方がないが、生駒の指示で死ぬのは嫌だった。生駒は武士ではない。肩を並べて戦うどころか、カバネリという特殊性を活かして前衛を請け負っている事は評価している。糸賀は一度流民となったが、元々余所の駅で武士として過ごしていた。武士としての矜持が、生駒に主導権を握らせるのを良しとしないのだ。蓬莱城が出来て、吉備土を城主とした蓬莱城と、最上を城主とした甲鉄城に分かれ、甲鉄城の担当になったのは僥倖であった。

甲鉄城は吉備土や生駒と合わない者の寄せ集めだ。最上は多少若いものの家老をするほどであるし、元々の家格もある武士らしい武士である。狩方衆は多少特殊であるが、甲鉄城の武士達よりも武士らしい考え方であり、受け入れ易い。瓜生は態度も口も悪いが、でしゃばる事はなく主導権は常に最上であるし、狩方衆を率いているだけあり感情では動かず状況をよく見ている。

 

最上が無名と生駒を上手く使えるように、蓬莱城を編成したため必然的に生駒と合わない者が甲鉄城に集まっている。生駒は人殺しを忌避するが、武士など元々人殺しをするのが仕事なのだ。生駒の綺麗事や、自分の考えが正しいというような主張を、苦手とする者が一定数存在する。そういう者は顕金駅奪還後に入ってきた者であるが、元々の甲鉄城面子は激動の中、半年以上苦楽を共にしたので致し方ないことである。むしろ派閥分けするとして来栖派と道元・最上派の二派閥にしかならないので大きな問題にはならない。道元と最上が上手くやればそれで済むし、これで来栖が菖蒲や吉備土の様なお人好しだったら、目も当てられない状況になっただろうが、来栖自体は割と清濁併せ呑むことが出来るので対立することもない。




ホモ君はどいつ(生駒)もこいつ(流民上がりの武士)も面倒くせぇなって思ってます。流民上がりの武士達の意見が一般的なのはわかってますが、カバネリの戦力が高すぎるので、機嫌をとるならカバネリです。

生駒は小説で見る限り、ツラヌキ筒がまだまだ完成してない原作2年前ですら、マジキチカバネ殺すマンですが、お前初音ちゃんと住んでた駅が襲われなかったら、今でも一生懸命農業しながら初音ちゃん養ってたやろって思います。

やはり覚悟を決めるには劇的な状況か時間が必要よねって話。
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