【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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八代駅【裏】

吉備土の号令の後、発砲音が3発響く。

樵人、雅客、仁助が試射をしていた。

鈴木が生駒と逞生の作ったツラヌキ筒から着想を得て開発した噴流弾である。

的として下げられた鉄板は大きくへこみ、貫通していた。

武士達の反応をみて気を良くした生駒は噴流弾の構造をつらつらと説明する。

樵人らは生駒の説明が理解できない上、説明する生駒の勢いに押され困惑の表情を浮かべている。

 

「要するにこいつがあれば俺たちもカバネを倒せるってことだな。」

 

「そういうことです。」

 

雅客が代表して質問したが確認できることなどこれしかないし、最も重要な事である。

松葉杖を使い試射を眺めていた最上は、松葉杖を脇に挟んだまま小さく手を挙げる。

 

「何点か確認したいんだがいいか?」

 

「ど…どうぞ。」

 

試射が始まるまでの吉備土達の態度や格好を見て、来栖よりも立場が上であろうと判断した武士から質問がきたことに生駒は身構えた。

先程ペラペラと仕組みを説明したが、武士達が理解出来るとは思っていないし、先程雅客がした質問が武士達にとって1番大切な事であると思っていたからだ。

 

「まずこれまでの弾丸と構造が違うことは理解したが、材料は広く出回っているものなのか?希少な材料なら従来の弾丸を併用しなければならない。」

 

「はい。薬莢は従来のものに加えてカバネ心臓の金属被膜の一部を使いますし、炸薬も今使っている火薬の一部なので流通は問題ありません。」

 

「次に1発当たりの費用はどうだ?従来の弾丸との価格差は?甲鉄城は資金豊富とは言えない。あまり高額だと厳しいのだが。」

 

「1発当たりの金額は少し高額になります。使用している炸薬が少し高いので。今まではカバネの足を止めるためにひたすら撃ち続けている必要がありましたが、これならカバネを殺すことができるようになり、弾数を抑えることが可能になるので全体としては同じくらいかと思います。」

 

「最後に有効射程に変化はあるか?変化するなら戦術を見直す必要がある。」

 

「有効射程に変化はないですが、心臓を狙って撃つようになるでしょうから体感的には短くなるかと。」

 

「なるほど。理解した。」

 

雅客達は最上の質問を聞くたびに、確かにとは思うものの全く思いつかなかった自分達は不味いのではないかと少し落ち込んだ。

 

「生駒。刀にも何かしたって言ってなかったか?」

 

吉備土が次の話題へと促す。

 

「はい。カバネ心臓の金属被膜で刀身を覆ってみたんです。これで簡単には折れないはず。」

 

「へぇ。それなら来栖に丁度いいな。」

 

最上が感心していると吉備土が近寄ってきて口を開く。

 

「最上様もやってもらったらいいんじゃないですか?」

 

「来栖みたいに埒外の剣の腕はないんだが。」

 

「なんだかんだずっと帯刀してるんだからやっといて損ではないでしょう?それとも刀に手を入れられるのは嫌ですか?」

 

「刀は武士の魂って?冗談。簡単に折れる前提の魂などいらんよ。来栖ほど活躍させてはやれんだろうが、頼めるか?私の刀は後に回してもらって構わないから。」

 

「はい。大丈夫です。すぐにでも取り掛かれます。後で預かりに伺います。」

 

「すまんな。流石に今は帯刀してないからな。」

 

生駒達は頭を軽く下げてから退室していった。

試射を行なっていた武士達は片付けを始める。

 

「そういえば反動はどうだった?今までと同じくらいか?」

 

最上の1番近くにいた仁助に質問がいく。

 

「特に違いはないかと。」

 

「そうか。なら問題なさそうだな。」

 

松葉杖をつきながら的にしていた鉄板に近寄った。

 

(これは凄い威力だな。カバネを殺せる手段が増えるのはいい事だ。)

 

そろそろ部屋に戻ろうかと振り返ろうとした瞬間、高いブレーキ音をたて急制動がかかる。

進行方向に背を向けていた最上は身体を後ろにもっていかれる。近くに捕まるものもなく、松葉杖をついている現状では踏ん張りも効かないため転倒を覚悟した。

しかしすぐ後ろに樵人がいたため転倒することはなかった。

 

「すまない。助かった。」

 

「いえ。丁度後ろにおりましたので。しかし何事でしょうか。」

 

「我々は艦橋に向かいます。最上様はお戻りください。」

 

吉備土は樵人らを連れて小走りで出て行く。

戻れと言われたが流石になにが起きているのかわからないまま待ちぼうけるつもりはなかったため、ゆっくりと艦橋へ向かうことにした。

 

少しするとゆっくり甲鉄城が動き出す。

 

(発砲音も聞こえなかったし、カバネが出たとかではなさそうだな。)

 

最上が艦橋に着くころには八代駅の操車場へと到着した。

扉近くに控えていた倉之助が状況を説明する。

 

(避難民が増えるか…面倒ごとが起きなければいいが。)

 

「最上。私たちは外に出て情報を集めてきます。ここに待機していてください。」

 

「承知しました。お気をつけて。」

 

(いい加減仰々しいから松葉杖は手放したいんだが菖蒲様がお許しにならないんだよなぁ…少々過保護だと思うのだがな。)

 

最上は皆が戻るまで艦橋で座って待つことにした。

 

暫くして八代駅の地図を持って菖蒲達が戻ってくる。

線路を塞ぐ竪坑櫓の撤去のための作戦会議が始まる。

生駒が生き生きと作戦を説明する。

 

(学者肌のタイプのようだが、思ってたより感情豊かな奴だな。頼りにされることに喜んでいるのか?)

 

無名が不機嫌な様子で艦橋へやってきて階段に座る。

 

(こっちはこっちで気分屋だな…)

 

作戦の説明が続いていく。

 

「無名さんも手伝って貰えますか?」

 

菖蒲が無名に声をかけるが

 

「いいよ。でも一緒には戦わない。」

 

共闘の拒否である。

さらに無名は暴言を吐き、詰め寄ろうとする生駒を蹴り飛ばし、捨て台詞を残して去っていく。

 

(戦力としては認めるが、正直作戦には入れたくない奴だな。随分ご機嫌斜めのようだし、どう動くかわからない以上作戦から外したいが、あの様子では勝手に戦いに出るだろうな。)

 

「菖蒲様。よくお考えになった方が。」

 

「大丈夫です!俺の作った噴流弾もあります!」

 

来栖から菖蒲に進言するが、生駒の興奮した様子の主張に押されて菖蒲が作戦を了承する。

 

(生駒はワザトリを倒し、技術を評価されたことで天狗になっているのか?無名殿のあの様子…作戦に組み込める状態じゃないだろう。引っ掻き回されて台無しにならなければいいが…)

 

「逞生達に頼みに行ってきます!」

 

生駒が揚々と艦橋を出て行くのを、横目で追う。

 

「最上。何故黙って聞いていた?何も意見はないのか?」

 

生駒が完全に退室してから来栖は最上に話しかける。

作戦会議中、最上が口を開かないことに来栖は違和感を覚えた。無名の態度から、作戦の内容に自分すら疑心を抱くくらいだというのに何故黙っているのか。

 

「私たちが先に進むためには、クレーンで竪坑櫓をどかす。若しくは八代駅の人間を見捨てて食糧を節約しつつ回り道をする。の二択だ。さらにいえば回り道をした先も無事な駅とは限らない。よってクレーンで竪坑櫓をどかすという点においては賛成せざるを得ない。先程の作戦に無名殿を入れるのは反対だが、外したところで無名殿を留めおくことが出来るとも思わない。あの様子では引っ掻き回されかねないぞ。生駒もワザトリ討伐や噴流弾の評価で少し調子に乗っているようだ。作戦の成功しかみていない。生駒は生駒で作戦にケチをつければ自分1人でやるなどと暴走しかねない。」

 

「よって作戦会議に生駒を参加させた時点で軌道修正は不可能だった。とはいえ窯場のボイラーを動かし、クレーンで撤去作業を行うことを考えれば武士だけで竪坑櫓をどかすことも不可能だ。以上のことから発言するだけ無駄だと思った。」

 

どうにもならない状況に皆が黙り込む。

 

「運が良ければ無名殿が上手く動いて速やかに片付くだろう。特別運がいい場合を除けば作戦は失敗する可能性が高い。失敗する前提で動くのが1番被害を抑える方法だ。クレーンを担当する蒸気鍛治と自分達の身の安全を優先して動くしかないだろう。」

 

最上が口を閉じたことで艦橋に沈黙が落ちる。

最上ほどではないにしろ、先程の作戦会議では皆作戦の精度を疑ってはいた。

それ故に来栖は菖蒲に進言したし、歩荷は生駒に声をかけ、菖蒲は賭けるしかない。などと発言した。

 

「来栖は此方に残った方がいい。ただでさえ随分機嫌の麗しくない無名殿や、あれだけ自分の立てた作戦に絶対の自信を示している生駒と相性が悪い。」

 

「失敗する前提で己に残れというのか⁉︎」

 

来栖が最上に食ってかかる。

 

「失敗する前提だから残るべきだと言っている。撤退の援護や救助に行くのに接近戦をできる主力が1人は欲しい。作戦に参加している者達が戻ってくるまで甲鉄城が襲われない保証もない。」

 

「そうだな。来栖は此方に残った方がいい。作戦は俺達が参加しよう。」

 

吉備土が軽く手を上げながら応える。

来栖は不満そうな顔をしているが、クレーンを動かす蒸気鍛治の護衛や、生駒達の援護のために武士を数名出した上、カバネリ2人と来栖まで作戦に参加してしまっては甲鉄城が手薄になるのは理解していた。

まして失敗する可能性が高い以上、すぐには甲鉄城に戻れない可能性もある。そうなれば手薄な甲鉄城にまで被害が及んでしまうかもしれない。

 

「わかった。己は残ろう。」

 

実に悔しげである。

 

 

 

甲鉄城が操車場からゆっくりと走り出した。速度を上げることなくそのままクレーンへと繋がる細い足場に横付けして停車した。

菖蒲が伝声管に向かい指示を出した。

2号車から出た吉備土達が足場を進んで行く。

無名の姿はそこにはない。

何事もなくクレーンまで辿り着き、蒸気鍛治2人と武士2人がその場で別れた。

窯場へ向かう吉備土達4人はさらに足場を進む。

状況を観察していた服部から声が上がる。

 

「無名が別の足場から窯場へ向かっています。」

 

艦橋に緊張が走る。

 

「もう作戦から外れたのか!」

 

「2号車から出なかった時点でなにかやるとは思っていたが、まさか窯場に特攻しに行くとは、話を聞かないにも程がある。」

 

「生駒が引き返しています。無名のところに向かうようです。」

 

「どいつもこいつも!」

 

「無名殿は陽動扱いにすれば良いものを…。作戦とはなんだったかね…。作戦を立てた者が作戦を放棄するとは理解しがたい。」

 

「吉備土達も引き返して生駒を追っています。」

 

来栖が怒りを露わにし、最上は呆れ返っている。

しかし現時点で作戦を中断する訳にはいかない。

 

「吉備土達が窯場に入りました。」

 

吉備土達が窯場に入った報告の後、沈黙が落ちる。

窯場が動きを見せるのが先か、吉備土達が撤退してくる方が先か、艦橋はジリジリと緊張を高めて行く。

 

「窯場に火が入ったようです。煙が上がっています。」

 

「生駒達は上手くやったのですね!」

 

菖蒲の顔が明るくなる。

 

「来栖。車上で待機しておいた方がいい。カバネを引き連れて戻ってくるかもしれない。」

 

「わかった。菖蒲様。行って参ります。」

 

「は…はい。来栖。お願いします。」

 

最上も来栖も菖蒲と違い表情は難しいままだ。

 

「クレーンが動き出しました!クレーン付近にカバネが…カバネが下から登って来ています。かなりの数です。」

 

「吉備土達が渡っている足場まで甲鉄城を前進してください。」

 

菖蒲からの指示に従い侑那が甲鉄城を発進させる。

 

「クレーンに生駒を残して他は撤退してきています。無名は現時点見えません。」

 

甲鉄城が停車し、吉備土達を収容する。

 

「無名がクレーンのところに来ました。」

 

「菖蒲様!西通路!西通路に向かって下さい!生駒はそこに来ます!」

 

逞生が艦橋に駆け込んでくる。

竪坑櫓が退かせれば西通路に行くことができる。今もクレーンで竪坑櫓は上がり続けていることから、今から発進すれば辿り着く頃には甲鉄城が通れる高さまで上がるだろう。

 

「甲鉄城発進!」

 

菖蒲の指示が飛び甲鉄城が動き出す。

速度を上げ未だ上がりきらない竪坑櫓へと向かって行く。

間もなく竪坑櫓という時に甲鉄城に急制動がかかる。

最上は窯場に向かった吉備土達を回収するために発車した時点から座っていたため被害はない。

立っていた者たちも転倒したものはいない。

 

「どうしたのです⁉︎」

 

「クレーンが止まりました。これ以上進めません。」

 

「菖蒲様。カバネリの2人が崖下に!」

 

甲鉄城に衝撃が走る。

 

「窯場から大量の煙が出ています!複数箇所が爆発しています!窯場が爆発しました!」

 

断続的に甲鉄城が揺れる。線路ごと揺れているのだ。

窯場下の崖から黒い煙のようなものが姿を現す。

 

「なんだあれ。」

 

「まさか…あれが黒煙(くろけぶり)」

 




噴流弾についてはめちゃくちゃ捏造です。
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