【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】友達

今日は朝から駿城が一城やってきており、現在城主と護衛が菖蒲達と謁見中である。そんな中武士達の屋敷周辺を余所の武士が1人うろうろとしていた。

それなりに身なりが良く、パッと見では倉之助と似た雰囲気を感じる武士である。表札を見て歩いている様であるが、何が目的かわからない為奉行所の武士は声をかけることにした。

 

「もし。こちらで何をしておられる?ここは居住区なのですが。」

 

「ああ。すみません。知人を訪ねてきたのです。生きているかはわからないんですが、生きているなら顔くらいは見ておきたいと思いまして。」

 

ここは元上侍の屋敷である。元々の住人など最上しかいないが、最上は現在謁見に立ち会っている。

 

「貴方のお名前と知人の名を伺っても?」

 

「私は備前の国、下津井駅の山本晶(やまもとあきら)と申します。知人の名は堀川家の最上です。昨年元服したはずです。」

 

「最上様の知人の方ですか。」

 

「最上様?」

 

山本からすれば、元服前の最上しか知らず、生きているかも知らなかったので家老をしているなど知っているわけがないのだ。

 

「最上様なら今そちらの城主の方の謁見に立ち会われておりますが…。」

 

「…?最上が?何故?」

 

「家老ですので。」

 

「家老⁉︎えっ⁉︎昨年元服したばかりでは⁉︎」

 

「ええ。色々ありまして…。最上様にご用事であれば城になりますな。」

 

「えっ⁉︎流石に城は!あの。では私が来たことだけ伝えていただけますか?」

 

「よろしいので?」

 

「謁見にもついて行けぬ立場ですので。」

 

言われてみればその通りであるが、謁見について行けぬ立場の山本がなぜ最上と知人となるのか。そこを山本に聞くのも悪いかと思い、武士の1人が城下町まで付き添い、他の武士が城へと報告に向かった。

 

その日の夕刻に最上は操車場へと向かった。下津井の駿城の入れられた車庫付近できょろきょろとしていると、山本が先に最上を見つけたため、手を挙げて声をかけた。

 

「最上!」

 

操車場に割と大きな声が響き、最上の呼び捨てに蒸気鍛治からの視線が集中する。視線を向けられてから、最上が家老だという話を思い出した山本は背中に汗が伝う。

最上は山本に気がつくと、小走りで駆け寄ってきて山本の前で止まった。

 

「晶さん。私の家を訪ねに住居区まで来られたとか。」

 

「最上。ちょっとまって。…堀川様って呼んだ方が良い?ですか?いやその。住居区で武士から家老してるって聞いたけど本当?ですか?」

 

最上が普通に会話を始めた為、慌てて山本は確認をとる。なにせ相手は出雲の国最大の駅である顕金駅の家老である。顕金駅の人間は最上がさん付けで呼ぶ人間がどんな人物か面白がって見ているが、下津井の城主は道元の隣に座っていた武士を部下が呼び捨てたことに冷や汗をかいて見ている。

 

「仕事は終えてから来ましたから、今まで通りで構いません。今は私事ですから。家老は本当ですね。」

 

「あっ家老は本当なんだ。顕金駅が再興したって聞いたから、生きてるかなって思って会いに行ったんだよ。そしたら家老だなんて言われて腰抜かすかと思った。」

 

「ここで話すのもあれですし、食事でも行きましょう。奢りますよ。手は空いていますか?」

 

「家老の奢り…。怖いんだけど。」

 

「いいじゃないですか。ほら行きますよ。」

 

会話を聞いていた城主が、どうぞどうぞと山本を差し出したので、最上は山本の背中を押して操車場から出て行った。

 

最上は山本を連れて食事処へと向かったが、最上が連れ歩いている余所者を民人はちらちらと窺っている。

 

最上は山本と金剛郭での待機中に仲良くなった。金剛郭の年賀の挨拶はとにかく待機時間が長い。道元の屋敷で世話になっていたが、元服前であり正式な立場で来ていたわけではなかったので、暇を持て余して町に出た時に仲良くなったのだ。山本も年賀の挨拶へと向かう領主に着いて金剛郭に来られる立場ではあったが、その中でも下の下であった。自分より明らかに年下が、お上りさんよろしくきょろきょろとしながら歩いていたので、親切心から声をかけたのが始まりである。一度目に仲良くなり、二度目も一緒に金剛郭を彷徨く程度には仲良くしていた。

 

食事処では個室に通され、適当に注文を済ませる。

 

「それにしても最上が家老かぁ。大出世だな。」

 

「致し方なくですよ。随分と死にましたから。」

 

山本は酒を、最上は茶を啜りながら会話をする。

 

「金剛郭で初めて見た時、完全にお上りさんだったのになぁ。」

 

「晶さんだってあんまり変わらなかったでしょうに。」

 

「背はちっちゃいままだな。」

 

「縮めて差し上げましょうか?」

 

「怖いこと言う。」

 

「今やカバネも殺せますから、晶さんを縮めることなど、造作もありませんね。」

 

「ああ。金属被膜刀ってやつ?というか前線に出てるのかよ。家老なのに。」

 

最上が傍に置いた刀の鞘をこんこんと叩きながら言うと、山本は呆れた目線を向けてくる。

 

「致し方なくですよ。随分と死にましたから。」

 

「その返し便利に使うな。まあ探ったりするつもりで来たわけじゃないし、なんでも良いけどさ。本当に無事で良かったよ。」

 

「探るつもりがないのはわかってますよ。晶さん馬鹿ですから。」

 

「おいっ!」

 

最上と山本は食事と会話を楽しんだが、山本は酒を飲み過ぎて酔い潰れたため、最上が背負って操車場まで連れて行った。城主が真っ青な顔で謝罪したが、私事なのでと最上は怒ることはなかった。どうせ城主にこっ酷く怒られるのだろうなとわかっていて、自分の屋敷ではなく駿城へと送り届けた辺り最上も悪い奴である。

自分の屋敷に連れて行き、伝令でも出して家老の自分が自宅に誘ったと説明すれば、城主も怒れないはずであるがそれはそれである。

 

「最上様にご友人っていたんですね。」

 

翌日の最上の執務室で服部が吐いた言葉がこれである。

 

「失礼だな。顕金駅にだっていたぞ。全員墓の下だが。」

 

「いや、それはすみません。というか山本殿とはどちらで?」

 

「金剛郭だ。」

 

「じゃあ山本殿も結構偉いんですか?」

 

「まさか。金剛郭に連れてこられる程度ではあるが下の下だよ。」

 

「山本殿ってどんな人ですか?」

 

「お馬鹿な犬。」

 

「ご友人を言い表す言葉じゃないですよ。それ。」

 

「だが誰彼構わず懐く飼い犬みたいな感じだからな。馬鹿なのは本当だ。」

 

「しかし意外です。馬鹿より賢い人の方が友人にいそうですけど。」

 

「顕金駅の友人に頭の悪い奴はいなかったな。多少馬鹿馬鹿しいことはしていたようだが、馬鹿ではない。余所の駅なら馬鹿の方が気兼ねなく付き合える。余所の駅の賢らしい友人など疑ってかからなければならないじゃないか。あれはそういう範疇にないよ。」

 

最上は金剛郭で初めて山本に声をかけられた時に警戒していたが、警戒するのも馬鹿らしくなり仲良くし始めたのだ。山本は馬鹿正直なので疑う必要もなく、気楽に付き合える。

 

その頃山本は城主にこっ酷く叱られ、車庫で正座をさせられていた。

もう冬であるので、寒さに震えて正座をしていると、蒸気鍛治がぱさりと厚手の布をかけてくれた。

 

「かっかたじけない!」

 

「最上さんのご友人ですよね。昨日背負われてたの見ました。」

 

帰りがけに最上と山本の姿を見た鰍がくすくすと笑いながら言うと、山本は恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしながら俯いた。

 

昼時に最上が様子を見にくると、山本は朝からずっと正座をさせられていたが、蒸気鍛治らがなにかと置いていくので、色々と物の置かれる地蔵の様になっていた。

 

「随分とお供物をされてますね。」

 

「にやにやすんな。」

 

「元気そうで何よりです。袖の梅を持ってきたんですがいらなかったですかね。」

 

「下さい。」

 

「素直でよろしい。」

 

最上は袂から白湯の入った竹筒と、酔い覚ましの袖の梅を取り出して、山本の前に供え手を合わせた。

 

「お供えするなよ。」

 

「おや気を利かせて白湯を入れてきたのですが不要でしたか?」

 

「いや。要ります。要ります。」

 

さっさと受け取って、袖の梅を口に放り込んで白湯を飲む。

 

(ここで私が一服盛る利点はないが、よくもまあ、なんの疑いもなく薬を全量飲むなぁ。)

 

山本は馬鹿なので、最上を疑う気持ちが全然ないのだ。

 

「いやぁ。あったまる。」

 

「それは何より。それでは仕事がありますので。」

 

「あっ!ちょっとまってて!」

 

足が痺れたのか、よたよたしながら立ち上がり駿城へと入っていく。城主の怒鳴り声が聞こえるが、山本は謝罪の声を上げながら転がるように最上の前に戻ってきた。

 

「はい。これ。昨日渡そうと思ってたのにすっかり忘れてた。居住区に行った時は持ってたんだけどな。」

 

山本は小さな箱を最上に差し出した。

 

「なんです。これ?」

 

「和三盆の干菓子。混ぜ物なしの一級品だぞ。好きだったろ。それ。」

 

「…好きです。ありがとうございます。」

 

以前金剛郭で会った時に、一粒貰った和三盆で喜んだのを覚えていたらしい。この先カバネの掃討を進めればそのうち讃岐まで行くこともあるだろう。交易の商品にも入るであろう和三盆の干菓子であるが、備前の山本からまた貰うとは思わなかった。山本は中々に高い干菓子を、生きているかも分からなかった最上に買ってきたのだ。

 

「袖の梅では釣り合いが取れませんね。」

 

「良いんだよ。手土産なんだから。沢山食べて大きくなれっいったい!足踏むな!」

 

折角しおらしくしていたと言うのに、余計なことを言うので当然である。

 

「ありがとうございます。大切に食べますね。それでは。」

 

「こっちも袖の梅助かった。ありがとう!」

 

操車場から出て行くために背を向けた最上に山本は快活に礼を言った。

 

(生きてるかもわからなかった人間に和三盆か。馬鹿だなぁ。)

 

最上は機嫌良く城へと戻って行く。とはいえ最上は家老であるので、次に会う時に山本が馬鹿のままか、仕込まれてくるかを待つことにする。馬鹿のままでいてくれれば、友人のままでいられるだろう。

 

山本は次回会う時も、領主の言葉の裏を理解できぬ馬鹿のままであるが、未来の話であるので最上は知らぬことである。

 

 

下津井駅のいつか

 

「領主様にお前と飲んできて良いって言われたぞ!行こう!今日は私の奢りだ!高い店ではないけどな!」

 

「酒は飲みませんよ。」

(情報取りかな?)

    

(日常の馬鹿話とか、女の子の話)

 

「今日は楽しかったな!また今度食事しよう!」

 

「次回は私が奢りますね。」

(口が軽くなるように酒を勧めたりもせず、めちゃくちゃどうでもいい話しか振って来なかったな。やっぱり馬鹿のままなんだなぁ。)

 




領主は一応なんか情報引き出してこいよってつもりで送り出してますが、山本に期待しません。馬鹿なので下手に仕込むと縁を切られるから、だったら友人関係続けさせとけばいいか。なんか情報とってきたら褒めてやろう。くらいの心持ち。
むしろすげぇのが友達だなって引いてます。

ホモ君からすれば、金剛郭に連れてこられた程度で、まだ自分に取り入る必要はない頃に仲良くなったやつなので、お馬鹿なままでいてねって状態。

武士達「えっ⁉︎こないだ好きなもの聞いた時和三盆とか言ってなかったじゃん!(ギリィ)」

山本君は余所の駅の子なのでレギュラーにはなりません。

書き始めた頃はとりあえずアニメ本編完走してからアップすることしか考えておらず、こんなに続くとは夢にも思ってませんでした。
再興まで書く予定がなかったのに続けたため、ホモ君がめちゃくちゃ頑張ることになってしまってますw
自分でもゴールが行方不明になってますので色々とご容赦いただければと思います。

更新スピードが遅くなりますことをお知らせ致します。流石にテンションが落ち着いてきたのと、ネタ切れ気味のためです。日常話が多くカバネリっぽさもあんまりありませんし、かといって早々急展開は難しいのでのんびりお待ちくださればと思います。
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