【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】年末年始

煤払いを間近に控えた頃、蓬莱城は近くの駅に煤竹を売りにまわっていた。駅外で採ったものなので、かかっているのは燃料代くらいである。炭や木材、石炭なども積んでいるので煤竹はおまけである。

 

すっかり年末も間近となった煤払いの日。武士達は屋敷を使用人に任せて、城の煤払いである。それぞれが各所に割り振られ掃除に励む。

本来であれば煤払いの際、全ての障子や畳の張り替えであるが、顕金駅にはそんな余裕がない。

城の来客を通す可能性の高いところのみを張り替えることにした。

古い畳は阿幸地が引き取り、天祐和尚のところや、商家や民家で傷んでいるものと交換するらしい。

武士達の屋敷は後回しである。特に余所からの来客などなく、商家の方が余程余所からの来客があるのだ。

武士の屋敷は道元の屋敷のみ畳が入れ替えられたが、最上の屋敷ですら畳の入れ替えはされなかったので、武士達も全く文句は言わなかったし、元々長屋暮らしだったので特に入れ替えの必要も感じなかった。

 

かつて、煤払いの最中に胴上げをする不思議な催しが城では行われていた。胴上げに巻き込まれたらしい最上は多少警戒していたものの、その気配はないなと警戒を解いた。なにせ当時参加していた者はいないのだから。

煤払いのときに戯れとして行われる胴上げは、女中などに顔の良い武士などが狙われるが、元服前から城をちょろちょろとしていた最上は、男前というわけでもないのについでとばかりに胴上げされて遊ばれていたようだ。

菖蒲がころころと笑いながら、胴上げの話をバラしたせいで、最上は結局武士達に捕まり胴上げされた。来栖と吉備土が張り切ったせいで、天井に激突したのは余談である。

 

煤払いの後には、少しばかりの蕎麦が武士達に振る舞われ、煤払いの翌々日には、餅つきが行われた。体力の有り余った武士達がいるので人手には困らなかった。蕎麦粉やもち米は年末年始に向けて甲鉄城が、行商先で仕入れたものである。

 

「まさか再興した年に蕎麦や餅にありつけるとは思わなかった。」

 

「甲鉄城がちょっと足を伸ばして遠出してたのはこれ目的だったんだな。」

 

「流石に蕎麦ももち米も育ててなかったからなぁ。」

 

道元や最上は再興の年だからこそ、縁起を大切にしてかき集めたのだが、武士達は知らぬことである。

 

さらに年末が近づくと、商人が注連縄としめ飾りを城に献上し、蓬莱城で採ってきた門松用の松を受け取っていく。

城下では簡素ながら歳の市も開かれていた。生活用品が殆どであるが、しめ飾りや羽子板、凧なども売られ賑わいをみせている。

 

金剛郭なき今、年末年始の挨拶の為の金剛郭への訪問もないため、菖蒲はのんびりと城で過ごしていた。以前なら歳暮の贈り物などを持った上侍などが挨拶にくるので、年末はひたすら金剛郭に出向いている堅将の代わりで、にこにことしていなければならなかったが、今年は武士達にそんな余裕もないだろうと禁止にした。道元や最上は出来るだろうが、2人からだけ受け取るのも悪いと思ったのだ。

禁止にした結果、菖蒲はのんびりとした年末を手に入れた。これは来年からもやらなくていいんじゃないかな、などと考えたが、道元、最上、静から怒られそうなので口には出さなかった。

 

大晦日には武士達を呼んで年越しを迎えた。最上は子供達がいる上酒も飲めないし、仁助は楓と過ごすべきと追い出され、その他家庭がある者も同様で、独り身の武士達と菖蒲で酒宴も兼ねた年越しとなった。

菖蒲はがらんとしてしまった城で、年越しをするのは寂しかったので武士達を誘ったのだ。使用人も家庭のある者以外は参加であった。

除夜の鐘を聞き終えた頃解散となり、必要最低限の使用人や武士が留まるのみとなった。

 

 

日も昇り武士達がそれぞれ城へ挨拶へと訪れた。以前の武士達は下侍であったので年始といえば、上侍の屋敷へ年始の挨拶行脚であった。家主もいなければ、ろくな扱いも受けないが、行かなければ後から酷い扱いを受けるため、ひたすら挨拶にまわっていたのだ。今回は菖蒲と道元と最上の屋敷のみ挨拶の対象であったが、道元と最上には事前に来なくて良いと通達された。というのも道元も最上も立場が家老なので、一足先に菖蒲に挨拶した後、菖蒲の側に控えているので一緒に済ませてしまえという理由である。もし挨拶に行ったとしても、道元も最上も屋敷は不在で対応するのは使用人であるし、使用人も甲鉄城の頃からの民人であるので、城で挨拶を済ませてしまえば充分なのである。実際挨拶するわけでもなく、年始帳に記名するための挨拶など無駄とのことであった。

 

「こんな気持ちの軽い年始は初めてだな。」

 

「挨拶回りの苦行がないからな。」

 

「挨拶回りがないということは寝正月か?」

 

「菖蒲様の晴れ着姿美しかったな。」

 

「残念ながら去年は見れなかったもんな。余計にお美しく…あっ凧上がってる。」

 

武士達は城から城下の様子を眺めながらゆっくりと帰路につく。

昨年は他所の駅に嫌な顔をされながら、年末からお邪魔させてもらって過ごした年末年始であった。年末年始分の滞在日数を貰えただけで御の字で、甲鉄城でできる限り年末年始らしさを出そうと四苦八苦した。少量の蕎麦、お屠蘇あたりが精々であったが、羽子板や凧なども手作りして楽しんだ。

三が日を過ぎれば追い立てられるように出発した。

 

「順調に再興してるって気がするな。」

 

「去年の年始は今年を顕金駅で迎えられるとは思ってなかったなぁ。」

 

「だなぁ。」

 

顕金駅が新しい年を迎えた。




江戸時代の年末年始を色々調べてて

胴上げ?何やってんだ?ってなったり、挨拶回り大変だなってなりました。年始帳に名前書くらしいから行かなきゃバレるなこれって思いました。

正月の祝い膳。それは「食積(くいつみ)」(関西では「蓬莱(ほうらい)」)と呼ばれるもので、年神様へのお供えとして飾るだけで食べません。

ほっ蓬莱⁉︎ってなりました。そして見て見ぬふり。
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