【完結】カバネリ RTA 【金剛郭からの生存者】   作:神埼

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【小話】菜の花

「それでは本日は菜の花の種まきをします。」

 

蓬莱城と甲鉄城の面子が集められたかと思ったらこれである。

 

「なんで菜の花?」

 

「採油目的だ。」

 

無名の疑問に最上が端的に回答する。

 

「駅外にひたすら蒔くぞ。失敗したらしたでまあいい。駅内の畑は食糧生産のために使うから駅外で勝手に育って貰う。」

 

「駅外だからこの面子か。」

 

「そういうことだ。とりあえず耕耘機でざっくり耕して適当に蒔く。」

 

「いや雑すぎでは?」

 

「まあ育てばいいなくらいのつもりだから別に良い。行燈の灯油(ともしあぶら)は大体狩りで得た獣の油を使っているが匂いが大変不評だ。まあ贅沢言うなという話なんだが、今後を考えれば育てるに越したことはない。割と通電している場所が多いが、民人の家一軒一軒に配線は無理だ。当分は獣油を使わせることに変更はないが、民人が増えればそれも足らなくなるだろう。今から手をつけておいた方が良い。とはいえ菜の花栽培に割く人員などないのでな。とりあえず種を蒔いておくだけだ。今年採油出来なくても構わん。」

 

「確かに獣油は臭うよな。」

 

「魚油程じゃないけどな。あれは生臭い。まあ駅に篭ってからは魚は油搾る対象じゃないけど。」

 

駅に篭る前は魚油が一番安価な灯油だったのだが、安価なだけあり一番臭いがきつかった。ただ駅に篭るようになってから、油を搾るなどもってのほかであるため出回ることがなくなったのだ。駅内で増やす事のできる家畜から獣油を得ることが多くなり、獣油と植物油が主流となった。蒸気技術により電灯を使用できる為、行燈は主に配線の回されることのない民人が使用するものである。椿油や菜種油などの植物油を主産業としている駅も存在するが、限られた土地で栽培する上灯油以外の使い道があるため中々高価なのだ。

 

蓬莱城と甲鉄城の面子はその日から数日間ひたすら駅の周辺の伐採跡や線路脇をひたすら耕して種を蒔くことになった。菜の花が逞しく育ち夏には黄色い絨毯となるのは先の話である。

 

出雲にも採油を担当していた駅はあるが、運行表通りの交通が行われなかったことや、金剛郭に納めていた分が捌けなかったことで油を持て余していたため、昨年の秋の間に甲鉄城で買取り出雲の各駅に販売された。油は出雲の駅に回すことを優先とし、交易品として残ったのは高級な椿油のみである。凡そ半年流通が滞ったことから、大体の駅で油は不足していた。食糧を得るために駿城は出せても、油を得るために駿城を出すのは二の足を踏んだ結果である。

 

尚採油のために菜の花を育てている駅では養蜂も行われており、蜂蜜や蜜蝋も産業となっている。蜂蜜は年に一度、しかも巣の上部の一部を拝借する程度であるので、生産量はごく僅かであり、金剛郭があった頃は9割が金剛郭に納められ、蜜蝋は蝋燭となるため全てが金剛郭へと収められていた。

 

油、蜂蜜、蜜蝋を納めているため、米による年貢はなく、自駅で生産した食糧は全て消費することを許されていたが、作付け範囲が狭いため中々生活は苦しかったようである。金剛郭が崩壊したことで、今年は食糧の作付け範囲を広げる見通しとなっている。

 

出雲の各駅から駿城が来始め油が売れるようになり、採油担当の駅は賑わいを取り戻した。蜂蜜は将軍から褒美として下賜されるか、領主が薬として大金を払って買うくらいの物であったため、出雲の各駅の領主に販売されるのみとなった。金剛郭があった時よりは安価に販売されたため、出雲の各駅はこぞって購入して行き、余所の国の駿城はかなり値の吊り上がった蜂蜜に殆ど手が出せなかった。余所の国に対して値を吊り上げるのは、道元が要請したことである。

 

今出雲の各駅は、顕金駅にそっぽを向かれる訳にはいかず、余程の要求でなければ逆らう訳にはいかない。道元は何も嫌がらせでしている訳ではなく、まずは出雲を富ませ盤石にしておきたいのだ。顕金駅は戦力こそ飛び抜けているが、政治面では道元がいなければ弱小であるため、出雲全体をまとめることで、他の国の駅と渡り合うつもりである。顕金駅を頂点として出雲の国が纏まれば、多少力のある駅に何を言われようが撥ねつけられる。駅という閉鎖空間であるため、現代でいうところの経済封鎖が覿面に効くのだ。顕金駅単体ではなく、出雲規模となればある程度余裕ができる。

 

カバネに生活圏を奪われている中やることではないのだがやる奴はやる。道元も最上も思考がそちら側であるので、警戒するのが当然なのだ。小田駅を取り戻し食糧を生産することで、出雲は出雲の駅のみでそれなりにいい生活ができるようになる見通しだ。

 

昨年は顕金駅を中心に出雲のカバネが減り流通が活発になった。今年から目指すのは出雲を中心に周囲の国のカバネを減らし、流通網を拡げることである。




蜂蜜はニホンミツバチの設定で書いてます。年一しか採れない上に、巣を殆ど採るなら砂糖水入れなきゃならないようなので、上部のみ採取する方向。
小説を書けば書くほど、よく生活できてるなあの世界って思います。

次回100話目。よくこんな続いたもんだなって思ってます。
話を更新するとぱたぱたっとお気に入りが減ることが度々あるので、申し訳ねぇなと思いつつ、この程度が私の限界なので特になんかするとかはないです。するしないというか出来ないというかね。

それではまた次週。
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