百合エロゲー?の世界で偽狩人は生き延びる   作:レンガチェッカー

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12話

シグルドとリッター・アシュタロス(ノエイン)は苦戦を強いられている。

 

その相手はゼノオーガだった怪物。

変異した姿は人型の竜、ゼノモンスの淫魔化を超えたどこか清廉さすら纏って何故か聖職者に近い雰囲気を持つ。

 

体躯が少し小さくなったことだけが二人は緩和のように思えた。

 

 

『さぁ、やろうか』

 

アシュタロスは改めて剣を構える。

 

 

「やぁっ!」

 

距離を即座に詰めて鋭い剣撃が繰り出された。

 

それを真っ正面から爪で受け止め弾く。

弾かれた剣をエデンズリッターの飛翔能力でカバーし今度は突きを仕掛ける。

 

これも有効打にならず爪で逸らされた。

 

二撃、一歩も動かず逸らされたのだ。

エルアラドの最高戦力を相手にやってのける。

 

三手目は散らばった塵を巻き上げ姿を消す。

粉塵が晴れるとアシュタロスは消えてゼノオーガだった何かしかシグルドの目に映らない。

 

 

__大きな金属音。

突然化け物が振り向いて、背後からの目にも止まらぬ刃を受け止め、化け物の足場が受けた衝撃によって割れる。

腕が剣を受け止めた僅かな時間でアシュタロスは剣を引く。

 

 

シグルドの目には一連の動作が脅し、フェイントの類い並みに滑らかに見えた。

しかし金属音がそれを否定する。

 

 

凄まじい速度で斬撃を浴びせ、首から胸部を斜めに傷ができる。

アシュタロスは止まらず腰から大腿を刃で引き裂く剣筋、それを迅速な後退で逃れた。

 

『おもしろい!』

 

「面白いで済まされるとはな!」

 

 

壁を跳び、地を滑り、何度も散る火花、そこは強者だけの戦場。

人ならざる領域に踏み込み、凡人の介入を許さない。

 

 

 

 

 

 

 

速すぎて笑う。

とんでもなく速いんだけど。

 

遺骨使った?

常時加速状態、両方やれば実質フェアな対戦になるってこと?

どこにいるか、なんてのはわかるけど動きはブレるんだよね。

 

追っかけるのも一苦労よ。

 

屋根を飛び越えて反対側に行くのやめてくれないかな?

そんなに動体視力と身体能力ないよあたくし。

 

しかしバカ正直に追っかけても無理そう。

この調子だと来そうな進路を先回りするしかないよな。

 

 

行き先は予測できる。

広く比較的に建築物やら像やらがない場所だ。

壊れるものが少なくなるから。

 

 

実際、先回りしてる間にノエインの誘導でここに来ようとしている。

すごい音をたてて。

 

 

 

 

広場へ予め到着、問題はどうやって注意を惹くか。

閃光は二度目だし効果は薄いだろう。

 

今更ノコ鉈なんざ当てられる気がしない。

ポーションを投げてダメージを与えられる系の敵でもないし。

 

……散弾?

ダメージを期待してはダメ。

いや、でもゼノオーガの身体が縮んでるから撃ち放つパワーだけならアリだ。

要は隙さえ作ればいいのだから。

 

 

サイズで考えれば絶対に効く。

オークより一回りデカいくらいだし。

 

 

息を潜めて獲物を待つ。

まさか狩人(ヤーナム風)が本当に狩人(猟師)をやるなんて思わなかった。

真似事の上に更に真似事なんてジョークかな?

 

変な笑いが出るわ。

 

 

 

 

 

少しずつ剣を弾く音が大きくなってる。

近づいてる証拠だ。

 

何度も何度も音が響く。

 

 

 

「あぐっ!」

 

団長なんか攻撃受けたな。

それでもまだだ、ノエインは戦ってる。

いても邪魔になるだけ。

 

身を潜めてる間に色々なものが強風で飛んでくる。

広場に入って全力で戦い始めたか。

 

ならそろそろだ。

 

チラ見でおおよその位置が把握でき襲撃はいつでも射程距離に入ればできる。

ただし誤射には注意せねば。

 

 

 

_________

 

リッター・アシュタロスは化け物と交戦、ついに聖都中央から広場へ足を踏み込んだ。

化け物以外誰もいない。

民間人や騎士、シグルド、そしてセシリィも。

 

 

(ここなら全力で戦える!)

 

「吹き荒れろっ!」

 

常識を超える膂力が風の後押しでより出力が増す。

ここに来てアシュタロスはアクセル全開な状態になった。

 

『お前の本気か?』

 

ただ剣を振る、化け物の首をまた裂かんとばかりの一振りを。

まるで答えるかのように。

 

化け物はまた即座にその腕で受け止める。

 

 

『……おぉ!』

 

止めた腕から血が流れ、威力に関心していた。

アシュタロスは剣を引く。

 

切り口が深くなり、腕の血が流れる。

 

 

『行くぞ』

 

次の斬撃を放つアシュタロスとぶつかり合い猛攻の連撃で攻撃に転じ、轟音がとてつもない頻度で響く。

 

触れるもの全てを壊し吹き飛ばすのだ。

 

彼らの踏んだ地は荒れ散らかされ広場でなければ大惨事であるほどだった。

 

 

火花と土煙と舞う様々な物の破片の中で激戦が繰り広げられている。

 

『フハハハッ!強いな、お前はここらの縄張りの王か?』

 

「私は騎士だ。王ではないな!」

 

『むぅ、これほどの力があってもか。ならば王はもっと強いのか?』

 

「貴様に教える義理はない」

 

『……そうか。弱いのだな』

 

命のやり取りをする最中、化け物はため息をつく。

 

「っ_言わせておけばっ!」

 

アシュタロスと化け物が鍔迫り合う。

両者歯を剥き出し、互いを見据えて。

 

『何が違う?弱く愚かな者が偉ぶるなど気味が悪いだろうによぉ!』

 

「人の在り方など淫魔の貴様にはわかるまい!王は聡明な方だっ!」

 

『おうとも、理解できんなぁぁ!』

 

「なにっ!?__あぐっ!?」

 

鍔迫り合いを制したのは化け物だ。

振り払われたアシュタロスが塀に激突、穴を開けてようやく背が地に触れた。

 

 

『人の在り方と言ったな?ならば問おう、何故人間の信じる神とやらは淫魔を滅ぼさない?人間に仇をなす敵をだっ!』

 

穴の開いた塀ごと破壊してアシュタロスへ接近する。

 

 

「ぐっ……、だから我々の中から楽園の騎士が御身の力を借りて御身の代わりに戦う。力無き者を守るために」

 

『そいつは答えになってねぇな。神が直接手をかければ一発だろ?もとを辿れば何故淫魔はお前達にとって罪深い連中として生を得た?オレにはてんでわからん』

 

「何を!」

 

爆風の衝撃と疾き剣が一瞬で距離を詰め化け物を斬る。

化け物は横に逸れやり過ごそうとするが破壊した塀の破片が複数回激突し、回避が遅れて次の斬撃を受けた。

 

 

『だからこそだ!力が、それが神ではないのか!』

 

何度も轟音を伴う攻撃がぶつかり合う。

 

『神がいると押し付けられる程の強さが信奉者の長にあるのか!オレにはわかる。ないな!だから純粋な強さからかけ離れた歪んだ力で神がいると押し付けるのだろう?気味が悪い!』

 

歪んだ力、アシュタロスにはそれが金銭や世襲としてよぎる。

しかしそれらは国を支える基盤だと知っている。

 

戦場で迷う訳にはいかない。

故に割り切る。

 

 

「そうか、ならお互い様というやつだな!」

 

途端、激しい怒りの中で少しだけ口角が上がった。

 

再度攻撃が衝突し合う。

傷が開いたためかアシュタロスの額からは血が流れ出す。

 

 

「私は淫魔の生態そのものを気味悪がり否定する。お前は人の生態を気味悪がり否定する。……もう殺し合うしかないだろう?」

 

『グハハハハハハッ!いいな、とても良い!』

 

自然と両者は獣のような笑みを浮かべる。

 

打撃と剣撃の応酬が地を割り、風が吹き荒れかつては憩いの場だった場所は荒れ地へ変貌していく。

 

 

『力が伴えばそれが正しき答えだ。強いオレは勝つ!』

 

「いいや私が勝利を手にする!」

 

『「うおぉぉぉ!!!」』

 

ついには剣を捨て殴り合う。

剣戟では速度的に追いつけないからだ。

 

生身の人間なら風穴が開く一撃だろうとエデンズリッターなら性能によってどうなるかは変わる。

アシュタロスは元のノエインが剣を使う騎士だ、性能もそれに沿うように強化され張り合えていた。

 

 

血が滲み体力は削られ、されどお互いに引けない。

これが敵を倒す最大のチャンスだから。

頭部に直撃さえすれば勝つ。

 

互いの肉体組織を削り合う。

化け物の皮膚は割れて砕け赤い肉が剥き出しに、アシュタロスの鎧も割れて柔肌は次から次に抉れる。

 

血溜まりが足元に目に見えるほどできていた。

 

 

 

 

その時は訪れる。

 

 

「っ!?」

 

アシュタロスの変身が解け始めた。

王城に突如発生したオークなどと戦い続け英気を養う時間がなかったのでエネルギー切れを起こしたのだ。

 

『ハァッ、ハッ、ハアッ、エデンズリッターの力が消えかけてるな。オレ、の勝ち、だぁ!』

 

「まただっ、まだっ!グハッ!?」

 

化け物は渾身の一撃のために拳を振り上げる。

その間、アシュタロスの打撃を受けてもよろけるほどのダメージはない。

いくら人の域を超えていてもだ。

 

 

トドメの拳を振り振り下ろさんとする、その時。

 

 

火薬が破裂したような音が鳴った。

 

『!?』

 

化け物は大きくよろける。

 

「おぉぉぉぉ!!!」

 

血塗れの狩人が背後から周り込み化け物の首へ腕を突っ込む。

そして歯を食いしばり悲鳴を堪えてる。

 

 

「_うぅあぁぁぁ!!!」

 

アシュタロスは剣を引き寄せ化け物の脳天に振り絞った力で剣を打ちつけた。

 

『ア、アガッ、お、おま、え……』

 

シグルドが突き刺した腕を首から引き抜き、払う。

栓を失った首から噴き出す鮮血が二人へ降りかかる。

 

 

 

『きえ……そ、ウだな、負け、タか……』

 

「……あぁ」

 

ノエインが小さく答える。

ついにアシュタロスは変身が解除された。

 

彼女は立つ気力も残ってないのか座り込む。

 

『負、けたカらに、は、すべて、ヲ捧げる…………ゼノバイド、オレたち、を呼び、ダしたやつら、の、ことだ……』

 

「……ゼノバイド?」

 

『……そうだ。アとは、わかラん。せ、せいぜい……つよさを、おし、つける、のだな……』

 

血に濡れてなおも美しい化け物はついに瞼を閉じて動かなくなる。

 

 

「ゼノバイド、秘密結社の中にそんな輩がいたな」

 

「あの、ノエイン様。御身体は大丈夫……ではないことはわかりますが何か手伝うことはございませんでしょうか?」

 

「情けない話になるが肩を貸してはくれないか?血など気にはしないぞ。私もこの通り血潮がこびりついているからな」

 

「いえ。では右側から失礼します。右手がこう、首に突っ込んだばかりにアレですので期待はどうかご容赦を」

 

シグルドが肩をかして歩けるよう手伝う。

 

「はは、許すさ。それによくやってくれた。雑に加勢されても困る。本当に丁度よかった」

 

「貴方様にそう言っていただけるのなら」

 

「後はそうだな……私があの戦士と交わした言葉を聞いているのなら今すぐ忘れろ。いいな。」

 

少し迫力のある声でシグルドへ命令をする。

 

「かしこまりました」

 

「それでいい」

 

 

「……治療用のポーションありますので使ってください」

 

「貰おう。かたじけないな」

 

ノエインは受け取ったポーション瓶の栓を抜き、中身を頭から被る。

中の液体が顔についた血液を落とし、痛ましい数々のキズが姿を表す。

 

「まだ痛むな、こればかりは仕方ない。感謝するぞ」

 

「いえ、及ばず申し訳ないです」

 

本来はシグルドのようにある程度の骨折や外傷を治療できるはずのものがノエインの場合、ダメージを受け過ぎて生命維持に回復力が充てられた故の結果である。

 

 

 

そして歩き出し、ルシフェル、シルヴェールと合流するまでの間、二人は他愛もない話をしながら歩くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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