百合エロゲー?の世界で偽狩人は生き延びる 作:レンガチェッカー
なんでよ……どうしてお偉いさんの会議に出ているんだ自分は?
お腹痛い……
ノエインは先に行っちゃって指定された座席に座ってる。
ここでも助手的な人と事務作業を__はっ!?
なぜいる!?
ないのは承知、それでも万が一にでも目をつけられないようにしなくては。
前にノエインがしてた諦め顔に自分自身がならないために。
でも頭は下げる。
なんたっていいところのお嬢さんだぞ。
「シグルド殿、こっちだ」
「……はい」
あの人と目を合わせるな。
軽蔑とか差別とかじゃなくて純粋にトラブルの回避なんだ。
目に見えた問題を解決せずにぶち当たるのは愚かな行為、避けるべし。
「そこに座ってもらおうか」
「では失礼します」
あ、いい椅子……クッションがとかじゃなくてさわり心地とかがいいな。
「目を通してくれ。……一応、機密情報とだけ私からは言っておく」
「ありがとうございます。騎士団長様の失態にならぬよう努めます」
紙が渡される。
会議の内容と流れか。
機密情報……何かあったら首が飛びそうだ。
出席する人物はエルアラドに住んでいれば聞いたことのある人間ばかりだった。
……教会所属の人間が今回はいないみたいだ。
強いてであれば王女セシリィだけか。
もっとも彼女は王家勢力の人間だけど。
「そうしてくれると助かる。……さて、シャンシャット。そろそろ頃合いだ、下がれ」
「わかりました。では」
はぁ……危なかった。
相手さんだって気にもしていないな。
それでいい。
書類に目を通す間にお偉いさん達が次々と集まる。
来るたびに頭をペコペコ下げて最低限無礼がないようにした。
「一つ下らないことを聞くがシグルド殿の自宅は広いか?」
何を急に?
「……いや、前にセシリィ様から地域住民の保護を自宅で行ったと耳にしてな。疑う訳では無いが気になってな」
そういうことね、わかったわ。(理解していない)
「あくまでも市民の中ではそれなりに、くらいですね」
「ふむ……もしも、だ後から誰か住むとしたら何人程住まわせられる?もしもだ」
「2,3人はまずできるかと存じます」
「そうか。……どうでもいい話をして悪かった」
そんなに気になるかな?
自分にはわからないことだ。
「いえいえ」
お偉いさんが集まる中、最後にセシリィが会場へ来て会議が始まる。
「__以上が襲撃から7日目までの被害と復興の報告となります」
高貴な身なりをしたおじさんが報告し、席に座る。
「ありがとうございます。では次に聖騎士隊からの報告をお願いします」
セシリィの一声で周囲からノエインへの視線が集まる。
ついでに胃が痛い。
ノエインは起立し、
「はい、それでは私達で聖都襲撃に関する調査した結果を報告させていただきます」
覚悟を決めろ、証人としているんだ、ここに。
「初めに先日、詳細だと3日前までで把握できていることとして仮称、ゼノバイドが敵対勢力であること、聖都に多数配置された魔法陣の起動で襲撃をしていること、敵の死体の残骸から人為的かつ高度な処置をされている者が一部いたことが判明していること、この3点のみしかわかりませんでした」
一息置いて、
「しかしある情報を新しく入手してます。拠点と疑わしき潜伏場所の情報です」
「なんと!」
「おぉ……」
小さい声だが驚く言葉が聞こえる。
「私の隣にいる者が情報提供しております。……地図を持って来い」
「はっ!」
部下の騎士が会議場のテーブルに地図を広げノエインがある地点を指差す。
「……この洞窟周辺を根城にしてると報告を受けました。シグルド殿、状況の説明を頼みたい」
決心をして席を立つ。
「かしこまりました。__改めまして私は此度証人として参りましたシグルドです。挨拶は皆さんのお時間を割くことになりますので割愛させていただきます。本題であるゼノバイドが設置したと思わしき拠点ですが、」
小さめのビンを取り出し開けて、テーブルに置く。
「まずその地に足を運んだ際に入手したオークの耳、右側計3体分です。証拠になるかはなんとも言えませんが」
「むぅ」
「聖都襲撃のものより当然新しいな」
「……やはりいるのか?」
次々とお偉いさん方から言葉が出る。
「状況報告に戻りますが、住処となろう洞窟の状況を確認したところありえないほどにいました。入口だけで素人目でも既に100を優に超えてました。内側にはもっと多くの淫魔がいると推測したほうがよろしいでしょう」
伝えた言葉は口裏合わせをしているノエイン以外、深刻な表情を浮かべる。
「そこで私は気になる点を発見しました。謎にかなりの種類が生息していた事です。縄張りや食料で考えれば共存はありえない話です。それはつまり」
「__取り仕切る手腕を持つ何者かがいることになる」
「左様でございます」
ノエインが結論づけるように言葉を挟む。
正直ありがたい、『騎士団長の私が聞いているのだ』と不快感なくここにいる全員へ伝えてくれる。
ないとは思うが気が抜けてる人がいれば喝が入るだろう。
「しかしオーク以外の目に見える証拠が用意できず信用には足らないといった意見が出るかと思われます。……私一人で洞窟へ退治に行かなかったことへの誹りは今ここで受けましょう」
「……」
「……」
「……」
しん、と会議場から声がなくなる。
「……では最後に確認した淫魔の種類になりますがオーク、オーガと先日聖都に来た改造痕跡のあるオーガ、詳細不明な大型のナメクジ、同じく聖都に来た例のコウモリ、人の背丈と変わらない高さを持つカブトムシ型の昆虫、ツル植物型、私が確認しただけでもこれだけいました。……素人目ですが早急な判断が必要となるでしょう。私めから伝えさせていただく内容は以上となります。ご清聴ありがとうございました」
「……はい。それではノエイン、あなたならどうしますか?」
セシリィの問にノエインは答えた。
それは予め用意していた答え。
「私は制圧すべきと申し上げます。我々聖騎士隊の被害は軽微、次に戦うことになるのであれば市民の被害がない土地で戦うことが好ましいですので、どのみち避けられない戦闘なら、と考えておりました」
待って、(結果的には)軽微なんだよ。
一番団長がケガ……なんなら重症だけど戦地で治療が完全に済んだら例え重症でも軽微になるんだ……こわ、報告書どないなるよ?
労災にならない労災なのか?
そもそも労災かもわからないけど。
「……ではその方針でお願いします」
「かしこまりました」
そりゃケダモノいるのに無視はないしなぁ。
しかしこれでなんとか幹部ルドルフには手が届くだろう。
それはそれとして既に辛いのだが?
「他に報告、提案が必要な出来事がありましたら挙手をしてください」
誰もいない、と。
正直ここにはやばい貴族とかスパイとかいないしそんなもんだろう。
「わかりました。では本日の議題を終了とします」
お、おぉ、終わったぁ……
あとは機会を見計らって解散っと。
緊張感すごいしもうとっとと帰宅__
「シグルド氏は残ってください」
「あ、あっ、かしこまりました」
えぇ、なんかあったかな?
「(それを驚くか、報奨の件だ。……ふふっ、自らの利益を忘れるとは面白いな)」
「はい、すみません」
ノエインさん解説ありがとう。
あったね。
緊張で本当に忘れてたよ。
本物シグルドのメンタルが羨ましい。
______________
会議に出席した面々が退出し、ついにセシリィ、ノエイン、護衛の騎士と兵士、書記担当が会議室に残る。
「……さてシグルドさん。以前よりノエインから話は聞いている前提で進めますが此度も上げた功績、行いを称賛し、国王陛下より報奨が出てます」
「はっ!」
早めに膝をつけてへりくだる。
長いものには巻かれよ。
下民根性がやれっていうんだから。
「まずは勲章と金一封を贈呈します」
両方を黙って受け取り頭を下げる。
「次に問いに心して答えなさい。今会議で取り上げた反攻作戦が開始された場合、貴殿は戦地へ赴き、戦いますか?」
答えは当然参加、じゃなきゃここまでやった意味がない。
出せる民兵を強制徴収をしないあたりセシリィ王女は甘い人間だ。
綺麗事で勝てる敵じゃないんだから。
「勿論でございます」
「……それでは反攻作戦にて所属を一時的に聖騎士団として戦地での裁量権を一部行使可能にします。」
つまり上官の命令とは別行動も取れるようになる訳?
一人遊撃隊みたいな?
「はっ!!」
__悪寒、今よぎった!?
後ろ?後ろにはノエインとその他数名だけだぞ?
嫌な予感がものすごくしているっ!
「今後とも貴殿の活躍、期待しております」
「ははぁーっ!」
善意と悪意の押し売りとでも言った感覚がどうにも付きまとう。
それが何かは……わからないが。
シグルドは気がつけなかった。
ノエインの『選択したお前が悪い、許せ』と心の中で吐露していたことを。