百合エロゲー?の世界で偽狩人は生き延びる 作:レンガチェッカー
シャット姉妹が来てから数日、そして反攻作戦前日。
彼女達とお馬さんで王城まで向かうことになった。
いわゆる決起集会兼出撃準備だ。
大量の荷物を積んだのでお馬さん達には申し訳ない。
自宅でイルヴィナと最近連れてこられたニワトリ三羽を待機させて姉妹と共に移動している。
ニワトリの1羽にガーリック1世なる名前を付けていたのを聞いた。
今後重要な名付けをする機会があれば絶対に参加はやめてもらいたい。
パカパカと道なりを移動し聖都へ入ると聖騎団団長ノエインがこちらも乗馬して待機していた。
彼女はなかなか目を合わせようとしない。
それとは裏腹に顔色はいつもより良さげ。(察し)
あとナイスバディ。
「ノエイン様〜!」
「お久しぶりです!」
「ん…んんっ。久しぶりだな」
意識を切り替えたのかいつものすまし顔に戻った。
「シグルド・アスフォディル、ただいま聖都に到着しました」
「……殴るなら宿舎の中にしてくれ。ここは人が多い」
「私は誰かに殴ることができるほどできた人間ではないですよ。それに少し(なんて誤魔化せるわきゃねぇくらいとんでも)びっくりしただけですから」
「……そ、そうか。ならば引き続き頼りにしてくれ。行くぞ」
馬を旋回させ王城の方角へ進む。
「「はい!!」」
「わかりました」
道中で他の聖騎士団の面々が王城へ向かうため市民が式典かのように集まっていた。
『父ちゃん!聖騎士団の人達だ!』
『本当だ。ついに悪いやつらの尻尾を掴んだのかもな』
『キャ〜、ノエイン様よぉ!!!』
『頑張ってくださぁい!』
王城へ向かう途中でシグルドはノエインに質問する。
「ノエイン様。こうも人々が集まるのでしょうか?」
「今回は反攻作戦を開始するため噂程になるが事前に伝えている。シグルド殿が私達といることもセシリィ様の国民に対して行われた宣言の中に貴公の名が聖騎士団として入っているからだ」
ついでに今後のことも考えてな、と付け加えた。
回答を受け、シグルドは難儀に思った。
情報を民へまともに通達せず戦えば結果がどうあれ非難される。
情報を民へ通達すれば敵対勢力の耳に入る可能性ができる。
「そうでございましたか。聖騎士団は凄まじい人気ですね」
「それはそうだが耳を傾けてみろ、シグルド殿も応援されているぞ。……ふっ」
ノエインに言われたままに人々の声援を聞くと。
『勇ましく凛々しいお姿だわ、ノエイン様!』
『んん?あの鎧をつけてない人は誰だ?』
『鎧を着けない戦士といえば専門のハンターだろ。セシリィ様やノエイン様と肩を並べて闘ったらしいぜ』
『頑張って!にーちゃん!』
シグルドは見つけた。
聖都が襲撃されたとき、シルヴェールが助けた少年。
あのときの少年が手を振ってくれた。
覚えてくれていたのか、と泣きそうになる。
「そのよう、ですね」
「泣くな、まったく。これから結集、出撃だろう」
「……はい」
観衆に見送られながら城門へ向かう。
「……」
「……」
「「ねぇ……」」
「……お姉様からどうぞ」
「ありがとう、シャン。それでさっきノエイン様が言ってた殴るなら……ってなんだったのかなぁ?」
「ただの性癖、もしくは何か相当後ろめたいことがあったのでは?」
「後ろめたい……ノエイン様にそんなことが?」
「あの人が、ねぇ」
ルンシャットとシャンシャットは渡した指令書を読んでノエインはいろいろと無理して小隊を作ったと思っている。
それは間違いない。
彼女とて姉妹の能力は買ってるのだ。
ただ無理をした理由の何割かが自分の精神衛生上の都合である。
「シャン、どうしたの?」
「……偶然だと思うけど今日はカラスが多くありませんか?」
「え?………本当ね気が付かなかった。朝から誰か野鳥に餌をあげたのかな?」
「餌で釣られてにしては一箇所に集まってないですね」
カラスは溜り場を作ってるわけでもなく点々と屋根に止まったり羽ばたいている。
2つの疑問が本人達の中で解決せずに王城へ向かうのだった。
______________
城壁にたどり着くと先に到着したらしい聖騎士団の団員と兵士ではない関係者、一部のお偉いさん、そしてここから最奥に王女のセシリィがいる。
集会の中である人物が紹介された。
なんとシルヴェールが来ていたのだ。
ナイスバディ
……?
ナイスバディ?
セシリィは特にシルヴェールに対して気にする行動は取っていないがなぜか、何かずれている感覚にシグルドはなった。
先日会った時とは装備が違う。
大剣から変わり刃が短め、肘から手首辺りまでの長さをした双剣に変わっている。
セシリィからの短い紹介とシルヴェールがシグルド小隊(仮称)に加わること、集会の話が終わりいよいよ出撃となった。
当のシルヴェールにも一言くらい挨拶をしなければ失礼だろう。
彼女も自分に気づきこっちに来いと手でジェスチャーをしているので寄る。
「お久しぶりです」
「えぇ。しばらくは手紙でやり取りだけだったわね」
「?」
手紙……彼女から貰ったことも送ったこともない。
最近やり取りしてたのは……ノエインとジリアン。
眼の前の彼女は偽シルヴェールってこと?
だとしたら中身は状況からジリアンだろう。
ノエインは近くにいるし。
少しでも偽物だとバレないように本物のシルヴェールに話す口調で会話を続けなくては。
「__その節は世話になりました」
「いいわよ別にお礼なんて。それにまだ貴方の敵も倒してないわ」
「それでも貴方が探してくれたからここまでこぎつけることができたので」
「……そう」
「(ところでここだけの話ですが近接戦もできるオールラウンダーだったりします?)」
「今は
「そうでしたか」
つまりあの人狼ちゃんと出会って後衛になったと。
ルドルフ戦は最悪前衛4後衛0、状況によってその他聖騎士団員介入で前衛が増えると、
……脳筋編成かー。
「それと補給用の物資ですがそちらの説明は追々します」
「了解、隊長さん」
想定とズレていたが彼女なりに考えた結果だろう。
首を狙われてる魔女がわざわざ自分を晒す訳がない。
辻褄合わせを考慮しなかったアホな自分に落ち込む。
「戦士ですらないのに小隊長なんて、困ったものです。本物の素人ですからね……」
それでも現状用意できる手札は揃えた。
エデンズリッターを含む聖騎士団に最後の魔女、大量の物資、出来損ないの狩人。
敵はルドルフの他にもたくさん。
ワンパンKOレベルの奴らがである。
だがこんな所で倒れるようじゃクレセアに顔向けできない。
「何かあればその都度指摘でも提案でもお願いします」
「任せてちょうだい」
何度目かもう覚えていないが頭を下げて頼み込む。
彼女に呆れられてないのは奇跡ではないだろうか?
「一ついいかしら?」
「何か疑問があります?」
「疑問じゃないのだけど……」
シグルドは彼女の要望を聞く。
「__お願いできる?」
「はい。こちらでやりましょう」
一方、聖騎士姉妹は__
(お姉様)
(えぇ、シャン……)
活動報告をしていた。
相手は団長のノエインだ。
「さて、お前達。シグルド殿の下へ向かわせたわけだが。シグルド殿に対し何か疑問に思うことはあったか?」
「……特に何もないですね」※淫魔在住
「隊長も悪い人ではなかったですし」※一応罪人
「ふむ。問題はなかったと」
「「はい!」」
「__はぁ。ならどうして気色の悪い笑みなどするのだ?」
「「ギクッ!?」」
ノエインから見れば姉妹は不正をなぁなぁにしようとする商人や貴族のそれだ。
「ほぉ。正直に吐けばただのド忘れとして目を瞑るが?とっとと吐くといい」
「「…………」」
3者それぞれが笑顔と沈黙。
しかし長考する余裕などない。
シャンシャットが意を決して、
「い、い言えません」
「シャン!?」
「そうか。なら「もう団長がこの先結婚しそうにないから私からお先にゴールインしてもいいかなぁなんて思ってシグルド隊長といい感じになっちゃおうとしてると言えません!!」…………は?」
予想から外れた回答に思考が停止する。
「だ、団長がもうご結婚されていれば私だってこそこそする必要ないんです!」
「な、ななな何を言うんだ!?結婚!?」
(シャン!)
(お姉様、追撃のアタックです!)
「……え、まさかノエイン様もシグルド隊長を狙ってます?ラブをコールですか?」
「そんなわけあるか!どうしてそうなるんだ!?」
「違うのでしたらお相手さんがまとも方でしたら誰でもいいので早く世帯を持ってください」
「ですね。後がつかえているので超早めでお願いします」
「〜っ!!」
痛い所を突かれたかのように青筋をたてる。
姉妹らは勝利条件の達成を身に感じた。
「……次の訓練はいつもの倍気合を入れろ」
「望むところです!」
「任せてください!」
((うぉぉぉぉ!!!突破ぁ!!!))
やけに威勢のいい姉妹たちの笑顔を背に執務室へノエインは向かうのだった。