百合エロゲー?の世界で偽狩人は生き延びる 作:レンガチェッカー
出撃してから三日目
最初は騎士団の人達も「淫魔はおそらくいるだろうな」くらいで移動してきたが目標地点より遠い場所でオークを何度も駆逐することで敵の存在について、それがいると確信を抱く。
行軍がシグルド単騎偵察より遅くなり三日目で到着できていない。
これは出発地点が郊外ではなく聖都から、他に運ぶ物資が多いことや遭遇する敵が増えて勢力圏が広範囲化、それによる足止めが重なったためである。
物資に関しては自分の責任でもあるので申し訳ない。
不幸中の幸いとして、ゼノモンスや偵察タイプの敵が現れずその場で始末できる連中しかまだいない。
「__シグルド」
「……!はい、すごい数いますね」
この日でようやく最初に退治したオークがいた地点へ到達できた。
探知の魔法におびただしい数の反応、掛かった。
指揮官がいない洞窟の外かつその状況で大規模に群れる。
十中八九オークの群れだ。
……ジリアンさんや、自分の場合は羊皮紙消費して魔法を使ってるの。
使った魔法より早くわかるならこそっとでも言ってほしいな☆
「数は千体を優に越す、じきに目視できる距離に到達!」
「了解した。総員戦闘準備!!!ドゥークロイ、指揮を任せた」
「はっ!」
ノエインが部隊の先頭へ向かって駆け、その景色を視認する。
軽い傾斜となった地形を登るとオークの群れが闊歩していた。
「この規模ならざっと一万か。問題ないな」
後から追いついた隊員達は傾斜に乗らないよう散開して確認しオークを視認。
相手には気づかれず先制が確実、絶好の機会だ。
「私が直行して敵を掻き乱す」
「後方部隊は早急に弓を構えろ、上手くいけば掃射2発は堅いぞ!」
ドゥークロイが指示を飛ばす。
騎士のおよそ半分が弓を装備して構える。
「あ、隊長は弓を持たなくて大丈夫ですよ」
「弓使えないです」
「……なんか、ごめんなさい。狩人さんと聞いているのでてっきり……できるかと」
「うっ!?」
ルンシャットのうせやん、となってる反応に謎の精神的ダメージを受けるシグルドだった。
「総員第一射、弓を絞れ……放てぇぇ!!!」
剛弓で射出される矢が空へ昇る。
「ボサッとしてるヤツはいないかぁ!第二射準備!構え!」
皆が手慣れた様子で即座に弓を構える。
「放てぇぇぇ!!!」
背後で騎士達が矢を放ち一射目が敵にも観測できる頃合い、ノエインは意を決した。
「禁じられた知識、神樹セフィロトよ……我らの主を護る為、この身へ禁断の
全身が弱い光に包まれる。
鞘に収められた剣の柄を握り風が吹き、草や地が
「エデンズフォース、オーバーロード」
鞘から剣を引き抜き光が爆ぜる。
「__リッター・アシュタロス、参る。前哨戦だ、蹴散らすぞ」
先陣を翔けて突っ走りオークの軍勢と今かち合う。
___________
それは突如やってきた。
『なんだありゃ?』
黒い小さな棒らしき何かが空を動いている。
一つや二つなんてものじゃない。
オーク達目掛けて突っ込んでくるのだ。
『ヤベェぞ!ありゃ矢だ!』
『どけぇ!』
多少頭が回る個体から味方のオークを押しのけて後退、遅れて気づいた時には既に遅かった。
一斉に放たれた矢は面状に、それは巨大な布でも被さるように敵を包み込む。
聖騎士団用に調整された剛弓、変態仕様と称しても過言ではない弓から放たれる一撃は、そこらの人間を上回る力を持ったオークを容易に屍と変えた。
獣の悲鳴、慟哭、築き上げるのは屍の絨毯。
『来やがったな!ぶち殺す!』
『『『オォォォォ!!!』』』
しかし彼らはケダモノ、同類の死を恐れども無情に踏み越え仕掛けた輩を襲うため走る。
反撃に出たのも束の間、また黒い物体が空へ昇る。
見てしまったら何が起こるかわかってしまう。
『テメェら、止まったら終わりだぞ!』
一射目から学習したオーク達はより接近へ行動を移す。
無論その行動は矢を避けることに繋がる。
思考が止まった者から矢の餌食、動いた者達は矢による死の命運を避けられた。
それが正解かどうかであれば否、
彼らの天命は彼らじゃ選べず楽園の騎士が示すのだから。
騎士団で先陣を切るはアシュタロス、その剣が向く矛先はオーク達の身であった。
「挨拶代わりだ、受け取れっ!」
空気が揺れる。
構えた剣の刀身が鈍く光り、輝きは増す。
まだ距離があると思ったオークらはここで詰み。
塵を巻き上げ灰色の暴風、何をしようとしてるかようやくわかった。
暴風を引き起こす剣が振り下ろされる。
先頭を走るオークは風が吹くことすら知らずに散った。
『ハッ__』
風の濁流が一気に飲み込む。
正面を除く様々な方向に吹き荒れる暴風がオークの群れを弾き飛ばす。
各々が何かの冗談なぐらい飛ばされただ死ぬ。
ある者は真上に飛ばされ自由落下の転落死、後ろにあるいは横に飛ばされた者は途中で地面に当たり、その間も引きずられ続けミンチになるか岩盤に激突して死亡。
結果、陣形もクソもなくなる。
「団長に続けぇぇぇ!!!」
聖騎士団からの掃討、特に軽装で足回りの良かった
混乱する群れへ突っ込み、双剣が手始めに身体を削ぐ。
『???』
両手首が無くなったことを認識する瞬間には喉が鉈で抉られ持っていかれる。
首から血を吹き出し、支えを失った人形のように倒れた。
後ろのオークが慌ててメイスを叩きつける。
虚しく地面に穴を開けただけ、振り上げようとすると武器を握る腕が地面に落下。
『はえ?』
死角の後頭部を鉈が破壊し力尽きる。
オークの大剣が振るわれると聖騎士が盾で止めた。
力の張り合い故の硬直が始まろうとしたときオークの脚はノコギリ刃で引かれ、控えていた聖騎士が槍で心の臓を穿つ。
オークは意図した連携を不得手とし、翻弄される。
他の聖騎士達も本格的に加わり掃討が始まった。
オークの武器を折り、身を破壊していく。
戦いではなくもはや処刑、それほどまでに一方的にな戦いとなる。
これ以上羅列することがあるとすれば運良く最後まで生き残った1体のオークは絶望していたことくらいだ。
______________
オークの軍勢を蹴散らし、件の洞窟が見えてくる。
入口でうじゃうじゃと化け物が彷徨く。
反攻作戦は洞窟内へ入る突撃班と入り口からの挟撃を防ぐ待機班の二手に分かれ、行われる。
副団長ドゥークロイを含めて半分は待機。
アシュタロス(ノエイン)、シグルド小隊、もう半分の聖騎士で内部に挑む。
軽快だったオーク戦とは打って変わり大きな荷物を背負ったシグルドが伝える。
「では目眩ましをしますので発光が終わってから突撃になります」
「む、聖都で使ってたあれか。やるといい」
「はい」
シグルドは一つの瓶を投擲する。
瓶は弧を描き洞窟内へ吸い込まれ__
「光ります!」
1,2秒程、目を瞑っても太陽を直視したような凄まじい光が洞窟内を照らした。
『ぐぉぉあぁっ!?』
『キシャァァ!?!?』
『……!?!?』
内部で悲鳴が聞こえる。
「入り口付近に罠はありません、行けます!」
「私に続け、突撃せよっ!」
再びいの一番にアシュタロスが突貫し正面のオークへ斬りかかり、頭部を守っていた腕ごと首を裂く。
入り口のオークと同様に洞窟の内部で悶える化け物共を易々と屠り後はゼノモンスが数体、必然的に残った。
『急にとんでもなく光りやがって。オメェらの仕業かぁ!』
『…………』
ゼノオーガ、それと植物タイプのゼノモンスの1種であるゼノプラントが立ちはだかる。
「__ふっ」
アシュタロスは鼻で笑う。
『あ?何がおかしい?』
「この戦いで死ぬかもしれないと悩んだがどうも考え過ぎだったみたいだ」
『さっきから何だよ気持ち悪ぃなぁ。ブチ犯すぞ?』
「わからないか。わかったところで心の底からどうでもいいが……『想定していたより弱い』ということだ」
『チッ、ナメやがって!』
腹を立てたゼノオーガが拳を振るう。
一跳びで距離を詰めて巨腕の鉄槌、対するアシュタロスは少し屈み剣を担いで構える。
聖剣と巨腕が交差、
『____ぐぁああっ!?!?あぁぁぁ!?』
拳を含めて前腕がバッサリと縦に裂けた。
遅れて裂けた腕の間からどっ、と流血する。
斬られた腕を抑えてしまい無防備を晒す。
当然、この行動は死に直結。
「沈め」
怪物の背に剣を突き立て、内から暴風を引き起こせば、
胸部が弾けた。
『カハッ……ァ』
ゼノオーガの生命力とて心臓を失えばどうにもならない。
ただ屍となる。
「次はあれか」
ゼノオーガと戦闘している間、聖騎士達とシグルド小隊がゼノプラントと交戦中だった。
数秒後植物の化け物は凍りついて活動を停止。
『あ……なんか、ごめん』
一瞬で終わって敵に対し、申し訳無さそうにしていた。
その様子に眉をひそめる。
(……何を競おうとしてるのだ私は、そういった倒し方もある、それだけだろ)
アシュタロスの心には消化不良気味な感情が少しばかり残るのだった。