百合エロゲー?の世界で偽狩人は生き延びる 作:レンガチェッカー
酒場経由でシルヴェールに依頼をしてから後日、場所は淫魔の出没があった郊外から遠いエルアラド聖王国の小規模な地。
そこを普通の街と言うにはいろいろ問題がある。
捨てられたゴーストタウンと表現するのが妥当。
二人ほど人がその廃墟の町へ向かう。
挨拶代わりに血跡、倒壊した住居、焼き捨てられて風化した道、吊るされた悍ましい何か。
淫魔の発生する原因が魔女の仕業だとまことしやかに囁かれた時代、情報を鵜呑みしたのか、あるいは邪魔だったのかエルアラド聖教の連中により魔女狩りが行われた禁忌の地。
真相はただの噂でしかなかった。
今では知る者も限られた昔の話だ。
「一般的には禁忌の地などと言ってましたが実際に足を運ぶと……なんと」
「これがエルアラド聖教のかつてやったことさ。」
シルヴェールと共に禁忌の地へ到着し周囲を見たらそれは酷いものだった。
なぜ彼女が真実を知っているかは知らないが。
砕かれ破壊され燃やされたまるで蹂躙された土地のように思える。
「正義と信じ人間性のままに突っ走った果てがこれですか」
「……かもね」
めちゃくちゃに破壊された街ではある。
しかし死体は反対にあまり見つからない。
きっと生き残った誰かが弔ったのだ。
もうここは危険地帯だ、備えは必要。
持ってきた探索用の魔法が込められた羊皮紙を起動させ、周囲の情報を確認する。
生きているそれなりに大きさのある生物を探知することが可能となる効果を持つ。
「シルヴェールさん」
「ん?」
「あの壁の向こうに何かいます」
指を指して方向を教える。
距離にして約200メートル先。
二股に分かれる道の中央、何か大きな建物が倒壊したあとに残った壁。
「数は2、一つ潜伏してますね。陽動の可能性もあるので自分は背後を警戒します。もう一つはカラスでした」
「了解。こっちは任せて」
一歩、また一歩と進む。
しかし距離は詰めすぎない。
淫魔じゃないなら敵対する必要はなくまた、下手に刺激しないため。
仮に淫魔なら不意打ちを食らわないようにする。
街の内部が見えてくると建造物が多くなりより悲惨な光景となっていく。
吊るされた人間がなんか増えてきた。
伏兵を注意しながら観察すれば服装から犠牲者は聖職者であることがわかる。
時代背景的には魔女狩り後、再度異端者探しでもしてたところを逆に殺されたのだろう。
それこそ残った魔女に。
聖職者達が恐れた魔女は自分達で作った魔女だったというオチだ。
……あれ?カラスじゃない方の探知魔法から反応が消失?
「_シグルド!!」
「っ!!」
慌てて振り向く。
ガンッ、と金属音が鳴る。
シルヴェールが大剣で潜伏してた者の攻撃を防いでいた。
臨戦態勢のため探知の魔術は切れてしまう。
鉈を掴み構える。
襲撃者の姿も確認できた。
人ならざる獣の爪に狼の耳と尾。
やつも魔女狩り同様異端として血に濡れた歴史の闇に葬られたはずの種族。
「……人狼族、ですね」
「おぉ、本当だ」
謎の白い毛の人狼少女がいた。
彼女の表情から憎悪と敵意がひしひしと伝わる。
「オレはルーロウ。確かに人狼だ。……なぁ」
人狼は尋ねる。
「教会の人間じゃねぇな…エルアラドの賞金稼ぎか?」
当然警戒するよね。
侵入者だし。
「違う。物騒なナリをしてるのは認めるが」
「ちょっとそこの人からお話ししたいことがあるってことで来たんだよ。今日はそのアポ取りでね」
「……?じゃあテメェらはなんだよ?」
何者かといわれたら……
「元錬金術師で今は発明家と商人の真似事やってる無職「ブフッ!」吹き出さないでください」
「んんっ、わたしは淫魔ハンターをやってる」
「……なぜ来た?」
「聖王国の危機が迫っているのでちょっと力を貸してほ「はぁぁ!?」」
アカン、結論から先にいってしまった。
そりゃキレるわ。
あとカラスなんか増えてる。
「テメェふざけてるのか!オイ!!」
再び獣人特有の筋力から放たれる瞬発的な攻撃が来た。
咄嗟にシルヴェールが止める。
「っ!!まぁまぁ落ち着きなって!」
何度も繰り出される獣の爪を止めてかつ、シグルドへ仕掛けることを徹底的に阻害した。
「最後まで話を聞いてくれ。弁明をしようとするヤツへ聞く耳を持たないのは教会だけでもうたくさんだ」
「あ゛ぁ゛っ!?……チッ……ほら、言えよ」
とてもイライラしてるが待ってくれるらしい。
牙とか剥き出しだけど。
「まず結果が聖王国の助けになるという話だ。見捨てればどいつもこいつもざまあみろくらいにしか思わないのだろう。だいたいあの国が淫魔にやられたら国ごとケダモノどもの巣になるわけだ。淫魔共を蹴散らせてるのは奴らの中継となる大規模な拠点がないから、この一点に尽きる」
ゼノバイドしか淫魔をたくさん呼べないから撃退できるのであって国家クラスの規模になれば平均値人間を上回る奴らとの総力戦なんて普通に負ける。
「……」
「要は淫魔これから大量に来る、そしてエルアラドくらいの国を崩壊させたらもう撃退できず淫魔じゃない我々は大陸から居場所がなくなる。私は淫魔の食料エンド、貴公は淫魔の苗床エンドだから力を貸して欲しい。OK?」
「……全部教会のせいだろ知ったことか。今までやったように入ってきたやつを殺せばいい」
仕方ない、この場で切り札になるか分からないが私の本質を言ってしまおう。
これで何も進展なければ今日は撤収だ。
「どれくらい焦ってるかで表すとかつて錬金術の名家だったのに教会連中から異端として名家取り壊しに、そして一族散り散りなる理不尽な目に遭い、残った肉親の妹すら他界し実質たった一人の穢れた血族となった私が錬金術師辞めて淫魔の狩人やってるくらいには深刻だ。別に同情して欲しい訳では無いが!」
「ち、近い!!鼻息当たってるぞ気持ち悪い!寄るな!」
「あ、すまん」
人狼少女は……複雑そうな表情をしてる。
多少は効果ありか?
あぁ、思い出す。
クレセア、自分の最後の家族。
言ってた自分が何で傷つくよ……あぁ。
シルヴェールが耳打ちする。
「(……えっと……さっきのマジ?)」
「マジだ」
「ごめん」
「いい」
「あ、アンタの言い分はわかった。けどよぉ、オレだけじゃ難しい話しだし……う〜」
『ルーロウ、今いいかしら?』
空?から別の人物の声がする。
見上げればおびただしい程のカラスが自分を、シルヴェールを見つめていた。
黒鴉の魔女は恐ろしくなるほどの数のカラスを使役する権能を持つという。
「あぁ、オレじゃわかんねぇから頼めるか?」
『……そうね。彼らの一人は私を訪ねてきた客人よ。_そうでしょう?」
地上にいた一部のカラスらが一斉に飛び上がり代わりに誰も人がいなかったその場所から人が現れる。
魔女独特の帽子に鴉の意匠のある杖で何者かよく分かる。
最後の魔女、ジリアンだ。
あとナイスバディ。
……命をがかかってる場所なのにそんなことを思ってて悲しくなる。
「その通りだ。内容はもうわかってると思うが」
「えぇ。アスフォディルの末裔さん」
すごいな。
お家取り壊しになった錬金術の名家は一つじゃないのにわかるなんて。
「名はシグルドだ。今回は挨拶をしに来た。七日後にもう一度この地へ対話をするために一人で来る故、彼女のような迎撃前提の人物が仕掛けて来ないよう手配して欲しい。」
「……そう。ならこれを持ってなさい」
魔女はこちらに手を差し出すよう促し、一枚の羽根を渡す。
渡されたのは黒い羽毛に一筋、流星のような白が入った羽根。
「またここへ来るための招待状、とでも思ってくれればいいわ」
「なら無くさないよう努力はする」
「ふふ、頑張ってちょうだいね」
魔女はクスりと笑う。
赤い瞳は笑う前と目つきが変わらずきっと作り笑いだろう。
憎悪と復讐に駆られる魔女がいつか心の底から笑う日が来るのだろうか?
「今日はここまでにしましょう。それと名乗り遅れたわね」
黙って頷く。
「私はジリアン、魔女よ。ではご機嫌よう、また会える日を待っているわ」
言葉を言い終えるとジリアンの体が十数羽のカラスとなり彼らは飛び去った。
結局本物だったかどうかも分からないまま消えた。
「……あ。ほらっ、アンタ達はなんだ……言葉はアレだが、よそ者だろ。ここは見ててあんまりいいところじゃねぇし戻った戻った!」
人狼少女ルーロウがしっしっ、と手で払う。
動作こそ冷たいが憎悪を感じられないため緊張感は僅かにほぐれる。
「そうさせてもらおう」
「じゃあねぇ、次はシグルドを攻撃しないでおくれよ」
「なっ!……ふんっ、オレが覚えていることを祈るんだな。だいたいアンタも狩人ならテメェのケツぐらいテメェで持ちやがれ」
「無職だ。淫魔狩りで生計は立ててない」
「そういうことじゃねぇ!とっとと行けぇ!!!」