百合エロゲー?の世界で偽狩人は生き延びる   作:レンガチェッカー

9 / 30
第9話

 

「少し浮かない顔してるけどどうしたの?」

 

「それがですね……コウモリを取り逃がしました」

 

シルヴェールのいる場所へ寄ったらすぐに言われた。

目隠ししてるのによく分かるね。

そんなに顔に出てる?

 

「仕方ないさ。命があるだけ幸せだよ」

 

「……ありがとうございます。音を使った攻撃、搦手や亡者をどこからか呼べる厄介なやつですので戦うときには参考にしてください」

 

「なるほど、そうするよ」

 

 

____________

 

道中、住民の避難が進んだこともあって淫魔の撃破は難易度が下がった。

オーク、時々オーガで順調だ。

 

ただ気になるものが見つかった。

何個もの召喚術を行使した召喚陣だ。

 

「既に効果が切れてるね」

 

「そうですね」

 

アスフォディルでも召喚陣は使用していた。

だからわかる、もうここらの召喚陣は作動しない。

 

何ならイルヴィナを呼び出してしまったときも羊皮紙には召喚陣が描かれていた。

 

聖都の召喚陣はおそらくゼノバイド幹部、ルドルフの仕業だ。

アイツが淫魔召喚に特化したやつだから。

 

問題はどうやって召喚陣を設置したのか。

適当にやってたら絶対怪しまれる。

 

施工業者のフリでもして仕掛けたのだろうか?

 

突然ドンッと音がなる。

 

 

「……一応こんな感じで壊しておくか」

 

わお。

そりゃないぜ先輩。

 

なんかこう、何かに利用できたりするかもしれないのに。

知らないけど。

 

「えい、えい」

 

あぁ……ここにあったもの全部壊しちゃった。

止める言い訳思いつかなかったしどうしようないけど。

 

「この様子だと他にもありそうだから消していかないとね」

 

「は、はい」

 

してやったり顔がかわいい。

可愛かったら許されるってのもあながち間違いではないのでは。

 

 

 

破壊活動は日が沈むまで手当たり次第行われた。

 

 

 

「夜中は無茶です先輩。王城へいきましょう」

 

「いやいや、もう少し密集地によって淫魔の数を減らしてだね。あと誰が先輩かな?」

 

「自分はもう装備が心もとないです!先輩に何かあったら運んで逃げるほど力ないんですよ」

 

「ふーん、力ねぇ……わたしを羽交い締めにして組み伏せようとしてるのに?」

 

「脅しですよね、そんな脅しは効きません。ほらお水とか情報とかもらいに行きますよ!」

 

「う〜」

 

この先輩やばないか?

ちょっと血に呑まれてない?

 

 

 

 

 

 

『ぎゃひ!?』

『オブギョ!?』

 

まだいるオーク達を狩る。

 

王城への通路も数はあまり多くないが来てやがった。

本当に武器が剣じゃなくて良かったと思う。

 

ケダモノ共を叩き過ぎて刃が少し潰れてきていたから、仮に剣ならもう切れ味が落ちて使い物にならないだろう。

 

その場にいた最後のオークに鉈を叩きつける。

 

『ガッ!……まだ犯せてないのに……』

 

 

 

王城までの通路には生きてるオークの姿はない。

多少なりともいたのだから挟まれる前に下がって正解だった。

 

 

 

「シーッ」

 

シルヴェール先輩が自身の唇に人差し指を近づけ沈黙を作るように指示した。

 

何か見つけたのかな?

 

打ち捨てられたいくつもの木箱の隙間、彼女はそこに近づく。

 

お宝でも見つけてしまったか?

 

 

 

「やぁ」

『っ!?』

 

一瞬、短い悲鳴が聞こえた。

それは子どもの声だ。

 

「もう大丈夫、今はお姉さんが悪いやつをやっつけた。ここから出よう?」

 

確かに木箱と木箱の隙間には隠れられそうなスペースがあり、オーク達のを掻い潜ることができたのだろう。

 

シルヴェールが手を伸ばし引っ張ると8から10歳くらいの男の子が手首を掴まれて出てくる。

 

泣きそうだけどくりくりおめめでかわいい子だ。

 

「よく頑張ったね。ご褒美のぎゅーっだよ」

 

少年を優しく抱きしめ背を撫でる。

彼は感情が爆発したように涙を流し抱きつき返す。

 

 

それからシルヴェールとは別に自分(シグルド)がいるのを確認したのだろう、第三者に見られてるのが恥ずかしいらしく泣き止もうと出る涙を止めようとこらえている。

 

「あの人はお姉さんと一緒に悪いやつを退治してる仲間さ。ちょっと血ですごいことになってるけど」

 

紹介ありがとう、返り血すごいし多分かなり引いてるね。

 

自分はただ一礼し周囲の見張りを続行。

引き続きゼノバットへの警戒は続けなくては。

 

 

「よし、それじゃお父さんとお母さんに会いに行こっか」

 

「……うん」

 

少年は頷く。

シルヴェール先輩は少年と手をつなぎ王城への道を進む。

 

凄惨な出来事の中なのだがとても微笑ましかった。

 

 

気になることがあるとすれば少年の様子がうわの空であったことだ。

今後少年の性癖についても少し気になるところ。

 

優しいクール系お姉さんでしか興奮できなくなったらどうするんだい?

 

自分はナイスバディなお姉さんがゲフンゲフン…

 

……彼が脳を焼かれてなければいいけど。

 

 

 

 

-日没、城下にて-

 

警備体制が敷かれ城下から聖都への道は閉ざされていた。

兵士達が封鎖している。

 

聖都での淫魔の規模を彼らは知っているのだ。

故に市民が間違って移動しないよう構えてる。

 

 

「だから聖都への移動は制限されてます!ここは通せません」

 

「お願いします!!まだ子どもがいるんです!!」

 

「どうか何卒!」

 

「お気持ちはお察ししますができません。何があっても聖都から化け物を踏み入れさせるわけにはいかないのです!もしそのようなことが起こりようものなら何倍もの被害が推定されておりますので!」

 

部隊の隊長が市民二人を諫める。

 

「な、なら私だけで、一人で行きます!お願いします!」

 

「お、おい…流石に無茶だそれは…」

 

「ダメです。通せません!」

 

隊長は出ないように促す。

知っているのだ、例え一人だろうと市民を向かわせない理由を。

 

なぜなら淫魔達が人のいる通路を見つけて一斉に襲いにかかることに繋がるから。

 

なるべく化け物にはじっとしていて欲しいのだ。

 

特例でとある人物は聖都から来た場合に王城内へ案内を指示されてる。

それでも再度聖都へ向かうことは自分達で止める前提だった。

 

 

「嫌よ……いや……」

 

「お、お願いします……うっ…」

 

 

彼らの心情をわかってしまう。

だからこそどうにもならないことに頭を悩ませる。

主戦力となる騎士隊は王城、特に城の敷地内で発生した化け物を今も屠るため尽力してる。

 

 

 

「_!隊長、誰か聖都の方向から来ます!」

 

「なんだと!?むっ、待ったあれは」

 

「おい!見ろあそこに!ほらっ!」

「!?あぁっ……!」

 

やたら赤黒い姿の者、大剣を携え子どもの手を引く者。

三人が城下へ来た。

 

彼らを見て先程の二人は安心感に涙を流す。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「隊長もそう思います?」

 

「あぁ。_そこの歩いている者、名は何というか!!」

 

『シグルドです。天使様からのご提案で王城を訪ねた次第であります!』

 

「これは失礼しました、話は伺っております。どゔぞ」

 

 

警戒網の内側へ聖都からの三人が入る。

少年は少しして気づいた。

 

 

「パパ、ママ!」

 

「そうだぞ!大丈夫だったか!」

「うぅ……良かったわ」

 

両親を見つけられた少年は今度、シルヴェールを見る。

心のどこかで別れが名残惜しいと感じているのだろう。

 

「……ごめんね。お姉さんはこれからまた戦わなきゃいけないんだ。兵隊さんと一緒にみんなを守るの」

 

「お姉ちゃん、頑張ってね……それとね、ありがとう」

 

「こちらこそありがとう。頑張るよ」

 

少年は家族の元へ向かう。

 

 

家族と下がって行くのを見計らい隊長が来る。

 

「シグルドさん、聖騎士団のノエイン様より王城へ足を運ぶようお願いされております……同行された方もど「わたしはいいよ」はい?」

 

断られた隊長はなぜだ、と思った。

 

 

「だって_ほら」

 

部下の兵士と共にそれを見てしまった。

女狩人の眼を。

 

「あ、ぁ、シ、シル「わかった」」

 

部下が余計なことを言う前に割り込み、肩を叩き止める。

彼女が民衆を混乱させる原因になりかねなかったから。

そしてシグルドから見た場合、ちょうどシルヴェールの後頭部で隠れる立ち位置。

わざわざ自身と部下のみが眼を確認できる。

 

 

「……アンタには感謝もしている……が、なるべく隠すように頼む」

 

民衆の云々を置いて共に戦うシグルドには見せたくなかったのだろう、と隊長は連れの人物が気にならないよう言葉を濁した。

 

「もちろん」

 

 

魔物狩りのシルヴェール、彼女には本質とでも表現すればよいのだろう別の側面を持つ。

 

 

半人半魔のシルヴェール

 

おおよそ悲劇の果てにしか誕生しない命。

そのような出生の者には一目でわかる特徴を有する。

 

淫魔と人間の混血、特に人間に近いと左右の目の色が異なるのだ。

青い左目、赤い右目とシルヴェールもれなくその特徴を持ち、そのような存在は恐ろしい混血児として忌み嫌う人も多い。

大剣を軽々と振るう力は血縁上親である淫魔由来の力だった。

 

 

 

「先輩はいかないんですか?」

 

「悪いね。そういうことでよろしく頼むよ」

 

「そうですか。では王城から情報とかなんやらを聞いて来ますので……」

 

「あぁ、いってらっしゃい」

 

シルヴェールは軽く手を振る。

なぜかしんみりとした表情はシグルドにとって疑問を抱かせるのだった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。