生まれ変わったら三つ子の末っ子だった、、、   作:ただの村人

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似たものどうしはこうして出会う

 ――――身体に適度な重さと暖かさを感じ、私は閉じていた瞼をゆっくりと開けた。

 まだ、眠気が残っているのか完全に覚醒する事は出来ず、夢見ごこちのまま天井を見つめる。

 右手を目元の方に持っていき、軽く目を擦ってボヤけた視界を元に戻そうとすると、なにやら先程から温もりを感じていた足元付近で何者かがモゾモゾと動いてるのが感覚でわかった。

 

「だれぇ?」

 

 上半身を起こし足元の方に目をやると、白衣を着た男性と思わしき人物が両腕を枕にするように私の足元に置き、熟眠しているのがわかった。まだ、視界が完全には戻っていないせいで誰か分からなかったが、この病室に入ってくる人物など一人しかいない為、それが誰であるのかわかった。

 

「せんせぃ、来てくれたんだぁ…………」

 

 業務が終わり次第、此方に足を運ぶとは言っていたものの、ここ周辺にいる患者には個室が与えられている。それは病を効率よく治癒する為でもあるが、それと同時に患者一人一人の病が深刻である証拠でもある。その為、患者の健康状態等を安定に保つ必要があり個々に対する診察時間が長いのである。

 今日は出て行った時間的に、もう来ないかもと思っていたぶん業務外なのに来てくれたのは凄く嬉しい。

 

「せんせいは、また仮眠室で寝るでしょ?」

 

 しかし、嬉しい反面心配でもある。

 ここの病室にはベッドが一つしかない為、必然的に椅子に座って寝ることになる。体勢が悪い状態での睡眠になることは避けられないので、間違いなく寝不足になってしまうのだ。

 ――――仕方ない、私が起こしてあげるか。

 そう思うものの、今は真夜中である為大声を出す訳にもいかず、考えた末に口をせんせいの耳元に近づけた。

 

「――――ぉきてぇ」

 

 声量自体は小さいものの、耳元に近づけることによって受け取り側からしたら結構な音量になるはず。私って実は天才なのでは?

 と自分を最大限に褒めてあげるが、せんせいの眠りは深いのか全然起きてくれなかった。

 

「お手洗いに行きたいんだよね……」

 

 せんせいは今日はもう起きないだろうなと判断した私は身体を捩って布団の外に出る。上手く抜けれたみたいでせんせいが目を覚ましたりはしなかった。

 音を立てずに病床から降りた後、ゆっくりと扉を開いて廊下へと出る。

 本来は、お手洗いに行く際にナースコールを押して、関係者と同伴の上で行かなければならないのだが、夜中はどうせ人通りも少ないだろうし、見つかる恐れも低い為、私は一人で行くことの方が多いのだ。

 廊下に出て右手側に行くと階段があり、逆側に行くと廊下の途中にトイレがある。赤い絵文字の書かれた方へ入って用事を済ませた後、部屋へと戻ろうとした矢先、何やら更に奥。自分の病室とは離れていく方向の場所から音が聞こえた。

 ――――コツコツ。コツコツ。

 誰かがゆっくりと歩いている音だ。

 

「そういえば……」

 

 せんせいから聞いた事がある。

 この病院はそこそこ年季がある為、当然命惜しくも亡くなられた方も多い。その幽霊が真夜中に時々廊下をゆっくりと歩いてる音が聞こえてくる、という怪談がある。私は占いや幽霊は信じない主義なのだが、それでも全身に寒気が走った。本当は逃げたいのに足がくすんで動けず、その間にも足音は徐々に近づいて来ていた。

 ――――数回、足音が聞こえたのちもうすぐで姿形が見えるかどうかの距離で足音の方から声が聞こえた。

 

「だれ?」

 

 声からするに幼く、弱々しい声。

 足音は完全に止まり、向こうもこちら側の様子を伺っているのだろうか。しかし、先の程の怪談の影響で上手く声が出せず私は返事ができずにいた。すると足音がこちら側へ更に近づき、そこにはニット帽を頭につけ澄んだ蒼瞳をした女の子が此方を恐る恐る見ていた。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 吾郎が病室を出てから数時間後、さりなは少しばかり空を見上げていた。さりなの病が発覚してから彼女はずっと病院の中で育って来た。物心着く頃には病院での闘病生活だった為、過去に外に出た事があったとしても記憶にはもう残っていない。ここが片田舎、それも山奥にあり空気も澄んでいるという条件が揃っているためか、夜になると空には星々が浮かび上がる。さりなは時々窓の外から星達を見るのが好きだった。病院での闘病生活は苦労している事が多いけれど、自分だけがこの夜空を独り占め出来ている感じがするからだ。

 

「そろそろ、はじめようかな?」

 

 そう呟くとさりなはゆっくりと病床から降りて、立ち上がるために足に力を入れる。病気によって、寝床の上での生活が長いためか足の筋力は衰え立つだけでもプルプルと震えている。そこに、さりなの症状の一つで足に軽い痺れがある為歩くのは困難である。しかし、困難ではあるものの不可能ではないのだ。少しづつ歩く練習をしていけばいつかは普通に歩けるようになるのかもしれない。その期待も込めて、さりなは夜な夜な歩く練習をすることがあった。

 

「――――誰もいないよね?」

 

 さりなの練習は主に歩く事。

 しかし、病室の中だと身体を支えるための取っ手代わりが少ないため、廊下に出て歩く練習をする事がほとんどだった。廊下だと壁に手すりが付いているので、足に力が上手く入らなくても何とか歩く事ができるのだ。

 ――――まぁ、医療関係者に見つかると怒られるのは明白なので、このような遅い時間帯に人の目を盗みながらする必要があるのだが。

 いつも通り、病室から出てトイレのある方へと足を進めていく。そのまま突き進むと階段があるのでそこで折り返して自室に戻る。これが最近のさりなの日課であった。しかし、今日に限ってはいつも通りとは行かなかったのだ。少しばかり歩くと、前方に人影が見えた。辺りが暗いため、その人物の風貌は明確には分からなかったがどうやら背は小さいようだったので、医療関係者以外。ここの病人と判断し、一先ずは安心することができた。

 そして、数秒向こうの動きを窺っていたが一向に動こうとしない為、ついにさりなは相手と自分の姿が見えるぐらいに近づくと声をかけた。

 

「だれ?」

 

 先の影の正体ははどうやら可愛らしい少女のようだった。さりなよりも身長も低く顔も幼い為、年下なのだろうと推測できる。そんな少女がこんな深夜に廊下にいる事が少しばかり気になったのでさりなは素直に聞くことにした。

 

「こんな真夜中にどうしたの?」

「さっき、お手洗いに行ってたところ!」

 

 ――――花が咲くような笑顔を向ける少女。

 雪のような白色の髪に青色の目。切れ長のまつ毛に整った顔の少女はどこかの物語から出て来たのではないか?と思ってしまうような可愛らしさがあった。その少女がさりなの方をまじまじと見た後に口を開いた。

 

「そんなあなたは、ここで何してるの?」

「…………別に」

 

 今度は少女からさりなへ質問だった。

 まるで、自分が答えたんだからそっちも答えてくれるでしょ?と言われてみたいである。しかし、さりなが素直に答えることはない。それもそうだ。自分はこうやって頑張って練習を強いられているのに、目の前の少女ときたらどうだ。容姿も恵まれており、身体も一見健康そうに見える。神様が居るというのならあまりにも不平等ではないか。そんな嫉妬にも近い感情からか、さりなは少し強く少女に当たってしまった。

 

「もしかして、歩く練習してる?」

「……そうだけど」

「手伝おうか?」

 

 さりなはその言葉に一瞬戸惑いが生じた。さりなにとって、素の自分は醜く人と接すれば相手を遠ざけてしまう。そのような考えがある為、普段は出来るだけ『良い子』を演じて明るく振る舞っている。今回、嫉妬心からか目の前の少女には素の自分で会話してしまい、酷いことを言った自覚もある。なのに目の前の少女が受け入れてくれたことに少し動揺が隠せなかった。

 

「どうしてそこまで私に構うの?」

「頑張っているんだからその手助け」

「本当にそれだけ?」

「他にもあるけど、それはナイショ!」

 

 少女は人差し指を閉じた口元の中央に持っていき、此方に微笑みかける。頑張っている。それはさりながこうやって夜な夜な歩く練習をしていることを言っているのだろう。自分の頑張りを認めてくれる人がいるのはさりなにとって素直に嬉しいものである。それと今はまだ内緒と言っているが、さりなと少女があったのは今回が初めてであり、そちらに関しては見当もつかなかった。

 ――――と、ここまでおたがいのなまえを名乗らずにいたことを思い出したさりなはまずは自分の名前から名乗ることにした。

 

「私は天童寺さりな、貴方は?」

「私は天王寺そら、似た苗字だね」

 

 ふふ、とお互いに笑い合うさりなとそら。

 そこには先程まであったさりなの嫉妬などはなく、側から見れば仲の良い姉妹のようであった。

 後から、目を覚ました吾郎が必死になって探しているところを見つかって、こっ酷く怒られたのはいうまでもない。




執筆が遅くなりすみません!
過去編を長々と考えてたんですけど、途中から
あれ?これ過去編だけで文字数めっさいくくない?
となり、過去編は原作同様、本編の合間合間で回想を挟むことにしました!

次回から本編入っていきます!

追記
誤字報告してくださった方ありがとうございます!
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