生まれ変わったら三つ子の末っ子だった、、、 作:ただの村人
生まれ変わったらアイドルの娘だったんだけど、、、
皆さんは輪廻転生という言葉をご存知だろうか。
我々人間が死んだ際に魂が生まれ変わり、また新たな命としてこの世に生まれ落ちる。これは仏教の教えであり、日本では転生と言う概念はここ数年で馴染み深いものとなっている。――――まぁ、それだけ現実逃避したい事が多いという事なのだが。
その国の考え方は宗教の影響を受けている事が多いと言われている。しかし、転生に関しては常軌を逸している為か信仰するものは少ない。私も例に漏れず、転生というものはただの生存者の理想でしかないと思っていたのだが……。
◇ ◇ ◇
「はんぎゃーはんぎゃー!」
「はぁい、何でちゅかー?」
ベビーベッドの上でスヤスヤと眠っていた私。しかし突然隣から大きな鳴き声がして目が覚めた。
うるさいなぁ。
横に視線を向けると、私の隣に置かれたもう一つのベビーベッドから丁度、お母さんがお姉ちゃんを抱き上げようとしているところだった。
「んぎゃあー!」
「どうしたのアクア?」
抱き上げたお姉ちゃんをお母さんがそのままの状態でソファまで連れて行き、腰を下ろす。そして、ソファにいるもう一人の赤ちゃん、お兄ちゃんを右腕、先程の赤児を左腕に抱えこんだ。
「そっちはルビーだろ! それでも母親か!」
ソファの後ろから、呆れながらも赤ん坊の名前を訂正したのは、金髪にサングラス、無精髭を生やした如何にも怪しそうな風貌をした男性、斉藤壱護さん。
今世の母はどうやらアイドルらしく、B-小町といういちごプロ所属のアイドルグループでセンターを勤めているらしい。
壱護さんは、苺プロダクションの社長さんだ。因みにその横に同じように立っている女性は社長夫人のミヤコさん。茶髪に、優しそうな雰囲気を纏った女性。詳しい年齢は知らないが、風貌から20代前半なのではと推測してみたり。
「人の顔と名前覚えるの苦手なんだから仕方ないでしょ、いやでちゅね〜日本の男は母親を幻想視しすぎて」
「パスポートも持った事ない奴がグローバルな事言うな! 第一海外ロケNG入れてんだろお前!!」
……いつもの言い合いが始まった。
壱護さんとお母さんは度々今みたいな感じに口論をする事がある。
中は悪いって感じじゃないから別に気にするほどの事でもなさそうだけど。
今世の私のお母さんこと星野アイさんは紫色をベースに星を嵌め込んだかのような瞳に、紫色の髪をしており顔は絶世の美少女。
しかし、天は二物を与えずとは良く言ったものだね。物覚えがあまり良い方と言えず、人の顔と名前が一致しない事が多々ある為、その都度壱護さんから注意を受けているみたい。
「でも私才能あるなって思った人の名前は覚えられるよ佐藤社長」
「惜しい、俺の名前は斉藤だクソアイドル」
壱護さんが惜しい!と右手の平で顔を覆い、欧米人並みのオーバーリアクションをしている。
何だかんだ、斉藤社長もこのやり取りを楽しんでいる気がする。
そして暫く双方、言い合いを続けていたみたいだけど一旦区切りを付けるかのように、壱護さんは部屋の隅に置いてあったホワイトボードをお母さんの目の前まで動かした。
私はベビーベッドの柵の間からそのホワイトボードの文字を見ようと目線を向けてみる。どうやら箇条書きで今後の作戦を書き出しているみたいだ。
題して『いちごプロ会議』
先ず一つ目は、お母さんの復帰について。
二つ目は子供達のことについて。
そう書かれていたので、以上の事をメインにこれからの話し合いで決めていくのかな?
「とにかくアイドル『アイ』は本日復帰となる、今後の活動について話し合うぞ」
壱護さんが、ホワイトボードをバン!と一回叩いて高らかに宣言した。
「復帰第一弾は今夜の歌番組、生放送だけどいけるよな?」
「もちろん!」
お母さんは復帰するのを楽しみにしてるようで、今夜の歌番組に出る事が決まっている事を聞くと、すぐに大丈夫と壱護さんに答えた。
私としては、まだ復帰にしては時期が早いと思うし、いきなり生放送と聞くともう少し身体を休めて貰いたく思ってしまう。
――――まぁ兎に角、今夜の生放送でアイドル『アイ』は復活。テレビとかで私達の世話を見れない時は社長夫人のミヤコさんが世話をしてくれる事になった。
私が見た様子だと当人であるミヤコさんは乗り気では無さそうだけど、大丈夫かなぁ?
「肝に銘じろ! アイドルのお前が16歳三児の母……なんて世に知られたらアイドル生命即終了」
壱護さんがもう一度忠告をする。
お母さんが3児の母だと世に漏れた瞬間にアイドル生命が終わるどころか、監督責任を問われて事務所も終わるらしく、道連れ状態だと言う事。
当然だけど、役所の手続きや買い物は一人で行い、どうにもならない時は斉藤夫妻の子供を預かっている設定にすると言うことで決まった様みたい。
「えーめんどくさー、困っちゃうよねルビー」
……そっちはお兄ちゃんです。
「そっちはアクアだ」
そんでもって、壱護さんはよく見分けられるよね。
一卵性では無いとは言え、私達の顔はよく似ているのに。
壱護さんは、先程の訂正にカラカラと笑うお母さんを無視してホワイトボードの片付けに入った。今夜の生放送のリハーサルがもうすぐ始まるらしく時間が無いようで、足早に移動するみたいだ。
「それじゃあ行ってくるね、
「流石にそいつの名前は間違えないんだな」
去り際に、お母さんが私のベビーベッドの横を通る際に声を掛けてくれた。
兄姉の名前は間違えるのに私の名前は間違えないのには理由がある。
私の色素は常人よりも薄く、翡翠色の瞳に兄姉とは違って完全な金色ではなく薄い、ホワイトブロンドの髪色をしているから。
――――どうやら、私は前世の体質を今世でも引き継いでいる様みたいだった。
◇ ◇ ◇
お母さんが生放送の撮影に出掛けて行ってから数時間、寝ていた私だったが兄である
お兄ちゃんは金髪に青色の瞳、右目だけ母と同じく星が埋め込まれた様な瞳をしている。赤ちゃんの今でも端正な顔立ちの為、きっと将来はイケメンになるに違いないだろう。
まぁ、兄妹である私には興味がないことだけども。
『そうそう、ご飯といえばこないだうちの子が……』
『ツチノコ?』
『じゃなくて、うちの子猫がね。休養中に飼い始めたんだけどー』
テレビから僅かに聴こえてくる、お母さんとテレビのキャストたちの話し声。
――――今ウチの母、とんでも無いこと言い掛けてなかった?
ベビーベッドには柵が付いており、この位置からではテレビがうまく観れないので、お母さんと周りのキャストの表情が見えないが、この感じだと絶対いつかバレると思うのは私だけではないはず。
この先本当に私達三つ子を隠し切ることができるのかな、と不安を覚えつつもその後は特に大きな失態もなく、会話が続いていく。
そうして十数分後、B-小町のメンバーと司会の会話が終わり、いよいよパフォーマンスが繰り広げられる。母とそのメンバーが踊りを開始して、曲も中盤に入ったところ…………テレビの近くで寝ていた今世の姉が目を覚ましたかと思えば、声を荒げた。
「Nステもう始まってるじゃん! どうして起こしてくれなかったの?」
「俺は何度も起こしたぞ」
今世の姉、
と言うよりかは、他のアイドルを推しているところを見たことがないので、B-小町オタクと言うべきだろうか?
その中でも、星野アイを根っから推す生粋のオタクであった。姉も、金髪の髪と兄と違って緋色の瞳、そしてこれまた兄とは逆の左目に星が嵌め込まれた瞳をしていた。
そんな姉が小さな身体をハイハイの要領で動かして、私のいるベビーベッドの近くまで移動してきた。
「ほら、ヒスイもこっちきて!」
「……うん!」
「お前も嫌だったら断るんだぞ」
今世の姉はオタクの鏡なので布教活動を惜しまず、母関連のテレビが放送される時には私も一緒に観ようと誘ってくれる。
お兄ちゃんはそんなお姉ちゃんに苦笑をしつつも、何だかんだ同じ趣味を共有できるのが嬉しいのだろうか。止めることはしなかった。
「きゃー! やばー! ママかわいすぎー! 視聴者全員億支払うべき! ヒスイもそう思うよね?」
「う……うん」
母関連になると何処か、迫力の増す姉に若干押されながらも返事をする。別に渋々といった理由ではなく、純粋にお母さんは可愛いし凄いと思っているのだ。嘘はついてない。
「やばい、おむつ替えたばっかなのに失禁しそう!! ヒスイも同じだよね?」
「……お兄ちゃん助けて」
「すまん」
流石に失禁?を同意する訳にいかず、しかしどうすれば良いのかも分からないのでお兄ちゃんに助けを求めたら、目を逸らされながら謝られた。
――――ひどくない?
ようやく本編開始と言うことで。
筆者が遅筆なのもありますが、プライベートが忙しく投稿遅くなってしまい申し訳ありませんm(__)m
また次回もよろしくお願いします!