生まれ変わったら三つ子の末っ子だった、、、 作:ただの村人
これは少し先のお話。とある居酒屋にて、記者はビールを煽る女性に取材を試みた。目の前に座るのは苺プロダクションの代表取締役である斉藤ミヤコ。実年齢よりも若く見える風貌をしたその女性に、質問を投げかける。
「二人のマネジメントは大変ですか?」
「え〜、そりゃ! 大変ですよあの二人のマネジメントは! 考えてみれば最初からおかしかったんです」
「おかしかった?」
「天才……というのは違うかも知れませんが、何でしょうね、神様に導かれているというか寵愛と試練そのどちらも正しく与えられているっていうかぁ」
「は、はぁ」
突然、神がどうとかの説明を始めたミヤコに対して記者は何処か困った様子であったが、取り敢えずその説明を手に持った手帳へと書き記す。とそこへ、ミヤコのスマホから呼び出し音が鳴った。
「あ、電話だ、もしもし?」
『ちょっとトラブル、すぐ来て!』
「二人に呼び出されてしまいました、続きはまたいずれ」
「電話の相手はルビィさんですか?」
どうやら、何かトラブルが起きたらしく電話先の相手から急ぎの呼び出しがあったらしいミヤコ。それに対して、記者は相手が誰なのか気になって問いかけた。
「そうですよ、まぁ私が着く頃には大体の問題はあの子が解決するんですけどね」
「あの子?」
「そうですよ、私よりもあの子の方が優秀なので。それにあの二人もあの子のいう事なら何でも聞くでしょうし」
「その方って……もう行ってしまった……」
代表取締役の口から優秀と言わせ、尚且つマネジメントが難しいと先程言われていた例の二人が言うことを聞くと話され、記者はその人物は誰か気になり問いかけたのだが。相当急いでいたのか、最後の質問を投げかける頃にはミヤコは足早に事務所へと走り出していた。
◇ ◇ ◇
アクアがルビィとヒスイに作戦を伝えた後、三つ子はすぐに実行へと移した。
「ふふ、これを売ったお金でホスクラでMOEを……本担を1位に押し上げるのよ……」
どうやら、ミヤコはアイの母子手帳をマスメディアへと持ち込んだ後は、その得た資金でホストクラブへと入り浸る予定のようだった。しかし、そんな事を三つ子が許す筈もなく。
「哀れな娘よ、貴様の心の渇きはシャンパンでは癒えぬ」
「誰!?」
突如としてミヤコの背後から聞こえてくる子供の声。しかし、三つ子はまだ生後間もない為に話すことは不可能。ミヤコは声の正体に不気味さを感じながらも、背後へと即座に視線を移した。
「わ、我は天の使いである、貴様の狼藉……これ以上見過ごすわけにはいかぬ……!」
「神の使い……? っていうか赤ちゃんがしゃべっ……嘘だぁ……」
ミヤコが視線を移した先には、リビングに置いてあるテーブルの上にどっしりと座り、腕を組むアクアとルビィが鎮座していた。赤児が言葉を流暢に発し、また知り得ることができないだろう難しい言葉を使っているこの状況にミヤコの頭は困惑でいっぱいだった。
「貴様の常識だと赤子は喋るのか? 信じよ」
「いやいや……流石に神とか言われても……うちそういう宗教的なの信じないし」
神と称した赤子、アクアを目の前にミヤコは混乱で一杯の頭をフル活動させて考える。そして導き出された答えはただ一つ。自身がテレビ関係者である為に存在する僅かな可能性。
「あっ分かった! これドッキリでしょ! アイさんの出る番組でマネージャードッキリとか! あるある! やる事に手が掛かってるなぁ、どこかにカメラあるんでしょう?」
それはまるで自分に言い聞かせるかのように、願わくばドッキリであって欲しいとの思いも込めて、ミヤコはいつも以上にトーンを上げて喋り始める。当然、これはドッキリではない為、カメラは愚か仕掛け人や裏方の人間自体存在しないのだが。
「(くっ……流石に無理があったか)」
ミヤコが困惑で頭が一杯になる一方で、それはアクアとて同じであった。元より、奇抜な作戦であったと言えどアイの今後のアイドル生活を守る為の、自分達にできる最大の作戦なのだ。失敗するわけにはいかない。どうするべきかと頭を悩ませたアクアを救ったのは、他でもない、隣にいる妹のルビィであった。
「ほらほらルビィちゃん、机の上に乗っちゃあぶな――――」
「慎め、我はアマテラスの化身貴様らのいう神なるぞ」
ミヤコがテーブルからルビィを下ろそうとしたところ、その差し出した手を一振り叩き落としながらルビィはミヤコを見下ろした。普段の世話のかかる赤子のルビィからは想像出来ない威厳、風格、圧倒的存在感で溢れているそれを目の前に流石のミヤコとて、神の存在を信じざるをえなかった。
「貴様は目先の金に踊らされ天命を投げ出そうとしている」
「天命?」
「星野アイは芸能の神に選ばれた娘、そしてその子等もまた大いなる宿命を持つ三つ子。それ等を守護するのが汝の天命である。貴様の行いは神に背く行為……このままでは汝に天罰が下るであろう」
「天罰……!?」
突如として、天命を言い渡されたミヤコ。要は星野アイとその子供達にできるだけ協力せよとのこと。
でなければ、天罰が降るとの言葉にミヤコは酷く萎縮した。まぁ、普通に考えれば何故芸能の神に愛されたアイ達家族をミヤコに守る天命が授けられるのか疑問であるが、この時のミヤコはそこまで考えれる程の余裕がなかった。
「天罰って何ですか!? 具体的には!?」
「具体的に? 具体的には……」
神、アマテラスを演じているルビィだが天罰云々に関しては流れのままに発言したため、内容は何も考えていない。その為、暫し考える時間を設けようとしたのだが、突如としてルビィの隣からミヤコに対しその内容が言い渡される。
「死ぬ」
「そう! 死ぬ!」
「いやぁ! 超具体的!!」
天命を投げ出したら具体的にどうなるのか、具体的かつ中々残酷な事を言い渡したのはルビィの隣にいるアクアだった。これには、具体的な内容を求めていたミヤコも絶句するには十分すぎた。ミヤコとてまだ死にたくはない。なので、神の化身という二人にどうすればいいのかを尋ねた。
「私……どうすれば」
「簡単な事……母と我々の秘密を守る事じゃ。そしてこの子等を可愛がり言うことを全部聞くのじゃ……さすればイケメン俳優との再婚も夢ではないぞよ」
「マジですか! やります! 何でも言う事聞きます! 靴の中敷でも舐めます!」
「そこまではせんでよい」
天命を守れば命が助かるどころか、イケメン俳優との結婚も叶う。それは今のミヤコにとっては大いなるメリットであった。もう今のミヤコには、先程まで持っていた疑惑も頭の片隅であり、目の前の兄妹を完全に神の化身と信じたのだ。ミヤコはまんまとアクアの作戦にハマっていた。
◇ ◇ ◇
「イケメンと再婚〜♫」
さっきまでは全てに疲れ切ったようなミヤコさんだったけど、お姉ちゃんの天命さえ守ればイケメンと再婚できるという発言ですっかり元気ななっていた。私としては壱護さんが可哀想に思えてくるけど。
「これでよかったのかな?」
「どのみち乳児の活動範囲には限界がある、大人の協力は必須だった」
お姉ちゃんは仕方ないとは言え、ミヤコさんを騙した事に少しの罪悪感があったようだけど、お兄ちゃん曰く私達はまだ赤ちゃんなので、行動範囲には元々限界があった。だけど、今回の一件でミヤコさんも協力してくれるだろうし、これからは外に出ることもできるみたいだ。
「ヒスイもよくやったな」
「私はいつも通り、赤ちゃんの演技してただけなんだけどね」
お兄ちゃんの作戦では、お姉ちゃんとお兄ちゃんが一緒に神の化身である演技をして、ミヤコさんをどうにか食い止めるというもの。その間、私はどうしたらいいか尋ねると、普段の赤ちゃんのままで大丈夫と伝えられた。本当にそれで良いのか気になったんだけど、お兄ちゃんが言うには人間には心理的に非日常な出来事が起こった場合、日常の範囲と捉えようとする正常性バイアス?ってのが働くみたいで、それを防ぐには神の化身役の他にいつも通りの赤ちゃんを演じる人を用意して、日常と非日常の段差を作ることが大切なんだとか。正直よく分からなかった。
「しかし、なかなか迫真の演技だったな、どこかで演劇やってたのか?」
「ううん、初めてやった」
「初めて? 学校で劇とかやんなかったのか?」
「……私ちょっと変わった所で育ったから」
「ふーん?」
お兄ちゃんは先程のお姉ちゃんの演技を褒めていたんだけど、どうやらお姉ちゃんは初めて演技をしたみたいだ。普通、学校とかでは劇をやるらしいんだけど、お姉ちゃんは特殊な環境だったみたいで、それもなかったみたい。
「私も劇とかやったことないなぁ」
「ヒスイも?」
「うん」
「じゃあ私と同じだね!」
かくいう私も劇とかはやったことがない。そもそもの話、私の場合は学校にすら行けてないのでする機会などが基本的になかったんだけどね。お姉ちゃんは私も劇をやったことがないという共通点が嬉しかったみたいで、こちらにバッと飛び込んで抱きしめてきた。
「お前ら何だかんだで共通点多いよな……やったことないってことは、じゃあ才能だ。将来は女優かもな」
「将来……かんがえた事なかったな」
私を抱きしめたお姉ちゃんが少し顔を俯かせて、呟いた。将来に関しては私も考えたことはなかったんだけど、せっかく生まれ変わったのだから今度は好き勝手生きようと私は密かに決意した。
今回も御拝読頂き有難うございます!
どうにかして、過去編を挟みたいと思いつつも原作の構成上、冒頭に未来の話が入るので今の所タイミングが中々に難しい!
ちなみにですが、緋珠依ちゃんは前世ではドラオタって言うほどのめり込んでおらず、友人がドラオタだったからB-小町も多少知っている程度の感じです。
そこなへんも、過去編で触れたいと思っています!
ではまた、次話でお会いしましょう!