生まれ変わったら三つ子の末っ子だった、、、   作:ただの村人

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そして彼は呟く。時代だなぁ、と。

 あれから1年、私たち三つ子は立っても喋っても怪しまれない程度に大きくなって、お姉ちゃんはお母さんをママと呼んで甘えまくっていた。

 隣にいるお兄ちゃんを見るとやばいファンの体現だな、と結構引いていた。

 

「ママァ! ママァ! よしよししてぇ!」

「は〜、極楽浄土〜」

 

 しかし、私たち三つ子は見た目は子供でも中身は子供ではない。……いや、私の場合前世が子供のまま終わったから中身も子供だったの忘れてた。

 ――とにかく、如何してもボロと言うのは出てくるわけで。

 

「極楽浄土なんて難しい言葉どこで覚えたの……?」

 

 成長したと言えど、私たちはまだまだ小さいのだ。

 とうぜん、身の丈に合った言葉を使わないと違和感が生まれる。

 もしかして、お母さんは私たちを疑って……

 

「ヤバい位の天才っぽいな」

 

 る事もなく平穏に日々を過ごしている。

 モデルにラジオアシスタントとお母さんは着実に仕事を増やしていて、今日はその集大成とも言える仕事の日だった。

 

「ママの初ドラマ楽しみだねぇ」

「ちょい役だけどね」

 

 お母さんは今日、初ドラマデビューを果たす事になっているのである。

 現場まではミヤコさんが車を出してくれるみたいで、助手席に私、後部座席には左側からお姉ちゃん、お母さん、お兄ちゃんと座っている。

 

 ……何で助手席に私なんだろうか?

 聞いてみた所、「ヒスイさんが一番大人しいからですよ」との事。

 お母さん、全然信用されてないなぁ、とちょっと悲しくなったけど、今日はめでたい日なので気持ちを切り替えることにした。

 

「いいですか三人とも、どーしてもと言うから連れて行きますけど……現場でアイさんの事ママなんて絶対に呼ばないでくださいよ」

 

 運転中なので、前を向きながらミヤコさんが警告をする。お母さんに迷惑は掛けれないので、なるべく気をつけないといけないなぁ。

 

「現場では私の子供という設定を忘れないでください」

「はいはい、ママママなでなでしてー」

「私もしてママ!」

「ママお小遣いちょうだい!」

 

 お兄ちゃん、お母さん、お姉ちゃんとミヤコさんを揶揄うようなことを言う。……お姉ちゃんに限ってはどさくさに紛れてお小遣い要求してるし……。

 

「うちの家族がすみません……」

「ヒスイさんが天使に見えて来ました」

 

 運転中だから少しの間だけど、ミヤコさんが左手で私の頭を撫でてくれる。丁寧によしよしと撫でてくれる手が気持ちよくて、ありがとう!と笑顔でお礼を言うと、良いですよこれくらい、とミヤコさんも笑顔で返してくれた。

 

「ミヤコさんだけせこくない?」

「ヒスイは私の子なのに……」

「……」

 

 後ろでお姉ちゃんとお母さんは文句言ってたけど、ミヤコさんは運転に集中してるのか何も反応を返してなかったので、私も無視する事にした。

 

 後、何も言わないからお兄ちゃんは気にしてないと思ったけどずっとこっち見てくるのやめてくれないかな?ちょっと気まずいんだけど。

 

 あれから暫くして、私たちは現場へと到着した。

 先程の事を気にしてるのか、お姉ちゃんは助手席のドアを開けたかと思ったら手を差し出してきた。

 

「ヒスイはすぐ迷子になるから、手握っててあげる!」

「私ってそんなに迷子なった事ないと思うけど」

 

 まぁ、私としても嬉しいから良いんだけどね。

 先頭をミヤコさん、お母さん。その後ろをお兄ちゃん、お姉ちゃん、私と横並びでついていく。

 

 今回のドラマは学園系らしく、学校の空き教室を借りて撮影を行うみたい。廊下を歩いていくと、スタッフさんが見えて、お母さんが挨拶をして教室の中に入る。

 

「苺プロのアイです、本日はよろしくお願いします」

 

 お母さんが中に入ると、マイクを持ったスタッフさんたちの奥に黒いパーカーを着て腕を組んだ男性が、ずっとお母さんのことを見つめていた。

 

「どうかしました監督?」

「いや別に」

 

 なんか、雰囲気が怖いなぁと思いつつ横にいるお姉ちゃんとお兄ちゃんを見てみると、二人も同じ事を思ったのか、「なんか怖いね」「顔がな」とひそひそ話をしていた。

 

「この子供は?」

「あっこの子達は私の子で」

「マネージャーが子連れで現場にねぇ」

 

 ギロッとこちらを睨む監督。

 ドラマの現場って初めて来たんだけど、ひょっとして子供が立ち入ったらダメな場所だったのかな?

 ミヤコさん含め、私たちも体に緊張が走る。

 後、お姉様。力が入るのは分かりますが手が少し痛いです。

 

「働き方改革ってやつか? まぁ現場に犬連れてくる人も居るしなぁ」

 

 監督は特に怒っていたわけじゃないみたいで、時代だなぁと呟きながらスタッフさんとの打ち合わせに戻って行った。

 正直、怒られるのでは?と思っていたからそうじゃなくて良かった。

 

 お母さんが演者用の楽屋、結構人が多いからこの場合は大部屋?が正しいのかな。そこで撮影の為の化粧をしてもらう間、私たちは今日お母さんと共演する人に可愛がられていた。

 

「三つ子ちゃん!! かわいーっ」

 

 優しく私の頭を撫でてくれるのは、確かグラビアに出てた人だったような。お姉ちゃんは可愛すぎる演技派女優と言われている若手女優の人の膝上で、抱かれながら頭を撫でられており、お兄ちゃんは新人女優と言われていた、綺麗な人の膝の上にちょこんと乗せられている。

 

「ばぶぅばぶぅ」

 

 とても気分が良かったのか、お姉ちゃんはめっちゃ可愛こぶっていた。偶に思うんだけど、お姉ちゃんの前世って何歳なんだろう。

 

 呆れながらお姉ちゃんの方を見ていたら視線に気づいたらしく、ちょっと頬を染めながら目を逸らしていた。

 ……今日もお姉ちゃんはかわいい!

 じゃなくて、恥ずかしかったんだ。

 

 そう言えば、お兄ちゃんは何処に行ったのかな?

 先程から姿の見えない兄の行方を探してみれば、ゆっくりとドアの方へと向かっているのが見えた。

 

『何処いくの?』

 

 目線でお兄ちゃんに何処にいくのか尋ねたら、首を横にゆっくり振っていた。多分、体力的に疲れたのかな?

 そのままお兄ちゃんは避難するように廊下へと出て行った。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ヒスイ、ルビーと別れたアクアは長く続く廊下を特に目的もなく歩く。アクアからしてみれば、先程の空間は天国であったのだが、前世の自分の年齢より歳下の少女に可愛がられている状況が精神的にキツかったのである。

 

「ん、マネージャーのガキじゃねぇか」

 

 ボーッとただ進んでいた所、目の前に人の気配がしたのでアクアは一旦立ち止まった。声を掛けられた方へ視線を上げるとそこにはアイの出演するドラマの監督、五反田がしゃがみ込んで視線を合わせていた。

 

「居るのは構わねぇが泣き出して収録止めたら締め出すからな」

「あっいえ我々赤ん坊ですがそのような粗相はしないよう努めますので! 現場の進行を妨げないのは最低限のルールと認識しております、弊社のアイを今後とも何卒ご贔屓に……」

「めちゃくちゃ喋るなこの赤子!」

 

 五反田がそう言ったように、アクアは目の前の彼に対して頭を下げながら、赤子とは思えない程の言葉を喋る。

 

「どこで覚えたそんな言葉!」

「ユーチューブで少々……」

「すげぇなユーチューブって!! 時代だなぁ!!」

 

 仮にユーチューブを見ていたとしても先に言葉を理解する必要があり、それを今のアクア程の歳の子が理解して正しく使うなどできるはずがないのだが。

 

 五反田も結局は何処かズレているのだろう。

 時代なんだろうなと納得してしまった。

 

「早熟な子役は結構見るがここまでのは初めて見た、お前も演技とかするのか?」

「いや……演技とかそういうのは……」

 

 五反田はアクアアクアを抱え上げて目線を合わせながらスゲェなと呟く。

 驚くのも無理もない。いくら早熟な子役がいたとしてもそれは子供の域を出ないのである。アクアに関して言えば、前世の記憶があるため知能的には目の前の彼よりも上なのだ。

 

「画面としておもしれぇな、なんかに使いたい。これは俺の名刺だ、どっかの事務所入ったら連絡しろ」

 

 五反田はアクアを地面に降ろすと、先ほどと同じように屈んで彼と目線を合わせつつ胸元から一枚紙切れを差し出した。そこには五反田の名前と電話番号、職業などが書かれており所謂名刺である。

 アクアは差し出された名刺に目をやると、目線を横へとずらした。

 

「いえ……仕事を振るなら俺じゃなくてアイの方に……」

 

 アクアは演技に関しては興味などなくどうせ仕事を振ると言うのであれば母の方が適任だと判断したのだ。

 

「あーあのアイドルな、顔は抜群に良い、運が良けりゃ生き残るだろ」

「顔が抜群良いのに運?」

 

 五反田から告げられた言葉にアクアは疑問を抱いた。

 アクアの認識では芸能界で生き残るには何かしらの特化している部分があれば十分だと思っていたからだ。

 

「いいか? 役者ってのは3つある」

 

 五反田が指を三本立ててアクアに説明をする。

 1つ目は看板役者。役割としては客を連れてくることを求められる。

 2つ目は実力派。作品の質を担保するのが役割。

 3つ目は新人役者。ここに演技力などはそもそも求めておらず、画面に新鮮さを出せれば及第点。

 次のスターに経験を積ませる業界全体での投資のようなもの。

 

 つまり、アイを含めた新人役者は全員投資を受けている段階であり、逆に売れるか現場に好かれるかでないと次の新人に席を奪われてしまうのである。

 

「この現場にいる新人全員の中で誰か一人でも生き残れりゃ大成功、そういう世界だ。生き残るのは何かしらの一流だけだ」

「ふーん、じゃあ平気だね、アイはアイドルとして一流だから」

「いや、アイドルして一流でも仕方がないだろ」

 

 現場である撮影用に用意した教室の側に移動した五反田とアクアは、廊下側の窓から中を見やりながら会話をする。

 

 五反田が言ったように、幾らアイドルとして一流だったとしてもここは役者としての能力を求められる現場。余り役に立つものではないと、この時の彼は考えていた。

 

「74カット準備できました、カット74!」

 

 スタッフの声と共に動き出す現場。

 現場である教室では、クラスメート同士の会話がなされている。

 

 五反田は監督という立場である為、現場の様子をなるべく俯瞰してみようとしたのだが、ある一点にやたら目を引かれた。その視線の先にはクラスメートと話すアイの姿があった。

 

「演技は並だが……いやに目を引く」

「でしょ、さっきこんな事言ってた」

 

 アクアはアイの事を褒められたのが嬉しいのか、少し笑を含みながら五反田に説明をする。

 

「ステージの上だとどの角度からも……皆に可愛くしなきゃ行けないけど、ここではたった一人(カメラ)に可愛く思ってもらえばいい」

 

 つまりはMVと同じ要領で良いのであれば得意分野であると、意外にもアイのアイドルとしての経験がここで活きていたみたいだ。

 

「MV感覚かよ……時代だなぁ」

「めっちゃ出来良いから絶対見た方が良いよ! 何なら貸すから!」

 

 一昔前ではMV感覚で撮影に挑む役者など居なかった為、これも時代なんだなと一人納得する五反田。

 その横では隙あらばアイの布教活動を行うアクアと言った奇妙な空間が出来上がっていた。




今回は後半のアクアと監督の部分入れたらいつもよりも文字数増えてしまった。
 ちなみに、家族の中で頭がいいのはアクアですが良い子なのはヒスイだったりします。
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