小説版きかんしゃトーマス ~Thomas The Tank Engine & Friends Novel's Story~ 作:進む夜行列車
ジェームスが前回、事故を起こして赤いボディから黒いボディになったことは皆さんもご存じですね?
あれ以来ジェームスは大きな機関車たちにからかわれていました。
特にゴードンときたら、"黒い機関車なんて下品だ"と言っていました。
けれども、今はそうじゃありません。
なぜならその黒いボディをとても誇りに思っているからなんです。
今でもゴードンはその時のことを思い出しては、どの色も役に立つ機関車の色だと学んだからです。
作者より。
ある晩、ジェームスは今日も不機嫌だ。
この前の雨の日に、橋から飛び降りてしまって泥だらけになってしまった。
更には、自慢の赤いボディから黒いボディに塗り替えられたからだ。
おかげで、ゴードン達からはいつも昔の事故のことを言われてはからかわれる。
「でっへっへっへっ。そういえばこんなこともあったな~、客車を壊してお客の靴紐"で"直した機関車が……」
ゴードンが"靴ひも事件"を持ち上げては、ジェームスを見た。
ジェームスは、ずっと口を瞑ったままだ。
「それに、トビーをバカにしてたら自分がタール運搬車と衝突して、汚くなったバカな機関車も居たっけ?」
ヘンリーもタール運搬車と衝突した事故の話を言っては、ジェームスをジロジロ見る。
ジェームスは悔しくて悔しくて、たまらなかった。
「ふんっ! ヘンリーだって下塗りのまま走らされてたじゃないか! それにゴードンも昔は黒いボディになってたじゃないか!」
「俺が黒くなってただァ? プッハァ! 俺のような立派な機関車が真っ黒になるときなんか一度もない!
いいかァ? 俺はグレズリー卿に造られてからは、兄弟のスコッツマンと同じように緑色のボディだった。
ハット卿の鉄道に入った時にはクルー工場で今のような青いボディとなってが、俺のみたいなかっこいい機関車は一台も居ない!
第一、俺のような立派な機関車が黒いボディにでもなってみろ!、あっという間に貧相な機関車に変わっちまう。
つまりだ!トップハム・ハット卿がこの俺様を青色にしたのも、黒いボディにしなかったのも、俺が"特別な機関車"だからだ!
黒色の機関車は"下品"だからな」
ゴードンはそう言うが、実は彼や兄弟フライング・スコッツマンも、あの恐ろしい第二次世界大戦の時に黒いボディになっていた時期があった。
それに黒いボディの機関車はいっぱい居るのだが……、威張り屋のゴードンはすっかり忘れていた。
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その頃、トップハム・ハット卿が電話をしていた。
彼は"ある人"と話し合っていた。
「では、明日の昼ごろにお待ちしております。ゴードンが聞いたら大変喜ぶでしょう。」
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次の日、トップハム・ハット卿が機関庫にやってきた。
機関車たちに、重大なニュースを知らせるためだる
「あー、機関車の諸君!
フライング・スコッツマンが修理を終えて、国立鉄道博物館からソドー鉄道に遊びに来ることになった。
そこで、彼の復帰を祝うパーティーをナップフォード駅で行う。諸君らの腕の見せ所だ!」
『分かりました!!』
機関車たちは元気よく返事をした。
特にゴードンはとても興奮していて、すごく喜んだ。
炭水車が2台付いているのが特徴の機関車でもあるフライング・スコッツマンは、ゴードンにとっては数少ない、大切な家族の一人だからね。
「ゴードン、今回のパーティーはお前が主役だ。
整備工場に行ってボディの色を塗り替えてもらいなさい。塗装が終わったら、連絡駅でスコッツマンが来るまで待機しているんだぞ」
ゴードンは嬉しくて煙突まで笑っていた。
機関車たちは大張り切りだ。
エドワードは、エミリーと一緒に作業員を乗せる。アーサーとヘンリーは、チョコレート工場からチョコを運ぶ。
大きな機関車や、小さな機関車たちも、パーティーに使う物資と乗客を乗せて働いた。
そしてゴードンは、塗装してもらうために真っ先に整備工場に向けて突っ走った。
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──整備工場に着くと、作業員たちがゴードンが来るのを待っていた。
ゴードンは早く塗り替えてもらいたくて、ウズウズしている。
「早くしてくれよ!兄弟が来ちまうじゃないか!」
ゴードンは、せかした。
でも、機関士がゴードンを嗜める。
「落ちつけよゴードン。そんなに慌てなくてもスコッツマンの到着する時間にはちゃんと間に合うさ」
早速、作業員たちがゴードンのボディの色を剥がし、さび止めの下塗りを開始した。
ゴードンはウキウキしていた。
「俺のボディはいつものように青色か? それともフライング・スコッツマンと同じ深緑か?」
ゴードンの機関士は、彼の塗装が終わるまで、ココアを飲んでいた。
まもなく下塗りが終わると、今度は"黒色のペンキ"を持ってきた。それをゴードンのボディや機関室、車輪と炭水車に塗り始めた。
だが、ゴードンはそんなことも知らずにうとうとと眠ってしまう。
やがて塗装が仕上がった頃、機関士がゴードンを起こした。
「起きろよ!ゴードン! 塗装はもう終わったぞ?」
「ん゛ぁ゛? ……あー、もう終わったのか?」
「もうとっくにね。さぁ連絡駅に行くぞ」
機関士がスチームを入れると、ゴードンはゆっくりとバックして転車台に乗って、方向転換をした。
自分のボディがどうなってるのか、彼はゆっくりと自分のボディを見ると絶句した!
なんと!ボディや炭水車全体が真っ黒ではないか! ジェームスの黒いボディよりも黒一色だ。
青色でも、ダークグリーンでもない……。自分が下品だと言い張ってた黒色なのだった。
ゴードンは腹を立てた。
「あ゛ぁ゛!? 何だこの色は!?俺はこんな色にしろとは頼んでないぞ!?」
「ハハハハッ。お前が怒るのは無理ないが、今回はその色で走ってもらうぞ」
「ふんっ!冗談じゃないぜ! 今すぐ元の色に戻してくれ!」
「だめだ。これはトップハム・ハット卿の命令なんでな、多少バカにされても気にしないだろ」
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「わぁ見て見て!"新しい"大型機関車だ!」
連絡駅でゴードンの姿を見て子供たちが叫んだ。
「……って、なぁんだゴードンが黒くなっただけか」
「えっ!?これゴードンなの!? あははっ!変な格好!
これじゃあ"黒焦げになった機関車"だ!」
彼を見て子供たちは大笑いしながらからかった。
乗客たちも、ゴードンを指さしてゲラゲラ笑った。
ゴードンは、面白くもなんともない。
「……何でトップハム・ハット卿は、この俺を黒くしちまったんだ?」
彼はぶつぶつ言いながら、フライング・スコッツマンが来るのを待っていた。
───しかし、いつまで待っても、フライング・スコッツマンは来なかった。
他の機関車は、横切る際にゴードンを見ては、クスクスと笑っていく。
パーシーも、彼の姿を見てからかう。
「黒こげ機関車!急げ急げーい!」
パーシーはそう言って過ぎ去っていく。
ゴードンの怒りはだんだん、頂点まで達していた。
「ふんっ!生意気なチビ機関車め……!」
それでも、ゴードンはフライング・スコッツマンには待っていた。
ゴードンの機関士が、駅長に話をしに行こうとした。その時、その駅長が悪い知らせを持ってきた。
「フライング・スコッツマンがヘンリーのトンネルで立ち往生してしまった! 救援に行ってくれ!」
「急ごうゴードン!!」
ゴードンはシューとたくさんの蒸気を出して、ヘンリーのトンネルへ駆けつけた。
彼は、自分のボディの色のことなど、どうでもよかった。
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ゴードンは、急行と同じ速度で走る、本当にすっ飛ぶような早さだ。
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ヘンリーのトンネルでは、フライング・スコッツマンが立ち往生していた。
水をあまり補給できていなかったので、水が切れてしまったのだ。
「参ったなぁ……。ゴードンや他の機関車たちと久々に会えると言うのに、申し訳が立たないよ……」
フライング・スコッツマンは、罪悪感を感じた。
自分の復帰を長い間待ってくれてるソドー島のみんながどんなにがっかりするのか……考えてしまう。
その時だ、彼は聞き覚えのある汽笛を耳にした。
<ポーッ! ポッポー!>
機関士が急いで、赤旗を振る。
フライング・スコッツマンは汽笛の音を聞きながら、誰がやってきたか見当がついた。
「やっぱりゴードン、君か! 久しぶりだね! ……けど、その色」
「色のことなんざどうだっていい!それよりお前さんを助けるのが先だ」
黒い大きな機関車が、フライング・スコッツマンと連結した。
ゴードンは汽笛を鳴らすと、フライング・スコッツマンを引っ張り出した。
すると、トンネルから出てきたフライング・スコッツマンもあの緑色のボディではなく、ゴードンと同じ黒いボディになっているじゃないか!
ゴードンは、びっくり仰天だ!
フライング・スコッツマンは申し訳なさそうにゴードンに謝った。
「ごめん。僕がこんな色になってしまったから、君に迷惑をかけてしまって……」
彼は思い切って謝った。プライドの高いゴードンは許してもらうはずが無い。
でも、ゴードンは怒らなかった。怒るより逆に優しい笑顔でこう言った。
「なぁに、俺たちゃたった2台しかいない兄弟じゃねぇか! 弟が黒いボディになってて兄である俺も黒くなくちゃいけねぇだろ?」
フライング・スコッツマンの目には、涙が一筋流れた。
さぁ、2台の機関車が大きな駅に向けて、シュッシュッと走り出した。
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ゴードンとフライング・スコッツマンが、滑りこむようにプラットホームに入ってきた。
機関車たちは、彼らの姿を見てびっくりしていた。
でも、エミリーとエドワード、トビーは違った。
「とても似合うわ、2人とも」
「好きでこんな色になったわけじゃない!」
「君たちはどんな色でもぴったりだよ」
まもなくして、トップハム・ハット卿が、ジェームスに乗ってやってきた。
ジェームスは、あの黒色じゃなくなって元の赤色に戻っていた。
トップハム・ハット卿が、ゴードンに話しかけた。
「すまなかったな、ゴードン。お前が怒るのも無理ないが、実はこれはワシと館長が考えてた事なんだ」
「俺ならまだしも、何故フライング・スコッツマンまでですか?」
「彼がそう望んだのだからだよ。お前は忘れてるかもしれないが……
アレはお前が"今の姿になった"頃だ。その時はあの戦争が始まって、フライング・スコッツマンも黒く塗り替える必要があったんだ。
当時綺麗な色をした機関車は、狙われやすかったのでな」
ゴードンは、思い出した。
ソドー島も戦争の影が忍び寄っていた頃、みんな黒いボディになっていた。
フライング・スコッツマンや彼の兄弟たちも同じだ。戦争の最中に人々や軍の荷物を乗せて、走り続けたのだ。
次に、館長が話した。
「それに、君とスコッツマンは"世界に2台しかいない機関車"なんだ。
私はトップハム・ハット卿と話し合って、スコッツマンを黒くするなら君も黒くさせようとね。
今の君たちの色は戦争の色じゃなく、君とスコッツマンの再会を記念とした色でもあり、絆の色でもあるんだ」
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夜、大きな駅は、盛大なパーティーが開かれた。
子供たちは、フライング・スコッツマンに乗って記念撮影を行ったり、ゴードンの機関室を覗いたりもした。
他の機関車たちも、フライング・スコッツマンとお喋りをした。
中でも、彼がロンドンからエディンバラ間を走った話をみんなわくわくしながら聞いていた。
ブラスバンドのメンバーが奏でる音楽も、心地よく……とっても、楽しいパーティーだった。
……だけど、そうでない機関車が一台居た。ゴードンは、パーティーを楽しむ様子を見せなかった。
彼は、ジェームスに言ったあの事を思い出していた。自分が恥ずかしくて、情けなくなっていた。
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その夜、機関庫でゴードンは、スコッツマンとジェームスと一緒に休んでいた。
ゴードンはしょんぼりしていた。
スコッツマンは、心配してゴードンの話し相手になった。
「俺は情けない機関車だ。昨日の夜にジェームスをからかってあんなことを言っちまうなんてよ……
"黒いボディの機関車が下品だ"なんてな…目目目。
今考えると、黒い機関車はたくさんいるもんなぁ……。俺は本当に立派でも偉くもない機関車だな…」
「そう落ち込むなよ!ゴードン。確かに君の言ったことは間違ってるし威張ってばかりだけどさ、僕やここの鉄道のみんなはそう思ってないよ。
僕だって黒いボディは嫌だったさ。でもあの頃はそうは言ってはいられない時期だったからね。
それに僕に比べたら、君は本当に立派で偉い機関車だよ。
僕は知っている……。いや、君たちが出てくる絵本やテレビを見た人たちもみんな知っているさ。
本当は君は、仲間思いで優しい機関車だってね」
ゴードンは、フライング・スコッツマンの話を聞いて、ちょっと微笑む。
その時、寝ていたジェームスも彼に話出した。
「その通りさ! 君は確かに威張っててプライドが高くて文句ばっかり言ってるけど、僕らは君の事を大事な仲間だと思っているぜ。
僕も、君の色をからかってごめんよ」
「なぁに! それはお互い様じゃないか。それによ、お前の黒いボディはかっこよかったぜ」
「ハハハッ!君たちは本当に立ち直りが早いな。 僕も話に参加して良いかい?」
ゴードンとジェームスはもちろん、フライング・スコッツマンを話に入れた。
その夜は、3台の機関車の楽しいお喋りが続いた。とても綺麗な、お月さまの光と照らされてね………。
このお話の出演は、ジェームス、ヘンリー、パーシー、エミリー、エドワード、フライング・スコッツマン
そして、ゴードンでした。
いかがでしたか?
今回は原作に登場するフライング・スコッツマンが登場しました。
このお話の元ネタは、文字通りフライング・スコッツマンが今年の春~夏にかけて戦時仕様の黒一色のボディになったのを基づきました。
皆さまもイギリスに行く際はフライング・スコッツマンに会ってみてください。
次回はオリバーが主役です。
「オリバーとアイリーン ~Oliver and Irene~」をお楽しみに。