詭道贋作ガンダム・戦後の達人   作:モッチー7

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かつて『赤い鷹匠』と呼ばれ、現在は思う所が有って流れのホームレスとなった、火星粛清反対派最強のエースドライバー『ツルギ・マインドル』。
10年前の半年戦争終結を契機に放棄した筈の元愛機『ガンダム・フェルシュング』との10年ぶりの再会を切っ掛けに、反戦主義や厭戦志向を大切にする戦争博物館に住み込みで働く事になった。

それが、何を意味するのか……


第2幕:大義無きルール違反

ツルギと館長はお互い自己紹介をしていた。

「カッオ・ルーさん……で、良いんですよね?」

「はい」

ツルギは館長の本名に少しだけ引きつつも質問を辞めなかった。

「で、何で反戦を目的とした戦争博物館を?」

カッオは少し困惑するも、意を決して話し始めた。

「知名度は10年前の半年戦争より大幅に少ないですが、30年前のアルテミスムーン小壊騒動を知ってますか?」

ツルギは困り果てた。

正直言って知らないからだが、それを正直に言える雰囲気ではない気がしたのだ。

「お気になさらず。ツルギさんはまだ23歳ですし」

「あ、ごめんなさい」

そこで、カッオはアルテミスムーン小壊騒動を軽く説明した。

 

当時のアニアーラ管理委員会に反論する一団が、月面にあるクレーターを利用して建設された6つのドーム都市の1つである『アルテミスムーン』に隠れ住み反乱計画を着々と進めていたが、罪悪感に苛まれ刑期半減に目が眩んだ一部のメンバーが管理委員会に密告した事で先手を盗られ、居住区に悪影響を及ぼす程の激しい戦闘の末に一団は壊滅。密告者達は既に刑期を終えて出所している反面、首謀者達は戦死、終身刑、拷問死、絞首刑などの悲惨な目に遭ったのだと言う。

 

それを聞いたツルギは、少し考えたうえである質問をした。

「……で、先に向こうの掟を破ったのはどっちなの?」

「……どう言う意味ですか?」

ツルギの目は無意識に鋭くなっていった。

「つまりですね、管理委員会が先にテロ組織側のルールを破ったのか?それとも、テロ組織が先に管理委員会側のルールを破ったのか?」

カッオは俯きながら答えた。

「奴らが……奴らが管理委員会を怒らせたんた!」

その声に怒気を感じたツルギは、直ぐに話を打ち切った。

「止めようか?辛いんでしょ?」

ツルギの優しい視線にカッオは言葉が詰まる。

「……ツルギさん……」

そして、ツルギはカッオに背を向けた。

「明日の仕事も大変そうなんで、今日はもう寝ます。おやすみなさい」

そのまま立ち去ろうとしたツルギだったが、ツルギは一旦停まって一言告げた。

「少々とは言え、アルテミスムーンのマンションエリアを壊したんですよね?なら、その戦いで死んだ人がいるって事ですよね……」

そう言い残すと、ツルギは眠りに行った。

1人残されたカッオはツルギの苦悩の一端に触れた気がして後ろめたい気がした。

 

次の日。

ツルギとカッオは夕飯を買う為にショッピングモールエリアに向かっていた。

そこへ、1人の男性が話しかけてきた。

カッオは何故か身構え、ツルギはそんなカッオの動揺に何かを感じていた。

しかし、男の目的はツルギの方だった。

「よお。久しぶりだなぁ」

男性の正体に気付いたツルギは驚きを隠せなかった。

「あー。私のアルバイト代をむしり取りに来たのかよ」

そう、ツルギがカッオが管理する戦争博物館にアルバイトする直前に会話した元迷惑動画投稿者であった。

「そう言う事言うなよ。俺はお前の様子を観に来たんだよ。なかなか帰ってこないからよ」

だが、ツルギの元迷惑動画投稿者への嫌がらせの様な台詞は続く。

「元々、あそこに未練は無いしね」

「無いんかよ?」

「で、アルバイト代をむしり取らないなら、何しに来たの?」

「つれないなぁ!」

だが、突然の衝撃音によって口喧嘩は遮断された。

「何だ何だ!?」

「向こうだぞ?」

野次馬達は衝撃音の発生源に向かって往くが、ツルギだけは何か嫌な予感がしたのか博物館に急ぎ戻って行った。

「カッオさん!私はガンダムに乗るから貴方は先に逃げて!」

ツルギの言葉にカッオは嫌な予感がしたが、元迷惑動画投稿者は言ってる意味が解らない。

「え?……アレってただの事故じゃないの?と言うか……がんだむ?」

 

カッオと元迷惑動画投稿者が衝撃音の発生源に到着すると、暴走族がスペースデブリ密漁で得た材料で作ったと思われるモビルフォース擬きの様な機体が管理委員会が開発した量産型モビルフォースに突き飛ばされていた。

「あーあ、とうとうブラックライオン団もこれで終わりか」

「ま、あいつら散々暴れたからな。潰されて当然だよ」

ブラックライオン団のモビルフォース擬きが管理委員会に次々と敗れ去る光景に、元迷惑動画投稿者は完全に気圧された。

「何……これ……モビルフォースの事は軽くは聞いていたけど……」

一方のカッオは管理委員会側の攻撃も逮捕が目的ではないと感じ、30年前のアルテミスムーン小壊騒動を思い出してしまい、慌てて勝手に避難を呼びかける。

しかし、野次馬達は管理委員会側の攻撃が過剰だと気付かない内は、避難を促すカッオを視界を邪魔する邪魔者にしか見えなかった。

「そこに立つなよ。見えないじゃないか」

「何で俺達まで管理委員会に攻撃されなきゃいけないんだよ?」

「邪魔邪魔!バズる写真が撮れないじゃん!」

カッオは野次馬達の悪い意味での平和ボケに愕然とした。

「今の平和に慣れ過ぎて……今の平和を護る努力を怠っているのか……」

だが、ブラックライオン団総長の悲痛な怒号が野次馬達の考えを変え始めた。

「オイ!待て!その機体はもう動かねぇよ!オーバーキルだって!死体蹴りはもう古いって!」

ブラックライオン団総長が動けないモビルフォース擬きに乗る部下を守る為にヒートナイフを投げつけた。

投げつけられた管理委員会側は、慌てるどころか総長を嘲笑い始めた。

「苦し紛れに溶斬兵器を放り投げるとはな……お前は馬鹿か?」

一方の総長は部下達を守る為に必死であった。

「うるせぇ!リーダーが仲間護って何が悪い!」

そう言いながら総長の機体が身を盾にしながら部下と管理委員会の間に割って入った。

が、管理委員会側の機体はビームマシンガンの銃口を総長の機体の運転席に向けた。

「そんなに死にたいのであれば……お望み通りに―――」

一方の野次馬達も管理委員会側の攻撃方法に違和感を感じ始めた。

「おい……アレって……」

「あんな撃ち方してたら、ドライバーが死んでしまうぞ?」

「え?ちょっと?ただの逮捕劇じゃないの?」

そして、野次馬の中から管理委員会側の横暴に耐え切れなくなった者達の「やめろ」コールが鳴り響き始めた。

「いくら何でもやり過ぎだぁー!殺す気かぁー!」

「さっさと逮捕しろよ!お前らはプロなんだろ!?」

「これじゃあどっちが悪人か判らなくなるじゃないかぁー!」

しかし、管理委員会側のモビルフォース小隊は野次馬達の反論を邪魔者にしか見えなかった。

「これは……侮辱罪と公務執行妨害罪の適用だな?」

「え」

「うそ」

「こっち来る?」

管理委員会側のモビルフォース小隊隊長の残虐かつ横暴な合図により、野次馬達がようやく逃走を始めた。

「向こうへの攻撃を始めろ!」

「うわぁー!?本当にこっちに来たぁー!?」

「きゃあぁーーーーー!」

 

カッオが管理委員会側のモビルフォース小隊に追われている野次馬達の避難誘導を行う中、元迷惑動画投稿者は何がどうなっているのかが解らない。

「何で?何で!?何で俺達が管理委員会に襲われなきゃいけないんだよ」

だが、その間にも管理委員会側のモビルフォース小隊が野次馬達に迫っていた。野次馬達が異変に気付いて逃げ出すのが遅過ぎたのだ……かに見えた、

「くそぉー!ここまでかよぉー!?」

しかし、まるでご都合主義の様に管理委員会側のモビルフォース小隊と逃げ惑う野次馬達の間に、まるで身を盾にする様にガンダム・フェルシュングが割って入った。

「ん?」

モビルフォース小隊の隊長が突然出現したガンダム・フェルシュングに首を傾げる。

一方のツルギは、さっき思い付いた最悪な展開が事実になってしまった事に静かに怒っていた。

「貴方達……この後ろにいる連中が、お前達に何をした?」

モビルフォース小隊の隊長は冷静かつ冷酷に答えた。

「侮辱罪と公務執行妨害罪だ」

外れて欲しかった予想通りの返答に呆れたツルギは、その返答だけでこの混乱の全てを悟った。

「どうやら……お前達は度を超えたらしいね?それでは、そこで寝ている反乱者達と変わらないよ?」

モビルフォース小隊の隊長は余裕を崩さない。

「そう言うお前はどうなんだ?そんな物を持ってここまで来たって事は……」

管理委員会側のモビルフォース小隊が臨戦態勢をとる。

「貴様も違反者だ。攻撃する」

そんな残酷かつ非情な攻撃宣言に対し、ツルギは管理委員会側のモビルフォース小隊の腐りきった性格への失望感満載の溜息と勝利を確信した笑みが混ざった複雑な表情を浮かべた。

「馬鹿ですね?……貴方達は……」

 

この騒ぎはアニアーラ管理委員会本部にも届いていた。

「またウミギ達がやらかしたのか?」

どうやら、上層部もツルギと対立している管理委員会側のモビルフォース小隊の傲慢で冷酷な性格に手を焼いていた様だ。

「10年前の半年戦争は、我々を色々と変えてしまった様だな?」

ソファーでくつろぐ将官の言葉に、立ったまま報告を聴いた佐官は汗だくで困り果てた。

「申し訳ございません。モビルフォース適性がSSR故に、私ですら強気に成りきれずに監督不行き届きに……見苦しい言い訳なのは承知なのですが……」

佐官の困り果てた顔を見ながら将官が溜息を吐く。

「エリート意識故の高慢化か……この事が10年前の半年戦争の再来に繋がらなければ良いのだが……」

とは言え、ツルギと対立している管理委員会側のモビルフォース小隊の所業を知らねばならない。

「で、ウミギはどこにいる!?今直ぐここへ呼べ!」

だが、通信手の報告は佐官の予想とは真逆だった。

「それが……やられてるんです!ウミギ准尉が!」

「バカな!?あいつらはモビルフォース適性RR以上の筈だぞ!」

アニアーラ管理委員会公認のモビルフォース適性は、下から順に不許可、N、NN、R、RR、SR、SSR、Lとなっている。

佐官が予想外の展開に慌てる中、通信手の報告が続く。

「ですが、突然現れた謎の赤いモビルフォースが非常に強く、まるで赤いモビルフォースの主翼が機体から離れて鷹か鷲の様に我が軍のヘドデルを襲っており、その赤いモビルフォースは大人気アニメ『機動戦士ガンガル』に酷似してとの報告も―――」

それを聞いた将官が慌てながら通信手に掴みかかる。

「それはどのアニアーラだ!?本部に残っている宇宙船は今どうなっている!?」

「いや……あの……」

驚き過ぎて言葉に詰まる通信手。

 

一方、ツルギが運転するガンダム・フェルシュングの圧勝ムードはまだ続いていた。

それもその筈、ガンダム・フェルシュングのヒートウイングビットがアニアーラ管理委員会所属の量産型モビルフォース『ヘドデル』の四肢を容赦無く切断してしまったからだ。

「残るは……1人」

「くっ!?」

「私のせいで皆さんが無駄話し過ぎた様ですね その程度の注意力しか持っていない者が実戦経験を欲しがるなんて……まだまだ幼稚 」

ウミギ准尉以外のヘドデルは全て戦闘不能と言う体たらくである。

その様子に、さっきまで逃げ回っていた野次馬達が戻って来て、ガンダム・フェルシュングの正論かつ堂々とした圧勝ムードに声援を送っていた。

「見ての通りですよ。このまま私だけ逮捕してそれ以外は無罪放免にした方が得だと思いますよ?」

だが、ウミギはその条件を飲もうとしない。

「ば……馬鹿言えー!こいつらの侮辱罪を見逃せと言うのか!?そんな!出来ぬ!出来る訳無いだろ!アニアーラ管理委員会の威信と沽券に関わるー!」

ツルギが再び溜息を吐くと、仕方ないとばかりに口を開いた。

「面白い話をしましょう。マヨネールさんと一緒に観た、あるホラー映画の話を」

ツルギが口にした名前に驚きを隠せないウミギ。

「マヨネールだと!貴様!火星居住者か!?いや!それだけではマヨネールにそこまで近付けない筈!貴様!何者なんだ!?」

 

それは、明時14年の半年戦争開戦直前の出の出来事。

後の火星粛清反対派最高指導者となる当時アニアーラ管理委員会傘下軍隊中佐のマヨネール・コーアが、クズワンのドライバー達を集めてある映画を観せていた。

その映画の名は……『食人族』。

ドキュメンタリー制作の為にアマゾン川上流の“グリーン・インフェルノ”と呼ばれる密林地帯に向かった4人のスタッフが原住民の襲撃を受けて食い殺されると言うセクスプロイテーションホラー映画である。

映画の中で何度も繰り返される殺戮シーンに目を背ける者も多く、当時13歳だったツルギも恐怖で体が動かなくなってしまった。

「大丈夫なのかい?大事を行う前にこんなグロい映画なんか観せて?」

無論、ただ味方の士気が下がるだけならこんな事をしなかっただろう。だが、4人のスタッフが原住民の襲撃を受けて食い殺される理由こそが、マヨネールがこの映画を観せた本当の目的であった。

「で、君達はこの作品の悪役はどっちだと思う?」

「この映画の……悪役?」

そう言われ、思い出したくも無いが食人族の内容を思い出す。そして、その内の1人がある事に気付いた。

「つまり、先に攻撃したのは4人の撮影スタッフの方!?」

マヨネールは満足そうに首を縦に振る。

「ん!彼らこそ、自分勝手な理由で原住民の掟を次々と破り、原住民達の平和を乱した者達。故に、撮影スタッフの味方である筈のモンロー教授は最後に『真の野蛮人はどっちなんだろうな?』と言ったんだ」

確かに、4人の撮影スタッフ(の内2人)が原住民達への性的暴行や放火などの傍若無人の限りを尽くした結果、原住民達は激怒して4人の撮影スタッフを食い殺した。『食人族』と言う映画はそう言う内容だ。

だが、まだ真の意図が読めない者も多い。

「それは解りましたが、それとこれから起こると予想される大事との関係は?」

その質問を聴いたマヨネールの目に決意の炎が宿る。

「つまり、外から来た撮影スタッフこそが『大義無きルール違反』を犯した大罪人であり、中に居た原住民達はそんな『大義無きルール違反』を犯した撮影スタッフの罪を裁いただけなんだ」

そして、改めて火星粛清反対派の戦いの意義を言い放つ。

「そう!私達は侵略者ではない!自分達の掟を護る為に戦う……大義に準じた原住民なんだ!」

が、マヨネールの話を聞いた者の中にあげ足を取る者がいた。

「でも、それだと俺達も俺達を殺そうとしている連中の掟に従わなきゃいけなくなりますよね?」

「ふふ。痛いトコをついてくれるな」

その途端、一同は楽しそうに大笑いした。

 

そして、話は明時24年のツルギが運転するガンダム・フェルシュング対ウミギ准尉が運転するヘドデルに戻る。

「その……食人族とか言う映画のお陰で、『大義無きルール違反』の重さを知ったんです」

その話を聞いたウミギが空恐ろしく気分になってきた。

(本当に何者なんだこいつはぁ!?火星粛清反対派やマヨネールの事を何でそこまで知っているぅ!?何故か嘘偽り混じりの作り話を聞かされている気分になれぬぅ!)

その間、ツルギが運転するガンダム・フェルシュングがゆっくりとウミギ准尉が運転するヘドデルに歩み寄る。

「う!?」

「だから貴方に質問します。貴方が裁こうとした人達が犯したルール違反に……本当に大義は無かったんですか?」

「ぐ!?」

ウミギは完全に貫禄負けしてじりじりと後退する。

「もし『大義無きルール違反』を犯したのが貴方だとしたら、それ以上はお止めなさい。後の残るのは……死んでもなお消えない酷評だけですから」

ツルギのこの言葉にウミギは激怒する。

「酷評だとぉ!?そんな恥ずかしいマネが出来るかぁー!」

ウミギ准尉が運転するヘドデルがダメもとで55.6㎜ビームアサルトライフルの銃口付近にハイフリークェンシーナイフを取り付ける。

ようやく現場に着いた佐官が慌ててウミギに命令する。

「やめんか!その者は!」

一方の将官は、呆れた顔をしながら勝敗を予想した。

「愚かな男だ。例えモビルフォース適性がSSRであろうと、たかが犯罪者の鎮圧程度の仕事しかしていない者。対する『赤い鷹匠』は文字通り、半年戦争で半年間実戦経験を積んだ者。場数が違うのだよ」

将官の言葉通り、フェルシュングはヘドデルの銃剣特攻をジャンプで躱しながら、90mmビームピストルでヘドデルの右肩を切断した。

 

ウミギ准尉率いるモビルフォース小隊を苦も無く沈黙させたツルギがガンダム・フェルシュングから降りた。

元迷惑動画投稿者は驚き過ぎた上に置いてきぼり過ぎたので、聞きたい事が山ほどあるのに何を質問したら良いのかが解らなくなった。

「えっと……あのぉ……何?……」

それを観ていたカッオが元迷惑動画投稿者の動揺の理由を端的にツルギに説明する。

「ツルギ、どうやら君は彼に正体を明かしていない様だね?」

「ツルギ!?―――」

カッオの口から『ツルギ』と言う単語を聞いて驚く元迷惑動画投稿者だが、彼の質問はツルギに群がる野次馬達に遮られた。

「スゲェよアンタ!」

「本当にスカッとしたぜ!」

「アンタは俺達の命の恩人だ!」

だが、そんな野次馬達の歓喜と称賛は、現場に到着した将官によって終了させられた。

「メカネ中佐、人払いを」

「は!」

「ほらほら、君達、出て出て」

「ここは危険だ。下がって下がって」

「横暴だぁ!お嬢ちゃん、こいつらも叩きのめしてくれぇ!」

アニアーラ管理委員会の警備隊が野次馬達を追い払うと、将官がツルギに話しかけた。

「10年ぶりかな?あの時は君の敵だったが」

将官の言葉にまたしても驚く元迷惑動画投稿者。

「10年ぶり!?敵!?ちょっと待て!10年前のと言えば!?」

対するツルギは、残念そうな顔をしながら困った素振りをする。

「貴方達もまだ……私の事を『赤い鷹匠』と呼ぶんですね?その愛称は捨てた心算だったんですが」

元迷惑動画投稿者は、頭の中で全てが確定した。

「もしかして!お前があの『ツルギ・マインドル』かよ!?」

そのやり取りを視て、将官はツルギの勧誘を諦めた。

「この様子だと……実戦に戻る気は無さそうだな?」

それに対するツルギの答えは、

「私は、目の前にいる守りたい物を必死に護る。あの事件の後からずっとそうしてきましたから」

将官はツルギから無言で去ると、メカネ中佐に命じた。

「あの者達の今日の抵抗行為を不問にしろ」

「はい。目撃者達の証言や防犯カメラの映像から視て、彼らの正当防衛は明らかですからね」

メカネ中佐はツルギ達をチラ見しながら感想を述べる。

「しかし……半年戦争で我々管理委員会を散々苦しめたと聞かされたのでどれ程恐ろしい者かと思っておりましたが、案外慈悲深い方だったんですね?」

 

ウミギとの戦いが完全に終わって帰路につくツルギ達。それを追う元迷惑動画投稿者。

「おい!待ってくれよ!お前、本当にツルギ・マインドルなのか!?」

その質問に対し、ツルギは意地悪に返す。

「誰だって隠したい過去があるものです。そう言う貴方だって、裁判所に9413万の借金を背負わされてライト・アロースを辞めさせられたじゃないですか」

本名を辞めさせられたと言われた元迷惑動画投稿者が赤面しながら反論する。

「ライト・アロースは俺の本名だ!辞めたって言うな!」

そんなやり取りを聞いたカッオは、別の意味で驚いた。

「裁判所が借金を背負わせたって、君はいったい何をしでかしたのかね!?」

ライトは困惑しながらはぐらかす。

「えーーーとぉーーー……若気の至りぃ……と申しましょうか……」

だが、カッオは自虐的に訂正する。

「ま、私も人の事は言えませんけどね」

ツルギはある程度察したが、ライトは言ってる意味が解らなかった。

「え?」

そして、カッオは自分の過去を白状した。

「30年前のアルテミスムーン小壊騒動、あれは管理委員会に寝返った密告者によって計画が明るみに出たって言いましたよね?」

だが、ある程度答えに気付いたツルギがそれを遮った。

「止めましょう。1度も間違えずに全問正解のまま人生を終われる人なんて、1人もいませんから」

「ツルギ……」

一方、また置いてきぼりなライトは完全に困惑する。

「どう言う意味?説明が欲しいんですけど」

対して、ツルギは意地悪そうに言う。

「誰だって心に傷を持ってる。それだけですよ」

「いやいやいやいや!それだけじゃ解んないって!」




本作オリジナル設定

●アルテミスムーン小壊騒動

30年前に月面にあるドーム都市の1つで起こった武力テロ未遂事件。
武力によるアニアーラ管理委員会解散を目論む一団から密告者が出た事で計画が発覚し、一団は居住区を損壊させる程の抵抗を行うも敗北して鎮圧された。密告者達は軽い刑罰で済まされた反面、首謀者達は戦死、終身刑、拷問死、絞首刑などの陰惨かつ冷徹な処分が下された。

●カッオ・ルー

性別:男性
年齢:53歳

反戦を目的とした戦争博物館の館長。ツルギが「赤い鷹匠」だと知りながら運搬兼護衛として住み込みで雇った。
実は30年前のアルテミスムーン小壊騒動でアニアーラ管理委員会に寝返った密告者で、良かれと思って武力テロを未遂で終わらせようとしたが、結局民間人にまで死傷者を出してしまった事で自分の行為に疑問を抱き、2年間の刑期を終えると反戦を目的とした戦争博物館の開展に尽力した。
【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】における『神谷薫』に相当する人物。

●ライト・アロース

性別:男性
年齢:19歳

ツルギが知り合ったホームレス青年。
元は動画を投稿していた男子高校生だったが、被害に遭った店舗に訴えられて9413万もの賠償金を命じられ、その事が切っ掛けで一家離散となった。
その後、ホームレス同士としてツルギに出会うが、ウミギと対立するまでツルギの正体を知らなかった。ツルギの正体を知った後も、しばらくは展開に置いてきぼりにされる日々が続いた。
【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】における『明神弥彦』に相当する人物。

●モビルフォース擬き

暴走族や暴力団がスペースデブリ密漁で得た材料を使って作った人型戦闘車輌。
個人仕様にレストアされる事が大半で多様性に長けているが、戦闘力は公式のモビルフォースに遠く及ばず、一部の機体を除きアニアーラ管理委員会傘下軍隊の足元にも及ばず敗北、押収されるのがほとんど。

●モビルフォース適性

アニアーラ管理委員会公認のモビルフォース運転技能調査。
下から順に不許可、N、NN、R、RR、SR、SSR、Lとなっている。


●ウミギ

性別:男性
愛機:ヘドデル

アニアーラ管理委員会傘下軍隊准尉。モビルフォース小隊の隊長でモビルフォース適性はSSR。エリート意識が強く、モビルフォースの運転を許可されていない下級兵士や一般市民を見下すなど性格は正義感の欠片もない傲慢で冷酷。モビルフォース適性がSSRであるためメカネ中佐が強気に出られないのをいい事に乱暴狼藉を働いている。
だが、暴走族を執拗かつ過剰に痛めつけ、横暴を咎めた町民を逮捕、惨殺しようとするなどしてツルギを挑発し、部下を一蹴され呆気なく敗れる。
【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】における『宇治木』に相当する人物。

●ヘドデル

型式番号:OMF04
頭頂高:18.3m
重量:49t
運転手段:オートマチックトランスミッション
武装:55.6㎜ビームアサルトライフル
   400mmアンダーマウントグレネードランチャー
   90mmビームピストル
   ハイフリークェンシーナイフ

アニアーラ管理委員会傘下軍隊最新鋭量産型モビルフォース。
背部から腰部にかけて装備された巨大なスラスターにより、空中戦等においても高い機動性を発揮する。また、55.6㎜ビームアサルトライフル用に超高周波銃剣も作られ、普段は腰にぶら下げてナイフとして用いるが、銃口付近に取り付ける事も出来る。
【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】における『剣客警官隊』に相当するモビルフォース。

●マヨネール・コーア

性別:女性
年齢:35歳
身長:160㎝
体重:50.7㎏
体型:B86/W62/H84

元アニアーラ管理委員会傘下軍隊中佐で、現在はモビルフォース火星工場工場長。
半年戦争では火星粛清反対派最高指導者として活躍し、その事がモビルフォース量産の切っ掛けとなった。その為、一般的には優秀な司令官として知られているが、子供好きで母性的な面もあるが、元号が西暦の頃に公開されたセクスプロイテーションホラー映画『食人族』から戦争の本性を学ぼうとしたり、モビルフォース量産の切っ掛けとなった人型戦闘車輌正式採用に躍起になったりと、意外と奇行が多い。
イメージモデルは【機動戦士ガンダムAGE】の『ナトーラ・エイナス』で、【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】における『桂小五郎』や『柏崎念至』に相当する人物。

●メカネ

性別:男性

ツルギ達が住むアニアーラを管轄しているアニアーラ管理委員会傘下軍隊中佐。
半年戦争もあって、赤い鷹匠を凶悪な人物と思っていたが、実際に出会ったツルギの人柄を知ってからは彼女を心から信頼を寄せ、協力関係を築く。お人好しな行動も多く、その性格がウミギ准尉率いるモビルフォース小隊の乱暴狼藉の遠因となった。
イメージモデルは【呪術廻戦】の『伊地知潔高』で、【るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】における『浦村署長』に相当する人物。
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