織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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なんか、先輩キャラが会長と想像している方が多かったですが、全く考えてませんでした(笑)

たしかに、そっちの方が早めに接触できるし、かんざ……かんちゃんも出しやすくなるし、一石二鳥だったなぁorz

会長どうやって出そうかな? 頑張って考えます。

そして、ソードアートオンラインⅡ。次回、13話目ですが、【終】の文字がない……。
まさかの2クールもの? だとしたら、嬉しい限りです!!

やっぱり、マザーズ・ロザリオまでやって、キャリバー編はOVAでしょうか?夢が広がります!!
ワールド・パージ編もOVA出ますし、どっちもどんどん盛り上がってほしい物です!!


第十話・人の縁

「これから一週間、一日一時間だけだけど可能な限りIS操縦について私が教えてあげるわ。よろしくお願いね?」

「「はぁ!?」」

 

初対面であろう、上級生のその女性はイキナリ一夏達の前に現れるとそう宣言した。

 

「え、あの意味が分からないんですけど?」

「ん? 言葉通りだけど、ひょっとして言葉が通じてない?」

「いや、そういう意味じゃなくて」

 

何の前触れもなく、しかも初対面でそうしてくれる理由が一夏にはわからなかった。初めは、物珍しさ、あるいは好奇心かとも思っていたがすでに訓練機の使用許可までしている辺りを見ると、なにかしら自分に対して教える理由があるはずだ。

だが、一夏はそれに覚えがなかった。

 

「あ、ひょっとして千冬姉……」

「織斑先生は関係ないわ。私の意思よ―――個人的な理由からの、ね」

「(ますます、理解できない)」

 

からかってるだけなのか。だが、それにしては手が込んでいた。

正直言えば願ったりな話であったが、目的が見えない以上安易に返事はできなかった。

 

「さ、そんな訳だから、今日の放課後は第一訓練場に来てくれるかしら?」

「必要ありません、一夏には私が教えます」

 

呆然としている一夏を置いて話を進める上級生。そこに、箒が待ったを掛ける。

 

「あら、あなたは?」

「私は、篠ノ之箒です。あ、姉は・・・篠ノ之束と言います」

 

箒は、あんなにコンプレックスとしている姉の名を理由にしたのが心の底から情けなかった。それでも気が付けば口に出してしまっていた。つい今しがた一夏との訓練の約束をしたばかりの箒は、一夏にとって良い話よりも自分が彼の時間を独占したいという欲望が強かった。

 

「ふぅん、それで?」

「え?」

 

その切り替えしに箒は思わず呆然とした。

 

「なるほど、確かにあなたが身内にそんな人がいるなんてすごいアドバンテージね? それで? あなた自身はISをどれだけ稼働させてきたの?」

「そ、それは……」

 

箒は言い淀む。学習期間こそは一夏よりも長いと言えるが、実際の稼働時間は一夏とどっこいどっこいであった。だが、箒はその上級生が怖くなった。彼女は、箒の本質のみを見ている。その浮世離れしたような雰囲気がかつて屋上で話した一夏の姿と重なって……。

 

「だ、大体! 何故貴方がそこまでする必要があるのですか!?」

「そうね、さっきも言った通り個人的な理由よ。もっと言うのなら……」

 

そう言い、再び一夏へと顔を向ける。その顔には後悔の念が映っていた。

 

「君には、大きな借りがある」

「借り、ですか?」

 

身に覚えのないその言葉、だが重みのある言葉に一夏は考える。かつて本当に彼女と会ったことがないのかを。あるいは接点がなかったのかを。

 

「そう、借り。直接会った訳じゃなかったから、私の事を知らなくても無理はないわね」

 

彼女は軽く、息を吸いゆっくりと吐き次の言葉を口にした。

 

「私の……SAOでの名前はミーナ。ここまで言えばわかるかしら?」

「なッ!!」

 

そのカミングアウトに箒は思わず絶句する。目の前の女性は明らかに上級生。それは、自分が留年していると告白しているも同然の事だから。

現に、彼女はこの事を言う事に躊躇していた。だけど、彼女は言ったのだ。そのもっとも隠しておきたいはずの事実を。

では何故?そう思い、一夏を箒は見た。対する一夏も驚いた様子である事を確認した。

 

「……!」

 

その名前は彼の記憶の片隅に存在した。件の偽ブリュンヒルデが所属していたギルドマスターの名前がミーナであったはず。

 

「えっと、その……」

 

一夏は、正直何を言えばいいのか分からなかった。あの時自分が動いたのは、単に偽物の所為で千冬の名に傷が付くのが嫌なだけだった。勿論、助けたいという気持ちもあったがそれはギルドと言うよりも騙されていたプレイヤーに対してだ。

 

「本当はずっとお礼が言いたかったの、ありがとう。それと、私の監督不足で貴方を危険な目にあわせてしまったわね。ごめんなさい」

「あ、いえ。そんな別に」

 

戸惑う一夏に、ミーナと名乗った上級生はクスリと苦笑いを見せる。

 

「確かに、話にちょっと脈絡が無さ過ぎたわね。実は話はノンから聞いているの」

「のほほんさんから?」

「ぷっ、本当にそう呼んでるのね」

 

その一夏が考えた渾名に、思わず吹き出してしまった。

 

「あの子とはギルドが解散してからもある程度連絡を取ってたの。勿論、現実に戻ってもね?」

 

まさか、アインクラッドにいてIS学園に入学できるとは思っても見なかったけど。そう彼女は呟いた。

 

「(ギルド、解散してたのか……)」

 

一夏は、自分が知らなかった情報を今知った。だが、彼が知らないのも無理はなかった。実際に解散したのは攻略組が73層を征した頃の話だからだ。

それまでミーナは、信頼のあるギルドに、残ったメンバーを入れて貰えるように交渉などをしていた。

そう言った事情があり、彼女に余裕ができたのは75層攻略時の頃になったからだ。76層以上に行くと、システムの不具合で76層未満の階層に戻る事ができず、彼女は一夏こと、チナツにお礼を言うために会いに行くことができなかったのである。

 

「改めて、ありがとう。私達、SAOプレイヤーのために怒ってくれて。代表としてだなんて言えないけど、私もあの世界を生きてきた者として感謝しているの」

 

だからこそ彼女は言う。一夏のために何かをしたいのだと。

 

「そ、それはうれしいんですけど」

 

ちらりと箒を見る。先ほど箒に剣を見てほしいと頼んだ手前お願いしますとは素直に言えなかった。だが、箒は。

 

「よ、よかったではないか!」

 

そう言い、彼女は席から立ち上がる。その声は若干ではあったが上擦っていた。

 

「で、では私はこれで失礼しよう! 邪魔になっても困るしな!!」

「あら、ちょっと待ってくれるかしら?」

「な、なんですか!!」

 

箒ははっきり言って泣きそうであった。情けなかったのだ。自分が一夏を独占できるという思いから、一夏にとって良い話を邪魔するような事をして。

そして、不謹慎ではあったが羨ましかった。元SAOプレイヤーという理由だけで簡単に一夏の懐に潜り込むような事ができる彼女が。

そんな箒を見透かしたかのように、ミーナは言った。

 

「私も留年生だから正直、放課後全部を彼に使う事はできないのよ」

「え、じゃぁ―――ひっ!?」

 

後は筋トレでもしてまーす、とか言いそうになった一夏をミーナは睨みを利かせる。かつての彼女は優しさの塊であった。

だが、件の事件以降優しさだけでは駄目だと悟り、厳しさを身に着けれるように努力していた。今までそれを生かせることはできなかったが、今この場、乙女心を理解していないお馬鹿な恩人に対して発動することができた。

 

「私に出来るのは、精々彼がIS慣れできるように付き合うくらい。きっと、戦闘訓練なんてできないわ」

「そ、それが何だと言うのですか?」

「ISはパワードスーツ。当然、使用には体力も使うし、素の状態での技能もきっと役に立つ」

 

だから、しっかりと基礎訓練は面倒見てあげなさい。そう彼女はお姉さんぶって言った。

そう言った彼女に箒は素直に思ってしまう。

 

「(敵わないな……)」

 

まるで、一夏と話しているようだ。SAO生還者は皆こんな感じに、不思議な魅力を持っている者であろうか? そう勘ぐってしまうぐらいだった。

 

「あ、そうだ名前聞いてもいいですか? まだ、アバター名しか聞けてないですし」

「そうね、私は・・・」

 

そこまで言いかけて、彼女はぴたりと口を閉じた。そして、頭を振る。

 

「いいえ、止めておくわ。さっきも言った通り、私は留年生。今回は手を貸すけど、これがきっと最初で最後だから」

「え、そこまで大変なら、無理に俺に手を貸さなくても」

「私も、激励だけで済ませようとも考えたわ。だけど。しっかりけじめはつけておきたくてね?」

 

そうしないと、前に勧めないと思うから。彼女はそう締めくくった。

 

「それじゃぁ、また放課後ね。時間厳守でお願いするわね」

 

彼女は立ち去ろうとするが、不意に止まり箒へと近づく。

 

「な、何か?」

「私は彼に恋愛感情はないから、頑張ってね」

「なッ!!?」

 

ミーナはこっそり箒にそう耳打ちして、楽しそうに笑いながら去っていった。

 

「何を言われたんだよ、箒?」

「な、ななな何でもない!!」

 

不思議そうにする一夏に対し、箒は焦りつつも何とか答えた。

 

「んん! ま、まぁ、これでISの動作訓練の問題は解消した。後の基礎鍛錬は私に任せておけ!!」

「お、おう。(なんか急に元気になったな)」

 

ミーナが一夏を狙っている訳ではないと知って、元気になった箒だが一夏はコロコロと忙しいな、としか思っていなかった。

 

「それにしても、人の縁ってのは分からないもんだなぁ・・・」

 

一夏は何となく、その言葉を口にしていた。あの事件だって、そう言った事があったと言う位で、事件の背景、そのギルドの関係者の事などすっかりと忘れていた。

現に今も、肝心の偽ブリュンヒルデの姿も知らなければ、調べていたはずの名前もうろ覚えだ。実際に聞けばはっきりと思い出すだろうが、今更ミーナや本音に聞くつもりもなかった。

 

「さ、そろそろ教室戻ろうぜ。千冬姉にドヤされちまう」

「織斑先生と呼ばねば、間にあっても叱られるぞ?」

「違いねぇ。家じゃダラシナイの一言なのにな」

「キョロキョロしながら言うなら、初めから言うな一夏・・・」

 

 

 

 

 

 

「(これが、今の一夏の剣技!!)」

 

箒は、防具を身に纏い、手には竹刀を持って一夏と対面していた。対する一夏も彼女同様に防具を身に纏い、竹刀を持っている。

 

「はぁ!!」

 

剣道は、現在に置いてはスポーツに分類されるものだ。しっかりとしたルールがあり、選手はそれを守る義務がある。護らねば失格するから当然といえば当然だ。

だが、一夏の今振るっている竹刀の太刀筋は本人は気付いていないだろうが、ルールなど二の次の物であった。

なるほど、と箒は納得した。確かに、千冬の言う通り彼の剣は剣道には向いていない。時折、片手持ちすらしてしまう始末だ。きっと、他にも無意識にルール違反をしてもおかしくない。そう感じていた。

もちろん、矯正範囲内ではあるが別に剣道の大会を目指しているわけではないのでする必要なはない。むしろ、変にそういった事をすれば今の太刀筋が歪んでしまう可能性もあった。

 

「せぁ!!」

「しまっ!!?」

 

だが、そんな事を考えていたせいか箒に隙が生じてしまい一夏は箒の竹刀を上へと弾いた。

 

「(決める!!)」

 

そう感じた一夏は、ソードスキル発動のモーションへと入り……。

 

「―――あ」

「めぇんッ!!」

 

現実世界で発動するはずもなく、思わず固まってしまったその隙に箒の一撃が一夏の脳天を貫いた。

 

「いって!?」

 

その思ったよりも強い衝撃に、一夏は思わずへたり込んでしまう。その様子に、慌てた箒は急いで手を伸ばした。

 

「す、すまん一夏。思った以上に力が入った」

「あぁ、大丈夫」

 

そんな箒に手を上げ、自分は問題ないとアピールして一夏は座り込んだまま防具を外す。

 

「はぁー。参った、参った。箒は強いなぁ」

「そ、そうか?」

「キリトの奴なんて目じゃないぜ、今度ぜひアイツを凹ませてくれ」

 

キリトの事を知らない箒は理解できず、呆けてしまう。

 

「誰の事だ? い、いや、それ以前に一夏! ちゃんと礼をせんか!!」

「あ、そうだったな」

 

その言葉に、一夏は慌てて立ち上がりお互いに礼をして試合は終了となった。

 

「剣の腕は上がっているかもしれんが、剣道はまるで駄目になったなお前」

 

若干トンチのように聞こえるその言葉を、箒はジト目になりながら言った。

 

「いやぁ、そこは大目に見てくれると助かる……」

「千冬さんが剣道としては失格と言う言葉を理解した」

「うぇ、そんな事を言ってたのかよ千冬姉?」

 

しかし否定はできなかった、SAOでの戦いが、生活があまりに濃ゆすぎたのだ。

いくつかの礼法は抜けていたし、構えだってそうだ。一見、箒と同じような構えであるが剣は前に、体制も前かがみ。まるで、陸上選手とごちゃ混ぜにしたような構えであった。

時には、竹刀の片手持ちまでしていた。箒は先ほどの試合で千冬の言った言葉を理解していた。

だが、同時にそんな剣へと変化せざるを得なかった重みを感じていた。剣を交えればすべてが分かる、なんて漫画みたいなことは言わない。それでも、ほんの少しだが、感じる事ができた。

かつて千冬が言っていた、今の剣は好ましいと言った事も理解できた。今の一夏は、確かに歪な剣技を持っているかもしれない。だがその剣からは……。

 

「強い、信念か」

「ん?」

「あ、いや。何でもない」

 

そして、差を感じてしまった。八つ当たりの道具にしてしまった自分に比べ、一夏は自分の信念を剣に乗せているのだと。

 

「そ、それよりも一夏!」

「お、おう」

「何故先ほど動きを止めた、明らかな好機であったのに」

「あ~、それは、ソードス……」

 

そこまで言って、一夏は止めた。何でもかんでもSAOの話を持ってくるのは良くないと感じたからだ。

 

「その、ほらあれだ! 俺って、剣道なんて久しぶりだろ!? 筋トレはしてたけど、やっぱり違う筋肉使って疲れたのかなーって」

「千冬さんとも剣の鍛錬をして……」

「そう言う事なんだよ」

「そ、そうか……」

 

明らかにおかしい言い訳であったが、箒は一夏のその勢いに負け押し黙った。

 

「さ、今日はこれ位にして帰ろうぜ」

 

一夏は、そう言って剣を一度振り鞘に納めるような動きを見せる。その動作を理解できず、箒は怪訝な顔をした。

 

「何をしているんだお前」

「……かっこつけたかったんだ」

 

ただのSAO時代の習慣であった。キリトも左右に剣を振った後に、背中に直す癖があり、現実に戻っても同じ事をしてしまう事があった。

対して、一夏の場合は剣を一度だけ振り、その後鞘に納める様な動作が癖になっていた。血でも落としてる気分なのだろうか? しかし、仕方のない話だ。SAOにいた頃は、14歳の頃も含まれていた。彼も、立派な厨二病患者であった。

 

「さ、早く片そうぜ」

「待て、一夏」

 

箒はどこからか、スプレーを持ちだしていた。

 

「女子校だからな。しっかりと、防具は消臭をしろ」

「……大変だな、女子って」

「今回は私の防具を貸したが、次回からは自分の物を用意しろ」

「へーへー、どうせ俺は汗臭いですよ」

 

若干、不貞腐れる一夏であった。

その様子に、箒は慌てつつも話題を切り返していく。

 

「そ、そう言えばISの訓練はどうなのだ?」

「ん~、回避訓練で手一杯だな。障害物競争って感じの訓練ばっかりだし」

「大丈夫なのか、それで?」

「俺の専用機に期待って所だな。訓練機よりも俺に合わせて調節されるって話だし」

 

千冬の話によるとセシリアとの決戦当日に一夏の専用機が特例として政府から用意されるという話である。誰にでも扱えるように調節出来ている訓練機と違う、一夏用に調節されているものだ。

 

「まぁ、やれるだけやってやるさ」

 

一夏も勝てるとまでは正直思っていない。それでも、実力を認めさせられるくらいにはやらないと、心配してくれているかつての仲間たちにも会わせる顔がない。

今の自分には愛用していた鎧(副次効果が若干ネックだったが)もなければ、誇りにしてた剣もない。あれほど鍛えたレベルも、スキルも現実では無意味だ。

もはや、自分はSAO攻略組トッププレイヤー・チナツではなく、たまたまISを動かせた素人・織斑一夏なのだ。そのギャップを感じながらも、一夏は先を見据えていた。

それでも、かつての仲間達は自分を心配してくれる。かつての接点のなかったSAOプレイヤーは自分を助けてくれた。そして、再開した幼馴染はサポートをしてくれた。

失ったものを、そして得たもの、残った物を思いながら一夏は片づけていた竹刀を掴み振る。

 

ソードスキル・スラント。

 

一見、ただの斜め切りに見えるそれは彼にとっては立派な剣技である。あの世界が確かにあったという証明。

あの2年半は決して無駄じゃない。それを、次の戦いで証明する。そして、自分を支えてくれる人達にもそれを見せたい。

一夏は、そう思いながら、一週間の訓練を行っていった。

 




私、何でも知っているのよね。これって絶対美人、ナイスバディな会長の登場フラグだったって事をね。
私、何でも知っているのよね。2年以上眠っていても日本代表候補生の地位につけているうちの妹って最高だって事をね。
私、何でも知っているのよね。ええっと、ええっと……。と、とにかく何でも知っているのよ!!
あぁ~ん、まって、まって! まだしゃべり足りな……。



モッピー何でも知っているよ、会長の出番はずっと先だって事を。(怒)

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