織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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最近改めてアニメやコミック見て気付いたんですけど、チッピーの身長って原作イッピーとどっこいどっこいだったのね。
今まで、千冬と身長一緒とか思ってたけど、それだと通常通りですね(笑)
今後は箒と同じくらいという事で……(汗)


第十一話・彼の試験事情

「織斑君、大丈夫でしょうか?」

「なんだ、突然」

 

IS学園の職員室にて、真耶は千冬にその言葉を投げかけた。勿論、理由はもう明日に迫った、クラス代表決定戦の事である。

 

「そもそも、幾ら唯一の男子とは言え、一生徒への肩入れのような発言は感心しないな」

「そうは言いますけど、やはり今回は無茶苦茶です」

 

実質的な素人である一夏が、代表候補生であるセシリアに挑む。たしかに、真耶の言う通り無茶にもほどがあった。

 

「それに、セシリアさんがあそこまで増長したのは、織斑先生にも責任があるんですよ?」

「否定はせん」

 

確かに、セシリアがあの発言をしたとき千冬は止めなかった。あそこまで興奮していたセシリアに対し何を言っても無意味だと感じたからだ。本当に彼女を止めれるのは、SAO生還者の言葉だと踏んで、あえて一夏が怒鳴るのを始めは静観していた。

だが、興奮したセシリアは止まることはなかった。故に、結局は自分が騒動を治める羽目になったのだ。

 

「お前の言う通り、私の判断ミスだ。あの発言のすぐにオルコットを……」

「それもですけど、他にもあります」

「なに?」

 

そう言われて、千冬は若干考える。しかし、思い当たる節がなく真耶に尋ねる事にした。

 

「どういう意味だ」

「セシリアさんがあぁ言う発言をする要因の一つは、“教師に唯一勝った”が含まれているんですよ」

「いや、そもそもなぜアイツはそんな事を言ったんだ? 別にアイツ一人ではないだろう」

「……本当に、覚えてないんですか?」

 

真耶は呆れた顔で千冬に言う。

 

「はぁ、だったら織斑君の実技試験を思い出してください」

「ん、そうだな……」

 

千冬は思い出す。一夏が初めてIS戦闘を行ったあの日の事を。

 

 

 

 

 

『織斑君、調子はどうですか』

「とりあえず、IS動かせます」

『あ、あはは』

 

一夏は、訓練機・打鉄を装着し、IS学園の訓練場にいた。今日は、実技試験の日であった。唯一の男性という事もあり、他の受験生よりも一日早い日程で行われていた。

 

「(あぁ、やっぱり動かせる。実は間違いだったとか、誤作動だったとか期待してたのにな……)」

 

一夏は、装着した打鉄を纏ったまま手をニギニギさせてみる、ジャンプをしてみる、足踏みをしてみる。しかし、ISを装着したままその動作ができていた。その現実に、げんなりしていた。

 

『では、近くに設置してある装備の中から使用するものを持ってアリーナに出て来て下さい。訓練機には武装が量子化されていませんのでしっかりと選んできてくださいね』

「あ、はい」

 

その言葉を聞くと、一夏はずらりと並ぶ装備を見る。

 

「大まかに考えると、銃と剣の二択か」

 

一夏は、考える。どちらを選ぶべきかを。これは後で聞いた話であるが、大抵の人間は銃を使って遠巻きに撃ちながら進むのが定石であったとの事だが、一夏の場合は……。

 

「一択だよなぁ……」

 

そう言いながら、彼は迷わず近接装備を手に取る。一瞬、二刀流も考えたがさすがにそれは遊びが過ぎるのでやめておいた。

一夏は、剣状の武器を手に取ったのち、じっと見つめる。

 

「形状は、太さからしてどっちかって言うと片手剣、もしくは曲刀に近いな……」

 

キョロキョロと辺りを見回し、ある程度の広さである事を確認する。

 

「はぁ!!」

 

想いっきり、剣を回転斬りのように振った。ソードスキル・ホリゾンタルの模倣だ。

 

「……そこそこだな」

 

だが、一夏は若干不満げであった。正直、若干体を重く感じていた。生身よりもずっと動けるにも拘らず、何か違和感を感じていたのだ。

 

「まぁ、やれるだけやるか」

 

そういい、剣を一振りし腰に納めようとして……。

 

「あ、しまった」

 

素に戻り、誰にも見られてないにもかかわらず顔が赤くなってしまっていた。

 

「い、いくか! 先生を待たせちゃ、まずいしな!」

 

一夏は慌てながら、アリーナへと走っていった。

 

「うわ、広っ!」

 

始めはよちよちであったが、少しずつ慣れてきた一夏は小走りでアリーナへと到着した。そして、その先には野球場並に広い空間が存在していた。

 

『来ましたね、織斑君。それでは、指定の位置まで来たのちに飛んでください』

「あ、はい」

 

自分の立つ位置の少し先にあるラインを確認するとそこまで歩く。そして、飛ぼうとして……。

 

「(飛ぶって、何?)」

 

今までにない、行動に思わず固まる。どうやって飛べばいいか、皆目見当もつかなかった。

 

「(えぇっと、コマンドか何かいるのか? いや、ゲームじゃないんだから……)」

 

そんなアタフタしている状態に、教員が……この時、一夏は名前を知らなかった真耶が少し苦笑いをしながら言う。

 

『ISを扱う際に必要なのはイメージです。特に飛ぶ際には、それが特に強く作用します。とは言え、すべてイメージで使用するわけではなく、体自体の動きに関しては脳からの電気信号を回収して動かしますので、ここら辺はVR技術と通じているものがあり……』

『山田先生。その辺でいいでしょう。今は試験であって、講義ではありません。受験生も、早く上空へと移動しろ』

「(あ、千冬姉の声だ)」

『す、すみません、織斑先生!!』

 

ちょっとしてアドバイスを言うつもりが、長々と講義になりかけ真耶は千冬に叱られる。対して、一夏はこの場に千冬がいる事に若干驚きつつ、本当は自分がいるとは知られたくなかったんだろうなぁと思っていた。

 

「(とにかく、飛んでみるか)」

 

いつまでもこの場に立っている訳にもいかなかったので、一夏は何とか自分が飛ぶイメージを作る。

 

「(くそ、ALOをやってれば少しは違ったかもしれないのになぁ・・・)」

 

ALOはプレイヤーが飛ぶことができるゲームである。勿論、アミュスフィアにはプレイヤーのイメージを、意志を拾う機能はついていないため、肩骨格の動きを読み取って背中の羽に連動しているのだが、それでも飛ぶイメージのヒントになっていたかもしれないと一夏は考えていた。

そして、一夏はフラフラではあったが、それでもなんとか飛び上がりある程度の高度まで行った。

 

『あ、その高さで止まってください。試験はそこから始まります』

「あ、はい」

 

一夏は、なんとか飛び上がり指定の位置へと静止する。どうやら少し飛行にも慣れてきたようだ。

視線の先には、真耶がISを纏い浮かんでいた。どうやら、自分の使用しているISとは違う種類の物でカラーリングは翠であった。

 

『それでは、試験開始です』

 

真耶がそう宣言すると、アリーナ全体にブザーが鳴り響く。一夏は、その音とともに、空中での慣れない剣の構えをする。

 

「(流石に、空中で剣を構えるのは落ち着かねぇな)」

 

慣れない空中戦。一夏はどう攻めようかと考えながら相手の出方を見る。対する真耶は手に持っていたライフルを構えていた。

 

「(銃相手は初めてだな。とにかく動き回って……)」

 

そこまで考えた瞬間、警告音と共に目の前にフィルターのように画面が映り、そこから彼女の構える銃から赤いラインが自分の額に向かって伸びていることに気付いた。一夏は、その何かが分からず戸惑ってしまう。

その事に気を取られてしまったのか、ガクンと体勢を崩してしまった。

 

「あ、やべ《バスンッ!!》……へ?」

 

体制が崩れて、若干一夏の位置が下がった瞬間頭の上を何かが横ぎった。どう考えても弾丸であった。

 

「は、へ?」

 

一瞬何が通ったか分からず思わず呆けてしまった。だが、彼のその精神状態に関係無く今度はもっと多いラインが彼に伸びていた。

 

「うぉおおおおおおおおッ!!?」

 

一夏はなりふり構わず、急いで降下し始める。よほど焦って、イメージがグチャグチャなのだろう。真横にグルグルと回転しながら落ちていった。そして、びちゃんと地面へとぶつかった。

若干シールドエネルギーが減ったがそんな事は気にせず、一夏は急いで匍匐前進をしてその場から逃げ出し、ピット付近のぎりぎりアリーナである物影へと隠れた。

 

「(何今の、何今の、何今の!!?)」

 

一夏はマジビビりであった。はっきり言ってダサかった、超絶ダサかった。

 

『あ、あの~。織斑君?』

「タイム! 少し休憩!!」

『えぇ!? し、試験放棄になりますよ!?』

「試験時間は指定されてなかったから、少しくらい大目に見て下さい!!」

『お、織斑せんせ~ッ!!?』

『……まぁ、数分ならいいか。受験生、あまり時間をかけると試験放棄と見なすぞ』

 

一夏の突拍子のない行動に真耶は混乱し、千冬は弟の行動に呆れかえった。

許可をもらい一夏はほっと一息つく。いくらなんでも前情報なさすぎだと内心愚痴っていた。

 

「(あの赤いラインは、相手にロックされるとその弾道を予測するシステムみたいだな……)」

 

弾道予測線。それが先ほどの赤いラインであった。敵機からのロックを確認すると、ISがはその場所から弾道を予測し操縦者へと警告するシステム。

勿論万能ではなく、機械の補正に頼らない超越した銃士には当然働かないし、あくまでラインはまっすぐのため、もし仮に曲がる弾丸があった場合完全に予測はできない。

 

「(焦ったけど、正直助かる。後はどう避けながら近づくかだが……)」

 

突然の出来事で動揺したが、これは嬉しい誤算だ。ある程度の予測線をシステムが教えてくれるのだから。

 

「(回避は俺の十八番だしな)」

 

彼はSAO時代、盾を持つことができる片手剣士であるにかかわらず盾を使用する防御スキルを上げずに、回避スキルを上げていたプレイヤーであった。そのため、回避行動にはそれなりの自信があったのだ。

 

「(例え、SAOじゃなくても、ISでこれだけ身体能力が上がっているのなら、行けるはず)」

 

一夏は、気合を入れると同時に走り出し、地面を蹴り宙へと飛ぶ。目指すは、試験官であった。

 

『あ、来ましたね!』

 

教員も一夏に気付くと、銃を構える。そして、再度一夏に向かって赤いラインが浮かぶ。

 

「(この赤いライン、銃口が移動すればそれに合わせて動くのか)」

 

そして動きながらも、可能な限り情報を集めていく。

まずは一発目を、体を逸らしながら避け、次の弾丸を大きく上昇しながら避ける。

 

「(よし、いける!!)」

 

一夏はその要領でどんどん接近していく。だが!

 

「くッ!!?」

 

一夏の足に弾丸が掠った。

 

「(馬鹿な!? 弾丸のスピードが速くなった!?)」

 

一夏は、その事に驚きつつも教員目がけて進んでいく。そして、ある事に気付く。

 

「(違うッ!! あの人の反応スピードが早くなったんだ!!)」

 

近づけば近づくほど、その弾丸の速さは増しとうとう教員に向かって進むどころではなくなり、一夏は回避行動に専念し始めた。そして―――。

 

「ぶべ!?」

 

壁に衝突した。その瞬間、赤いラインが複数一夏に収束した。

 

「(しまった! 誘導させられていた!?)」

 

一夏は、避ける事に気を取られ過ぎ、壁に向かって誘導されていたことに今更気付いた。

そして、気付くにはあまりに遅かった。次の瞬間には一夏は何発もの弾丸が降り注いだ。

 

「あだだだぁあああ!!?」

 

因みに本当は痛くはない。だが衝撃はあった。一夏は慌てて降下して。

 

「げふ!!?」

 

再度地面に衝突し、匍匐前進で再び物陰に隠れた。

 

「はぁはぁ!」

『あ、あの~、織斑く~ん?』

「またタイム! これが最後だから!!」

『……仕方あるまい。これが最後だぞ』

「ありがとうございます。今日はエビフライ作るぜ、千冬姉!!」

『私語は厳禁だ』

『(あ、少し嬉しそう・・・)』

 

そこまで言うと、一夏は情報を整理する。

まずわかったことは、試験官は本気ではないという事。明らかに、目、視線は自分を追っているにもかかわらず銃の動きが遅れていた。だが、それでも接近する毎に動きがよくなっていた。

となれば考えられることは、接近すればするほど反応速度が速くなるという事である。

 

「接近戦主体の奴は不利じゃないか……」

 

これは一夏の勘違いである。一夏はまだ気づいていないが、もしくはそう言うものだと思っているのか意識してないが、試験官はあの場所からほとんど動いていない。

それは、近接武器を選んだ受験生に対しては固定砲台の役割を持っているからである。そもそも、この試験は近接武器を選んだ受験生にはどれだけ近付けるかを試験基準として行っていているのだ。

対して、射撃武器を選んだ受験生には、どれだけ長い時間試験管から逃げれるかを試験基準として行っていた。つまり、射撃武器を選んだ場合、試験官は受験生に向かって接近していくのである。必然的に、受験生は逃げるように動くことになる。

理由として、試験の目的はどれだけISを動かせるかを調べるためだからだ。接近主体の者は放っておいても勝手に動いて近づくが、射撃主体の物は撃つことに集中しすぎてその場から動かない者が多い。そのための処置であった。

 

「(まず、空中戦は論外。走っていこう!)」

 

一夏は、いきなりそう結論付けた。とは言え、慣れない空中戦はリスクが多すぎた。ただでさえ、先ほどの攻撃でシールドエネルギーは半分以下になっているのだ。

 

「(それでも、接近するには避けれない弾丸が来る。多分、10発…いや、8発か?)」

 

そして、その事にたどり着きじっと手に持つ武器を見る。考える、この剣で何発か防げればと……。

 

「(確かに、弾道予測線はある。もし、キリトくらいの反応速度があれば可能なんだろうけど)」

 

だからこそ、彼は二刀流スキルを手にいれた。二刀流スキルはSAOプレイヤーの中でも一番の反応速度を持つプレイヤーに与えられるスキル。

自分のように、偶発的にユニークスキルを手にいれたのとは違う、本当に選ばれたプレイヤー。それがキリトであった。少なくとも、一夏にとってはそうだ。

 

「(え?)」

 

そんな時だ、一瞬一夏の隣を何かが駆け抜けたのは。

 

「キリ、ト……?」

 

その黒い誰かは、次々と弾丸を切り伏せ前へと向かっていった……そんな、幻視を彼は見ていた。ただの幻であった、疲れていたのかそんな幻影を見たような気になっていた。

そして、その事に気付き一夏は徐に壁を殴った。

 

「馬鹿か俺はッ!!」

 

どうして、そう考える! どうして、自分はキリトには敵わないと考えるんだ。自分は誓った筈だ。キリトとは対等な仲間でありたいと。ならば―――。

 

「やるさ、やってやる」

 

彼は勇気を持って、剣を片手に走り出す!!

 

「うぉおおおおおおおおおお!!!」

『えぇ!? 飛ばずに走って!!?』

 

向こうも、まさか試験で飛ばずに走り出すとは思ってなかったようで若干動揺した様子であった。

だが、流石はIS学園の教師。すぐさま気持ちを切り替え、一夏目がけて銃を放つ。その弾丸を次々と時には横へ避け、あるいはジャンプをして一夏はどんどん教員へと走っていった。

 

「(来たッ!!)」

 

そして、予測していた避けきれない弾丸が放たれようとしていた。よく、漫画では分かっていても避けれない攻撃なんて言葉が出るが、一夏はそれを実感していた。

一夏は、その赤いラインの先、銃を構えている相手から決して目を離さなかった。そして、銃が、その引鉄が引かれた瞬間、剣を振りおろす。

 

「(よし、今のでタイミングは掴んだッ!!)」

『そんな、銃を近接武器で斬ったんですか!?』

 

口では驚く声を上げているが、次々と弾丸を放ち真耶は応戦していた。対する一夏は、先ほどの要領で次々と弾丸を切り裂く!!

 

「(何発かもらったが、何とか目標地点までついた!!)」

 

残りシールドエネルギーは、後二発もくらえば0になっていたであろう所まで減っていた。だが、逆に言えば一夏が弾丸を切り裂くことができなければとっくに0になっていた証でもある。

 

「もらったッ!!」

 

そして、一夏は真耶目掛けて跳んだ。飛ぶではなく、跳ぶ。ジャンプするように、その延長で飛距離が伸びるようなイメージで一夏は一直線に跳んだ。

剣を構えながら、跳び攻撃態勢に移ろうとした。だが、

 

「きゃああ!!?」

「しまッ!?」

 

勢いが強すぎたのだ。一夏はそのままタックルするかのように真耶へとぶつかった。これでは、相手のシールドエネルギーを零にする事はできな……。

 

「(いや、まだだ!!)」

 

彼は瞬時に思い出す。タックルから始まる片手剣スキルが一つだけあったことを。そのタックルの勢いを殺すことなく、体を回転させ斬りかかる!!

 

「はぁああ!!」

 

ソード・スキル『メテオ・ブレイク』、その模倣であった。

 

「きゃぁあ!!?」

「このままぁ!!」

 

一夏は先ほどとは反対側から斬りかかり、続いて上から斬りかかった!! 真耶はその衝撃に耐えきれず地面へと叩きつけられた!!

 

「はぁ、はぁ……メテオ・ブレイクからのサベージ・フルクラム。単なる真似だが、上手くいったか……」

 

だが、まだ体当たりと何回か斬りかかっただけだ、これで勝ったとは思えなかった。しかし、一夏の予想に反してブザーが鳴り響いた。

 

『そこまでだ。試験終了。一応言っておこう、受験生お前の勝ちだ』

「え?」

『あはは、負けちゃいました。あ、一応言っておきますけど近接武器使用者は一回当てていれば合格だったんですよ?』

「E?」

『試験内容をちゃんと把握できてなかったようだな。減点1だな』

『お、織斑先生! 駄目ですよ、そんな事言っちゃ!!』

 

因みに射撃主体は5発当てれれば勝ちだ。

 

「えぇええ!!?」

 

一夏は、あっさりと終わったIS初戦闘に何か不完全燃焼を感じてしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

「あれで、試験評価はA(-)っておかしいですよね」

「まさか。飛ぶことを放棄して、さらに逃亡2回。B…いや、Cでもおかしくない結果だ」

 

二人は一夏の試験の事を思い出し、そんな事を話していた。

 

「それで、一夏の試験結果と私の発言にどんな関係がある?」

「本当に覚えてないんですか?」

 

あれは次の日の一般受験生への試験の時だ。一人だけ、専用機を使用してドヤ顔で勝ったセシリアに対し千冬はこう言ったのだ。

 

『さすがだな。(一人だけ)専用機を使うだけの事はある。専用機を使用して(ドヤ顔で)試験官に(半分ズルする様に)勝ったのはお前ぐらいだ』

 

因みに、( )の内容は聞かれていない。このことを真に受けたセシリアは褒められたと有頂天であった。それに対して、真耶は思っていた。

 

『(あぁ、弟さんが訓練機で勝ったって遠まわしに自慢したいんですね)』

 

と。

そこまで聞くと、千冬は気まずげに咳払いをした。

 

「んん! ところでだ、山田先生。最近一夏の奴は上級生に指導を受けているようだが?」

「(あ、呼び方が名前になってます)え、そ、そうですね。確か名前は……」

 

そう言い、端末から生徒情報を千冬に見せた。

 

「……そうか、彼女か」

「はい。例の件もきっと織斑君のためだったんでしょうね」

「アイツはこの事を?」

「多分知らないと思います。知っているのは教員のみですし」

 

その言葉に、千冬は押し黙る。考えるのは弟の事。この事実を知ったとき、彼はどんな行動に出るのか。千冬は想像ができなかった。

 

クラス代表選出戦まで、あと1日である。

 

 

 

 

 

●俺的設定紹介その1

 

・弾道予測線(バレット・ライン)」………本来は、VRMMO・GGO(ガンゲイル・オンライン)のシステム・アシストの一つであるが、この世界観ではIS競技戦が先である。

このシステムの存在により、遠距離武器所持者は予測線を読まれつつも当てる技能を身に着けようとして、あるいは近接武器所持者は予測線を元に回避する技能を身に着けるようになる。

このシステムが出来た発端は、近接武器をもつIS操縦者が少なくなってきて競技に今一盛り上がりが無くなっための救済処置とされている。

因みに、一夏のように斬ろうと発想する人は本当にアレな人扱い。だが、そのシステムがないにもかかわず弾丸斬りまくっていた千冬はもっと化け物。本人曰く脳内で予測線を張っていただけだとの事。どんな化け物だ。

 




私、何でも知っているわよ。予測線があるからって、弾丸を斬るなんて馬鹿な事をするのはチナツとキリトくらいだって事を。
私、何でも知っているわよ。私の名前はシノンだって事を……。って、これアバターネームだけど良いの? そもそもこの台本なに? ここどこなの?
確かさっきまで、アスナと一緒に買い物を……って、いたい!? な、なに、このナマモノ?
ちょっと、叩かないで!? もう、ほんと訳分からないわよ!!?



モッピー何でも知ってるよ。もう、このモッピーゾーン(仮)には何人たりとも入れやしないって事を。(ゴゴゴ)

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