織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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相変わらず、誤字報告の多い自分。皆さん、誤字に気付く程にしっかり読んでくれているという事ですが、情けなくなりますね。(汗
他にも表現不足、うろ覚え知識……不足していく事は多々ありますが、これからも趣味丸出しのSSを呼んでくれれば幸いです。
それはともかく、ようやくセシリア戦へと突入です。あれだけ待たせて、大まか内容は原作(アニメ・漫画)通り流れなのね、と思う方もいらっしゃると思いますが、読んでもらえたら幸いです。

……箒の行動も原作通りです(笑)


第十二話・360度の戦闘

「まさか、こんなギリギリに専用機が来るなんてな。てっきり、朝一だとばかり……」

「ぶっつけ本番か。大丈夫か一夏?」

「俺が聞きたい」

 

アリーナ控え室にて一夏と箒は待機していた。ちなみに一夏はISスーツを呼ばれるISを使用する際に装着するピッタリスーツである。(男性用に改良されているが)

ついでに言うと、女性が着る物は結構エロい。

 

「そもそも、一夏。私がここに居てもいいのか?」

「許可はもらってるんだ。大丈夫だろ」

 

と言うか、いてくれ心細いから。一夏は、冗談交じりでそう言い箒もまんざらではない様子だ。

 

「本当は、ミーナさんにもいてほしかったけど、観客席からって……イタイッ!?」

 

だが、余計な事を言ってしまい脇腹を軽く殴られる羽目になってしまっていた。

 

「しかし、遅いな一夏。最悪の場合、訓練機での戦闘になるのではないか?」

「殴った事実を、さもなかったかのように振る舞うのやめろよ!?」

「殴られた理由が分かるか?」

「わかんねぇ……ぐふっ!?」

 

今度は反対側を殴られた一夏であった。そんなやり取りをしていると……。

 

「あ、織斑君! お待たせしました!!」

 

その声と共に、真耶が控え室へと入ってきた。

 

「出来ましたよ!!」

「おめでたですか!? 相手は誰ですか!?」

「ふぇぇッ!!!?」

「あほかぁ!!」

「ぐふぅう!? みぞおちぃ!!?」

 

結構待たされたので、一夏的にはちょっと困らせようと思ったのだろうが、あまりにデリカシーに欠ける冗談であったため、箒に思いっきり殴られてしまっていた。試合前なのに、もうHPは全損寸前である。

 

「もぅ! 織斑君、先生をからかっちゃ駄目ですよぅ!! できたのは、準備です!! 織斑君の専用機の!!」

 

その言葉に一夏は安堵する。場合によっては本当に訓練機での戦闘だと思っていたからだ。

 

「じゃぁ、行くとするか。これから長い付き合いになるであろう愛機候補のところへ」

「何かっこつけてるんだ?」

「男子学生にはよくある事ですよ、篠ノ之さん」

「(ぐっ、言わなきゃよかった。14歳の頃の黒歴史ががががが)」

 

一夏は内心で余計な事を言わなければ良かったと後悔しながら、真耶の後をついて行き、ISの保管スペースまで歩いていく。本来は、待機状態にできない訓練機が鎮座するスペースには白いISが存在していた。

 

「……白」

「白いな?」

 

一夏は、そのISのカラーリングを見て若干笑ってしまった。SAO時代の自分の愛用していた鎧の色も白であったのだ。不思議な縁か、それとも運命か。一夏は、なにか言いようのない感覚を感じていた。

 

「来たか、織斑」

「あ、千冬姉」

「織斑先生だ」

 

反射的にいつも通りに答えてしまい、千冬はその事を指摘した。そして、そのまま話を続けた。

 

「本来ならば、開始一時間前にフォーマットとフィッティングをすませておきたかったが、仕方あるまい。実戦ですませろ」

「そうなるか……。このISの名前とかあるのか?《ギロリ》……あるんですか?」

「教師には敬意を持って接しろ。ISの機体名は……」

 

一夏の前に、スクリーンが展開されそこには名が記されていた。

 

「白式……」

 

その名前に、再び縁を感じてた。

 

「(確か、SAOで使っていた鎧も白って付いてたっけ)」

 

ホワイト・ナイツメイル。かつての一夏の鎧の名はそうであった。同じ白を冠する名のISに単純ながら妙な親近感を感じていた。

一夏、白式に近づき軽く小突いていう。

 

「よろしく頼むぜ、新しい相棒」

「よし、時間も差し迫っている。さっそく乗り込め、一夏。やり方は訓練機と一緒で良い」

「分かった」

「(あ、名前で呼んでますよ、織斑先生)」

 

さりげなく名前で呼ぶのに気付いた真耶であった。とは言え、『口は禍の元』と言う格言を守って頭の中で考えるだけにとどめていた。

そんな真耶の頭の中はさておき、一夏は訓練機に乗り込むのと同じ感覚で機体へと乗り込んだ。

 

「(違う……)」

 

まず乗り込んで感じた事は、訓練機とは何かが違うという事である。その何かが分からなかっただ、それでも訓練機以上にしっくりくる感覚があった。

一夏は、握り拳を作りながらその事を実感していた。

 

「武器は、近接武器一本か」

「なっ!?」

 

その言葉に箒は思わず驚きの声を上げる。確かの銃は素人が早々に使える代物ではないが牽制用にすらないとは予想外であった。

 

「不服か?」

 

千冬は彼にそう投げかける。

 

「いんや。ちょっと予想外だけど、むしろ安心するかもな」

 

剣一本なんてなれっこだ。彼はそう笑って言った。

 

「それでは、時間ですね。織斑君、お願いします」

「分かりました」

 

真耶が一夏に開始時刻の合図を言うと、彼は機体を動かしアリーナへと続く発射口へと向かっていった。

 

「一夏!!」

「なんだよ、箒?」

 

闘いの場へと向かおうとする、一夏を箒が呼び止めた。

 

「勝てとは、言わない。だが、せめてあの女に見せて来い、お前の……剣に乗せた信念を!」

「あぁ。任せろ、箒!」

 

徐に彼は剣を顕現させ、肩へと担ぐ。

 

「少し歪になったけど、ガキの頃からお前と鍛えた剣だ。バッチリ一撃くらいかましてくるさ!」

 

笑いながら、彼はアリーナの空へと舞い上がった。

空へと向かった先には、既にセシリアが待機していた。

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

「ここで逃げたら、不登校確定だろう?」

「それは残念ですわ。それなら、あなたの野蛮な顔をもう見ずにすみますのに」

「ひどいな、オイ」

 

辛辣な言葉に、思わず一夏は絶句する。それでも、出来るのであるのならば戦う前に少しでもお互いが理解できることを望み、話を続けてみた。

 

「よかったら、この模擬戦の後に一緒に学食でもどうだ? うまいもん一緒に食えばちょっとくらいお互いを理解できるかもしれないぜ?」

「ふん、貴方の様な者と一緒に食事をしたら、どんな料理もゲテモノに早変わりですわ」

「(貴族名乗るのなら、ゲテモノとか言うなよ)」

 

どうやら聞く耳は持たないようだ。それが一夏の感想であった。

 

「つまらない話は終わりでしてよ。そろそろ……」

 

一夏のIS白式が警告音を発する。それと同時に、セシリアは手に持つレーザーライフルを構える。その瞬間、一夏に向かって弾道予測線が張られた。

 

「お別れの時間ですわ!!」

「始末する気かよ!?」

 

セシリアのその言葉に、思わずツッコミを入れてしまう一夏。だが、そんな事を気にする様子もなくセシリアは一夏目がけてレーザーを放つ。

 

「いくらなんでも、こんな単調な攻撃……ぐぁ!!?」

 

セシリアの放ったレーザーを一夏は、その弾道予測線から体を反る様にしてあっさりと躱した筈であった。だが、次の瞬間に右肩付近に強烈な衝撃が彼を襲い、シールドエネルギーも減少していた。

 

「(馬鹿な、確かに避けたはず……ッ!?)」

 

突然の出来事に、一夏は混乱した。だがそんな彼に追い打ちをかけるかのように360度の方向から4本の弾道予測線が一夏目がけて降り注ぐ。

 

「くそッ!!?」

 

訳も分からず、急いで一夏はセシリアから離れる様にその場を離脱した。だが、ある程度向きは変わっても4本の弾道予測線は一夏目掛けて張られ、一夏はとにかくその何かにされたロックから逃れようと躍起になる。

そんな一夏に目掛けて今度は4本のレーザーが襲い掛かる。何とか3つは避けるものの、最後の一発はくらってしまい再びシールドエネルギーは減少した。

 

「なんだあれ!?」

 

だが、一夏はレーザーが放たれた先を見ることができた。そこには、青い銃口の付いた何かが浮かんでいた。

 

「(ビットってやつか? いかにもロボット物にありそうだよな)」

 

一夏を襲っていたのは、4つのビットから放たれる攻撃であった。あれを一つずつでも潰していかないとセシリアを含めて実質5対1になってしまうと理解した。

 

「(あぁ、くそ。なんかいっきにISが嫌いになっちまいそうだ。だから苦手なんだよ、飛び道具は。シノンじゃあるまいし)」

 

一夏は、内心理不尽にそう愚痴っていた。どうやら、初撃の自分の完全な死角からの一撃が、一夏にとってはかなりの衝撃になっていたようだ。

彼にとっての飛び道具は、精々投剣スキルを使用した手を使って投げるものくらいであった。因みにシノンとはSAOにいた唯一の弓使いのプレイヤーである。彼女に関しては、SAO途中参加と言う複雑な事情があるのだが、この場では話を省略する。

 

「(とは言え、見えない攻撃とかじゃなくて助かった。セシリアってボスに取り巻きが4匹いると思えばいい)」

 

取り巻きは、高威力のブレス攻撃持ちの小型ワイバーンと思えば……。

 

「(あぁ、無理があるな)」

 

一生懸命SAOの状況に照らし合わせようとしたが、無理があった。そもそも、これ空中戦だし。

 

「(結局あのころから引き継いで使えるのは体……じゃなくて、脳に焼き付いた剣技・ソードスキルくらいか)」

 

それらの攻撃を、一夏はセシリアからの攻撃を避けながら分析していく。

 

「ん?」

 

攻撃を避けながらも、一夏はある事に気が付いた。

 

「(どうしてビットばかりで、オルコットは俺を追ってこない?)」

 

いや、動くことは動くが、それは一夏が距離を取りすぎた時だ。しかもその時はビット攻撃がなかった。

その事から一夏はある事に気が付く。

 

「(そうか、動かないんじゃない、動けないんだ。おそらく、ビット操作中にオルコット自身は集中しないといけない。恐らく止まらなくてはいけないほどに!)」

 

一夏はまだ気づいていない。SAOから引き継ぐことできた物は、何も剣技だけじゃない事を。動揺した心をすぐに落ち着かせることができる精神力。さらに言うのであれば、戦いの中でも冷静に相手を分析できる精神力。どちらも、取り乱せば死を近付けてしまうあの世界で手にいれた強い心であった。

 

「(逆に言えば、ビット操作をしているうちはセシリア本体から攻撃は来ない。来たとしても、静止した位置からくる避けやすい攻撃のみだ)」

 

それならば、ビット攻撃を受けている間はビットの動きの身を気をつければいい。それに気が付くと、彼の意識はビットの動きへと集中した。

だが、それでも問題はあった。いくらビット攻撃にのみ集中できるようになったとしても以前実質4対1の状態であることには変わりなかったのだから。

 

「(でも、正直じり貧だぞ!? さっきから攻撃掠りまくってるし、シールドエネルギーが80%くらいまで減ったし!!)」

 

やはり一週間そこらしか訓練していない一夏と、オルコットには差がありすぎた。何とかビットだけでもどうにかできればいいのだが、それすらままならない。いくらビットの特性が理解できても、オルコットに近付けなければ意味がない。

 

「(もしも、近づくことができれば、オルコット自身を動かしまくってビット操作をできなくしたのに)」

 

この時点で一夏は、自分のIS操縦ばかりに気を取られセシリア自身の情報収集を怠ったことを呪った。もし、開始時点に戻る事ができるのであれば、すぐに接近してビット操作をさせないようにしたのに、と考えていた。

しかし、それは甘い考えであった。機動戦に持っていけばどうなるかを、彼はこの時理解していなかった。

 

「どうしましたの! 足元がお留守ですわよ!!」

「しまっ!!」

 

そのセシリア言葉が聞こえると同時に、一夏の真下から赤いラインが伸びていた。いつの間にか、真下にビットが回ってきたようである。

 

「くそッ!!」

 

体を宙返りでもするかのように何とか避ける一夏、だがその場から離れても4機のビットから攻撃を避けている内にいつの間にか真下から攻撃を受け始めていた。

 

「(残りシールドエネルギー65%か!? くそ、オルコットの奴俺の弱点見抜きやがった!!)」

 

一夏は焦り始めていた、このままでは本当にじわじわと嬲られてしまうと。

 

 

 

 

 

 

「どうやらオルコットさん、織斑君の弱点に気付いたようですね」

「そうみたいだな」

「な!? それはどういう事ですか!!?」

 

真耶のその言葉に、千冬は同意をして箒はそれに噛み付いた。

 

「織斑君は、視野180度に対しては驚異的な反応速度を持っています」

 

初めの一撃は、背後からクリーンヒットをもらっていたがそれ以降はどれもクリーンヒットはもらっていない。しかし、足元からの攻撃が放たれ始めた今、明らかに攻撃を避けきれていなかった。

 

「足元からの攻撃に慣れていない。そう言う事だ」

「そうですね、360度の立体的な攻撃に慣れていないみたいです」

「一夏……」

 

一夏は粘っていた。だが、このままでは敗北まで時間の問題である事は明白であった。これでは、セシリアに自分の剣を見せる事さえできない。

 

「くっ!!」

 

箒は走った、先ほど一夏が出ていった発射口へ、そこならば肉眼で一夏が見えるはずだと。

 

「あ、篠ノ之さんそれ以上近づいたら!!」

「にぎゃん!?」

 

だが、何かにぶつかった。箒はその痛みに耐えながらぶつかった何かを触っていた。

 

「なんだこれは、シールド?」

「馬鹿者、アリーナは戦闘時には、観客に被害が出ないように保護バリアが展開される。その発射口も例外ではない」

 

しかし、それでも完全に安全とは言い難い。だから千冬は早く戻れと箒に催促をする。だが、箒はその事に耳を貸さずシールドを殴り始める。

 

「一夏、聞こえるか、一夏ぁ!!」

 

通信ではなく、生の声を彼に届けたくて箒は叫ぶ。

 

「男なら、男ならぁ!!」

 

だって自分にはこれ位しかできないのだから。

 

「そのくらいの相手に勝てなくてなんとする!!」

 

ここまで言って、箒は少し後悔した。どうしてもっと、一夏が元気付くようなことが言えないのかと。

 

「(口が悪いな、私は……)」

 

こうして、叫ぶことしかできない事を、行動に出る事により再度箒は実感してしまっていた。だが、彼女は気付いていない。この自分の衝動的な行動が一夏に活路を見出すことに。

 

 

 

 

 

 

「何やってんだ、箒の奴……うお、あぶね!!?」

 

箒に気を取られ、思わず一撃を貰いそうになり一夏は焦った。

そして、一夏は箒のその行動に若干あきれつつも、心の底では感謝していた。勇気づけられていた。

正直言って、一夏は心細く戦っていた。SAOでは第1層からチンクとコンビを組んでいたし、ソロで戦う機会はどちらかと言えば少なかった。さらに言うのであれば、対人戦はSAOの特性上少なかった。ほとんど行動が一定のルーチンで出来たモンスター相手である。

……むろん、対人戦がまったくなかったわけじゃないが、それも傍に仲間がいた。

一人じゃない、その思いがSAOで自分が生き抜く事ができた大きな要因だと感じていた。

だが、IS学園に来て一人ぼっちになったような気がしていた。久しぶりに会った箒も、心のどこかでは仲の良い友達だと思っても共に戦う仲間とは思っていなかったのかもしれない。

この一週間付き合ってくれていたのにひどい話である。

 

「(けど、違ったんだな)」

 

しかし、自分の事で必死になる箒を見てそれは違うと感じていた。傍にいなくても、箒はかつての仲間同様に一緒に戦う戦友なんだ。そう一夏は感じていた。

 

「(しかし、あんなにシールド叩いて大丈夫か?)」

 

シールドは観客が安全に試合を見れるように強固なものだ。あんなに叩いては拳が痛いであろうに。

 

「(うん? 堅い……そう言えば、どれぐらいの堅さだ? たぶん、ISの体当たりでも大丈夫なくらいか?)」

 

そこまで考えると、一夏はある事を思いつく。

 

「いけるかもしれない!」

 

一夏は思った。この戦いが終わったら、箒に飯を奢ろうと。

 

「追ってみろ、オルコット!!」

 

そう言い、一夏はまっすぐに空目掛けて飛ぶ!

 

「な、何を考えていますの!?」

 

その行動を、セシリアは理解できなかった。そんなことをすれば、アリーナ上空に展開してある保護シールドにぶつかるだけだというのに。

だが、シールドにぶつかる直前、彼はクルリと体を回しまるで着地するかのようにシールドを足で踏んだ。

その動きはまるでサーカスの様でセシリアは内心怒りに満ちていた。そんなパフォーマンスで何が出来るのかと。

 

「これで、足元は!!」

 

それに対し一夏は、迫りくるビットのみに意識を集中させていた。

 

「気にしなくていい!!」

 

シールドを思いっきり蹴っ飛ばし、一夏はすれ違いざまにビットを切り裂いた!

 

「まずは一つ!!」

 

そして、そのまま今度はアリーナ地面へ向かって飛び、着地をして迫りくるビットを迎え討った!!

 

「二つ目ぇ!!」

 

その要領で彼は次も、その次もビットを切り裂く。計四つ撃破つまりは……。

 

「ビット、全機撃破!!」

 

残るはセシリア一人である事を意味していた。一夏は、遠くの位置でライフルを構えるセシリアを見据える。

 

「さて、第二ラウンドと行こうか!」

 

一夏は、一気にスラスターを加速させセシリア目掛けて飛び立った。

 

「この、生意気な!!」

 

セシリアは次々と、その手に持つライフルからビームを放つ。それも、弾道予測線が一夏に到達する前にである。

 

「(弾道予測線が俺に到達する前に放つ。やはり、代表候補生と言うだけはある)」

 

弾道予測線は敵機がロックした際に、ISがその弾道を予測するシステム。そのため、ロックしてその弾道を計測するために若干ではあるがラグが生じる。そのため、ロックしてすぐに放てば相手のISが予測しきる前にビームを打ち出すことが可能だ。

弾道予測線への対策法の一つである早撃ち。だが一夏は、その攻撃を次々とよけていく。

 

「(放つタイミング、ビームの速度、どちらも一定過ぎる。正確すぎる射撃、それがお前の弱点だ、オルコット!!)」

 

一夏は、どんどんセシリアに接近していく。

 

「勝負だ、オルコット!!」

「勝負? いえ、それはどうかしら!!」

 

接近する一夏目掛けて、再びレーザーが放たれる。一夏は、ギリギリのところで躱したが……。

 

「は……?」

 

次の瞬間には自分の懐に、二つのミサイルが存在していた。一夏は一瞬理解ができず、自分の詰めの甘さに苦い物を感じた。

 

「(最後の最後で!!)」

 

油断した、そう感じた瞬間一夏にミサイルが着弾し、その激しい衝撃が彼を襲った。

 

「残念でしたわね、ブルー・ティアーズは6機ありましてよ。まぁ、そこそこ頑張った方ではなくて?」

 

セシリアは内心安堵していた。正直、自身のビットが4機も撃破されるとは想定していなかったからだ。

しかし、所詮はここまで。確かにあせりはしたが、素人が思いの外頑張ったに過ぎない。そう思いつつ、セシリアはある事に気が付く。

 

「(終了のアナウンスが鳴らない?)」

 

煙が徐々に晴れてくる、そこには……。

 

「どういう事ですの!?」

 

一夏は健在だった。いやそれだけではない、白式は姿を変え翼はより広がりを見せ、本体自体もより鋭利な姿になっていた。

 

「一次移行(ファースト・シフト)ッ!! あなた、今まで初期設定の訓練機程度の出力で私と戦っていましたの!!?」

「え、なにこれ!? ISって、こんなに変わる物なのか!?」

「一次移行ですわ!! 使用者のデータが最適化されて最初に行われる形態移行の事ですのよ!! 専用機を扱うのであればその程度ご存知なさらないの!!?」 

「だってこれ、試合前に来たんだぜ? んな事授業でも習ってないし……」

「予習くらいしませんこと!?」

 

だが、セシリアはそこまで言い合いをしてある違和感を感じた。

いくら、形態移行をしたからといっても、自分の攻撃は当たっていたはず。ミサイル2発を無防備にくらって唯ですむ筈がないと。

 

「(いえ、聞いたことがありますわ。形態移行時は、IS自体が身を守るためにコアから機体を守る強いバリアが張られると)」

 

しかし、事例がなかった。二次移行ならいざしらず、本来一次移行などを戦闘中に行うなど普通では考えられない事だ。

 

「あなたねぇ! 最適化がまだならまだとおっしゃらないの!?」

「こんな時間かかるもんだって知らなかったんだよ! 動くし、とっくに終わってたとばかり……」

「早く機体の性能を把握してくれません事? 試合を再開できなくてよ?」

「お、おう」

 

一夏は、セシリアに押されつつも自分の変わった機体を確認していく。そして……。

 

「オルコット!!」

「な、なんですの?」

「やっぱり、ハンデくれ!!」

「……はい?」

 

セシリアは、一夏のその唐突な発言に思わず絶句した瞬間であった。

 




モッピー何でも知っているよ、モッピーが吠えれば男のやる気は満ち溢れるって事を。
モッピー何でも知っているよ、今頃ガンタイ娘はチナツ飯を食べたい病になってるって事を。
モッピー何でも知っているよ、今日もキリの字はアーちゃんとイチャコラだって事を。
モッピー何でも知っているよ、もうこのモッピーエリア(仮)には誰も来れないって事を。
モッピー何でも知っているよ、この場所の名前はその時の気分で変えるって事を。
モッピー何でも知っているよ、この場所には本当に誰もいないって事を。

(キョロキョロ)

……さ、さびしくねーし(震え声)

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