織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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本編とは全く関係ない話なんですけど、最近最強系ラノベやら、そのコミカライズが増えてますよね。
特にネトゲーの世界に入り込む系とか多いですし。
やれ、最強ステータス。オンリーワンスキル。
無駄に俺tuee。苦労知らず。
そう言うの見てると、いっつも思うんですよね。
あぁ、またか。まったく……。





いいぞ、もっとやれとw
自分、重い話とか、暗い話は嫌いなのでお気楽に読めるあの手の物語は好きです。大好物です。

まぁ、この作品自体もそうですしねw

こんな私ですが、今後ともよろしくお願いいたします!



第二十話・再会

「は? 転校生?」

 

まだ授業も始まっていない朝、一夏はそんな間抜けな声を出していた。

 

「そ、隣の2組に来たらしいわよ。何でも、中国の代表候補生だとか」

 

休み明けの朝、1組のクラスではそんな話が上がっていた。その話に一夏も、箒も、セシリアも怪訝な顔をする。

 

「今の時期に入っても、転入生と言えるのでしょうか?」

「それは単に、入学が遅れてしまっただけではないのか?」

 

セシリアも、箒も口々にそんな事を言う。

IS学園の入学式があってから、僅か一週間と少ししか経っていない。それ故に、転入生と言われてもしっくりこなかった。

 

「まぁまぁ、転入生って響きの方がドキドキするし~」

 

しかし、そんな彼らに対して本音はそんな事を言っていた。

 

「(けど、そう言えば千冬姉と山田先生が言ってたっけ)」

 

だが、一夏はある事を思い出していた。部屋割りに関することだ。たしか、部屋の調節が遅れているのもSAO生還者だけでなく、入学が遅れている人間の都合もあったとか聞いた事があった。

 

「(それにしても、中国かぁ……)」

 

一夏は、鈴の姿を思い出す。正直彼は今までIS関連の事を深く知る事はなかった。

どう言う訳か、姉である千冬はIS関連の物を家には置かず、それに関する番組をつけていてもビール片手に野球中継に変えるような人であった。(そして一夏は、つまみを作る事を強制されていた)

何となくではあるが、千冬は自分に対してISに関する知識を持つことを妨害している。一夏はそう感じていた。

そして、その事に対する心当たりもあったため、積極的に知ろうとはせず、精々姉の試合記録を隠れてみる程度にとどめていた。

それ故か、彼は代表候補生が来たと聞いても、興味も大して沸かなかった。

それよりも、中国に帰国したという少女の事を考えていた。

 

「(そう言えば、連絡取ったのって数回だけだったよなぁ……)」

 

ほぼ毎日遊んでいたのに、SAOから帰ってみればもうその少女は居なかった。彼女の事は、一夏がSAOで経験した時間の分だけ、現実でも時間が進んでいた事を実感する一つでもあった。

 

「(ん?)」

 

そこで一夏は、ふと時計を見た。授業開始までまだ少し時間がある。一夏は、授業開始前にトイレに行こうと何となく思い立っていた。

 

「一夏さん?」

「ちょっとトイレ」

「あ~、おりむーって来客用のトイレにしか入れないから大変だね~」

「許可貰っても、生徒用のトイレに行く勇気はないけどな」

 

実質女子トイレしかないようなものなので生徒用のトイレを一夏が使えるはずもないのだが。

 

「化粧すれば案外ばれないかもね」

「ははは、相川さんは俺と口を聞きたくないと申すか」

「ひぅ!!?」

 

軽くクラスメイトをビビらせつつ、一夏は廊下へ向かって歩き出す。折角なのでここで記しておくが、一夏は所謂男の娘ではない。若干中性的で『女装すれば似合うじゃね?』くらいのレベルである。

 

 

 

 

 

一方その頃。1組の前では小柄なツインテールの少女がウロウロとしていた。

 

「(どうしよう、どうしよう)」

 

言うまでもなく、先ほど一夏が思い浮かべていた鈴その人であった。

彼女は、登校初日に真っ先に一夏に会いに来ていた。しかし、いざ会おうとした矢先に怖気づいてしまったのだ。

最後に一夏の顔を見たのは、まだ彼がSAOに捕らわれている頃。あの痩せ細った顔、目を瞑ったままの顔。思い出しただけでも足が竦む。

確かに、電話越しでは数回話す機会があったが、その声も筋力の衰えにより掠れていた。

怖いのだ。もし、一夏がIS学園に通うストレスからやつれてしまっていたらと考えると。

一見、彼には似合わない話のようにも感じるが、鈴の視点から言えばSAOの次はIS学園と次々と一夏は様々な環境に流されてしまっているように見えるから仕方のない話であった。

 

「(けど、尚更会わないと!)」

 

まるで見せものみたいな扱いを受けていたらどうしよう? 彼女はそう心配もしていた。

かつて小学生の頃、日本に引っ越してきたばかりの彼女にもそういった経験がある。

容姿こそは、日本人と大した違いもなかったが、名前の違いはすぐに当時のクラスにも知れ渡った。

名前が異様、その理由だけで当時の彼女はクラスになじめなかった。それどころか、名前を理由に馬鹿にする輩だっていた。

それを救ってくれたのは一夏だ。馬鹿にする奴らを殴り、ポカンとしている自分に手を差し伸べてくれた。

随分安っぽく自分を感じるが、小学生の頃の自分が彼を好きになるのは当然のように今でも思っている。そしてその思いは今だって色あせてない。

 

「うん、そうよね!」

 

そう、だからこそ愛しい彼がいるのであれば会わないわけにはいかない。彼女はそう思いいたり。意を決して教室の扉に手を当て……。

 

「一夏さん? なるべく早くお戻りになられて下さい。授業が始まってしまいましてよ?」

「おう。サンキュ、セシリ……ア?」

「……え?」

 

自分が開けるより先に扉の方が開いた。そして、そこには彼がいた。

思いもよらぬことに思わずお互い固まってしまった。

 

「鈴……だよな?」

「一夏……」

 

鈴は茫然としながらも、一夏へと近づく。そしてペタペタと彼の体を触り始める。

 

「ちょ、オイ?」

 

行き成りの事で若干戸惑う一夏であったが、彼女が自分の頬を両手で挟むその無表情に何も言えなかった。

 

「一夏が……起きて、生きて……」

 

だが、その彼女の顔は徐々に歪んでいき、次第に泣き顔へと変貌した。

 

「う、あ……うわぁああああああん!!!」

 

彼女は涙を流しながら、彼へとしがみついた。

 

「ちょぉおお!!?」

 

これが後にクラスに語られる話の一つになる、『あの本音を泣かせちゃったセシリアちゃん事件』に続く、『イッピー、リンリン泣かせちゃった事件』であった。

 

「生きてる、動いてるよぅ! うわぁああん!!」

「分かったから、落ち着けって!?」

 

すでに泣き声に反応して、1組のクラスだけでなく、他のクラスもうようよと集まってきている。一夏は焦りつつも、彼女を見る。

どうして彼女がここに居るか分からないが、それ以前になんで泣いているのか彼にはさっぱり……。

 

『馬鹿者、心配かけさせおって……』

「……あ」

 

不意に、目覚めたばかりの頃の姉の言葉が脳裏に浮かんだ。友人の弾だって涙ぐんで自分に会いに来てくれたのだ。彼女が泣きながら自分にしがみつく理由なんて簡単だった。

 

「そう、だよな……」

 

彼は、次第に彼女を抱きしめながら、彼女の頭を撫でた。それ以外、自分に出来ることが分からなかったから。

正直、周りに見られて恥ずかしいが、わざわざ場所を移動する余裕なんて彼女にはないだろう。そう判断しての事であった。

余談だが、親愛的な意味であって、恋愛的な意味はまったくない。イッピー爆ぜると良いよ。

 

「心配かけて悪かったな、鈴」

「ばかぁ……」

 

しかし、そんな甘い(少なくとも鈴にとっては)雰囲気など長く続かないのが織斑一夏クオリティでもある。

 

「ぐへぇ!!?」

「一夏ぁ!?」

 

抱きしめ合ってたはずなのに、器用に一夏だけが吹き飛んだ。驚く鈴の視線の先にその人がいた。

 

「教師の前で淫行とは良い度胸だ15歳」

「ち、千冬さん……」

 

そこには織斑一夏の姉、織斑千冬がそこにいた。彼女は一夏の襟元を掴むとズルズルと引きづり歩き始める。

 

「お、織斑先生?」

 

一緒にいた真耶は引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「私はこの馬鹿と生徒指導室で話がある。山田先生、しばらくお一人でお願いします」

「はぁい」

「それと、鳳。編入初日だ。今回は見逃すから、さっさと教室に戻れ」

「え、でも」

 

折角再会出来てなんだか雰囲気も良く、あわよくばこのまま告白まで行こうとちゃっかり考えていた鈴は難色を示すが。

 

「行け」

「あ、はい」

 

やっぱり勝てないのであった。

 

 

 

 

 

「うごご、反省文10枚。意味あったのか、あれは?」

 

時は進み放課後。一夏は反省文を書くために昼食を抜いたため、現在食堂にてようやく飯にありつけていた。

 

「仕方あるまい。あんな事をしでかしたのだ。千冬さんも教師としての体裁もあろう」

「全くですわ!」

「なんか機嫌悪くないか、二人とも?」

「「ふん!!」」

「(息ピッタリだな)」

 

仲良く、鼻を鳴らす二人を見て一夏はそう思っていた。

 

「ごめん、一夏」

「いや、別に鈴の所為じゃないだろ?」

 

一夏はそう言いながら鈴を慰める。そう言った彼は、相変わらず他人に優しく、昔と何も変わってないように感じた。

SAO生還者の中には、その過酷なデスゲームの環境から変貌してしまった人たちの話も聞いた事がある。その事から、彼が変わってしまっていたらと心配したがそれは杞憂だったようだ。

 

「そ、それで誰ですの? その方は!?」

「そ、そうだぞ一夏!」

 

セシリアと箒は二人だけの雰囲気を作り始めたのを敏感に感じたのか、焦るように話を切り出した。

 

「あぁ、紹介するよ。俺の幼馴染の……」

「鳳 鈴音よ。皆は鈴(リン)って呼ぶわ。よろしくね」

「幼馴染だと?」

 

その言葉に箒は怪訝な顔をする。一夏とは小学5年まで一緒だったはずだ。

だが、彼女には見覚えがなかった。これ程までに一夏と親しい雰囲気を出す少女を忘れるはずはない。

 

「あぁ、箒とはほとんど入れ違いでうちの小学校に来たんだよ。ついでに言うと、箒の机を最初の頃使ってたな」

「む……」

 

そう言われると、なんとなく感慨深い物を感じる箒であった。

 

「あぁ、あの机ね。覚えてるわよ? 態々転校前に綺麗にしていったんでしょ? ありがとうね」

「い、いや……。んん、当然の事をしたまでだ」

「(箒さん!?)」

 

褒められ、あっさりと篭絡されかける箒を見て、セシリアは唖然としていた。チョロかったのはむしろ箒の方であった。

 

「とにかく、私は一夏が言うにはセカンド・幼馴染だって事。ね、一夏?」

 

そして箒は、ファースト・幼馴染。彼女はそう言うと、一夏に同意を求める。

 

「あぁ……」

「なによ、歯切れが悪いわね?」

「実はさ、女の子にファーストだの、セカンドだの番号つけんなって怒られたことあってさ」

「へ~。的確ね」

「ぐふ!?」

 

正直、未だに怒られた事をしっかりとは理解していなかった一夏であったが、鈴にそう言われその指摘は間違いでなかった事を理解していた。

 

「で? 誰に言われたの? 篠ノ之さん?」

「私の事は箒で構わん。それと、私はそんな事は言ってない。其方の事も今日知ったのだ」

「私の事も、鈴でいいわよ。じゃぁ、誰よ?」

「あぁ、リズ……えっと、SAOで知り合った奴にさ」

 

その言葉を言うと、ほんの少し場の雰囲気が変わった。それは一夏にだけ感じる事ができた空気であった。

 

「ふぅん。あっそ」

 

鈴がそう短く答えた。その冷たい言葉に、静かな拒絶を感じた。

 

「そんな事よりさ!!」

 

だが、すぐさま鈴は話を切り替え明るく話を続ける。その様子に、一夏は寂しさと悲しさを感じつつも指摘することが出来なかった。出来るはずもなかった。

原因ははっきりしているのだから。

 

「(俺がSAOの話をしようとした時の千冬姉にそっくりだな)」

 

まだ、彼が目が覚めリハビリ前の検査をしていた頃の話だ。初め、一夏は千冬に語りたかった。自分があの世界で何をしてきたのか、何を得たのか。

だが、千冬はその話を聞こうとはしなかった。

それはとても寂しく、悲しかった。だからこそ、全てを肯定してくれなくても自分にアミュスフィアを渡して多少なりとも自分の2年半を理解してくれてのは嬉しかった。

 

「大体アンタ、なんでISなんて動かしてんのよ。おかげで予定が狂っちゃったじゃない!」

「なんだよ、予定って」

「こっちの話よ、馬鹿!!」

「なんで怒鳴られてんだよ!?」

 

いつか鈴も自分を理解していれるだろうか? 一夏はそんな事を思いながら、3年ぶりに直接再会できることになった彼女との会話を楽しんだ。

しかし、それも……。

 

「あ、もうこんな時間か」

「まぁ、本当ですわね。これでは今日は訓練は難しいですわ」

「あ~、悪い。セシリア」

「仕方あるまい。一夏、部屋に帰ろう」

「あぁ」

「? ちょっと待って?」

 

鈴がある事を知るまでの話であったが。

 

「どうして寮に戻るじゃなくて、部屋に戻るなの?」

「あぁ、色々あって箒と俺、部屋一緒なんだよ」

「はぁ!?」

まぁ、早い話が一夏と箒が同室である事実を知るまでの話であった。

 

「どういう意味よ!? なんで、異性同士で同室なのよ!?」

「いや、その予定だったんだけどさ色々あって」

「色々って何よ!?」

「単純に部屋の調節ができていないだけだ。部屋の準備もあと一月以内には終わるという話だが」

「一月も!?」

 

その事実に鈴は驚愕する。確かに一夏は鈍感だ。鈍感すぎる。話した限り昔と全く変わっていないように感じる。しかし、本能によって衝動的に若気の至りに行ってしまう可能性はゼロではない。その事から鈴は危機感を感じていた。

……実際は起きるのなら、とっくに起きているはずなのだが。

 

「まぁ、子供の頃から知っている中なら比較的マシだろうって話でさ……」

「ふぅん。そう……」

「じゃぁ、俺そろそろ部屋戻るから。鈴も荷物の準備あるだろ? 後で呼べよ。手伝うからさ」

「その時は私も手伝おう。では、また後ほどな」

「必要でしたら私もお手伝いいたしますわ。それでは、私も失礼致します」

 

去っていく三人。一人鈴は残っていた。そして、鈴の瞳が怪しげな光が灯る。

 

「子供の頃から知っているのなら……幼馴染なら良いのね!?」

 

彼女のその決意はある波乱を巻き起こす……。

 

 

 

 

 

 

「学年責任者は千冬さんだが、直訴するのか? すごいなお前?」

「はぐぅ!? 難攻不落!?」

 

事もなかった。

まぁ、何が起こったのかと言うと幼馴染は自分も同じだから箒に対して部屋を換われと強要してきたのだ。

しかし、『千冬』と言う名の壁の前にあっさりと砕け散った鈴であった。

 

「こっそり、こっそりでいいから!!」

「駄目だろ。ばれたらどうなるかお前も分かっていよう」

 

それでもなお食い下がる鈴であるが、箒はバッサリと切り捨てて言う。

 

「ぐぬぬ」

 

納得いかない鈴の様子を見て、箒が溜息を吐く。因みに一夏は、あっち行ってろと言われてポツンとベッドでいじけながらタブレット端末を動かしてVRMMO関連の記事を見ていた。

 

「それに、そう大したものではないぞ」

「な!? ほ、箒はその立場だから言えるんじゃない!!」

「まぁ、終いまで話は聞け」

 

確かに箒は当初色々な事を期待していた。自分は今でもどぎまぎしているが、一夏は驚く位自然体でいるし、なんだか小馴れしている雰囲気さえ現在では醸し出している。それがなんともいえない気分となり箒は……。

 

「ふ、なんだろうな。勝手に期待してた自分が少し悲しく……」

「ごめん箒! もう良い、もう良いのよ!?」

「(なにやってんだ、あの二人?)」

 

勝手に友情を育んでいる二人を見て一夏は怪訝な顔をした。

 

「まぁ、いつでも遊びに来ればいい。私も一夏も歓迎する」

「おう。いつでも来いよ」

「はぁ。それぐらいが妥当か~」

 

仕方ない。と鈴は落としどころをつけた。流石に思い人の同室が異性と聞いて短絡的になってしまっていたようだと反省もしていた。

 

「行き成り押しかけて悪かったわね……?」

 

だが、鈴はある物に視線をやってしまい動きが止まった。不審に思い、一夏は視線の先を見た。見てしまった。

そこには……。

 

「なんで……」

「あ、いやあれは!?」

「なんで、ナーヴギアがここにあるのよ!!?」

 

鈴は、今までにない憎しみの入った目をしながら、一夏に詰め寄った。

ここからだ。

ここから一夏にとってのIS学園第二の騒乱の火ぶたが切られるのであった。

 




モッピーすでに決行したよ。もう散々な目に合ったあの世界からは脱出したって事を。

モッピー何でも知ってるよ。ここから新たなモッピーの冒険が始まるって事を!

さて……。

『ツインテールヘブン・オンラインへようこそ!! このゲームは――――」

モッピーはここでポニーテールの嵐を巻き起こすよ!!

ぬ、なにをする、止め……ぬわぁ!!?



クスンクスン、モッピー悲しいよ。強制的にツインにされたって事が。

モッピー逃げ出すよ。このおかしな世界から……。

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