織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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バトルシーンは難しくて、いつも以上に時間が掛かってしまいます。

けどなんとか、諦めずに投稿成功です。

さ~て、次は無人機戦だぁ(涙)


第二十七話・逆転の一手

「何が起きたんだ!?」

 

一夏は、混乱する頭を必死に抑えながら、何が起きたのかを分析していた。なかばパニックになりながらも考える事ができているのは、SAOで予想外の戦闘を何度も繰り返してきた経験故であった。

 

「ほらほら! どうしたの、呆ける暇はないわよッ!!」

「クソッ!!」

 

再び、鈴の機体に搭載された兵器が起動音を発する。やはり、白式のシステムは予測線も張らないが、ゾワリとした己の勘を信じて一夏はその場から急いで離れた。

 

「くっ! 今のは!!?」

 

次の瞬間、一瞬確実に一夏の近くを何かが通り過ぎた。いや、撃ち出されたと言うべきか?

 

「(白式が、鈴のISにロックされているのは警告してくれている。だけど、そこまでだ!!)」 

 

予測線も発生されなければ、あっちからは機動音が聞こえるだけ。何も見えないのだ。

 

「(くそ、落ち着け!!)」

 

冷静に考えれば、見えない砲弾が撃ちだされたと考えるべきだ。だが、見えないからと言って、弾道予測線が張られない理由にはならないはずだ。

一夏は、必死に考えを纏めようとする。だが、当然鈴もそんな一夏に時間を与えるはずもない。

 

「そらそら、どんどんいくわよ!!」

「ちょっとくらい、待ってくれよ!!」

 

相変わらず、予測線も張られなければ、見える事もできない砲弾が彼を次々に襲っていた。

 

「えぇい!!」

 

一夏はひたすら己の感覚のみでその攻撃を何とか躱していく。

 

「はっ! 甘いのよ!!」

「なっ!?」

 

対する鈴はそんな一夏にリズムを取らせないように不規則なタイミングで攻撃を仕掛けてくる。見えない砲弾を足元に狙って撃ち出し、バランスを崩したところ直撃コースを連続で撃ちだしてきた!!

 

「ぐぅっ!!」

 

それを一夏は、強引に体を捻りながら回避する。何とか体勢を立て直そうとするが、鈴の猛攻は止まらなかった。

 

「残念ね、一夏! こっからは、ワンサイドゲームよ!!」

 

鈴の高らかな宣言は一夏にとって恐ろしいまでに現実感を漂わせるものであった。

 

 

 

 

 

 

「なんだ、あれは!?」

 

アリーナ観客席で箒は一夏の身に何が起きたのか理解できず、思わず驚嘆の声を上げてしまっていた。何もしていないはずの一夏が、行き成り壁に叩きつけられていたのだから仕方のない話であった。

 

「まさか、あれは!?」

「衝撃砲!? そんな!? あれはまだ開発途中だったはず!?」

 

しかし、セシリアと簪はそれに心当たりがあったのか、箒とは別の意味で驚嘆していた。

 

「な、なんだ!? その衝撃砲とは?」

「私のブルーティアーズと同じく、第三世代用の特殊兵装ですわ。空気自体に圧力をかけ砲身を作り、その余剰で発生する……」

『早い話が、空気砲ね? 小学校の頃、理科の実験でしたことはない?』

「なっ!?」

 

箒はその言葉に驚く。だが、驚いた理由は空気砲と言う、某有名漫画の未来道具紛いの存在だけではない。

 

「(いつの間に、機材を装着したのだ?)」

 

いつの間にか、訓練時に使用していた機材を纏い顔面の前にモニターを投影している簪、否クシナを見て箒は茫然としていた。

 

『あ、一応言っておくけど仮想空間を併用した方が情報収集をおこなうのが楽ってだけで、別にこの格好に他意はないからね?』

「あ、あぁ」

 

とは言え、散々この一週間でからかわれまくったのだ。どうしても警戒をしてしまう箒である。

 

「だ、だが! 砲撃と言うのであれば予測線が張られるはずだ! 機動戦でもないのにあんな風に一夏が躱すのに精一杯なはずが!!」

 

鈴は今現在、殆ど動かずに衝撃砲を撃ち出す事を繰り返していた。セシリアの様に、4機ビットによる360度の攻撃ならまだしも、幾ら見えなくても鈴の位置から只撃ち出されるだけなのであれば、一夏なら……。

 

『それは無理ね。織斑君はむしろ良く避けているわ』

「そうですわね。予測線も見えない状況下での回避力。流石と言うべきでしょうか……」

「よ、予測線が見えない? 何故だ!?」

 

その予測線が見えないという事が理解できず、箒は疑問の声を上げるしかなかった。

 

『それは単純よ。あの兵装は予測線封じの武器だから』

 

そう言いながら、クシナが映っているモニターの横に更なるモニターが展開される。そこに書かれている情報をクシナは読み上げながら箒に分かりやすく説明をする。

弾道予測線システムが展開される仕組みは、ISが敵機にロックされる事に反応して、銃口、あるいは砲口を確認後そこから真っ直ぐに伸びるラインを予測線として操縦者に知らせる仕組みだ。

それはつまり……。

 

「砲口どころか、砲身さえ見えないあの武器では、予測線は展開されない……という事か?」

『そう言う事。弾道予測線システムができてから、その対策の武器は検討され続けているけど、あれは一つの完成形ね』

 

衝撃砲は、弾道予測線を見せない武器。ブルーティアーズは弾道予測線が見えても問題のない飽和攻撃。

それぞれ、違うアプローチであるがどちらも弾道予測線を強く意識した武器である。

(もっとも、セシリアの武器にはまた違うアプローチが組み込まれているのだが……彼女はまだその力を引き出しきれていない)

 

『おまけに、鈴ちゃんってば天才だわ。砲撃を撃ち出すタイミングにリズム性がないわ。あれじゃぁ、織斑君は彼女のリズムを掴めないわね』

 

もっとも、鈴自身はその事を意識的にはやっていないのだろうけど。その事実を簪はなかば感心、そしてなかば呆れ、そして、少しの嫉妬を持って感じていた。

 

『(やっぱり、どこにでもいるんだ。天才って……)』

 

勿論、鈴もその己の感覚を肉体……ISに反映させるほどの訓練をし続けているのはよく分かる。そしてその全ては、日本に戻り再び一夏と再会するため。

だからこそ許せないのだろう。一夏がまだ、VR技術との関わりを捨てきれないのだ。

 

『(同じ女としてそれは理解できるけど……)』

 

だが、と簪は考える。自分は鈴と同じ女の子であるが、同時に一夏と同じSAOを生きた存在でもある。そして、自分だってあの世界で得たものがある。

自分は彼と違って失敗ばかりだったけど、確かに残った物がある。だから、一夏の想いも理解できるから彼女は一夏を応援したのだ。

 

「一夏に、何かする手立てはないのか?」

「そうですわね……」

「……あ、ある!!」

 

箒とセシリアが悩ましい声を出す中、簪は被っていた機械を外し、もどりながらも強い口調でそう言った。

 

「わ、私達で織斑君に教えた『瞬時加速』がある!!」

 

しかし、思い切って大きな声で言った所為か周りの視線が一気に集まり簪は思わず縮こまってしまった。

 

「コホン、そうですわね。確かにあれが上手く決まれば一夏さんにも勝算が見えるでしょう。もっとも……」

 

通用するのは、一回が限度でしょうけど。セシリアは、鈴の空戦能力を見てそう考えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「あぁ! もう! ちょこまかと!! いい加減観念しなさいよ!!」

「無理言うな、馬鹿!!」

「馬鹿って何よ! 馬鹿って!!」

 

一夏と鈴は言い合いをしながらも激戦を繰り広げていた。とは言え、現状は一夏が必死に避けているため明らかに鈴の優勢であった。

せめて、壁に叩きつけられないようにと上空に逃げたのは良いが、良く考えたら上空にも強固なシールドがあるため無意味であった。

そんな単純な考えが浮かばないくらいには一夏は追い詰められていた。

 

「(可能性があるとすれば、瞬時加速! だけど、ただ使うだけじゃ通用しない!!)」

 

瞬時加速は、一夏が僅か一週間足らずで覚える事ができた基本技能の一つにしか過ぎない。今はまだ鈴が瞬時加速を使える事を知らないため、使えば意表はつけるだろうがほんの一瞬のはずだ。

もし、タイミングを逃し自分が瞬時加速を使える事を知られれば警戒され二度と通用しないだろう。

故に一夏はタイミングを見計らう。セシリアとの戦いの時といい防戦一方な自分が少し情けなくも感じていた。

 

「(あぁ、そう言えば昔鈴と見た映画で見えない恐怖とか言う映画あったっけ?)」

 

極限状態が続いているせいか、一夏はまったく関係のない記憶を呼び覚まし始めていた。

かつて、鈴に誘われ二人で行った映画だ。内容は透明人間によるホラー映画であった。

(当然、鈴は最大の勇気を持って誘ったのだが、当時の一夏は『一人で見るのは怖いんだな』と恋愛唐変木っぷりを発揮して全く通じていなかったりする)

 

「(って、馬鹿か!? そんな事を思い出している場合じゃ……)」

 

そんな現実逃避を仕掛けている脳を必死で振りかぶり思考を戦いに向けようと努力していた。そんな時だ……。

 

「(見えない恐怖……透明人間……ッ!!)」

 

次の瞬間、一夏は何かを直感した。そして。

 

「な、何のつもりよ!?」

 

行き成りピタリと動きを止めたのだ。まるで話を聞けといわんばかりに。

その様子に鈴は怪訝な顔をして動きを止めた。

 

「やめだ……」

「は?」

「もう逃げるのは止めだ」

 

そう言いつつ、彼は雪片を徐に構えた。

 

「一発勝負。受けてみる気はないか、鈴?」

「はぁ?」

 

その一夏の提案に、鈴は何とも間抜けな声を出す。それも当然だ、鈴にはこの勝負を受けるメリットは一切ない。さっきの攻防を続けるだけで自分の勝利は確定しているも当然なのだから。

 

「ばっかじゃないの? そんなの……」

 

鈴は再度、衝撃砲「龍砲」を起動させようとして、ふと動きを止めた。

どうして一夏は急にこんな事を言いだしたのだろうかと。

 

「(ははぁん。そう言う事)」

 

何か有るのだ。自分の意表をつけるであろう何かが。とはいえ、それならば尚更彼の誘いに乗る必要はないかのように思える。

しかし、鈴の考えは違っていた。

 

「いいわよ。かかってきなさい」

 

その全てを叩きつぶす事で、彼女は彼を屈服させようと思ったのだ。今の彼女にはそれが正しい事だと思えているのだ。

 

「何をしても無駄って思い知らせてあげる」

「さぁ。そいつはどうかな?」

 

一夏の目つきが少し鋭くなる。そして、鈴もまたその動きに反応すべく構えを取る。まるで二人の間の時が止まったかのような感覚が周囲を覆っていた。

そんな二人の様子を客席にいる者達全員が見守っていた。

そして、誰かが手を滑らせて飲み物を落としてしまった。まるで場の空気に飲まれたかのように。

その落ちた音がアリーナに響いた瞬間。

 

「いくぜッ!!」

「―――ッ!!」

 

一夏の姿が一瞬にして消えた。瞬時加速が発動したのだ。

 

「残念、だったわね!!」

 

だが、鈴は彼の突進を難なくかわし、一夏は地面に激突した。一夏の一か八かの賭けは負けに終わった。観客はそう感じていた。

 

「―――く!!」

「もう、空には上げないわよ!!」

 

一夏はすぐに飛び上がり、体勢を立て直そうとする。だが、それすらもできない。鈴の衝撃砲が彼を襲い彼は真横に飛んで回避する。

後はそれの繰り返しだ、一夏が飛ぼうとするたびに彼女は妨害をして彼をどんどん追い詰めていった。

 

「あははっ!! IS使ってるのに空が飛べないって無様ね!!」

「うっせー。悪人みたいなこと言ってんじゃねぇ!!」

 

一夏は何とか悪態をつきながらも必死に回避を続けていた。衝撃砲の連続にアリーナの床は砕け多量の粉塵が空気中を漂っていた。

 

「ほらほら、どんどんいくわよ!!」

「くそ!!」

 

飛べない彼の回避範囲は当然限定されてしまい、次第に彼はアリーナの隅へと追い詰められてしまった。

壁にぶち当たり、一夏は壁を背中に当て構える。もう逃げ場はどこにもない。左右に飛んでも避けきれないだろうし、一つでも掠れば最後だ。

 

「どうやら、ここまでのようね。一夏」

「どうだろうな。俺のエネルギーは、まだ0じゃないぜ?」

「なに? 負け惜しみ?」

 

彼が零落白夜を使っていたのは試合序盤のみであった。衝撃砲も最初の一撃がクリーンヒットしただけで、他は何とか回避できている。そのため、シールドエネルギーはまだまだ余裕があった。

とは言え、捨て身の攻撃もできずにいた。最初の一撃でのシールドエネルギーの消費率を考えると、そうやすやすと攻撃を受けるわけにはいかない。それは、正真正銘の自爆にしかならないのだ。実行するわけにはいかなかった。

 

「正直、短期間で瞬時加速を覚えた事には驚きだったけど、結局は無駄だったわね。あんな正面から突っ込んできたんじゃ丸分かりよ」

「……」

 

だが、一夏は不適に笑っていた。まるで瞬時加速は成功したといわんばかりであった。その表情はどうやら鈴の癪に障ってしまったようだ。

 

「いいわ。後遺症が残らない程度に潰してあげるわよ!!」

 

彼女の両肩に搭載された龍砲から怪しい機械音を発する。そして、衝撃砲が放たれた瞬間。

 

「―――なッ!!?」

 

鈴は息を飲む。彼はほぼ完璧に衝撃砲をかわし、突っ込んできたのだ。見えない砲撃……つまりは避けるタイミングを完全に見失わせるはずの武器が攻略されていたのだ。

 

「ま、まぐれに決まってるわよ!!」

 

だが、次々撃ち出される砲弾を一夏は完璧にかわしながら鈴へと迫っていった。その一夏の様子に観客がどよめきだす。

 

「今度はこっちの番だ!!」

「ああ! もう!!」

 

鈴は再び序盤に使用していた青竜刀を展開して一夏を迎え討った。

 

「やるな!!」

 

一撃を受け止めて鈴に一夏は称賛を贈り、彼女は苦虫を噛んだような表情を見せていた。

 

「なめんじゃ、ないわよ!!」

 

鈴は彼の武器を思いっきり弾き、距離を取った瞬間に龍砲を撃ち出す。この至近距離なら当たるはずであった。

 

「っぶね!!」

 

だが、彼は体全体を回転させるようにしてそれを交わした。明らかにタイミングを理解していた動きであった。

 

「ま、またぁ!? あ、アンタなにしたのよ!!?」

「したのは、俺じゃない!! お前だぜ、鈴!!」

「な、なにを!!」

 

一夏は攻撃の手を緩めることなく、会話を続けた。

 

「くっ!?」

「昔見た一緒に見た映画を覚えているか!?」

「は、はぁ!? なんで今その話が……ッ!!?」

 

鈴はそこまで言われてある可能性に気付く。かつて彼と共に見た映画は、透明人間による連続殺人物のホラー映画であった。

主人公の仲間が次々殺されていき、終盤には主人公も追い詰められた。だが、そこで主人公は何もないはずの空間に浮かぶ赤い何かに気が付く。

それは透明人間が浴びていた返り血であった。そこから逆転劇が始まり見事透明人間を撃退するという流れだったのだが……。

 

「(まさか……)」

 

鈴は、周りに浮かぶ粉塵を注意しながら衝撃砲を起動させる。するとどうだろう?

空気の流れが目に見えたのだ。正確には粉塵が舞っているのだ。

 

「一夏。あんた、こんな方法で!!」

「以外に、分かるもんだろ!?」

 

何という事であろうか。目の前の少年は、一度きりでも切り札になりえる瞬時加速を囮にして、この衝撃砲封じの環境を作ったのだ。

 

「本当は、瞬時加速を囮に使いたくなかったけど、空中じゃ場所が悪くてな」

 

そう言いながら、彼は今までと変わらず不敵な笑みを浮かべていた。

 

「(だからって、躊躇なくする馬鹿はそうそういないわよ!!)」

 

意外な所で大胆な事は知っているが、こう言った状況で迷いなくできるその根性は感心するしかなかった。

けど、幾らなんで、昔の彼ならば映画の話を戦いに生かす事ができたであろうか?そう考えた瞬間、鈴の心は一気に冷えた。

 

「(また、SAO……ッ!!)」

 

SAOで学んだという彼の言葉を実感した瞬間であった。その事が鈴の神経を逆撫でにしていた。

 

「ばっかじゃないの、あんた!!」

 

そう言って、彼女は一気に上空へと上がる。いくら衝撃砲の威力で、粉塵が高く舞っているとはいえ、アリーナの半分にも満たない高さである。そのため、この場所を離れれば何も問題はなかったのだ。

 

「(余裕のつもりだったのかもしれないけど、種さえ分かればこんなの……)」

 

そう、問題の無い……筈であった。

 

「いったぁ!? え? なに!!?」

 

鈴は急に何かにぶつかる衝撃を受け、動きを止めた。すぐにハイパーセンサで何が起きたのかを確認する。

 

「悪いな、鈴!」

「い、一夏!? あんたいつの間に!?」

 

そこには一夏が彼女の肩に搭載されていた龍砲を掴んで離さない姿があった。

 

「周りの粉塵に意識を集中しすぎていたんだよ」

「しまっ!!?」

 

鈴はその言葉に何が起きたのかを気付いてしまった。

ISにはハイパーセンサーと呼ばれる機能が搭載されており、前を見ながらでも後ろが見える。だが、彼女は粉塵の舞う空間から抜け出そうとした際、なまじ肉眼で見えるため意識が自分の視線に集中してしまい、後ろへの警戒が疎かになってしまっていた。

当然、その瞬間は僅か一瞬であったのだがその一瞬を一夏は待っていたのだ。

彼はその隙を突いて瞬時加速を使用して回り込んでいた。

 

「まずは、一つ!! もらうぜ!!」

 

そう言いながら、彼は雪片を構え龍砲へ振りかざす。

 

「わぁ!? ばか!? それすっごく高いのよ!!?」

「知るかよ!?」

 

高いという言葉に若干動揺する一夏であったが、すぐさま落ち着きを取り戻し龍砲を斬り裂こうとした。だが……。

 

「―――くっ!?」

「ちょ、なに!!?」

 

自分達の頭上のシールドを割り、何かが勢いよく通り過ぎていった。その何かの衝撃に一夏達の体勢は崩れ少し吹き飛んでしまう。

 

「な、なによ。あれ?」

 

地面を見てみると、その何かがぶつかった衝撃であろうか、先ほどまでとは比べ物にならないはどの煙が充満していた。

ただならぬ気配に、鈴も一夏も試合を中断してその煙を見つめていた。

そして!!

 

「ッ!? ロックされて!!?」

「鈴!! あぶねぇ!!」

 

ISの警告音が二人に鳴り響いた瞬間、煙の先からビームが二人目掛けて撃ち出され、一夏は鈴を片手で担ぎ、もう片手で雪片を構えそのビームを防ごうとした。

 

「ぐぅ!!?」

「一夏!!?」

 

だが、その威力を完全に一夏は甘く見ていた。ビームは切り裂けるどころか、彼を押し出していたのだ。その瞬間は刹那の時。だが、彼にはもっと長い時間にさえ感じた。

 

「なめるなぁあああ!!!」

「いちかぁッ!!?」

 

彼の苦しい声がアリーナ中に響き渡り、鈴の悲痛な声もまたアリーナ中に響き渡るのであった。

 




……ふぅ、織斑君の生写真がなければ即死だったわ(出番的な意味で)

んもう、簪ちゃんってば油断も隙も無い……。
なんかどっとつかれちゃったわ。今日は近くのカフェで偶にはのんびりしようかしら?
はぁ……。


《ツカツカと彼女はその場を立ち去っていく》


ん? これは?
…………はぁ。
お嬢様、カメラ回っている事に気付いていなかったのですね……。

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