織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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今回、本編中にISとSAO以外のキャラが出ていますが、元ネタと同じではなく、あくまで似たようなキャラです。
したがって、クロス先が増えるわけでもなく、本編に本格参戦の予定もないのであしからずです。

……まぁ、オリキャラ考えるのがめんど……げふんげふん。イメージするのが難しかっただけですけど(汗)


第二十八話・その頃の彼女、その時の彼

ドイツ・某所。

とある軍事施設の一部屋で、片目に眼帯を着けた銀髪の少女が荷造りをしていた。

 

「ふっと」

 

少女は旅行鞄に一通りの荷物を詰めると、一息ついていた。

 

「ふぅ……。しかし、アークソフィアにあった私の部屋の方が荷物は多かったのではないだろうか?」

 

彼女の名前は、ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ軍に所属するIS操縦者だ。ISの出現により女性の軍人は目に見えて増えているが、彼女のように若干16歳にして大尉とは異例であった。

もっとも、大尉になったのは数か月前に専用機を受理した際であったので、まだ彼女は大尉と言う響きになれていなかったりする。

だが、彼女には今の自分の名前以上に、大切な名があった。

 

『チンク』

 

それが彼女のもう一つの名前であった。

そう、彼女もまた、SAO生還者。アインクラッドでは眼帯を着けたまま戦っていた事から、『ガンタイのチンク』という二つ名を持っていた。

 

「まぁ、アインクラッドで持っていた服の殆どはリズベットやアスナに押し付けられたものばかりだったが……」

 

あいつ等はすぐに人を着せ替え人形にする。と内心愚痴りながらも彼女は近くに置いてあった新聞を手に取る。

 

「世界初の男性操縦者か。まったく、アイツめ。私が日本に行くまでジッと出来ていないものか」

 

口調はキツイが、その彼女の眼は優しさに満ちていた。そんな時が。

 

「隊長!!」

 

バンっと、勢いよく扉が開かれ一人の女性が部屋に入ってくる。その女性は彼女と同じく片目には眼帯を着けていた。

 

「クラリッサか」

 

チンク、もといラウラは溜息を吐きながら彼女に言う。

 

「隊長はよせ。私は隊長着任予定だった者に過ぎん」

「いえ、貴女は隊長です。あの時、私があんな物を勧めなければ……グフッ!!?」

 

しかし、彼女が話をしている途中で急にチンクは彼女の腹を殴ったのであった。

 

「クラリッサ。『あんな物』等と二度と言うな。次は加減できる保証はない」

「イ、イエス。マム」

「っと、すまんな。うっかり上官を殴ってしまった。これは軍法会議ものか?」

「い、いえ。お気になさらずに……ベッド借りても良いですか?」

 

彼女はフラフラとお腹の痛みを押さえながらベッドに腰かけサスサスと殴られた箇所を撫でる。ラウラが先ほど言ったように加減されていたためか、痛みは割かしすぐに引いていった。

 

「塗り薬、いるか?」

「いえ。お気遣いなく。もう平気です」

「そうか」

 

クラリッサは考える。目の前の少女は本当に変わったと。3年前の少女は能力自体は確かに高かったが、人格面で難があった。『力』こそが絶対で、軍の中でも孤立した存在であった。

彼女との出会いは数年前、IS配備特殊部隊・シュヴァルツェ・ハーゼ……通称『黒ウサギ隊』の隊長研修の時であった。

当時新設される事になったIS配備の特殊部隊であったが、その頃からクラリッサはラウラに色々と構っていた。本来ならば、学校に行っていなくてはいけない歳であったラウラを何かと気にかけていたのだ。

そして、クラリッサは重度の日本文化(所謂アキバ系の)のファンでもあった。

そんな彼女は数年前、国外であるにもかかわらずSAO(ナーヴギアセット)の予約に成功したのであった。

とは言え、当時の彼女は別部隊への研修予定で、SAOサービス開始の際にはログイン出来なかったのである。そんなとき、彼女はふとラウラの事を思ったのであった。

クラリッサは何でもいいので、彼女の息抜きを作りたかったのだ。常に張りつめた状態の彼女の心に何とかゆとりを作ってあげたかったのだ。

それには彼女が、黒ウサギ隊の隊長に着任予定というのもあった。孤立した彼女が隊長になれば部隊の不和にも繋がるからだ。

ラウラはそんなクラリッサを鬱陶しく当時は思っていたが、ある一言でSAOにログインするという気紛れを作ってしまった。

その理由は。

 

『あの織斑教官も、休日には弟さんと一緒にゲームをしていると言います(もっと、TVゲームではなく、ポーカー等の類だが)。たまの息抜きこそが強さの秘訣とも仰っていました』

 

初めは、弟……織斑一夏の話題が出て彼女は苛立ちを感じていた。彼女にとって織斑千冬とは落ちこぼれた自分に力を与えてくれた崇拝すべき存在であった。

しかし、一夏はかつてモンド・グロッソで誘拐され、千冬は彼を助けるために試合を放棄していた。結果、決勝戦は千冬の不戦敗となったのだ。

いうなれば、一夏は当時の彼女にとって千冬の経歴に泥を塗った男。彼女にとって一夏とは消すべき存在であった。

しかし、『強さの秘訣』と言う部分が彼女は気になってしまい、試しにとログインしたのであった。

それから彼女は色々な事を経験したのだが、それはまた別の機会に話すとして今はクラリッサのその後を話そう。

ラウラがSAOに捕らわれてから、彼女は当然自分の行いを後悔した。

当たり前だ。こんな結果を望んでいたわけではなかった。ただ、彼女に普通の人間らしさを持ってもらいたかっただけだったのだから。

軍内では、隊長の座欲しさに罠に嵌めたという根も葉もない噂が広がったが、彼女はしたも同然という自責の念に駆られていた。初めは、すぐにでも軍を辞めるつもりだった。それどころか、自殺さえ考えた事もあった。

だが、それは出来なかった。軍はSAOに捕らわれたラウラを早々に見切りをつけたのだ。彼女に与えられていた専用機は別の者に引き渡され、それどころかラウラの身さえ危険に晒されていた。

ラウラは、軍で生み出された遺伝子強化試験体であり、言うなれば戦うための道具として生み出された存在であった。

そのため、生きている内ならともかく、寝たきりで何時目覚めるかもわからない状態の彼女は軍にとって、生命維持する価値の乏しい存在であった。

むしろ、実験体に回す方がメリットも高かったのだ。理由だって、SAO内で死亡したためとすれば、表立っての問題にはならないのだ。ラウラちゃん、大ピンチであった。

そんな彼女を守るためには、相応の立場が必要であった。だからこそ、クラリッサは軍に所属し続ける道を選んだ。

いつか、ラウラが現実世界に戻ってきた時、彼女がいるべきはずであった地位を守るため。いつか彼女自身から断罪を受けるためにも。

そして、SAOから帰ってきた彼女はすっかり変わっていた。無論、良い意味でだ。

人付き合いも、不器用ながら改善されていたし、何より笑顔が多くなっていた。

そして、それどころかわずか半年でかつて以上の力を取り戻し、専用機も再度受理されるほどまでに登り詰めて見せた。何時しか、部隊での隊長就任も近いと噂されるようになっていた。

結局、彼女は自分を罰してはくれなかったが、ならば今後は副隊長として隊長になる彼女をサポートし続けよう。数年のズレが生じたが本来あるべき姿にようやく戻れる。

そう思っていたのだが……。

 

「隊長!!」

「だから、私は隊長ではないと……」

「なぜ国家代表候補として、IS学園に行くなどと言うのですか!?」

「……あぁ、その事か」

 

ラウラは内心失敗したなと思っていた。どうせクラリッサは煩くなるだろうからギリギリまで知らせずにいたのだが、どうやら裏目に出たようだ。

 

「すでに決定事項だ」

「ですが進言したのは貴方です。取り消すのだって不可能ではないはず!」

「生憎、自分で言っておいて、短期間で取り消すような我儘な人間になった憶えはなくてな」

 

鈴が似たような事をしてしまっているのだが、この場では関係ないのでは省略する。

 

「ぐ、ならばせめて護衛兵を同行させてください!」

「いや、待て。なぜそうなる?」

「エーリカ・ハルトマン中尉などいかがでしょうか!? 人格には難がありますが、能力としては優秀ですし、身体的特徴は隊長と似たところがあります!!」

 

また殴られたいのか、お前は。心の中でそう思いつつも、ラウラは彼女を思い出す。

 

「アイツ、この前『眼帯だっせwww』と笑っていたぞ?」

「エーリカ・ハルトマン中尉、減給っと……」

 

扉の向こうで、『うえぇ!?』という声が聞こえなくもないが、二人は無視をして話を続ける。

 

「で、ではゲルトルート・バルクホルン大尉などいかがでしょか!? 彼女は人格も軍人らしく、能力も秀でています!!」

「いや、アイツは黒ウサギ隊の現副隊長……」

「いかがでしょかッ!!?」

「(必死だな)」

 

とにかく何かしたいらしいクラリッサに内心苦笑いをしながら彼女は、今紹介された隊員を思い浮かべる。

 

「アイツ、初対面で『私の妹になってくれ』と言ってきて少し苦手なんだが」

「ゲルトルート・バルクホルン大尉、一ヶ月軍事寮にて謹慎っと……」

 

扉の向こうで『クリスゥウウウ』とか、『シスコン乙www』とか言う声が聞こえなくもないが、二人はまだまだ話を続けていた。

 

「と言うか、べつに護衛兵はいらん。専用機持ちとは言え、今の私は軍からドイツ政府のIS機関に出向している単なる代表候補生にしかすぎん。ただ単に海外に行くだけならともかく、IS学園に行くのには不要だ」

「そ、そこまで……織斑一夏が大切なのですか?」

 

その言葉に、ラウラは顔を赤らめる。

 

「そ、それもあ、あぁああるがな!!」

 

若干声を上擦りながら、彼女は何とか口にした。SAOを通じて羞恥心を覚えた彼女は正史に比べてこう言った点が劣っているとも言えた。

 

「だ、だがそれだけではない。私は、いろいろ学びたいと思っている」

「学ぶ、ですか?」

「あぁ」

 

そう言いながら、ラウラは考えていた。自分と、他の軍人の違いを。

軍に入るには何か理由がどの人間にもあるはずだ。国を守りたいという愛国精神から、暮らしが不味しく金銭のためから、あるいはかっこいいからと言う安易な想いからもあるかもしれない。

だが、ラウラは違う。戦うための道具として生まれ、軍属である事は強制されていた。それを否定した事もなかった。落ちこぼれた時でさえ。

一見、『生きるため』が理由にも思えるが、どちらかと言えば軍にいる事こそが『生きる事』であった。

それは、理由と言うよりも本能に近い。なにかのためではなかった

だが、不幸中の幸いか彼女は今自分の道を自分である程度選べる状況にあった。

SAOに捕らわれた頃は、あわや実験体の一歩手前であったが、今の彼女は各国にも公表された国家代表候補生。人権は当然護られている。

もし仮に『不慮の事故』と言う名の陰謀が引き起こされようとも、今の彼女は生半可な事では命を落としたりしないだろう。

確かに、不測の事態は怖いが普通に生きていても大なり小なりある。一々気にしていられない。

それよりも彼女は今一度改めてみたくなったのだ。自分が何のために軍属でいるのかを。

彼女に生き方を考えさせるには、SAOと言う場所は十分すぎたのだ。

 

「だから私は行く。普通の生活、暮らしの中で今一度自分の生き方を考えてみたいのだ」

「隊長……」

「まぁ、折角できた友人達に現実でも会いたいという思いも多分にあるのも事実だがな」

 

それは事実であった。アインクラッドは、あの世界は、100層攻略と共にすべて消えた。それは、皆で残した思い出も含めてだ。勿論、思い出は今でも色あせる事なく彼女の中にある。だが、あの世界で撮った写真が詰まった記録結晶、皆に選んでもらった服、チナツにもらった贈り物。その多くも一緒に消えてしまっていた。

それを取り戻すことは不可能かもしれない。だが、新しく手に入れる事は出来る。

現実だろうと、新しいゲームの中であろうと写真は撮れるだろうし、(着せ替え人形にされるのは嫌だが)みんなでショッピングも悪くない。

ラウラは、今から楽しみだ。なによりも、皆との再会が。

 

「それに……」

「それに?」

「やはりチナツの奴が心配だ。キリトの影に隠れてはいたが、アイツもトラブルに巻き込まれる性質でな」

「は、はぁ……」

 

いや、もしかしたら。と彼女は考える。

 

「(もうすでに何かに巻き込まれているのかもしれないな……。ふ、まさかな)」

 

 

 

 

 

 

 

正解であった。

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぅうううあああああッ!!!」

「一夏ぁ!!」

 

織斑一夏、絶賛☆極太ビーム切り裂き中であった。

 

「(くそ、押し切られ……)」

 

押し切られる寸前、一夏は弾かれるように真下に飛び、ビームはそのまま直線に進み、空中に展開されている遮断シールドを突き抜けていった。

もし、射角が少しでも下がっていたらアリーナの天井箇所に直撃して大惨事になっていたであろう。

 

「助かった鈴」

「アンタは無茶し過ぎなのよ!!」

「わ、悪い」

 

一夏がビームに押し切られる直後、鈴が真下に一夏ごと飛んだのであった。無茶をする一夏を強く叱る鈴。

そんな彼女の様子に、無茶をする自分やキリトを叱ってきた彼女達を思い出して、一夏は少し気まずげな表情を浮かべる。

 

「と、とにかく何が起きたのか確認しないとな!」

「誤魔化すんじゃないわよ!」

「別に誤魔化すとか……って、撃ってきたし!?」

「きゃあ!?」

 

白式の警告に反応して、慌てて一夏は鈴を抱えたまま避ける。その視線の先には、先ほどの攻撃で砂塵を吹き飛ばした黒い何かがいた。

いや、何かではない。ISだ。全身を黒く輝かせ、無機質な印象を与える機体であった。操縦者がいると思わしき箇所には人型の装甲に包まれ、顔は判別できなかった。

 

「なぁ、鈴。あの肩の武器ってお前のに少し似てないか?」

 

そう言いながら、攻撃してきた謎のISの方の箇所に指を指す。そこには、巨大な兵器らしき物が搭載されていた。

 

「どこがよ!? 肩にでかいのってだけで一緒にすんじゃないわよ!」

「いや、だからきっとあれも武器……って、やっぱりッ!?」

 

するとどうだろう。まるで二人の会話を聞いていたように両肩に搭載されている兵器から次々とビームを撃ち出してきたのであった。

彼らはそのビームに追われながらも何とか逃げていく。

 

「ちょっと、いつまで抱えてるのよ!!」

「言ってる場合か! 暴れるなよ!?」

 

一夏は、暴れる鈴を宥めながら逃げつつも白式からの情報を確認していく。

全身装甲、所属不明機、競技規定値以上の出力兵器。

大凡、不安要素しか感じない情報ばかりであった。

 

『聞こえるか織斑』

「千冬姉!?」

 

そんな時だ、敵の攻撃を避ける一夏に千冬の通信が入る。いつもならば『千冬姉』と呼ぶ一夏を叱る彼女であったが、そう言った事はせずに彼に呼びかけていた。

 

『遮断シールドに先ほど壊された箇所がある すぐにその場を離脱しろ』

 

千冬は不明機から逃げろと言う意味でそれを口にする。だが、一夏は別の意味で受け取っていた。

別の場所に移動して戦えと。

 

「駄目だ! それでアイツが俺達を追ってくる保障はない!!」

 

この時、彼らの考えは一致していなかった。

一夏は、生徒達のいない場所へと移動して戦闘を続けたい。だが、もし相手が追ってこなかった場合どうなるか……と考えていた。

しかし、千冬の考えは違っていた。敵が一夏を追わない方がいいのだ。

つまり、『この場からの離脱』の目的に相異ができていた。

一夏は戦いを続ける事が前提で、千冬は逃げる事が前提と言った具合に。

その考えの相異に気付いたのか、千冬は苛立ちを押さえながら一夏に指示を続ける。

 

『それは貴様の気にする事ではない。シールドの修復が始まっている。急がねば間に合わん』

 

ここで一夏も、千冬が自分に逃げろと言っている事に気が付いた。

だが、相手の狙いは分からない。IS学園内で暗躍する人間はいても、こうも正面から堂々と襲撃する例は今まで一度たりともなかった。

狙いが自分達ならまだいい。このまま逃げても追ってきてひきつける事ができるのだから。

だが、もし仮にIS学園への無差別テロだとしたら?

恐らく狙いは、今なお観客席にいる生徒へと向くだろう。それだけは絶対に阻止しなくてはならない。

 

『既に、教員がISを装備して制圧に向かっている。後は私達に任せろ』

「生徒達の避難状況は!?」

『それは我々の仕事だ。此方に任せて……』

 

この非常時に、何とか自分を言いくるめようとする姉に対して一夏は思わず強い口調になり始める。

 

「皆の命がかかってるんだぞ。いい加減にしろよ、千冬姉!」

「ちょっと、一夏ッ!」

 

そんな一夏に、鈴が思わず止めに入る。彼女は千冬の気持ちが分かるから。だが、それは彼女が教えるよりも早く。

 

『その前に、お前の命が危険だと理解しろ! 馬鹿者!!』

「―――ッ!?」

 

千冬が示したのであった。

織斑千冬は元来自分を強く出すことはしない女性である。自分の感情を押し殺してしなければならない事ができる女性だ。

どんなに内心は心配していたとしても、こういった状況であれば一夏よりも一般生徒を優先することができる女性で……あった。

だが、そんな彼女を変えてしまうには一夏のいない2年半は充分すぎたのだ。

それを一夏も今の言葉で感じていた。現実に帰ってきて少し過保護になった姉から感じる物と同じ物を今の言葉に感じたからだ。

心配してくれる千冬に対して、申し訳ない気持ちはある。

だが、それでも―――。

 

「簪! 聞こえてるな!?」

『はいはい~♪ あなたの恋女房。クシナちゃんの登場よん♪……て、セシリアちゃんに、箒ちゃん。喚かないの。ちょっとした冗談でしょ!?』

 

引いてはいけない。引くわけには一夏にはいかなかった。

 

「ごめん千冬姉! いったん切る!!」

『待て!! いちk……』

 

白式に命じ、強引に千冬からの通信を遮断する一夏。そんな一夏を咎めるかのように鈴が言う。

 

「ちょっと、千冬さんの気持ちを少しは考えなさいよ!」

「後で、いっぱい叱られるさ。それよりも今は奴を」

「何よ、それ!? とにかく、他の生徒が気になって逃げるのが無理なのなら!!」

 

そう言うと、強引に鈴は一夏から飛び出し前に出る。

 

「あたしが時間を稼ぐから、アンタは逃げなさい!」

 

確かにそれならば、鈴は敵を引きつける事ができる。一夏と逃げ遅れている生徒達へ対象が移るのを防げるかもしれない。

だが、それは。

 

「駄目だ!!」

 

一夏には許容できない内容であった。一夏は、雪片を構えながら鈴の前に出る。その様子に鈴も苛立ちを隠さない様子で言う。

 

「いい加減にしなさい!! かっこつけてる場合じゃないでしょ!? アンタ少しは!!」

「嫌なんだッ!!」

「ッ!?」

 

しかし、急に苦しそうに声を出した一夏に今度は鈴が思わず黙った。

 

「もう二度と、誰かが死ぬかもしれないのに何も出来ない自分でいるのは……」

 

一夏の脳裏にはある事が思い浮かんでいた。彼が決して忘れてはいけない出来事が。

 

「それだけは、絶対に嫌なんだッ!!」

「ちょ、一夏!? 待ちなさい!?」

 

そう言うと、彼は弾ける様に正体不明機へと突っ込んで行ったのであった。

 

「いくぜ、雪片! 白式! うぉおおおおおおおおおおおッッッ―――!!!!」

 

今ここに約半年振りとなる命懸けの戦いが、一夏に課せられるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

○ゲルトルート・バルクホルン大尉

 

現黒ウサギ隊副隊長の女性。今年で二十歳。専用機持ちである。

基本真面目な性格だが、妹であるクリスティアーネ・バルクホルン(愛称クリス)を溺愛しているため、彼女の事になると少しタガが外れる様子。

とは言え、5歳年下という事もあり最近は色々大きくなっているため少し残念に思っている様子。(とは言え、これはこれで良しとも思っている)

ラウラに初対面でアレな発言をしているが、それは歓迎会のお酒の席で泥酔いしていたためであった。

言った理由は幼児体型が昔のクリスに似ているから。(顔は別に似てないが)

ちなみに、クラリッサはその時トイレに行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

○エーリカ・ハルトマン中尉

 

幼児体型のずぼら女。

……と言うのは彼女の一面にすぎない。能力はとても優秀でラウラがSAOから帰ってくるまでは彼女が専用機持ち候補であった。

専用機を結果的にラウラに取られる形となったが『これで楽できる~』と本人はまったく気にしていない。

そもそも、彼女は量産機で専用機持ち達と互角に戦える天才である。その所為で他部隊への出向が多いとか、いと憐れ。

でもずぼらである。

『チナツには会わせられない。あれでアイツ世話好きだからな』とラウラに警戒されている。

バルクホルンとは幼馴染である。余談だが、彼女達にはもう一人海外留学していた幼馴染がいたのだが、最近帰国して教師を目指しているとか、いないとか。

 




みんな、落ち着いて!! 生徒会の指示に従って避難するのよ!!

(―――あぁ! 今、私輝いてる!! 簪ちゃん!? お姉ちゃんの勇姿見てる!?)

『さぁ! クシナちゃんのスーパーオペレートタイムの始まりよん♪』
『あぁ、頼むぜ! 簪!!』

って、こっち全然見てない―――!!?

「ところでお嬢様、ISを使用して、この扉を破壊出来ないのですか?」

……いま、私達の学年のクラス代表戦に向けてフルメンテ中で持ってないの。

「……はぁ」
何その溜息!!?(涙)

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