織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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皆様、ご感想ありがとうございます。
返信している物は少なく、何かしら皆様思われてるかもしれませんが、単純に文章が思いつかないだけです(泣)
好き勝手に書くことは楽しいのですが・・・。
こんな私目ですが、よろしくお願いします。


第二話・爆誕☆男性操縦者

「どうしてこうなった・・・」

 

一夏は、展示用のIS・打鉄を装着し、呆然としていた。

 

「どうしてこうなった、どうしてこうなった!」

 

両腕を上げ、片足を左右に入れ替えながら浮かせ何となく踊ってみることにした。

 

「落ち着け一夏、暴れるな!」

 

錯乱する一夏を、千冬は懸命に宥めようとする。その傍にいた案内嬢の女性は青ざめた表情でこちらを見た。

 

「いや、別に報復とかしないから・・・」

 

「ひぃ!?」

 

「うわ、さっきまでの威勢はどこ行ったんだよ・・・」

 

あんたもこの原因の要因なんだぞ。そう一夏はジト目で案内嬢の女性を見つめる。

 

「はぁ。どうしてこんな事に・・・」

 

彼はつい数分前の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

「うぉ、思ったよりも盛況だな」

 

「あぁ、思ったよりも男性客の入りがいい。競技内容の展示を減らしているのは正解であったようだな」

 

一夏は意外そうに、そして千冬は感心して言った。

 

「うお、すげ! よく分かんねぇけどカッコいい」

 

「・・・それが目的とは言え、もうすこしな・・・」

 

一夏は、よく分からないがIS用の装甲、あるいは装備の一部を見て興奮を覚える。別にVRMMOだけが彼の興味の対象ではないのだ。

 

「あれ、これって・・・」

 

「ん?」

 

ふと一夏の動きが止まり、視線が一つの場所に止まっていた。千冬は不思議に思い、その視線の先を見る。

 

「あぁ、雪片か・・・」

 

そこには、IS用の近接武器、雪片があった。かつての千冬の愛刀である。そして一夏にとってもそれとは別の意味で特別な存在である。

 

「・・・本物?」

 

「いや、どうやらレプリカのようだな」

 

「だよな・・・」

 

彼はそっと、ガラスケースに手を当てる。まるでガラス越しに雪片の感触を確かめるかのように。

 

「・・・一夏?」

 

千冬はその一夏の顔を複雑な心境で見つめる。彼がこんな顔をしている時は、決まってSAOでの思い出を思い出している時だ。

しかし、疑問も出る。なぜ、目の前のIS用の装備でSAO時代を思い出すのだろうか?

 

「さ、そろそろ次行ってみようぜ、千冬姉」

 

「う、うむ」

 

しかし、聞けなかった。千冬は複雑な思いを胸に展示会場を弟と共に回る。

 

「千冬姉、まるでガイドさんだよな。俺、ラッキーだな」

 

「・・・たしかに、変だな」

 

「え?」

 

千冬は神妙な表情を浮かべ一夏に言う。

 

「この展示会には案内嬢が数人いるはずだ」

 

「あ、それってあの人達の事か?」

 

そう言い、一夏は部屋の隅に立っている女性達を見る。あれでは、案内嬢と言うよりも監視員だ。客も、殆どがそう勘違いしてるだろう。仮に何か聞かれても、ペコペコと申し訳なさそうにお辞儀をしていた。別に女性全てが傲慢な性格になっているわけではないとは言え、少し気になる光景であった。

 

「なんかよく見ると、困った表情をしてるな」

 

もしくは、申し訳のない顔か。

 

「・・・どれ、話を聞いてみるか」

 

千冬は一夏をその場に置いていき、案内嬢の下へと行く。

 

「ちょっ、千冬姉?」

 

「お前は適当に展示会場を見て回れ」

 

「・・・行っちゃったよ」

 

一夏は頭をかきながら考える。

 

「仕方ない、適当に回るか・・・」

 

しかし、結局は千冬の言いつけ通りに適当に回ることにした。

ぐるぐると案内板に沿って歩き、着いた先はいよいよ本命であるコア付きのISである。案内嬢の監視のもと、触ることも大丈夫であるとチラシには書いてあるが・・・。

 

「なんで、女性しか並んでないんだろ?」

 

男性は遠巻きに見るか、あるいは怒りながらその場を立ち去る姿が見られた。

不思議に思いながらも、ここまでの展示を見てテンションが上がったのか、せっかくなので実際に触ってみたくなり一夏は列に並んだ。

 

「ふ~ん。IS学園の受験で使う物を展示に使ってんのか」

 

並んでる間、暇だったので近くの展示板を眺めながら一夏は列に並ぶ。なんか、周りの視線が不憫そうな雰囲気を出しているのが気になるが・・・。

 

「(え? ひょっとしてSAO生還者ってバレてる?)」

 

ありえないと思いつつも、思わずそんな事を考えてしまっていた。

そしていよいよ一夏の順番に差し掛かった時・・・。

 

「ちょっと、そこの貴方!」

 

「え?」

 

急に案内嬢に呼び止められた。しかもかなり高圧的に。

 

「貴方、男よね?」

 

「え、えぇ・・・」

 

中性的な顔とはいえ、女に間違われるほどではないはず。一夏は、男である事を聞かれ若干ショックを受けていた。

それと同時に、自分が男だと何か不都合があるのだろうか?とも考えていた。

 

「ええっと、それがなにか?」

 

「それがなにか!? ふざけているの!?」

 

女性は若干、ヒスの混じったような声を上げる。

 

「男が、ISを触って良いわけないでしょ!!?」

 

「は?」

 

本気で言っているのであろうか、この女は。今回の展示の目的は男性にもISへの関心を持ってもらうための物であるはずだ。現に、案内板には『男女関係なく』としっかりと記されている。

 

「え、でも・・・」

 

「何まだここに居すわる気!? 男のくせに、女の私の言う事聞けばいいのよ!」

 

「(誰だよ、こんな奴を案内係にしたの・・・)」

 

その女性は、典型的な女尊男卑思考の持ち主である。今の世の中珍しいものではなかった。彼は今まで不幸中の幸い、現実で絡まれることはなかったが・・・。だが、実際に見るとあまり良い思いはしない。彼女たちが慕われる対象である千冬は彼の姉であり、尊敬できる人物。

正直、こんな奴らに慕われたら、自分の姉が汚される気分がした。

 

「失礼ですが、あなた。本気でそんな事を言ってるのですか?」

 

「はぁ!?」

 

「今回の展示会の目的は、男女関係無く楽しめるようにのはずです。現にチラシでもそう書いてあります。あなたのその発言は、今回の展示会には不適切な「黙りなさい! いい加減出ていかないと警備員を呼ぶわよ!!」・・・」

 

火に油を注いでしまったか。一夏は、ついカッとなって言い返してしまったことを若干後悔した。

こうしてすぐ言い返してしまうのは一夏の悪い癖でもあった。

 

「(あ~、直そう直そうと思っていたのに、つい言っちゃったな)」

 

目の前でキャンキャン喚く女性。言い返したことにより、少し冷静さを取り戻した一夏である。ふと、SAOで出会った友人の言葉を思い出していた。

 

『あの手の女ってさ、生涯喪女よね』

 

『い、いきなり何言ってんだ、リズ?』

 

『だってそうでしょ? あんな偉そうにしたら、いくら美人でも男なんて寄り付かないわよ。いや~、あぁ言う風にはなりたくないわ~』

 

現実では絡まれた事はなったが、SAO内では目の前の女性と同じ女尊男卑思考の持ち主が原因で少し大きな事件が起きていた。彼女を見て友人の一人はそんな発言をしていたのを思い出した。

その女性の所為で、自分は不本意な(本人的には)二つ名も貰ったりした事もあったが、その話は割愛する・・・。

 

「生涯喪女か・・・」

 

「ッ!!!」

 

思わず、ポロリと出てしまった言葉に目の間の女性は顔を真っ赤にして目を見開く。明らかに激おこであった。

 

「(あ、やっべ)」

 

ちなみに、目の前の女性が一夏の言葉に過剰に反応したのには理由がある。元々彼女は女尊男卑思考の持ち主ではない。だからこそ、今回この展示会の係になる事ができたのだ。

ところが数日前に彼氏に振られてしまい(と言うか浮気され)その影響もあり、気が付けば男という男に当たり散らすようになってしまっていた。さらに言うなら、今回の案内嬢の主任でもあり部下達には男なんかに説明は不要などと言っていたのである。

 

「この! 男の癖に!!」

 

・・・・・まぁ、理由があるとはいえプライベートの事情を仕事場に持ってきていいはずはないが。

 

「ちょ、暴力は!!」

 

そんな理由で彼女は一夏の発言に我慢ができなかった。衝動的に拳を振りかざして一夏を殴ろうとし・・・。

 

「私の弟を殴ろうとはいい度胸だ」

 

千冬にその拳を止められた。

 

「な、なによ!?」

 

「自己紹介をしてやろうか? わたしはIS学園教師・織斑千冬だ」

「ウソ!?」

 

「(え、初耳なんだけど!?)」

 

さらりと衝撃の事実を言う姉を見て、一夏は驚愕した。

 

「さて、案内係の責任者に話を聞こうと思ってここに来たのだが、これはどういう状況だ?」

 

「そ、それはこの男が!!」

 

「悪いが、他の客にも話は聞いている。明らかに今回の展示の目的に反する事を行っていたそうだな」

 

「そ、それは・・・」

 

まるで詰問するかのように女性を責める千冬。一夏は一気に蚊帳の外になってしまった。

しかし、ここから抜け出そうにも周りは野次馬で囲いができており、動くに動けなかった。

一夏は何となく、本来の目的であるISを触ってみることにした。

 

「うぉ、これって操縦者がいれば動くんだよなぁ・・・」

 

そう言いながら触れた瞬間。

ISが小刻みに震えた。

 

「なに!? ISが一夏に反応しただと!?」

 

展示用のISはコアが休眠状態で置かれており、もしIS適合者が触れても反応はしないはずである。しかし、一夏が触れた瞬間ISは動き出し、次の瞬間には眩い光とともに・・・。

 

「なんだ、これ・・・」

 

ISを纏った一夏が爆☆誕した瞬間であった。

そして、冒頭に至るのであった。

 

 

 

 

それから数日後。

 

「一夏、お前のIS学園への入学が決まった。スマンな、目撃者が多くて隠し切れなかった」

 

「・・・SAO帰還者用の学校への入学は」

 

「当然白紙だ」

 

「・・・勉強どうすんだよ・・・」

 

一夏は頭を抱える。2年以上の遅れのある勉強。しかも、IS学園は入学前に必読しなくてはいけない電話帳並に分厚い参考書もある。一夏は絶望するしかなかった。

ただでさえ、世界で現在唯一の男性操縦者なのだ。これからの自分の安全も考えなくてはならない。

 

「入学まで、3か月ちょいだぞ」

 

当然、IS学園も立派な学校である。IS関連の授業だけでなく通常の学問も学ぶ場所だ。一夏には2年の遅れがあり明らかに不味い状況であった。

 

「それに関してだがな、一夏」

 

「ん?」

 

「先ほど、学園に事情説明を行い休職してきた」

 

「え?」

 

姉の言葉を少し理解できない一夏であった。

 

「本来ならば、お前も受験生であったはずだ。残り3か月ではあるが、私が可能な限り勉強を教えていく。出来る限り頑張ろう」

 

「・・・正月は?」

 

「なしだ」

 

「・・・・・アミュスフィアは? ALOライフは?」

 

「当然なしだ」

 

「ガッデム!」

 

絶望するしかない一夏であった。

 

「・・・リハビリは? リハビリはどうなんだ、千冬姉!!?」

 

「・・・お前、目が覚めてからやけに脳筋思考になったな」

 

千冬は呆れた顔でそう言った。

 

 

 

 

 

○キャラ紹介その2

案内嬢主任さん

彼氏に振られて、仕事で自棄起こしたお姉さん。結局この後、仕事を首になる。散々絞られトボトボと帰る際、色々ゴタゴタを終え、一時的に帰宅できるようになった一夏とばったり会う。何だかんだで人を見る目がある一夏は『本当は悪い人には見えない』『性格直せばきっとモテル!』『お姉さん美人だし!』ととってつけたように褒める。

通常時ならキレられる内容だが、傷心のお姉さんにはズキュ~ンと来たらしく、新たな職場で心機一転頑張ってるとの事。ちなみに、彼氏もできた模様。

・・・・・なお、ショタっ気にも目覚め新たな彼氏は年下との事。




モッピー何でも知ってるよ、お姉さんは2年後に結婚したって事を。

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