織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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……覚えている人いるかな?
久しぶりの投稿です。
こんなほったらかしの二次創作に誤字報告をして下さっていた方、ありがとうございます。
何とか資格を習得して、新しい職にも就くことが出来ました。
資格持っているのと、実際に仕事をすぐ覚えれるかは別物だと実感中です。
そんなこんなで一生懸命仕事を覚えている中、息抜きで書いたものを今回投稿しました。
息抜きで書いたので本編の続きではないですがw
IS原作も新刊でていたし、SAOはゲームも原作もますます好調ですし、ファンとしては嬉しい限りです。そんな私から生れ出た妄想。もし良かったら、読んでもらえたら嬉しいです。


第?話・とあるIS学園生徒の夏休み①

それはそれはとても暑い日差しが差し込む夏の日。自国に帰るのも難しいシャルロット・デュノア……通称・シャルはIS学園の寮で夏休みを過ごしていた……筈であった。しかし、彼女が今居る場所はIS学園ではなかった。

 

「(…………)」

 

彼女は緊張した様子である一軒家の前に立っていた。表札には『織斑』の文字が書いてある。そう、ここは一夏の実家であった。

 

「(勢いのまま来ちゃったけど、ちゃんと電話なりメールしてから来ればよかったぁ……)」

 

そう、今日シャルは『突撃織斑君の実家さん』をしていたのであった。しかし、彼女は事前に一夏に確認するのをすっかり失念していたのだ。

 

「(いきなり家に押し掛けて、変な女って思われちゃったらどうしよう)」

 

しかし、ここで尻込みをしたら一生前に進めない。シャルはそんな予感をしていたのであった。

 

「(大丈夫。たまたま近くに用事があったからって言えば……)」

 

そもそも、今一夏は家にいるかどうかも分からない。とにかくチャイムを鳴らしてみない事には先に勧めない。シャルはそう考えると、ゆっくりとインターホンに向かって指を伸ばすのであった。

 

「(…………ッ!!)」

 

シャルルは意を決してインターホンを押した。インターホンからの返事はなかったが、なにやら人の気配を感じた。玄関がゆっくりと開きそこには……。

 

「待たせたな、宅配便……なんだ、シャルロットか」

「……は?」

 

シャルは出てきた人物を見て固まってしまった。何故ならその人物はここに居る筈のない人間だったのだから。

 

「私は昨日ドイツから帰ってきて眠いのだぞ、まったく」

 

 

ふぁ、と欠伸をしながらその人物は玄関を閉めようとして―――。

 

「ちょっと、待とうか! ラウラ!!」

 

シャルが待ったをかけるのであった。

 

「ん~?」

 

本当に眠気があるのか、ラウラは目を擦りながらシャルの言葉に反応したのであった。見て見ると、パジャマで出てきておりだらしのない姿であった。

 

「あぁ、もう! こんな姿で出て来て……じゃなくて! なんでラウラがここに居るのさ!?」

「いや、一夏の奴が配達来たら受け取ってくれっと……」

「じゃなくて―――ッ!!」

 

どうして当たり前の様に一夏の家にラウラがいるのか? シャルはその事を問いただしたかったが、上手くラウラには伝わらないのであった。

 

「あぁ! もう!! とにかく話は後で聞くからラウラは早く着替えなよ!?」

「まだ眠い……」

「シャワーでも浴びてさっぱりしなよ!!」

 

そう言いながらシャルはラウラを押しながら入っていくのであった。

 

「まったく、休暇でも喧しい奴だな。そこまで言うのであれば、シャワー浴びるから配達が来たらその印鑑を使って受け取ってくれ」

「はいはい!」

「そこのソファー使って良いぞ」

「待っているから、すっきりしてきなよ」

「んー」

 

シャルはラウラに居間のソファーで寛ぐよう言われ、徐に腰かけるのであった。

 

「(まったく、ラウラは相変わらず無頓着すぎるよ!)」

 

あれで本当に軍人なのだろうか? 以前聞いた事があるが、本人曰く『ON・OFFの切り替えがちゃんと出来ているとの事』であった。

 

「はぁ」

 

シャルは溜息を吐くと、何気なくテレビをつける。そしてふと首を傾げるのであった。

はて?自分は何かを忘れているような……。

数秒考え、気付くのであった。

 

「(って、ここ一夏の家だぁ!!?)」

 

その事を思い出すとあっという間に挙動不審になるシャル。ワタワタしながら辺りを見回し始めるのであった。

 

「(こ、ここが一夏の家なんだぁ……)」

 

気になりだしたら止まらない。シャルはソワソワするしかなかった。そんな時である。

 

「ひゃわいッ!!?」

 

家のチャイムが鳴り、素っ頓狂な声を思わず出してしまうのであった。

 

「(ああぁあ!? そうか、さっきラウラが言っていた宅配業者か……)」

 

シャルは預かっていた印鑑を取り、玄関へと向かう。途中思わず印鑑を落としそうになるが、何とか玄関に辿り着き扉を開けるのであった。

 

「ご、ご苦労様で……んんんッ!?」

 

だが、玄関を開けた先の人物を見てシャルは驚愕した。

 

「……ご、ご苦労様でしてよ?」

 

固まるシャルに対して、何とも言えない笑みを浮かべながらセシリアは返事をするのであった。

 

 

 

 

 

 

「ん? やけに人が増えたな」

 

シャワーを終え、着替えたらラウラが居間に来た時。そこにはシャル以外の人間が増えていたのだ。箒、セシリア、鈴。といったいつものメンツであった。

 

「え~と、ごめん。家に上げちゃった」

 

シャルは気まずそうにラウラにそう言う。実はセシリアの後、次々と彼女達は一夏の家を訪れたのだ。シャルは迷ったが、追い返す事も出来ずに独断で家に上げていたのであった。

 

「いや、まぁ別に構わんが。一夏もいないのになんで来たんだ、お前たちは?」

「うっさい!! って言うか、なんであんたが一夏の家にいるのよ!!?」

 

まるで自分の家のようにふるまうラウラに対し、鈴が噛み付くかのように発言した。だが、ラウラは何でもないかのように返事をするのであった。

 

「いや、夏休み中に泊めてと一夏に言ったら『いいよ』って」

「軽ッ!!?」

「いや、それ以前にIS学園の寮で過ごせばいいだろう」

 

ラウラの発言に箒は冷静な意見を出す。だが、ラウラは得意げな顔をして反論したのであった。

 

「夏休みぐらい、シャルロットは一人の時間が欲しいだろうと一夏に相談したのだ」

「いつの間にか、僕ダシにされてる!!?」

 

衝撃の事実にシャルは愕然とする。同室の自分をダシにして抜け駆けしたラウラへの怒りで、“コンチクショウめ”とプンスカするのであった。

 

「一夏の料理はやはり美味しいなぁ」

「相変わらずですわね。それで、肝心の一夏さんはどちらに?」

「カウンセリングがどうとか言って、IS学園に行ったぞ」

「……あぁ。そう言う事でして」

 

SAO生還者は定期的にメンタルチェックが入る。本音や簪、一夏の面々が何度かカウンセリングを受けに行く姿をセシリアは思い出していた。

 

「あんたは良いの?」

 

そんな中、ふと鈴はラウラもSAO生還者である事を思い出し尋ねるのであった。ラウラは、風呂上がりの一杯(牛乳)を冷蔵庫から出し、コップに注ぎながらそれに答えるのであった。

 

「私は日本国籍ではないからな。日本政府が行っている事には無関係だ」

 

『現実に戻ってどれだけ経っているんだ、馬鹿馬鹿しい』そう続けざまに愚痴をこぼすと、グビグビと牛乳を飲み干すのであった。

 

「あんた、完全に我が物顔ね?」

「?」

 

口周りを少し汚しながらラウラは鈴の言葉に首を傾げるのであった。

 

「まったく。ホラ、口元が汚れているぞ」

 

箒はそんなラウラを見て、呆れながらハンカチで口元を拭くのであった。

 

「一夏の奴は知らんが、今日は教官も帰りが遅いらしい。まぁ、ゆっくりしていけ」

 

だからなんでそんなに自分の家みたいな発言をするのだ。その場にいる皆は呆れるのであった。そんな時だ。

再びチャイムが鳴るのであった。

 

「む?」

「あ、僕が出るよ。どうせ、また誰か来たんでしょ?」

 

この流れから行くと、次は簪か本音か? シャルはそんな事を考えながら、玄関を開けるのであった。

 

「いらっしゃい。残念だけど今一夏は―――」

「えっと、あの。お届け物です」

「……あ、はい。ご苦労様です……」

 

宅配業者が相手で、ちょっと恥ずかしい思いをするシャルであった。

 

 

 

 

 

 

 

IS学園。カウンセリングルーム。そこでは、SAO生還者用学園にてカウンセリングを行っている精神科の医師が一夏に対してカウンセリングを行っていた。

 

「はい、お疲れ様。今日はここまでにしましょうか」

「あ、はい。ありがとうございました」

 

大した時間も掛けずに終了したカウンセリング。一夏は煩わしいと思いつつも、仕方のない事かと心の中で溜息を吐くのであった。

煩わしいが、世間の一部はSAO生還者を奇異の目で見ているのは数ヶ月経った今でも変わらない。そう考えると、やはり必要な事なのだろう。

 

「何か気になる事とか、聞きたい事はあるかしら?」

「いえ、特には」

 

折角の夏休みだ。家に帰ってALOがしたい。一夏はそう考えつつ、カウンセラーへ返事をするのであった。

 

「……ねぇ、織斑君。このあと何か予定があるかしら?」

「え?」

 

その言葉に一夏は疑問を感じる。カウンセリングは今し方終わったばかりだ。だのに何故そんな質問をするのかと。

勿論、言葉から思わず連想してしまうような色っぽい事ではないと理解はしていた。

 

「予定らしい予定はないですけど」

「そうか、それを聞いて安心したよ」

「……は?」

 

その言葉は、カウンセラーではなくまったく別の場所から聞こえて来て、一夏は思わず呆けた声を出してしまっていた。

 

「やぁ、久しぶりだね。チナツ君」

「菊岡さん」

 

そこには眼鏡をかけ、スーツを着た男性がいた。

 

「いや~。夏休みとはいえ、あの男子禁制のIS学園に来られるなんて、これもチナツ君さまさまだよ」

「それでは、私は先に上がらせてもらいますので。それじゃ、織斑君。またね?」

 

そういうと、カウンセラーの女医は部屋を退出するのであった。その場に残ったのは、男二人というIS学園的には奇妙な状況であった。

 

「総務省のエリート官僚が、俺に何の用ですか?」

 

一夏は何となく、菊岡が苦手であった。悪人ではないのだろうか何となく胡散臭い。それが彼に対する感想であった。

 

「そんなに警戒しなくてもいいよ。今日は君にちょっと聞きたい事があってね」

 

菊岡は先ほどまでカウンセラーが座っていた椅子に腰かけると、バックからいくつかのお菓子を取り出す。

 

「あ、好きに摘まんでいいよ。時間を取らせているせめてもの詫びだよ」

 

そう言いながら、真っ先に菓子を摘まむのは彼であった。そんな彼をじっと見ながら一夏は口を開く。

 

「聞きたい事は、SAOの事と思ってもいいんですか?」

「それ以外ないよ。君のIS学園での生活に興味がないと言えば嘘になるけど、それを聞くと下手したらクビじゃすまないからね」

「話すことは何でも話したし、行動ログを見れば大抵の事は分かるんじゃないですか?」

 

一夏のその言葉に、キョトンとする菊岡。だが次第に含み笑いを堪え始めるのであった。

 

「何がおかしいんですか」

「いやぁ、ごめんごめん。実は、この前キリト君にも改めてSAOでの事を聞いたんだけど、その時キリト君が言った言葉とそっくりだったからさ」

 

その言葉に、一夏は顔を少し顰める。キリトと同じ発言をしたという事はちょっとうれしく感じない事もなかったが、であるのなら自分にSAOでの話を聴く菊岡の真意が見えなかったからだ。

 

「理解出来ないな、菊岡さん。キリトに話を聴いたのなら、今更俺に聞く事なんてないだろ」

 

開発者の茅場を除けば、キリトほどSAOの深淵に近づいたものはいないだろう。自分も同じくらい関わってはいるが、キリトほどプログラム関係の予備知識もなく、やはり彼には知識は及ばない。

SAO時代に使っていた自身のユニークスキルだって、どういう条件で自分が手に入れたのかいまだに把握していないのだ。

 

「君の言う事ももっともだ」

 

そういうと、菊岡は鞄からいくつかの用紙を取り出す。

 

「これは?」

「キリト君からの話を聴いて作った調書だよ。君にはこれを確認してもらって、何かおかしな点がないかを見てほしい」

 

その用紙を受け取ると、一夏は微妙な顔をする。

 

「いいんですか、こんなの見せても」

「構わないよ。それは提出前の物だし、まだ正式な物でもないからね」

 

めんどくさい……と、思いつつも一夏は渡された調書を確認していく。だが、見ていても特に指摘する箇所もなく、寧ろ自分も知っていたはずなのに深く考えずに流してしまっていたものもあった。

 

「(やっぱり、キリトってすげぇな)」

 

一夏が感じたのはそれだけであった。これ以上追記するべきものは確認できず、一夏は渡された調書を菊岡に返すのであった。

 

「たとえ、全てのSAO生還者を当たっても、これ以上の物は出来ないと思いますよ」

「そうか、君が言うのならそうなんだろうね」

 

だが、菊岡は調書を見ながら考え込むそぶりを見せる。一夏はその行動に不信感を覚えるのであった。

 

「これ以上、何が知りたいんですか? 確かにアルベリヒの件は書かれてませんでしたけど、あれはむしろ……」

「いや、須郷……君たちが言う、アルベリヒに関してではないんだよ」

 

アルベリヒ、リアルネーム須郷。彼は、ゲーム内で非人道的実験を行っていた人物だ。実は一夏は彼と少年時代にちょっとした因縁があり、あまり思い出したくない人物でもあった。

 

「君も知っての通り、キリト君はSAO初期段階から最前線で戦っていた訳だが……」

「それが何か?」

「だからこそ、見ていない箇所が多くあるのではないかと思うんだよ」

「それは、まぁ……」

 

それは当然だろう。しかし言い方が回りくどい。こんな言い方ではまるで……。いや、きっとそうなのだ。一夏はある事を考え口に出すのであった。

 

「なぁ、菊岡さん。回りくどい言い方はやめないか。俺に聞きたい事があるんじゃないか?」

「はは、そう言う風に聞こえたかい?」

 

『いやー、まいったまいった』。と、ちっとも参ったように見えないそんな事を言う彼に一夏はちょっとイラッと来た。というか、とっとと終わらせて帰りたかった。

 

「”はじまりの街”」

「!」

 

ポツリと菊岡がそれを口にすると、一夏の目が見開いた。

 

「SAOのプレイヤーが初めて降り立つ街。そして、ゲーム開始時からの死亡者が確認できる生命の碑があった場所」

「そうだな、良く覚えている」

 

一定の層に上がったプレイヤーは基本的にその街には戻らなかった。”軍”の統治下に途中からなったと言うのもあるが、一番の理由はやはりデスゲーム開始時を思い出すからだろうと一夏は思っている。

 

「キリト君は、ゲーム開始直後街を出ている。そのため、デスゲーム開始直後の”はじまりの街”の様子をあまり知らなくてね」

「それが聞きたいって訳か、なるほど。その様子だと、アスナとかには聞かなかったんだな」

「それは、まぁ……あはは。ほら、キリト君を敵にはしたくないしね」

 

正しい判断だな。と一夏は思っていた。SAOでは良い事・悪い事がたくさんあったが、あの街に良い思い出を持っているのは、攻略組・中層組ではそれほどいないだろう。

何より自分自身、あそこで起きた事を見直すにはいい機会だと感じていた。

 

「(はぁ、チンクの奴にも話した事なかったんだけどなぁ……)」

 

まさか、あの頃の話をするのが目の前の男なんて、おかしな事もあったものだと、少し笑いそうになった。

 

「わかった、その代わり菊岡さん、行動ログを見せてもらいんだけど」

 

一夏は、思い出す。既に3年ほど昔の日の出来事を。

それは、彼が名前も知らない女の子を助ける事のできなかった話であった。

 




「どうでもいいが何時までお前ら家に居座る気なんだ」
「完全に自分の家扱いね、コイツ」
「当然、一夏さんが戻られるまでですわ!!」
「ふーむ。一夏が帰ってくるまでALOにでも入るつもりだったのだが……。なら、アニメでも見るか? クラリ……知り合いに勧められたのがあってな」
「へぇ、ジャパニーズアニメーションか。僕、興味あるかもー」
「アニメか、あまり見ないな」
「アタシも最近は見ないわねー。どんなの?」
「中世ファンタジー物で、女しか纏う事のできない特殊な鎧を纏う事が出来た少年のハーレムラブコメものだそうだ」
「んん~? どっかで聞いたことある様な……」
「ほーれ、再生だ」
ポチっとな。

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