織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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そんなこんなで、ようやくIS学園に来た一夏くん。
なるべくはやく、チンク・・・もとい、何ウラさんを出したいのですが、
何分、執筆スピードが・・・。


第三話・IS学園

「・・・・・・・」

 

周りの視線がキツイ。

凡そ、三ヶ月間の千冬による詰め込み勉強は期限切れを迎え、彼は晴れてIS学園へと入学を果たした。

右も左も前も後ろも女子・女子・女子である。そう言えば、好きと言う字は女と子がくっ付いてるなと何となく現実逃避もしてしまっていた。

 

「くっ!」

 

彼は懐にいれていた携帯を、机の下で隠すように開く。先生からは死角になっているようなのでばれないだろう。

・・・周りの生徒にはバレバレだが。

そして、一夏は見る。かつて共に浮遊城、アインクラッドを駆け巡った仲間たちからの激励のショートメールを!!

 

『がんばれ』

 

一言だけかい、キリトォ!?

 

『がんばってね』

 

似た者夫婦ですね、アスナぁ!?

 

『がんばってください!』

 

兄妹そろって、リーファ!?

 

『こ、今度ピナの頭をなでていいですから、チナツさんファイト!!』

 

ありがとう。けど、もっと具体的なアドバイスが欲しいな、シリカ!!

 

『ヽ(`Д´#)ノ』

 

せめて文も書けよ、っていうかその顔文字のチョイスはなんだよ、リズゥ!?

 

『女の園だなんて男の夢じゃない。良かったわね』

 

ちょっとくらいやさしい言葉をくれてもいいじゃないのか、シノン!!

 

『ホロウエリアの時と一緒だよ。がんばれ、チナツ!』

 

味方はいないけどな、フィリア!

 

『うちの店の宣伝も頼むぜ』

 

・・・エギル。エギルゥ!!?

・・・・・あ、さすがにユイちゃんからはメール来ないか。

ん? あ、クラインからメールがきた

『こんちくしょー! 羨ましいぞー!! 替われ、今すぐ替わってくれー!!』

 

・・・・・安定のクラインだなぁ。なんか落ち着いた。

心は晴れやかになり、一夏は携帯を閉じた。そして・・・再び現実に戻った瞬間。

「織斑君!!」

 

「ぎゃぁ!!?」

「ひゃぁ!!?」

 

名前を急に呼ばれ、一夏は思わず悲鳴を上げ、さらにその声に驚き目の前にいた女性も悲鳴を上げた。

 

「え、えっと・・・」

「ご、ごめんね織斑君。驚かせちゃったかな? 自己紹介の時間だったんだけど・・・」

「あ・・・」

 

そう、今は入学初日のオリエンテーションを兼ねて自己紹介の時間であったのだ。

 

「ひょっとして、もう俺の出番でした?」

「う、うん。ごめんね、織斑君。『お』で始まるから、自己紹介の出番が最初のほうでごめんね?」

「い、いやそんなに謝らなくても・・・」

 

周りの視線きついから、止めてほしい。っていうか、教師としてどうなのか。

そう、目の前にいるのはIS学園の教員である山田真耶その人であった。

 

「と、とにかく自己紹介お願いできるかな? 次もあるからね?」

「は、はい」

 

そう言い、自己紹介のために立ち上がった瞬間、更に自分への視線が変わる。どいつもこいつも好奇な目線だ。

 

「(この空気で自己紹介をしろと)」

 

ネットでも見てくれと言いたかった。大抵の情報が乗ってるから。

情報規制が働いてるのか、一般的にはSAO生還者という事は認知されていないのはありがたがったが・・・。(もっとも、キリト達の学校ではその話が上がってるようだが・・・)

 

「チ、チナツで・・・」

 

「「「「「?」」」」」

 

動揺のあまり、思わずアバター名を言いかけてしまった。

 

「じゃくて! お、織斑一夏です!!」

 

一夏は慌てて言い直し、声が詰まった。声以上何を言えばいいのか分からず、混乱してしまった。

 

「(くそ、なんで俺一人なんだよ。仲間には女の子たくさんいるじゃん。一人くらい、こっちこいよ!)」

 

キリトとか、二人目の男性操縦者にでもなって、ドヤ顔でスターバースト・ストリームやってればいいんだよ!! クロス物のお約束だろ!?と、メタな事まで考える一夏。

しかし、そこで一夏は考える。

 

「(いや、待て。いないならここでも仲間を作ればいい。そうだ、大丈夫行ける。ならば!)」

 

彼はある決意を固め、口を開く。

 

「次の人!!」

「は、はい!」

 

一夏の叫びに、次に自己紹介をする予定であった少女は思わず返事をする。

 

「スイッチ行くぞ!!」

 

スイッチとはMMOにおける用語の一つ。いうなれば、入れ替わりの事である。モンスターは大抵一人に向かってターゲットを取っている物。一人が囮になり、他のプレイヤーが攻撃をするのは定石だが、いつまでもターゲットにされていてはHPがもたない時がある。そんな時に入れ替わりをするのがスイッチ。

システム的なものではなく、プレイヤーによるスキルではなく技能。そのため、プレイヤー同士の連携が極めて重要なので、大抵は一夏のように掛け声を出すのだ。

一夏は、スイッチの合図を出すと素早く座る。そして、その瞬間次に自己紹介をする少女は焦った様子で立ち上がる。

 

「え、えっと! た、鷹月静寐です!! しゅ、趣味は・・・」

 

どうやら成功の様だ。一夏はムフーとご満悦だ。

感触からして後ろにいる鷹月さんとやらはVRMMOをしているのだろうか?ならば、一度話を・・・。

 

「いでぇ!?」

 

そう思っていたら、スパーンと何かに叩かれた。

 

「な、なにが・・・千冬姉!?」

「お前は、まともに自己紹介もできんのか?」

 

そこには、一夏の姉千冬がスーツ姿でいた。

 

「な、ななな、何してんだよ千冬姉!?」

 

一夏は思わず叫ぶ。

 

「いくら弟が心配だからって、学校にまで来るなよ!?」

「教師だ、馬鹿者!!」

 

再び叩かれる一夏であった。

 

「何度も説明しただろうが! それから、織斑先生だ。公私の区別をつけろと言ったであろう!」

「は、はい・・・」

「それと、自己紹介のやり直しだ」

「おおぅ・・・」

「鷹月にも謝れ」

「はぃ・・・」

 

一夏は、鷹月に謝罪を行い自己紹介をまたする。今度は無難にそこそこ出来ていた。そしてそのまま、一通りの自己紹介が終わると真耶に替わり、千冬は教壇へと立つ。

 

「さて、自己紹介も終わったようだ。教員の紹介に移ろう。私が、君たちの担任となる織斑千冬だ。これから一年間、お前達を鍛えていく事になる。尚――」

「きゃ・・・」

「騒ぐのは禁止だ」

 

何人かの生徒が、黄色い奇声を上げようとした瞬間千冬は釘を刺すように言った。立ち上がった者もいたため、気まずげに動きを止めていた。

 

「毎年同じように叫ばれては、嫌でも慣れる」

 

そう言い、頭が痛そうにこめかみを抑えた。どうやら毎年苦労していたようだ。

 

「さて、諸君達はIS学園という狭き門を潜り抜けた選ばれし者である」

「は?」

 

いきなり千冬らしからぬ台詞に一夏は思わず固まってしまう。

 

「これから、君たちには輝かしい未来が待っているはずだ」

 

その言葉に、周りの女子生徒は騒めき始める。ほとんどが、『入学できてよかった』もしくは、『頑張ったかいがあった』等未来への楽観的な希望だ。

だが、千冬が次の言葉を発すると・・・。

 

「・・・と、そう思って浮かれている馬鹿がいるのであるのなら、今すぐ退学しろ」

 

クラス全体の空気が凍った。

 

「(まさかの、上げ落とし!?)」

 

我が姉ながら、恐ろしい。一夏は戦慄せざるをえなかった。

 

「確かに貴様らは入学まで並々ならぬ苦労をしたかもしれん。だが、それでもようやくスタートラインに立ったにすぎん。気を抜けばすぐに周りに置いていかれると思え」

 

その厳しい言葉に、先ほどまであった浮ついた空気はなりを潜める。

 

「・・・とは言えだ」

 

千冬は先ほどまでの厳しい口調とは若干違い、自身が作った場の空気を緩めるような声色を出し話を続ける。

 

「そうなってしまわないように私たち教師がいる。授業で分からないこと、気になる事があれば遠慮なく尋ねるといい。時間の許す限り答えよう」

「「「きゃぁぁあああ!!」」」

 

微笑みながらそう言うと、クラス中に黄色い声援が鳴り響く。

 

「だから、騒ぐなと・・・」

 

そう言いながら、ふと千冬は一夏と視線を合わせた。そして、彼にしか分からないようにそっと微笑んだ。

 

「(・・・そのドヤ顔いるのか千冬ねぇ・・・イタイッ!!?)」

 

余計な事を考えた瞬間、出席簿の角が彼の脳天を直撃した。

 

 

 

 

「(絶対たんこぶができてる。保健室行こうかな?)」

 

一夏は、出席簿が直撃した頭を押さえながらそんな事を考えていた。SHRも終わり、今は休憩時間だ。

 

「(しかし、本当にやっていけるのだろうか)」

 

この3か月ほど、千冬に勉強を教えてもらったが、やはり2年以上のブランク+αは量が多かった。勉強も、まだまだ覚える事が多いのが現状であった。

 

「(つーか、野次馬多すぎだろ。廊下に、他生徒がチラチラこっち見まくり)」

 

現在唯一の男性操縦者である一夏を見ようと、現在廊下には他クラスの生徒が溢れていた。

一夏は、そんな視線から逃げるように窓際に立ちボーと外を見る。

 

「黄昏れてるー」

「なんか、かっこいー!」

 

・・・実際にはボーとしてるだけなのだが、他のクラスメイトにはなにかツボにはまったようであった。

 

「(今頃みんな、何してるんだろうなぁ・・・)」

 

本来ならば、同じ学校に行くべきはずだった仲間。リアルに戻り仕事に復帰できた仲間、そして連絡の取れない仲間。

・・・消えてしまった仲間。

一夏は、かつての仲間を思いながら空を見上げていた。周りの景色を見らず、空だけを見ると何となくアインクラッドを思い出していた。

 

「(そういや、アインクラッドって各階層に空が見えてたよなぁ・・・。天井のはずなのに。何か設定とかあったのか?)」

「少しいいか?」

 

そんな一夏を、現実に戻す声が掛かった。今まで、クラスメートは話しかけず遠巻きに見ている者ばかりであったが、とうとう話しかける人間が来たか。

そう思いながら、振り返ると・・・。

 

「・・・箒か?」

「・・・やはり気が付いていなかったか、一夏」

 

小学生の頃に別れてしまった幼馴染との思わぬ再会に、思わず呆けた顔で一夏は言い、箒は呆れた顔で言った。

 

「いや、その悪い。色々いっぱいいっぱいでさ・・・」

「ふん、まぁいい」

 

箒は周囲を若干気にしながら話す。

 

「ここでは、周囲の目線が気になる。SHRが早めに終わって授業まで時間もある、もしよかったら屋上に共に行かないか?」

「おう、いいぜ」

 

いい加減、一夏もこの空気から抜け出したかった。箒のその提案は正に渡りに船である。

 

「そ、それにしてもだ」

「ん?」

 

屋上に行く道の傍ら、箒は照れを隠すように強い口調で一夏に言う。

 

「よ、よく私と一目でわかったものだな!」

 

彼女が一夏と再会するのは6年ぶりであった。加えて言うのなら、箒は一夏に幼少の頃より淡い恋心を持っている。転校の繰り返しの彼女にとって、一夏との思い出が支えであったといってもよかった。

 

「あぁ、だってお前、昔と髪型一緒じゃんか。流石に昔より髪は伸びてるけどさ」

「そ、そうか」

 

もし、彼が自分を忘れていたらどうしよう。そう思っていた箒は嬉しさでいっぱいであった。

 

「けど、髪が長いと歩くとき大変じゃないか? ほら、急に後ろを振り向いた時とか、下を見るときとか・・・」

「やけに、詳しいな。髪を伸ばしているわけでもあるまいに」

「ぐぅ!? い、いや忘れてくれ・・・」

「?」

 

そんな一夏を不思議に思いながらも、箒は歩き続ける。そうして、屋上の扉を開けた。その先には青空が広がっており、一夏はその眺めに感心した様子で話し始めた。

 

「お、さすがIS学園の屋上。思ったよりいい眺めだな」

「別にIS学園は関係なかろう」

「それもそっか。けど、見て見ろよ。綺麗な青空だぜ」

 

空を見上げる、一夏の姿に箒は見惚れてしまう。何故か、どこか浮世絵離れした雰囲気を感じてしまったからだ。

余談ではあるが、SAO生還者の多くは一夏のようにどこか浮世絵離れした雰囲気を纏っている者がいる。デスゲームという極限の環境を生き抜いたゆえの弊害とも言える事であった。

 

「それにしてもさ、箒」

「な、なんだ!?」

「新聞見たぜ。すげーじゃねぇか」

「な!? し、新聞を見たのか!?」

 

彼女は去年、剣道の全国大会で優勝していた。新聞にも載っており、箒はその事だと若干恥ずかしがりながら思ったが・・・。

 

「中1で県大会ベスト4だなんてスゲーじゃん。1年でレギュラーになったのだってすごいし・・・」

「3年前の話ではないか、馬鹿者ぉお!!」

「げふぅ!!!?」

 

青空のした、篠ノ之箒の綺麗なアッパーが決まった瞬間であった。

 




モッピー何でも知ってるよ、モッピーこそ本物の篠ノ之箒の姿だって事を・・・。
モッピー何でも知ってるよ、さっきから武士風の娘が扉を怒号と共に叩いてるって事を・・・。
モッピー何でも知ってるよ、今から怖い誰かが来るってこ・・・。

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