織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

50 / 55
第?話・とあるIS学園生徒の夏休み②

一日目は、何かのイベントだと思った。

二日目は、これは夢か何かと現実逃避をした。

三日目は、”どうして俺だけ”と、この場にいない友人たちに八つ当たりをした。

四日目は、所持金ギリギリなのに宿に閉じこもって震えていた。

五日目は、始まりの街を出ようするも門の前で一日過ごしていた。

そして、六日目―――。

 

 

 

 

 

 

―SAO・第一層”はじまりの街”―

その日、彼は始まりの街をただ歩いていた。SAOに閉じ込められ六日が経っていた。一夏……チナツはどうすれば良いのか分からず、目的もなくひたすら歩いていた。

 

「(訳わかんねぇ)」

 

最初の頃はその内現実世界から助けてもらえると思っていた。しかし、一週間がもうすぐ経とうとしている。現実世界からの干渉は未だになかった。

僅か一週間。されど一週間。そんな日が続けばある事を考えしまう。

『現実からの助けは来ないのではないか?』

と。

 

「どうして俺が」

 

ポツリと出る言葉を誰も拾う事はなかった。だが、それはこのSAOにいる誰もが言いたい言葉なのだろう。

街から出る勇気も持てない。かと言って茅場の言ったデスゲームを完全否定する事も出来ない。

だが、SAOにいる全ての者は一つだけわかる事があった。ゲーム内で死亡すればどうなるかはわからないが、少なくともリアルでナーヴギアが強制的に外されれば茅場の言った通り現実で死ぬのだと。それは数日経っても強制終了を全員が行われていないのが何よりも証拠であった。

 

「くそッ!」

 

ただゲームをしたいと思っただけだ。なのに、なんでこんな事になるのか。一夏は、怒りを感じるが、それをどこかにぶつける事は出来なかった。

そんな時だ。

 

「―――え?」

 

目の前から数人のプレイヤーが歩いてくる。しかし、様子がおかしい。この”はじまりの街”にいるプレイヤーの殆どは悲壮感を見せていた。

だが、目の前から歩いてくる彼らは楽しそうに話をしながら歩いていたのだ。

一夏は彼らを見て、何かを感じた。無意識に彼らに期待していたのかもしれない。

気が付けばそのプレイヤー達に近づいて話しかけていた。

 

「なぁ! アンタら! なんで、そんなに笑ってられるんだ?」

「何って、なぁ?」

「あぁ。何だったら、お前も行くか?」

 

一夏がそう言うと、急に先頭に立っていた男が提案してきた。どこに行くのか、フィールドなのだろうか? 

だが、もしそうなら彼らはかなり自信に溢れているのか。一夏は、一人では街の外に出る勇気をこの時点では持っていなかった。だが、彼らとなら……。

そう考えていたが、次の言葉に一夏は耳を疑った。

 

「そろそろこんなイベントに付き合うのも馬鹿らしいし、俺達は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「”リアルに帰る”。彼らはそう言ったのかい?」

「あぁ……」

 

IS学園のカウンセリングルームで一夏は苦い顔をしながら菊岡に当時の状況を話していた。

 

「なるほど、因みに……」

「勿論、そんなことあり得ないし、現にSAOが攻略されるまでログアウトしたプレイヤーはいないだろ」

「まぁ、そうだね。元SAO対策チームの一員としては耳の痛い話だ」

 

菊岡は元SAO対策チームの一人であった。もっとも本人曰く『対策らしい対策は出来なかった』との事だが。

 

「だけど、当時はまだ殆どのプレイヤーがデスゲームに懐疑的だったし、”隠しログアウト”なんて噂もあったくらいだ」

 

だが、そんな噂を鵜呑みにしたプレイヤーもいた。アスナもその一人だ。彼女は辛うじてキリトに救われたがその噂を信じた結果HPを全損したプレイヤーもいた。

 

「デスゲーム開始初期段階で現実に戻る事を焦った結果、命を落としたプレイヤーも多くいた。その中には根も葉もない噂に踊らされた奴らだっていたんだ」

 

デスゲーム開始僅か二ヶ月で約二千人……全体の二割が消えた。その中には様々な事情の者達がいたが、一夏が言った通り嘘の情報に踊らされた者も大勢いた。

 

「で、菊岡さん。過去ログはまだ見れないんですか?」

「ちょ、ちょっと待ってくれるかな?」

 

一夏の催促に菊岡が苦笑いをする。ノートパソコンなのだが型式がかなり古い。

 

「って、俺でも分かるくらい古いパソコンじゃないですか。仮にも総務省の人間が……」

「いやぁ、普段使っているのは少し調子悪くてね。仕方なくこれを持ってきたんだけど―――と、ファイルが開いたよ」

 

ファイルが開くと、菊岡はカタカタとキーボードを打って操作を始めるのであった。

 

「確か、SAO開始から六日目だったね。正確な時刻は分かるかい?」

「三年前だぞ、精々午前中だったとしか……」

「なら、チナツ君の行動ログを時間系列で見て……おや?」

 

操作をしていた菊岡だが、不意に手を止め画面を見る。

 

「チナツ君、君が他のプレイヤーと接触しているログを見つけたんだけど」

「……え?」

「これは……プレイヤー情報からして、女性かな? さすがに年齢までは分からないけど……」

「ッ!! ちょっと、見せてもらえますか!?」

 

一夏は菊岡の言葉に反応し画面を食い入るかのように見る。そこには確かに自分のSAO時代のアバター名と、近くのプレイヤーの表示があった。

 

「”Polaris”……そうか、あの子はポラリスって名前だったのか……」

「チナツ君、ひょっとして彼女は……」

「菊岡さんの想像通りだよ。あの時のプレイヤーの一人が彼女だ」

 

あの、プレイヤー達は、”リアルに帰る”……そう言いながらアインクラッドの外壁から飛び降りた人たちの一人であった。

一夏は、かつて救えなかった彼女との出会いと、すぐに来た別れを再び思い出し始めていた。

 

 

 

 

 

 

その集団に出会ったチナツは言われるままに彼らについて行った。

道すがら彼らは口々に現実に戻ったら何がしたいかを話していた。

ある者は宿題の心配をして。

ある者は会社の心配をして。

ある者は家族の心配をして。

それを聞き続けている内にチナツは本当に戻れるのではないかという期待を持ち始めていた。

そして、彼らは目的の場所へとたどり着く。

そこは、アインクラッドの端にある外壁。

 

「ここって……」

 

チナツはそこに着いたときいいようのない恐怖を感じた。ここに居てはいけない。漠然とそう感じるが、彼は動けなかった。

そして――――。

 

「じゃ、お先ッ!!」

「え?」

 

その中の一人が当たり前のように外壁からアインクラッドの外へと飛び降りた。チナツは何が起きたかが理解できず固まってしまう。

 

「っと、やべぇ。出遅れた!!」

「おい、次は俺が行くんだぞ!!」

「――――――ッ!!?」

 

一人、また一人と当たり前のように飛び降りる人々。その光景を見てチナツの脳はオーバーフローを起こしていた。

目の前で何が起きているのか、それを理解することを脳が拒んでいた。

 

「―――――うぁああ!!?」

「きゃッ!? ちょ、ちょっと!!?」

 

チナツは、衝動的にすぐ傍にいた女の子の腕を掴み走り出した。

それは突発的な行動。その時のチナツに何かを考えるという事は出来なかった。それぐらい彼にとっても目の前のでき事は衝撃的だったのだ。

それでも彼女を引っ張ってこの場から逃げているのは、僅かに残った彼の理性ゆえだろうか。

 

「な、なによ!? 離しなさい!!」

 

だが、彼女の視点からして見れば堪ったモノではない。やっと現実に帰れるはずなのに急に邪魔をされたのだから。

 

「離しなさいよ!! 私は、家に帰るんだから!!」

「帰、る?」

 

その言葉に反応して、チナツの脳が再起動する。

 

「なに……言ってんだ?」

「な、何よ!?」

「さっきのあれが、どうしてリアルに帰れる事になるんだよ!!?」

 

チナツは理解が出来なかった。

 

「はぁ? あのねぇ、まさか本気でこんなバカな話信じているの? ゲームで死んだら実際に死ぬとかさ」

「そ、それは……」

 

彼にとってこのSAOは初めてのVRゲームだ。そのためかこの世界を完全にバーチャルと実感しきれていなかった。βテスターでもなかったため未だに死に戻りを経験してないし、今後もできない。しかし、それが幸いしたのか、少なくとも今まで『本当に死ぬわけない』と高を括ることはなかったのだ。

だが、目の前の彼女は……彼女達は違う答えを持ったようだ。

 

「くっだらない。確かに最近の技術はすごいけどナーヴギアを作るのにどれだけの人が関わっていると思う? なのに、誰も実際に殺せる可能性に気付かないなんて可笑しいと思わない?」

 

だから、これは茅場のハッタリだ。彼女はそう証言した。

そして、おそらく先ほどチナツの目の前で飛び降りた人達も同じ考えを持ったのだろう。

あの集団の中の誰がそれを言いだしたのかは分からない。

だが、何かしらの間違った行動をしても、複数の人間が同じ考えを持っている事を知ると、それが正しい事であると錯覚を起こす現象は確かにある。

恐ろしい、チナツは目の前の少女が恐ろしい何かに見えて仕方なかった。

そして、彼女をこんな風に感じるようになるこの世界はもっと恐ろしいと思えた。

 

「じゃぁ、何で何時まで経っても外部から強制的に解除されないんだ!?」

「―――ッ!!」

 

だから、チナツは彼女の痛い所をついた。

彼女の言葉を鵜呑みにした方が幸せなのかもしれない。その先が破滅だったとしても。

だが、チナツは……一夏はかつて誘拐された時に姉に助けられてからずっと思っている事があった。

『いつか、姉の様に誰かを助けたい』

と。

その気持ちが、チナツを突き動かした。

 

「確かに、死なないかもしれない。だけど、本当に死ぬかもしれないんだぞッ!! だから!!」

 

考え直してくれ。そう伝えたかった。

 

「―――だから? なんだって言うのよ?」

「―――え?」

 

それでも、チナツは未だに理解出来ていなかった。人は時に自身で自身を追い詰める者だと。

 

「もうすぐ一週間、一週間経とうとしているのに一層も攻略できていないじゃない! 逆に聞くけど、現実の体が飲まず食わずでずっと生きていられるとでも思っているの?」

「……あ」

 

少女の言葉はチナツにとっても予想外の事であった。現実に戻れない事ばかりを考えて、現実の体がどうなっているのか、今後どうなるかなんて考えてもいなかった。

 

「私はねぇ!! まだまだやりたい事があるのよ!! ISの適性も高いし、IS学園にだって入学したいし、いつかは日本代表にもなりたい!! 分かる!? ここは私の場所じゃないのよッ!!!」

 

このまま、100層攻略を待っていても、現実でどれだけの時間が経つかもわからない。それならばいっそ、“デスゲーム”なんて事は茅場のはったりだと信じたほうがマシだ。

それが彼女の答えであった。

 

「でも、だからって!!」

「それともなに!?」

 

 

 

 

―アンタが私の居場所を作ってくれるのッ!!?―

 

 

 

 

その言葉に、チナツの動きが止まった。

そんな事、出来るはずもなかった。現にチナツだってデスゲーム開始からずっと怯え塞ぎ込んでいたのだから。

そして、その戸惑いは彼の『助けたい』という思いを鈍らせた。

彼女はチナツの握る手が緩んだ瞬間、強引に離れ走り出す。

 

「ッ!! 待て!! 止めろッ!!」

 

僅かに遅れてチナツも後を追う。だが、レベル上げもしていないチナツでは彼女とのステータスに差はなく、追いつけない。

必死に後を追うが、どうしても追いつけない。かといって、見失うほどの速さではなかった。

だから―――。

 

「やめろぉおおおおおおおおッ!!!」

 

彼女の最後をしっかりと見てしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「結局、彼女は……ポラリスは俺の目の前でアインクラッドの外へと飛び降りた」

 

3年も前の事だ。鮮明に思い出せるとは言えない。しかし、あの時の事を思い出すと、当時の自分の無力感を思い出し吐きそうであった。

 

「嘘でも良かった、気休めでも良かった。『居場所くらい作ってやる』たった一言そう言えば、彼女は今も生きていたのかもしれない」

 

その事を思い出すたびに、悔しさが込み上がってくるのであった。

 

「気が付けば俺は“はじまりの街”から逃げ出していた。その時だな、チンクに会ったのは」

 

あんな事があった直後なのに何故チンクを助けたのか、今ではその時の気持ちを思い出すことはできない。

助けることが出来なかった時の無力感は覚えているのに不思議な事だ。

けど、何となくわかる。きっと代償行動なのだと。助けられなかったポラリスの代わりにチンクを助ける事で自分の心の安寧を図ったのだと。

 

「皮肉な話ですよ。IS学園に行きたいと願った彼女を救えなかった俺が、こうしてIS学園の生徒でいるのだから」

 

もっと言うのなら彼女のあの発言……IS学園に行きたいと言っていたことを一夏は覚えていなかった。こうして口に出し詳細を思い出すまで、その事すら覚えていなかった。

それでも、この学園から出て行きたいと思わないのは今までの積み重ねた想いがあるから。彼女……ポラリスは自分がこの学園にいる事を知ったら恨むかもしれない。それでも、誰かが自分がここに居てほしいと思ってくれる限りいるべきなのだろうと思う。

 

「―――と。まぁ、こんな感じです。俺はこの後しばらく“はじまりの街”に寄りつかなかったんで、これ以上は分からないです」

「いや、充分すぎるほどだよ。ありがとう」

 

胡散臭いと思われがちな菊岡であるが、話しにくい内容を聞いたためか神妙な顔で礼を一夏に言うのであった。

 

「で、もう帰っても……」

「おおっと、そうだ! 忘れるところだった!!」

 

話も終わり、早々に帰りたい旨を伝えようとする一夏であったが、それを遮るかのように菊岡が少し大きな声を上げるのであった。

 

「な、何ですか?」

「いやぁ、そう言えばチナツ君の個人的な連絡先を聞いてなかったと思ってね。ほら、今まではこうして何かの用事に便乗する形でしかあった事なかったしさ」

「えぇ……」

 

正直言ってチナツは駆け引きには向いてない人間だ。そういう意味では菊岡は相性が悪かった。話している内に良い様に丸め込められる自分が何となく予想がつくのだ。それ故に積極的に彼と関わり合いたいと思っていなかった。

 

「はは、そんなに警戒しなくてもいいんじゃないかな? 傷つくよ~」

「そういう台詞はもっと残念そうに言ってくれよ」

 

しかし、菊岡と連絡を取れるようになるメリットは今後出てくるかもしれない。根からの悪人という訳ではないだろうと一夏は考え、連絡先を交換するのであった。

 

「そうだ、ついでにこの画像を送っておくよ」

「画像? 一体何の?」

「まぁまぁ、君にとっては良いものだからね」

「ったく、一体―――」

 

だが、一夏はメールから画像を開き言葉を失った。それは、かつてあの世界と共に失った記録。

アインクラッド80層到達記念に皆で記録結晶に収めた記念写真であった。

 

「これは?」

「旧SAOサーバーのデータをサルベージする過程で発見した画像の一つだよ。あまり公表すべきではないが、君なら問題はないだろう」

 

例えこんなに笑顔があふれる画像であったとしても、悪意のある人間は色々な表現を使ってゴシップネタに使用することはできる。そういう理由ならば確かにこの画像を広めるべきではないだろう。

だが、一夏にとっては確かに意味があるモノであった。辛い事だけじゃない、あそこではこんなに皆で笑い合った思い出があるのだと。

 

「そう言えば、キリト君はこの画像を見て言っていたよ」

 

 

 

 

―みんながいたから、俺は前に進めているんだ―

 

 

 

 

「……そっか、キリトらしい」

 

そうやって臭い台詞でも聞きたいときに的確に呼吸をするかのように自然に言ってしまうから、彼の周りには自分も含め人が集まるのだろう。

それが、自分の憧れた彼なのだ。

 

「本当に、キリトらしいな」

 

この画像はチンクにも渡しておこう。そして、可能なら箒達にも見せたい。決して辛い事だけじゃなかったと伝えたいのだ。

 

「サンキュー、菊岡さん。俺はもう帰るよ」

「うん、ありがとう。おかげでこちらも調書が無事完成しそうだよ」

 

一夏は、鞄を取りカウンセリングルームから出ようとする。しかし、そこである事を思い出した。

 

「あ、そうだ」

「ん? なにかな?」

「千冬姉にさ、聞きたい事は直接聞いてくれって伝えてくれると助かるってだけ」

「!」

 

それを言うと、一夏は特に気にする素振りもせずに部屋を後にするのであった。

彼を見届けると同時に、菊岡は溜息を吐き室内の通信機を操作する。

 

「どうやら、気付かれていたみたいだよ。千冬君」

『……そのようだな』

 

いつも通りのクールな表情。だが、その瞳の奥には僅かなりの動揺が見えるのは気の所為であろうか。

画面に映っていたのは織斑千冬。一夏の姉であった。

実は今回の事は千冬も一枚噛んでいた。正確に言うのなら便乗したというのが正しかったのだが。

というのも、今まで一夏から話を聞こうとしても千冬がガードして中々彼から話を聞く事が出来なかったのだ

そこで菊岡はある提案をしたのだ。別室から一夏の話を一緒に聞けるようにする事と千冬の存在は隠すという事。

一夏にSAOでの出来事を積極的に聞く事が出来ていなかった千冬はその提案に揺れたのだ。

とは言え、一夏は今回の事を見破っていた。正確には今まで千冬がガードしていたのに不意打ちみたいに菊岡が今日現れたことに疑問を感じ最後は鎌をかけたのだ。

 

「一応言っておくけど、千冬君の事は一切話していないよ? いやぁ、流石はチナツ君だね」

『……ふん、もう用事は済んだのだろう。さっさと帰ったらどうだ?』

「せっかくだし、このままIS学園の見学を……」

『そうか、警備付きでの退出が好みか』

 

ちなみに、そのまま刑務所に直行である。

 

「あはは、冗談、冗談。速やかに撤収させてもらうよ」

 

そそくさと菊岡は帰り支度をし始める。だが、千冬は正直憂鬱気分であった。

菊岡の口車に乗せられたのもそうだし、一夏を騙すような事をしたのもそうだが、なにより一夏と菊岡が個人的な連絡手段を持ってしまった事が嫌な予感がしていたのだ。

 

「(……平穏を与えたいはずだったんだが)」

 

ナーヴギアは自分が買い与えた。ISの開発・発展には自分も深く関わっている。

自分なりに考えて行った結果、一夏に災いばかり降りかかっているのは気のせいではないだろう。

自分は、何のために今まで色々な事をしてきたのだろうか。そう考えることは少なくない。

だが、それでもよく見せる弟の笑顔を見ると許された気分になるのは、きっと自分の弱さなのだろう。

 

「ままならんものだ……」

 

千冬はそう疲れたように呟く溜息を吐くのであった。

 




織斑家、アニメ鑑賞中のヒロイン達。



《暴力系ヒロインの話》
「むむ……」
「どうしたの箒、変な顔して」
「いや、このヒロインだが。いくら主人公の察しが悪いからといって、好きな相手に暴力を振るうのはどうかと思ってな」
「(何故でしょう)」
「(正論なんだけど)」
「(お前が言うなって言いたいわね)」
「ん? なんだこの空気は?」



《お嬢様系ヒロインの話》
「はぁ、これはまた」
「今度はお前か、セシリア」
「あぁ、すみません。ただ、このヒロインはいくら貴族とは言え、こんなに高飛車で周りに接するはどうかと……しかし、何故でしょう見てると恥ずかしいというか、痛いというか……」
「昔のお前だからだろ(ズバッ)」
「あぁ、なるほど……さすが箒さん。ふふふ」
「(え? 何この笑い)」
「指摘ついでに刀を貸してくださいませんこと?」
「(切腹する気よ、このイギリス人!!?)」



《男装系ヒロインの話》
「この話は飛ばそうか。この話は僕にきく」
「飛ばすと話が分からないだろ」
「やめてほしい……やめて(懇願)」



《軍人系ヒロイン》
「どうして軍人キャラは世間知らず扱いが多いのだろな。ふ、昔の私か」
「武士系ヒロインも世間知らずは多いわよね。箒?」
「わ、私に聞くな!! 私は世間知らずじゃないぞ!?」



《料理上手な幼馴染系ヒロイン》
「パンチが低いな」
「地味だね」
「影が薄いですわね」
「現実だと、理想の結婚相手でしょッ!!!?」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。