織斑一夏はSAO生還者   作:明月誠

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良かれと思って! 夏休み編一気に投稿しました!!
それでは皆さん、ダスビダーニャ!!

……あれ? このサイトって連続投稿しても迷惑にならなかったですよね?(汗



第?話・とあるIS学園生徒の夏休み⑥

「はぁ!!」

「せいッ!!」

【猪口才ナ―――ッ!!!】

 

 

リンとチンクの連携攻撃がボスモンスターへと炸裂した。それを鬱陶しく思ったのか、敵は背中の翼を大きく羽ばたかせ突風を巻き起こすのであった。

 

「きゃぁあ!?」

「リンッ!!?」

 

チンクは辛うじて剣を地面に突き立てその場に踏みとどまるが、リンはその衝撃に耐えきれず吹き飛ばされてしまった。

その瞬間、リンは身動きが取れない状態である。その瞬間を敵は狙った。

 

【マずは一匹だ!! キエロ!!!】

 

その巨大な剣を一直線に鈴に向かって振り下ろす。当たれば一発でHPが全損の可能性もある一撃だ。

 

「まっず!?」

 

リンは慌てるが、吹き飛ばされた衝撃でスタン状態に陥り身動きが取れなかった。その時だ、2人の人影がに剣に向かうように突っ込んできたのだ。

 

「ツバキッ!!」

「分かっている、チナツッ!!」

 

二人は巨大な剣を自身の武器で受け流す。もし一人では受け流しきれなかったであろう。それほどまでの一撃であった。

 

【グゥッ!!?】

 

強烈な一撃を防がれた敵は硬直状態に陥った。ピンチがチャンスに変わった瞬間であった。

 

「ごめん、助かった!!」

「礼は後だ!!」

「あぁ!! 一気に削るぞ!!」

 

チナツの号令と共に全員が一誠の攻撃を放つ。だが、それでもボスのHPを大幅に削ることはなかった。

 

【ナメルナァ!!】

「くそ、硬直が解けたか!!?」

「っていうか、硬すぎない!? かれこれ30分戦っているわよ!!?」

 

既にクエストボスと戦いを始めて30分。通常のクエストボスが相手ならそろそろ終わりが見えてきているはずだ。しかし、4本あるHPバーは一本目がようやく半分減った程度であり、未だに終わりが見えていなかった。

 

「(レイドボス、いやそれはない……)」

 

チンクはその状況を冷静に分析する。複数のパーティで挑むレイドボス並みならば等に全員全滅しているはずだ。もっと攻撃力も高く、範囲攻撃だって多いはずである。だが、極端に減らないHP以外は攻撃方法、攻撃回数、威力、その全てが対処可能であった。

ならば、なにかクリアフラグを見落としているのか? そう考えるが、そもそもクリアフラグを見落としているのならクエストボス事態に辿り着けない。

ならば、残る可能性は弱点を見落としているか、この部屋自体にクリアフラグがある事、もしくは―――。

 

「(時間経過により、イベント発生か)」

 

だが、確証はない。チンクはそう考えながらチラリとチナツへと目を向ける。偶然にもチナツと一瞬目が合った。その瞬間彼の考えが理解できた。

 

「(とにかく、諦めるなか。お前らしい)」

 

ならばこのままイベント発生しなくても戦闘を続行するのみ。極端な話、このまま戦闘を続ければ単純計算で3時間半後には倒せるはずだ。なにより―――。

 

「このぉ!!」

「絶対に倒すぞ!!」

「セシリア、今度はSTR上昇バフを掛けるよ!!」

「えぇ、任せて下さいませ!!」

 

この場にいるメンバーは途中で面倒くさくなって投げるようなプレイヤーはいない。立派なゲーマーであった。

 

「ふん、良いギルドになったモノだ」

 

二人だけのギルド。それはチナツにとってはキリトを拒絶した戒めであった。だが、チンクにとっては誇りでもあった。

だからこそ、半分強引に入ってきたストレアには憎まれ口を良く叩いたものだ。(もっとも、ストレアや他の連中にしてみればじゃれて来ている猫気分で微笑ましげであったが)

だが、今はどうだろう。一緒のギルドのメンバーとして戦う事に不快感を覚えない。それはきっと。

 

「(成長、なのだろうか? 実感がまるで沸かんな)」

 

そうして、彼女達は戦闘を続けていく。中々削り切れないHPに苦戦しながらも彼等は決してあきらめなかった。

 

【コノッ!! 忌々しい羽虫共ガぁッ!!!】

「なに!?」

 

だが、そんな戦闘が続く中、敵に動きがあった。その動作にチナツは驚く。敵の片手にもう一本の剣が顕現したのだ。それはすなわち攻撃パターンの変化。

あり得ない。そうチナツは思った。通常こういったモーション変化が起きるのはHPバーがキリよく削れたときに発生する。

だが、HPバーは一本目すら削りきれてない状況にもかかわらずモーション変化が起きたのだ。

 

「くそ、皆!! 攻撃パターンが変わる!! 注意しろ!!」

「って言っても!?」

 

そうこうしている内に、相手は巨大な剣を二振り構え攻撃態勢へと変わる。もはやその攻撃を遮るのは不可能に近い。

 

「とにかく防御態勢をとれ!!」

「セシリア、守りを!!」

「分かっていますわ!!」

 

シャルとセシリアは急いで防御魔法を唱え、皆は各自で防御態勢をとる。そして―――。

 

【斬り裂カレろ!! 羽虫共メェエエ!!!】

 

そして、二振りの剣が振り下ろされた。その瞬間、広範囲の斬破はチナツ達を襲うのであった。

 

「ぬぐうう!?」

「きゃぁああ!?」

 

全員防御態勢をしっかりとっていた。しかし、セシリア・シャルを除くモンスターに近接していたメンバーはその衝撃に耐えきれず吹き飛ばされてしまう。

 

「く、マズッ!?」

 

チナツはこの状況に危機を覚えた。セシリアとシャルが急いで回復魔法を唱えているが、既に敵は二発目の体勢を取っていた。連続広範囲攻撃、これをくらえば前衛は壊滅を免れない。そうなってしまえば残ったシャルとセシリアだけで対処は不可能だ。

もはや、これまでか。

そう思った瞬間。

 

「―――ッ!? 何!?」

 

何かが彼らの頭上を通り過ぎた。そのスピードは決して速くはない。だが、一直線にモンスター目掛けて飛来していった。

 

【この程度デ!!】

 

だが、その何かはあっさりと防がれた。しかし、その出来事が二発目の攻撃を防ぐのに成功していた。飛んできた何かは剣であった。何の変哲もない普通の剣。

 

「今のはッ!?」

 

チナツはその剣が飛んできた方角を見る。そこにいたのは。

少女であった。黒いドレスに、角が生えた少女。その姿にチナツは何か見覚えがあった。

 

「君は……」

「ジャスト、40分」

 

少女は小さく、ポツリと呟いた。

少女は人差し指を口元に当て、ウィンクをする。

 

「皆様、お疲れ様です。クリアタイムのお時間です♪」

「ちょっと、それってどういうッ!?」

 

その言葉に、リンが反応したが少女は何も答えず転移したかのように掻き消えるのであった。

 

「今のは、一体…」

「セシリア、気になるけど今は皆の回復を急いで!」

「わ、分かっていますわ!?」

 

確かに今の少女が何者かは気になる。だが、戦闘はまだ終わっていない。今の少女の投剣のおかげで最悪の事態は免れたが、未だに状況は改善できていなのだ。

 

【オノレ、今のちっぽけな攻撃くらいデ、この私ガ……グヌゥウウ!?】

 

だが、その時だ。急にモンスターが苦しみ始めた。そして、二対ある黒と白の翼のうち、白い翼が暴れ出したのだ。

 

【これは、マサか!!?】

『これ以上、勝手な真似はさせません。姉様!!』

「天使…?」

 

ボスの後ろに半透明の人の姿が浮かび上がる。その姿を見てツバキは思わず呟くのであった。

 

【ナニヲ、貴様!? 翼に自分の心ヲ!!?】

『えぇ、出てくるのに時間が掛かりましたが。これ以上は思い通りにはいきません!!』

 

新たに現れた天使がそう宣言すると、ボスモンスターは片膝を着き動きを止めた。

 

『今です、妖精の戦士たちよ!! 今ならば、姉を倒しきれるはずです!!』

 

天使はチナツ達にそう告げる。その言葉に皆はそれぞれの反応をするのであった。

 

「って言っても」

「信じていいのか?」

「け、けどこのままじゃキリがないよ」

「そ、そうですけど……」

 

何の前触れもなく急に現れた天使に皆懐疑的であった。しかし、チナツは―――。

 

「悩むな!!」

「え?」

「道が新しくできたなら、ただ進めばいい。もしその先に壁があっても―――」

 

 

 

―皆で乗り越えるんだ!!―

 

 

 

その一言と共にチナツはモンスター目掛けて真っ直ぐに進むのであった。

 

「ったく、あの一直線馬鹿は」

「だが、あれでこそチナツ……いや、織斑一夏だ」

「ですわね」

「うん!」

「よし、私達も行くぞ!!」

 

そして、皆もチナツの後に続くのであった。全員によるソードスキル、魔法の連続攻撃にあれほどあったHPは見る見るうちに削れていく。

 

【オ、オノレ!!?】

『させない!!』

 

何とか反撃しようとする敵であったが、天使がそれを遮る。

 

『姉様、もう終わりです。これ以上は―――』

【黙れ!! 貴様ニ私の気持ちガ―――――】

「うぉおおおおおおおお!!!」

【―――ッ!? シマッ!!?】

 

そして、チナツの最後の一撃が炸裂した!!

 

【グゥウウあああああ!!!?】

 

その雄叫びと共に、《The Chaos angel》のHPが尽きる。ギルド・サマーラビッツが勝利した瞬間であった。

 

【私は、こんな所で、マダ……】

 

HPが尽きてもなお、執念深く手を伸ばす。しかし、それも限界であった。次の瞬間彼女はガラスが砕けるエフェクトと共に消滅したのであった。

 

『姉様、お休みなさい……』

 

彼女が消滅したのを見届け、天使は涙を流すのであった。

そして、次の瞬間空中にはクエスト終了の文字《Quest Clear》の文字が浮かび上がるのであった。それを見た瞬間、全員どっと疲れを感じて脱力するのであった。

 

「あ~、やっと終わった~」

 

一方チナツ達は、全員満身創痍の状態だ。リンは意の一番に唸りながら地面へとへばり込んだのであった。

 

「も~無理。喜んではしゃぐ体力もないわ~」

「リンさん、だらしなくてよ?」

「あはは、いいんじゃないかな?」

「ああ、それぐらい大変なクエストであった」

 

疲れ果てた様子の皆。しかし、そこには笑顔があった。彼らはクエストクリアと言う達成感で満たされていた。

 

「お疲れさん、皆。グッジョブ」

「うむ、グッジョブ」

 

そんな皆にチナツとチンクはねぎらいの言葉を伝える。しかし、そんな彼らを見て悪戯気に鈴はこう言った。

 

「あはは、チナツはともかく、チンクに『グッジョブ』って言葉は似合わないわね~」

「な、何だと!?」

「あぁ、俺もちょっとそう思ったり……」

「チナツ!!?」

 

そのやりとりにドッと皆の笑い声が周囲に響く。そんな中、天使がチナツ達に語り掛けるのであった。

 

『良くやってくれました。妖精の戦士達よ』

「貴女は、ひょっとして」

『はい、先程貴方達が戦った者の妹。光を司る天使と言えば分かりやすいでしょうか』

 

その天使はボスモンスターが変化する前のクエストNPCによく似ていた。違いがあるとすれば、どこか穏やかな雰囲気であるという事か。

 

「それにしても、アンタも災難よね~。あんな姉を持ってさ~」

「こら、リン!」

 

リンの何気ない一言をツバキが窘めた。とは言え、この場にいる誰もが同じ感想を抱いていたのだ。妹に嫉妬し、亡き者にした姉を素晴らしいとはとても思えないからだ。だが、天使は悲しげに首を横に振った。

 

『いいえ、それは違います。確かに姉にはそう言った気持ちがあったのは間違いないかもしれません。ですがそれ以上に私を愛していた。私はそう信じています』

「え? けど、闇の堕天使なんでしょ? 貴方の姉は」

『光と闇が必ずしも善と悪という訳ではありません。その力と心の在り方は違うのです』

 

その言葉にチンクは訝し気な表情を浮かべながら口を開く。

 

「それはおかしな話だ。それが真実ならばなぜあんな事になった」

『それはとある神に姉が唆された為です。姉に対して心無い言葉を言う者達がいたのも事実です。それに付け込まれたのでしょう』

 

私はそんな姉を救えなかった。そう彼女は悔いるように呟くのであった。

 

「その神とは一体……?」

『その神の名は……』

 

ツバキは天使に対して質問をする。その言葉に天使はゆっくりと口を開き―――。

 

『申し訳ありません、この場でお伝えする事は出来ません』

「まぁ、もったいぶるのですわね」

「セシリア、しー!!」

『かの神の名は口にするだけで感知される可能性があります。さらに言うのであれば、かの神にとって此度の一件は戯れの様なモノ。皆様をこれ以上危険に巻き込むわけにはいきません』

「む、どうやらクエストは打ち止めの様だな」

 

その神との戦いに向けて新たにクエスト発生と言う可能性もなくはないが、どうやらなさそうだ。これ以上このクエストは継続しない。チンクはそう判断していた。

 

『さて、それではお礼をしなければいけませんね。どうぞ、受け取ってください』

 

天使が手を翳す。すると、皆の前に入手したアイテムがどんどん浮かんでいくのであった。クエストのクリア報酬アイテムだ。

 

「わわ、なにこれ!?」

「アイテムストレージが一気に埋まったぞ」

「はは、すごいね」

「並のクエスト報酬とは比べ物になりませんわ」

 

その報酬量は凄まじく、皆は驚きの声を上げる。

 

「なんか、悪いな。結局君を助けられた訳じゃないのに」

『いえ、姉を止めてくれた。それだけが嬉しいのです……ですが、本当は私が姉を止めたかった。ですが、拒絶されることを恐れ、ぶつかれなかった。私は、そんな臆病な自分に腹が立ちます』

 

今更は話ですが、そう彼女は悲しそうに語るのであった。

 

『すみません。そろそろ貴方達を地上に帰さなくてはなりませんね?』

「あの、帰すって、ここは地上じゃないんですか?」

『ここは、天界にある神殿の一つ。通常の方法では出る事も入る事も出来ない場所です』

天使が両手を握り、祈り始める。すると、宙から巨大な一枚の羽根がゆっくりと降りてくるのであった。

『この羽根にお乗りください。貴方達を私の最後の力でお送り致します』

「……分かった、ありがとう」

 

チナツがそう言うと、皆が徐に羽根へと乗る。

 

「ちょっと狭いわね」

「押すな、リン!?」

「やれやれ、最後まで騒がしい」

 

リンとチンクの言い合いを仕方ないとツバキは苦笑いを浮かべていた。

 

『ありがとう、妖精の戦士達よ。姉様を止めてくれて、本当にありがとう』

 

最後に天使がそう言うと、チナツ達は光に包まれその場から消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

「――――ッ!!」

「うわ、眩しい!?」

 

最初に感じたのは眩しさであった。次に感じたのは風圧。そんな中、チナツはこのメンバーの中で一番に目を開けた。

 

「―――すげぇ」

 

そして、ポツリと呟いた。

 

「ほら、皆目を開けてみろって。もう大丈夫だから!!」

「な、何よ―――て、うわぁ」

「これはまた」

「絶景、と言うしかないか」

「ふむ、中々だな」

 

そこにあったのは、どこまで広がる空。そして、綺麗な夕日が、世界樹を赤く染め上げていた。仮想世界ならではの絶景。それが辺り一面に広がっていた。

 

「ある意味、これが最高のクリア報酬ですわね」

「あ、セシリアもそう思う?」

「スクショ、スクショ!!」

 

はしゃぐ仲間達を見ながらチナツはふと先ほどの天使の発言を思い返していた。『拒絶されることを恐れ、ぶつかれなかった。私は、そんな臆病な自分に腹が立ちます』

あの言葉は、もしかしたらあの第一層で自分が出来なかった事にも当てはまるのではないかと。あの時、自分は彼女の叫びに答えられなかった。それは自分の言ったことが拒絶される事に怯えてしまったからかもしれない。

考えてみればSAOでもIS学園でも自分は仲間とは大なり小なりぶつかってきた。箒とだって、鈴とだって、セシリアとだって、ラウラとだって。シャルは少し微妙だが、彼女の感情にぶつかったのは間違いない。そして、その他の人達とも形は違えどぶつかってきた。

それを今の自分は理解できる。勿論、だからと言ってあの時彼女を救えなかった事実がなくなるわけじゃない。そして、自分が救えなかったのは彼女だけじゃない。救えたはずの命を助けることが出来なかったことは何度もあった。自分はきっとこれからも、その事を考えていかないといけない。

もしかしたら、一人ではその事に押しつぶされるかもしれない。

だけど、そんな時は。

 

「(皆を頼ろう。それはあのデスゲームの中で学んだ事でもあるのだから―――)」

 

そう感じながら、チナツ皆と共にこの光景を楽しむのであった。

 

「そう言えばさ、結局クエスト中に私達を助けた人って誰だったのかしら?」

「あら? そう言えば……」

「ふむ、天使NPCもそれに繋がる話は無かったな」

 

ふと、リンが思い出したようにその話題を出し、一同は首を傾げる。だが、チナツとチンクだけは顔を見合わせていた。

 

「なぁ、チナツ。私はどこかであれを見た事があるのだが?」

「お前もか? 俺もどっかで……」

 

だが、結局答えは出なかった。そのため二人も皆と一緒に首を傾げるのであった。

 

 

 

 

 

 

某所

 

「もっぴ~♪ もっぴ~♪ もっぴっぴ~♪」

「何をしているのですか?」

 

モッピーは一人、気ままに散歩をしていた。しかし、そこにユイが声を掛けるのであった。

 

「モッピー何でも知っているよ。ユイちゃんはモッピーの事が気になるって事を」

「も~! また変な言葉使って!! お姉ちゃんは認めませんからね!!」

 

ユイはモッピーの態度にぷりぷりと怒る。

 

「貴女はMHCP-003……私の妹なんですからね!! 《アリア》!!」

 

そうユイが言うとモッピーが光に包まれる。そして現れたのは先ほどチナツ達を助けた少女であった。

 

「フフ、姉様。少し違いますよ。私はMHCP‐003を中心に欠損したデータを補完し合ったMHCP‐003からMHCP-009の集合体。厳密にはコードネーム《アリア》とは言えません」

 

そう、彼女はかつてSAOでキリト達が止めた暴走したMHCP達。その残骸データが互いに補完し合って生まれた存在であった。キリト達によって暴走こそは食い止められたが、直後にSAOはクリアされアインクラッドと共に消滅した……はずだった。しかし、様々な偶然が重なり、こうしてモッピーとして活動をしていたのだ。

 

「それに、モッピーとしてからかうと皆様とっても楽しいのですもの。ついつい調子に乗っちゃって……」

「こらぁ!!」

「そんな訳で、姉様。もうしばらく、チナツさん達には私の事は内緒にして下さいね♪」

 

そう悪戯気に笑うと、彼女は転移していくのであった。

 

「あ~! またそうやって~!!」

「まぁまぁ、ユイ。良いじゃない」

「ストレアは甘いです!! チナツさん達にご迷惑を!!」

「あはは、良いじゃない? 私は嬉しいよ? 私と一緒でさ、エラーを抱えて暴走してた子があんな風に楽しそうにしていて」

「そ、それは……」

「だから、ね? もうちょっと様子を見てあげよ? チナツ達とならきっとあの娘達もたのしいからね」

 

ストレアがそう言うと、ユイは納得いかない様子であったが頷くのであった。そんなユイをストレアは嬉しそうに抱きしめるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

「一夏~、腹減った~」

「分かったって。ったく、夏休み中ずっとウチにいる気かよ」

 

次の日、チンクは相も変わらず朝食をだらしない姿で要求していた。すっかり我が家気分である。因みに千冬はIS学園である。教師は生徒と違って夏休みは短いのだ。

 

「ふ~む、何か面白い番組は無いか?」

「この時間帯はニュースぐらいしかないぞ」

「それもそうか……む、殺人事件か。物騒だな、日本も」

「軍人のお前が物騒とか言うか」

「今はドイツ国のIS競技連盟に出向中の身だ」

 

とはいえ、ニュースの内容は場所もこの近くとは言い難く、ラウラも一夏はあまり深い興味は示さなかった。そんな彼等をおいて、テレビのニュースは流れ続ける。

 

『死亡した男性の近くには髑髏に似たマークが張り出されており、警察ではこれが何らかの―――』

 

この事件が何に繋がるか。この時、一夏達は理解を全くしていなかった。

 

 




「まさか、熱中症になっちゃうなんて……」
「かんちゃんは頑張り過ぎなんだよぉ~」
「うん。けど、どうしても気持ち焦っちゃって……」
「そんな、かんちゃんに~。とっておきの差し入れを持ってきたのだ~」
「あ、うん。ありがとう。飲み物?」
「うん~。あ、それに加えて、おまけで~」

「お、いたいた。簪、頑張ってるな~。差し入れ持ってきたぞ」

「おりむーもきたのだ~!!」
「お、おおお織斑君!!?」
「熱心なのはすごいけどさ、あんまり無理すんなよ?」
「あ、あの! その!?―――テ、テイクアウトはOK!!?」
「いや、飲み物はこの場で飲んでくれよ……」
「残念~。おまけ含めて、当店でお召し上がりください~♪」

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