モブだけどね!!
うん、もっと早くキャラを出し揃えれるように頑張ります。
「いい加減にしてくれません事?」
そう、一人の女性が口にした瞬間、辺りが静まっていった。
「まったく、先ほどから騒がしいことこの上ないですわ」
「ご、ごめんね~」
騒動の発端となっていた、本音は謝罪するしかなかった。
「ふん、これだから日本人は・・・」
彼女は悪態をつきながら、不快そうな顔をし続けた。
「”たかが”ゲームの話で盛り上がるなんて、小学校ですの? いい気になってくだらないですわ」
その言葉に、ピクリと本音が反応した。
「・・・じゃないよ」
「? なんですの? そんな小さな声では聞き取りすることが・・・」
「たかが、ゲームじゃないよ!!」
「ッ!?」
本音は涙を浮かべつつも、強くそう主張した。その様子に、周りのクラスメートも思わず息を飲む。
「私達は、一生懸命にあの世界で生きてきたの! それを、”たかが”の言葉なんかで表現しないで!!」
「な!? そもそも、あなた方が!!」
「おっと、そこまでだ」
言い争いがヒートアップしそうな空気が漂う中、一夏が彼女たちを止める。
「おりむー!?」
「悪いな、騒がしくて。もう授業も始まるし、そろそろ話はやめるつもりだ。えぇっと・・・」
一夏は、詫びをしようと思ったが目の前の金髪の少女の名前が分からなかった。自己紹介の時に言っていたはずだが、何分クラスメイト全員の名を覚えるほど一夏には余裕はなかった。
その事を察したのか、彼女は更にしかめ面をしながら、高らかに宣言する。
「まぁ! この、セシリア・オルコットを知らないのですの!? イギリスの代表候補生にして、入試主席のこのわたくしを!!?」
彼女は高飛車にそう言った。一夏はそんな彼女を見て、プライドが高い人物と判断して、なるべく刺激を与えないように言葉を選んでいく。
「悪かったな、オルコットさん。ついつい、共通の話題があって話が盛り上がって様だ。入学して間もないんだ。見逃してくれると助かる」
「ずいぶんと卑屈な態度ですのね、これだから男は・・・」
「なんだと、貴様!!」
どう見ても、一夏が大人な対応をしてこの場を治めようとしているのは誰の目から見ても明らかであった。だが、その対応に対し、いい気になってつけ上がる彼女を見て箒は我慢ができず、思わず叫んだ。
「箒」
「だが、一夏!」
「いいから」
「・・・ッ!」
しかし、一夏は彼女の名を呼び、それ以上話を広げるなと止めた。微妙な空気が漂う中、授業開始のチャイムが鳴る。
「はい、もう休みは終わりよ。席につきなさ・・・なにこの空気?」
次の授業担当の教師が、教室に入ってくるも教室内の変な空気に戸惑いを見せる。一人の女子生徒は明らかに泣いているし・・・。
「すみません、先生」
一夏は手を上げながら言う。
「この子体調が優れないみたいなので、保健室まで連れていってもいいでしょうか?」
「え!? えぇっと・・・」
教師は戸惑いながらも、ふとある事に気付き生徒のデータを見る。学校にはSAO生還者がチラホラとおり、教師もそれらの生徒情報は確認していたためその事に気が付いた。彼女はSAO生還者であると。
教師は、彼女がSAO事件の事を周りの人間に根掘り葉掘り聞かれ、彼が庇っていると判断していた。
「分かったわ。それと、保健室にはカウンセラーもいるから、必要ならば言いなさい」
「ありがとうございます」
SAO生還者のほとんどはある程度カウンセリング対象となっている。当然、一夏も問題がないか受けた事がある。IS学園にも数名ではあるがSAO生還者が在学していた。そのため、学園ではカウンセラーの手配をしているのだ。(もちろん、SAO関連以外でも受け付けているが・・・)
二人が去った後、教員は考える。さて、この空気どうしようと・・・。
保健室に来た一夏は本音をベットへと休みように促した。
クスンクスン、と泣く本音に何を話していいのかわからず、一夏はただ頭を撫でるしかできなかった。
けっして、ナデポではない。
「おりむーは・・・」
「ん?」
「おりむーは悔しくないの、あんな言い方されて・・・」
SAO生還者の全員がSAOと言う世界を受け入れているわけではなかった。
始まりの街で何もできずに2年以上を過ごした者。
大切な者を亡くし、塞ぎ込んでしまった者。
様々な事で心の病を持ってしまい、今も苦しんでいる者達がいる。そう言った人たちがいるからこそ、本音はセシリアの言葉に我慢ができなかったのだ。
そして、一夏は天井を仰ぎながら考える。確かに思う事がないといえば、それは嘘だ。命がけで戦い抜いた自分達の戦いを、その場所を、『たかがゲーム』の一言で終わらせられてはたまったものではない。それでも・・・。
「何も感じないといえば、嘘になる。だけど、やっぱりSAOでの出来事はゲームの中の話って言うのも事実だ。彼女の言う事も一理ある」
「そ、そうかもしれないけど~」
たしかに、SAO内では一夏も、ブリュンヒルデだのなんだのと言われるトッププレイヤーであった。
だが、現実に戻ってしまえば大した力もない一人の男子に過ぎない・・・というのも、ISを動かせるまでの短い時間であったが。それでも、現実と仮想のギャップを感じていた。
「『いい気になってくだらない』か・・・」
彼女はどこまで考えて言ってるかはわからないが、一夏には考えさせられるものがある言葉であった。
・・・・・どう考えても、過大評価だが。
「まぁ、オルコットも外国の人だ。日本の電子テロなんて深く知らないんだろう。機を見て俺から話すから、それで我慢してくれないか?」
「うん・・・」
そういって、再び頭を撫でる一夏であった。
「それじゃぁ、俺は授業に戻るからノンさんは・・・っと、リアルでいつまでもアバター名ってのもな・・・」
そう言い、考えた。彼女の名前はなんだったのだろうと。教えてもらったはずなのに、彼の中ではアバター名で定着していたせいですっぽりと抜けてしまっていた。
「の、の・・・のほほんさんは」
苦し紛れに勝手につけた渾名で呼んだ。
「ぷっ、なにそれ~!」
「わ、悪い。アバター名で覚えてたもんだから・・・」
「も~仕方ないな、おりむーは~」
仕方ないから、そう呼んでもいいよ。そう、彼女は笑って言った。その様子に、安心したのか、一夏は席を立つ。
「気分が落ち着いたら、のほほんさんも教室に戻るといい。俺は先に戻っているから」
「うん、ありがとね、おりむ~」
一夏は、そのまま保健室から出て教室に戻るべく、廊下を歩く。そんな一夏の真正面から一人の少女が歩いてくる。
「(あれ? 今って授業中じゃ・・・)」
そう思いつつも、一夏はぺこりと軽く会釈をする。対する相手も、軽く会釈をして通り過ぎていった。そのまま、少女は先ほどまで一夏がいた保健室の扉をノックしていた。
「本音、保健室にいるって聞いたけど、大丈夫?」
「(そっか、のほほんさんの友達か・・・)」
そこで、ふと思い出す。たしか、70層のフロアボスとの戦いの際に、本音ことノンノンと共に彼女もいた事を。そして、76層に上がって以来、シリカがやたら心配していた中層プレイヤーの存在を。
「(いつか、話がしたいな・・・)」
一夏はそう感じながら、その場を後にした。先ほどの彼女が、彼の後姿をじっと見ていることにも気付きもせずに。
「あの人が、織斑一夏・・・SAOのブリュンヒルデ・チナツ・・・」
複雑そうに一夏の後姿を見ながら、少女はそう呟いていた。
その後、特に何もなく一日目の学園生活は終わりを告げた。本当に何もなく、教室は何とも言えない微妙な空気をしたまま、気まずい雰囲気であった。
「一夏」
「おう、どうした箒?」
「悪いが私は、早めに寮に行くつもりだ。荷物の整理もあるからな」
IS学園は全世界から生徒が来る。そのため、学生用に寮が用意されていた。
「そっか。じゃぁ、また明日な、箒」
「あ、あぁ。また明日だ・・・」
箒は若干戸惑う様子を見せるが、すぐに微笑みを見せて一夏に別れを言いその場を後にした。そんな彼女の様子に若干首を傾げながら、一夏も帰る準備をする。
「さてと、俺もさっさと帰る・・・」
「織斑君。少し良いですか?」
箒と別れた一夏が自身も自宅に帰ろうをしたその時、真耶が話しかけてきた。
「実は織斑君は、今日から寮生活になります」
「え?」
それは初耳であった。聞いた話では、部屋の調節が間に合わず・・・と言うか、学園側が把握不足で準備ができておらず一週間は自宅通いという話であったはずだ。
「始めは、しばらくは自宅からという話でしたが、やはり安全面も考え早めに寮に入ってもらう事になりました」
「まぁ、早いか遅いかですけど・・・」
けど、そんなに早く調節できるなら一週間とか言わなきゃいいのに。思わずそう考えてしまう。
「って、俺着替えも何もないんですけど?」
「それに関しては数日分の着替えは、先ほど織斑先生が自宅に取りに行きました」
「一緒に連れていってくれればいいのに、千冬姉」
どうせ甘えんな、って言いたいんだろうな。そう感じながら、一夏はこれからを考える。寮に行くのもいいが、何もないんじゃ手持ち無沙汰だ。それならば・・・。
「山田先生、IS学園ってトレーニングルームとかあります?」
「え? それはありますけど・・・」
「荷物もないんじゃ、早めに寮に行っても仕方ないんで、もし良かったら場所教えてくれませんか?」
その言葉に、ふと真耶は考える。彼はリハビリ中にISを動かしてしまい、千冬と勉強を数か月間で詰め込みで行っていた。ならば、リハビリに不安でもあるのだろう。そう考えついた彼女は快く一夏を案内することにした。
「分かりました。じゃぁ、私が案内しますね」
「すみません。ありがとうございます」
「いえいえ~」
実際には、単純に若干脳筋思考になってしまっているだけだが・・・。
「(それにしても、半年近く経つけど筋肉つかないな・・・)」
筋肉ムキムキをまだ諦めていない一夏であった。
お湯の流れる音が浴室に響いていた。ここはIS学園の寮にあるとある学生部屋。箒は帰ってきて早々にシャワーを浴びていた。
「ふぅ・・・」
彼女はおぼろげにため息を吐いた。
「『また明日』・・・か」
その言葉を口にしたのが、箒は堪らなく嬉しかった。
数年前まではそれを言って別れ、次の日にはまた会う・・・それが当たり前の日常であった。だが、そんな日々はある日突然奪われる。
正直、もう二度と一夏には会えないと思っていた。自分の人生は、姉に振り回されたまま自分でもどこに行くかわからないものだと思っていた。
だからこそ、一夏にまた会えたのが・・・『また明日』と言って別れたのが嬉しかった。数年前の『さよなら』とは違う。それを口にすると心が温かく・・・。
「いかん、いかん。何を浮かれているのだ、私は」
彼女はキュキュと音を流しながら、シャワーの蛇口をひねり止めた。
「一夏は、今大変なんだ。幼馴染たる私が支えんでどうする!」
男性操縦者と言うのもそうだが、SAO生還者と知られてしまった以上、更に好奇の視線に晒される可能性もある。セシリアの様な輩に絡まれる危険性もある。自分が、しっかりと一夏を守らなくてはいけない。
彼女はそう心に誓い、濡れた体を拭く。そこで、室内に人気を感じた。
「(ん、そうか・・・同室になったものか・・・)」
そこで彼女は思い出す。IS学園寮は基本二人部屋であった事を。一夏も確かに気になるが、これから自分が同じ部屋で過ごす生徒。なるべく有効な関係を築きたい。
「(一夏の事を聞かれると厄介だが・・・)」
もし聞かれても、何とか躱すしかあるまい。弁は立つ方ではないが、一夏のためだ。彼女は意を決していバスタオルを体に巻きシャワー室からでる。
「同室になった者か? すまない、シャワーを先に使わせてもらっていた。私は―――」
「同室の者も来ない内に、良いご身分だな。篠ノ之?」
「・・・・・・え?」
ベットに堂々と座っている女性に対し、箒は固まるしかできなかった。
「ち、千冬さ・・・ではなく、織斑先生!!?」
「別に、放課後まで先生呼ばわりしなくてもいい」
「は、はい! いや、ではなくて!?」
箒は、必死に考える。なぜ千冬がここに居るのかを。そして、二つほど考えが付いた。
「・・・姉さんの事で何か?」
「いや、最近あいつとは連絡を取っていない。まぁ、あれで丈夫な奴だ。別に放っておいても支障はないだろう」
今はまだな・・・そう内心で付け加える千冬である。しかし、その内心を知りえない箒はもう一つの考えを口にする。
「まさか・・・同室は・・・」
「まぁ、そうなるな」
千冬は感じていた。箒が同室は弟の一夏であると察したのだと。しかし、答えは若干斜め上の物であった。
「千冬さんが!? 教師が同室でいいのですか!?」
「なわけあるか、馬鹿者」
スパーンと良い音で箒は頭を叩かれてしまった。軽く叩かれたはずなのに、痛快な音で叩かれ箒の頭が揺れた。ちょっと意識が飛びそうになっていた。
「~~~~~~ッ!!」
「一夏だ、一夏。あいつに決まっているであろう」
「なッ!!?」
その言葉に、箒は再度衝撃を受ける。仮にも学生である男女が同室になるというのである。
「だ、男女七歳にして!!」
「席を同じくせず、か? 相変わらず、古臭い言葉を知っているな」
この分なら、国語の点数は良いだろうな。そんな事を言う千冬であった。
「とは言え、一夏の部屋が決まらなくてな。いずれは一人部屋に調整する予定だが、しばらく部屋の用意ができそうにない」
だが、いくらなんでも一夏を二人部屋にするにしても、先ほど箒自身も言った通り男女では問題がある。そこで、知り合いならば比較的安全であろうという判断で同室は彼女となったのだ。
「ですが、部屋は現時点で埋まっているのですよね? しばらくと言いますが、本当に調節できるのですか?」
「あぁ、その点は・・・」
そこまで言うと、千冬は悩むそぶりを見せる。言うべきか、言わざるべきか悩んでいたのだ。
「プライバシーの観点もあるから、誰とまでは言えんが、このIS学園の2年、3年にもSAO生還者がいる。数名とは言え、その分で今ごたついている」
「あ・・・」
SAO被害者の学生の殆どは専用の学校に行っていた。だが、IS学園の生徒に関してはすんなりそれを受け入れる者はいなかった。
それも当然だ、あくまでSAO生還者用の学校は通常過程の勉強しか見ないからだ。リハビリもあり、殆どの学生は4月から復帰していたが、中にはしばらく様子を見て転校を考えている者、現在もカウンセリングを受けているため復帰できてすらいない者、あるいは年齢の違いから、しばらくは一人部屋で過ごすという配慮を受けている者もいる。
政府からもある程度支援を行うように指示が出ているため、何でも一夏を優先にするわけにはいかなかった。
「まぁ、そう言う訳だ。別に下着を盗んだりするように育ってはいないから安心しろ」
「そ、そこは信用してますが・・・」
「(もっとも、知らない内に洗って干してるかもしれんがな)」
SAOから戻ってきた一夏が自宅に戻って、最初にしたのは懐かしむでもなく、寝るでもなく、家の大掃除であった。リハビリが終わりきってないその体で、ぜーぜー言いながら掃除、洗濯をしている姿は今でも覚えている。
手伝おうとしたら、鬼気迫った顔で『邪魔』と言われて、思わずシュンとした。あのブリュンヒルデがである。
この頃は、まだ現実に戻ってきたという実感が薄く、あまりの自宅の惨状に思わず強気になっていた一夏だからこそ言えた事ではあったが。
「それとも何か? お前は、一夏が今日出会ったばかりの他の生徒と同室でもいいと?」
「そ、それは・・・わ、分かりました!」
箒は急に気合の入った声で、勢いに任せて宣言する。
「私が、一夏の生活管理をします! 決して、だらけきった生活をしないように!!」
「(少し不安だが、姉と違ってこいつは肝心なところでヘタレだし。大丈夫だろう)」
気合の入る箒を尻目に千冬はそんな事を考えていた。本当は、自分と同室に出来れば良かったのだが、流石に教師が生徒と同室は生徒には見せれない書類などの関係もあり無理であったのだ。
「し、しかし。肝心の一夏は?」
「あぁ、私もとっくに部屋にいると思っていたのだがな・・・」
千冬は考える。弟のしそうな行動を。そして、すぐに思いついた。
「学校か・・・仕方あるまい。迎えに行くとしよう」
「が、学校ですか!?」
「あぁ、お前もついてくるといい。シャワー後になんだがな」
そう言うとすぐに立ち上がり、扉から出てサクサクと歩いていく千冬に箒は焦ったように言う。
「ま、待ってください。千冬さん!!」
まだ私はバスタオル姿のままなんです!! さすがにこの姿で出歩く事は出来ません!!
そんな箒の叫びが、廊下一面へと広がった。ついでに、他の生徒による彼女たちへの視線も集まった。箒は顔を真っ赤にした。
モッピー何でも知ってるよ。最近、SAO×ISのクロス物が増えて作者役得だって事を・・・。
モッピー何でも知ってるよ。ネタがかぶってしまわないかドギマギだって事を・・・。