『作戦開始』
「お姉さま!あっちにも!あれはどんな鳥ですか!?」
「わ!?あー!ほらまた逃げちゃったじゃないか!」
青い空、本当にどこまでも吸い込まれそうなこのそらを見た時の事は、まるで昨日のように。
草むらでテントを張り、絶対に割るなと沢山注意されたお姉さまが持ってきてくれた高額なレンズで今私は。
「あーあ、やっと警戒されなくなったのに」
そう笑ってお姉さまはレンズから離れテント内の休憩スペースに。
「初日にいきなりテントの傍で煮炊きし始めた時はどうなるかと思ったけど、また数日待ってみればチャンスはあるかな…?」
「流石ですお姉さま!」
「叫ばなければもっとしっかり見れたのに」
「はう〜…」
枯れ枝やネットで隠されたテントから出てみれば、そらは焼けるように赤くなり始めていた。
まるで、太陽系防衛システムのような赤さがこの星を包もうとしていた。
山を降りて麓に止めてあるスクーターにお姉さまとまたがる、あの時とは違い、お姉さまの腰に手を回してしがみついている。服越しに伝わってくる温かさはとても安心する。
初めて追いかけたあの日の事、あの時と同じ音を響かせて緋色のボディーは山道を下る。しばらく走れば街の郊外に作られたホテルが見えてきた。
泊まっているコテージの番号を確認してスクーターを降りる。お姉さまの腰に回していた手を離せば少しだけ寂しさが生まれる。
「とてもいいコテージを取って頂き感謝感激雨あられです!」
「いいって、まぁ…コテージで数日過ごしてまたあのテントに行くから」
「はい!次こそは…!」
「つ・ぎ・こ・そ・は!ちゃんと騒がずに待つんだぞ」
部屋に運ばれた夕食を食べ終わりコテージのテラスで休んでいるお姉さまにジュースを持っていく。バスターマシンのコックピットから見た星空よりとても落ち着いた夜空が包んでくれる。
「眠いのか?」
「いいえ…、まだお姉さまとおしゃべりしていたいです…」
まぶたはどうしようもなく重くなって、
やがてゆっくりと、
ひび割れる音と共に、一日が終わっていく。
ピシッ…
なぜでしょうか、どうしてこんなにもドキドキするのでしょうか?
それはきっとお姉さまと一緒に過ごしているから?
きっとそうです!
「ノノ、おヤすみ」
「はい…」
「おやすみなさい、お姉さま…」
『事象の地平面からハルダウンを行っている状態のヤツの目に一撃を叩き込む、これがどれほど無謀な事かわかっているのか』
「はい、わかっております。」
『…では、お手並み拝見といこう''トップガン''』
『旧エグゼリオ軌道上にて変動重力点を観測!捉えました!』
『まだ生きていたか…』
『体が崩壊しながらも特異点から這い出てこようとは恐れ入る…』
『重力震上昇中!強制的にワープアウトしようとしています!』
『重力点の観測が不鮮明です!兵装の照準が全てブレています!』
『バジーレ、グラビトロン砲用意!』
『照準システムを全てキャトフバンドゥへ接続!』
『測距開始!』
『全砲門開け!』
『魚雷発射管準備!』
『全ての戦隊は総火力を持って陽動!援護せよ!』
『全軍突撃せよ!!』
「…?」
「どうしたんだノノ?」
「いえ、声が…」
「声…?」
辺りを見回しても人が居る様子は無い、気のせいだったのでしょうか?
「お姉さま!あっちにも!あれはどんな鳥ですか!?」
「わ!?あー!ほらまた逃げちゃったじゃないか!」
青い空、本当にどこまでも吸い込まれそうなこのそらを見た時の事は、まるで昨日のように。
『誤差修正!グラビトロン砲安全装置全て解除!』
「撃ぇー!!」
なぜ、昨日のように…?
ピシッ
「誤差0.08…!?」
『紙一重で仕留め損ねたか…!』
「次発装填!誤差修正急いで!」
『ダメです!冷却が間に合いません!』
『変動重力源がワープアウトします!!』
「ノノ?どうしたんだ?」
「また声が…」
「誰モ居ないッてば」
「本当ですか…?」
「本当に誰モ居ないよ」
「お姉さま?」
景色が歪む、まるで溶けた絵の具のように崩れていく、そして向こうからソレは私を掴んでいた。
まるで最期に見た憎悪の対象のような造形をしたその巨体を私は覚えている。
体が崩れても再生し、ソレは亀裂を作ろうとしていた。
『誰モ助けニは来ナいよ?』
『ダッテココハ、キミノトクイテンジャナイカ』
「ノノの特異点はお姉さまに捧げました!その特異点は…!!」
『キャトフバンドゥがロックを全て解除!』
『特設縮退路を全力運転してます!』
『冷却がまだ未完成だ!オーバーロードで自沈するぞ!』
『パイロット側から全ての信号を拒絶!』
『サイエンス少尉!何をしてる!!戻れ!!』
声が、聞こえます
おかしな話ですが宇宙空間なのに、これは重力に囚われてしまった電波なのでしょうか?
そして、懐かしい声も
「ぶつければまだ間に合うんだ!!届けぇぇえ!!」
まるで泥の中でもがいてるように体が動きません、重力井戸から這い出ようとしているソレの足場にされてしまっています
事象の地平面のヒビは大きくなっていきます
『ノノ』
また、声が…?
『ノノ、しっかりしろ』
「お姉、さま…?」
本物のお姉さまでは無いという事はすぐにわかりました
また幻覚を見せられているのでしょうか、しかしシステムエラーは無く思考はハッキリとしています
『ふーん、この世界の私はもう上がりを迎えたんだ』
「上がり…?」
しっとりとしたその笑顔を私は今後忘れる事が無いでしょう
ゆっくりと私の頬を撫でたその手は
『ありがとう、こっちはノノがずっと居てくれたから私は怖くなかったんだ』
『だからさ!』
『飛ぼう!ノノ!』
差し出された手を確かに握る、感覚はある、伝わってくる感情も、頭の中に流れ込んでくる。
その世界はドゥーズミーユとラルクのトップレスだけで宇宙怪獣を再びブラックホールに叩き込もうとした。
内惑星系地球最終防衛戦
質量不足のドゥーズミーユとそこへワープアウトした出力不足の太陽系絶対防衛システムの集合体。
その世界のラルクは、私の特異点になってくれた。
だから、私は応えた。
「ありがとう、ラルク」
『重力点のブレが酷くなっています!』
『なんだあれは…』
「まさか…!」
それまでブレていた点はたった今ハッキリと画面に表示される。
点が2つ、事象の地平面から出ようとする点とその向こう側にもう1つ。
『…あの巨体を引きずり込むのか』
『7号サルベージは、現時点を持って作戦失効が妥当かと、これ以上の重力深度では特異点での崩壊は免れません』
「まだ、まだ終わってない!!私が奇跡を起こせば!!」
『むしろこの瞬間に7号が再起動した事こそ奇跡だと思います』
「ノノ…!!」
『''トップガン''直ちに帰還してください』
『重力震微弱!震度尚も低下中!』
『事象の地平面も観測不可能です!』
『変動重力点は識別困難に!』
『まもなく目標が消えます』
「どうしてなんだよ…」
『変動重力点消失!』
「いつも、私の先を行くじゃん、ノノ…!」
翌年、バスターマシン1号2号
及び
その搭乗者が帰還した
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