ウルトラマンクァーシー   作:晩舞龍

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蠕動怪獣ギリャム 登場


第壱話 開港

 千葉県に新設された素粒子研究所が爆発した。都市部や森林を吹き飛ばし、半径数mに及ぶ甚大な被害を発生させたその事故は、それ以上の災害を日本にもたらした。

 時空断裂によって発生した巨大な黒球は、その半分を地表に露出し爆発の跡をすっかり覆いつくしている。

 

 まるで漆黒のドームのように地面を覆いつくしたそれからは、見たこともない異形にて巨大な生命体が出現する。

 科学者たちが総意をあげて調査するも、それは果たして別の星か、はたまた別の世界と繋がっているのかさえ分からない。

 ただ、唯一の僥倖と言えることは、一番最初に現れたのが人類に友好的な存在……銀色の巨人であったことだろう。

 

 

 

 異世界との港とも言えるその黒球が最初にその役割を果たしたのは、事故から丸一日が経過した2027年8月3日正午のことだった。

 依然周辺住民の避難が続く中、瓦礫の山をかき分け逆走していく研究者集団の中に、若干20歳にして素粒子物理学の権威として称えられる俊才・クァーシー博士の姿もあった。

「これが、黒球……なんて大きさ」

 その巨大な威容を見上げる一行。

 黒球からさらに1km離れた地点から、大気の組成に変化が無いかや黒球の内部構造についての調査が始まる。

 しかしすぐに、大きな地響きによって作業は中断させられてしまう。

「地震か!?」

 機材を押さえながらクァーシー博士が叫ぶ。調査チームの一人が、黒球の中心を指さす。

「あちらの方向から振動が発生しています!」

 そして、黒球の中から、10mはあるかという巨大な脚が飛び出した。

 

「巨人……銀色の巨人だ」

 次いで胴体、腕、頭部……

 全身が銀色に包まれたヒューマノイドタイプの生命体が黒球より出現した。

 その全身は40mもあり、頭部の角が鋭くとがっている。

 巨人はゆっくりとした足取りで後ずさりするように、こちらに下がってくる。まるで、迫りくる何かを警戒するように。

 そして続くように、地響きの主たるもう一体の巨大生物が現れる。

 全身を小刻みに蠕動させながら進行する二足歩行の竜。首、上腕、下肢ともに巨人の数倍ほどの太さを持ち、さらに巨大な尾が地面を叩くたびに地響きを発生させる。頭部は鮫のように鋭角に尖り、小さな目は巨人を捕えている。

 全身は淡い褐色で、振動により熱を放っているのか周囲は陽炎が立っているかのようにぼやけて見える。

 

 巨人がその脚部に力をこめて飛び上がると、竜の頭部向けて飛び膝蹴りを放つ。竜はまともにそれを喰らってひるむが、その反動で尻尾を振りぬき反撃。

 巨人が反対方向に吹っ飛ばされる。

「グァァッ!」

 巨人の咆哮が大地に響く。

 

 

 転がりながら衝撃を殺し、すっくと立ちあがる巨人。その視線は常に竜をとらえて離さず、その隙を逃さない。自衛隊のヘリが現着し、そちらに意識を取られた竜。

 その一瞬で巨人は腕を十字に組み、全身のエネルギーを光波熱戦に変換して照射する。

 竜の頭部から尻尾までが一直線に薙ぎ払われ、中心部から爆発を起こす! 

 とっさに身を屈めた調査メンバーたちは、衝撃がこないことを不思議に思い目を開ける。

 竜の爆発の衝撃と残骸は、全て黒球に吸収されて消滅していたのだ。

 

 そして、巨人もまた黒球の中へと歩いて戻っていく。その背中を、クァーシー博士以下調査チームは、固唾を呑んで見送った。

 異世界とのファーストコンタクトは、意外なほどにあっけなく、そして何も分からないままに終了した。

 

 巨人の名称には第一発見グループのリーダーから名前を取り、「ウルトラマンクァーシー」と名付けられた。

 そして、巨大竜には「蠕動怪獣ギリャム」と。

 以後、人類を脅かす黒球からの脅威を "怪獣"と呼称し、人類は異世界の謎の巨人と共に長い防衛の戦いに身を投じていくことになる。

 




次回予告

二度目の怪獣の侵攻が発生。
黒球より現れる大蛇と、銀色の巨人が激突する裏で、クァーシー博士は巨人の正体に迫る。

第弐話 融合
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