生まれながらにして、この身には私という自己が上書きされていた。
「砂藤さん!おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
目を覚ましたとき、あまりの眩しさと身体の自由の効かなさからか、あふれる涙と叫び。
「志栄、よく頑張ってくれたね。」
今生における父親であろう、体格のいい男性が絞り出すように言う。
「良かった…力道…。」
今生における母親であろう、優しい目をした女性が私の頬を撫でる。
我が子の誕生を喜び、慈しむ。 そんな尊い当たり前を目にして私の心中は一つ。
―――申し訳ない―――それのみだ。
この世界は人口の8割が「個性」と呼ばれる、ある種の超常的な力に目覚める。それはものを触れずとも動かしたり、火を吹いたりと内容は様々である。しかしその力を扱うのはあくまで人であり、悪事に使うものを畏怖を込め「
私、砂藤力道が生まれてから3年の月日が経ち、この身にも個性が発現した。名前は「シュガードープ」―糖分を摂取することによる筋力上昇するという個性だ。医者には、ヒーロー向きの良い個性と言ってもらったが、この世界でヒーローとなる難しさは並大抵ではないだろうに随分と気安くいうのだと感じた。あちらから見れば頑是ない子供に見えるのだから無理もないが。
砂藤夫妻は私のような可愛げのない子供にも愛情深く接してくれる。母親はパティシエとして働いている為、母が休日の日には簡単なお菓子を作って渡した。父親は剣道の道場をしており、5歳の時そこに参加した。その他にもおおよそ孝行と言えることはしてきたが彼らには自身が愛すべき我が子に見えているだろうか。二人には報いなければならないと思いながらその方法が分からぬまま時は過ぎていく。
ウチ、耳郎響香から見て、砂藤力道は何とも真面目で変なヤツという第一印象だった。
「砂藤力道と申します。これから皆さんと机を並べ、学校生活を送れることを嬉しく思います。これから6年間よろしくお願い致します。」
小学1年生にしてはあまりにもド真面目な言い方に他の子はポカンとしている。その体格の良さもあってか本当に同い年かと疑ってしまった。ビミョーな空気を感じたのか教卓に立つ先生が次を促し、次の子が自己紹介しているのを聞き流しながら砂藤を観察する。
他の子の様に緊張したり、落ち着かず隣の席の子と話したりせず、太ももの上に手を置き、お手本のような姿勢で自己紹介を時々、頷きながら聞いている。ヘンなやつ、でもなんか初めてのタイプだ話しかけてみようか…。
次の休み時間、他の子が話している中、砂藤はさっきの自己紹介から変わらない姿勢でいた。
「砂藤くん、だよね?ウチ!耳郎響香。さっきの自己紹介すごかったね、なんか大人みたいだったね!」
あまり男子に君付けしないから慣れない言い方になってしまったがなるべく明るく話しかけてみる。
「はい、音楽が好きな耳郎さんでしたよね、存じております。先程の自己紹介はこの場にそぐわなかったでしょうか。」
なんというか家にあるお手伝いロボットAIに話しかけているような気分だ。砂藤はウチが黙っているのを察してか、続けて言う。
「…昔からそうなんです、なかなか皆さんとお話するのもうまく行かず…。」
いよいよ本気で同い年か怪しい物言いになってきた。昔からってウチらまだ小学生じゃん…なんだそれ…。こちらが黙っているのを何か悪いことでもしたんじゃないかと勘違いしたのか、先程より少し小さな声で謝りながら、大きい身体が縮こまっているのが最初の堂々とした自己紹介と比べて面白く感じた。
「ふっ!…アハハハ!なんだアンタ面白いね!」
なんか最初とえらくイメージが変わった男子―砂藤は少し困ったようにこっちを見ている。
「は、そのようなことは初めて言われましたが、耳郎さんに楽しんで頂き、良かったです。」
「耳郎でいいよ!砂藤、これからヨロシク!」
入学一日目からなんか面白いヤツと知り合えた!ウチの小学校生活のスタート幸先いいかも!
ウチ、耳郎響香の人生で長い付き合いとなる砂藤力道との出会いはここからだった。
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