遊戯王デュエルモンスターズGX ~新たな道を作る者たち~ 作:shin.
かなり期間が空いてしまい申し訳ありません。
その期間を埋めれるような内容のものを書けたかは
分かりませんが少しでも楽しんでいただけると幸いです。
それではどうぞ。
「「デュエル!!」」
二人の掛け声とともに始まる決闘。先行は研遊。
「俺のターン、ドロー!」
デッキからカードを引き抜いた研遊は、六枚の手札を見ながら戦略を考えていく。
「(マスター。相手はあの丸藤亮ですが、どう戦っていきますか?)」
研遊の背後に、さっきまで一緒に歩いていた騎士が姿を現し訊ねた。
「(『サフィア』か。正直に言うと、『サイバー・ドラゴン』相手に先行だったのは少し怖いな。とんでもない攻撃力で相手を吹き飛ばす印象が強すぎる)」
騎士の問いかけに、研遊は軽く笑いながら返した。元々、攻撃力が高いモンスターを操る丸藤亮。その攻撃力を『リミッター解除』や『パワー・ボンド』等で更に上げてくるのだ。恐怖を感じないという方が無理な話である。
「(ま、やれるだけやってみるさ。一緒に戦ってくれるだろ『サフィア』)」
「(勿論です!お供いたします、マスター!)」
蒼玉の騎士は、力強く頷き姿を消した。相棒の力強い言葉を聞いた研遊は小さく笑い、対戦相手である学園最強の男。丸藤亮を見据え、ターンを進めた。
「まずは手札を整える!俺は『手札断殺』を発動!お互いに手札を二枚選んで墓地へ送り、デッキから二枚ドローする!二枚墓地へ送って二枚ドロー!」
「俺も二枚墓地へ送り、二枚ドローする」
新しいカードを引いて研遊は小さく頷く。そして、一枚のカードを手に取り発動する。
「俺は『ジェムナイト・フュージョン』を発動!手札の『ジェムナイト・サフィア』と『ジェムナイト・オブシディア』で融合!慈愛の石よ、魔除けの石と共に我が身を守れ!融合召喚!聡明の騎士、『ジェムナイト・アクアマリナ』!!」
『ジェムナイト・アクアマリナ』
レベル6 DEF2600
現れたのは海の様な紺碧の鎧を纏った騎士。装備している盾を前に出し研遊を守ろうと佇んでいた。
「そして手札から墓地に行った『オブシディア』の効果で墓地の『サフィア』を復活させる!来い、『サフィア』!!」
『ジェムナイト・サフィア』
レベル4 DEF2100
墓地から蘇ったのは、先程まで研遊と話していた蒼玉の騎士。勢い良く現れ、研遊を守ろうと腕を交差し守りの態勢に入った。
「墓地の『ジェムナイト・フュージョン』の効果発動!墓地の『オブシディア』を除外し、手札に加える!俺はこれでターンエンド!」
亮 LP4000
研遊 LP4000
手札 三枚
場 『ジェムナイト・サフィア』
『ジェムナイト・アクアマリナ』
伏せ 無し
「ほう、守備力の高いモンスターを二体も並べたか」
研遊が出したモンスター達を見て、感心したように小さく驚くデュエルアカデミアの帝王。亮が研遊のデュエルを見たのは、入学試験の時に風隼との闘いのみである。しかし、その一回のデュエルを見て亮は確信していた。研遊は強い、と。だからこそ、自身の全力をぶつけようと笑みを浮かべた。
「(とりあえず、『サイバー・ドラゴン』の攻撃力には対抗できるモンスターを並べることが出来たけど……。二体のモンスターを並べたからって、いきなり『パワー・ボンド』とか使われたら流石に泣くぞ)」
しかし、当の研遊はというと亮の考えなど知らず、どのような攻撃が自身に降り掛かってくるのかを考え、勝手に恐怖を覚えていたのだった。
「では行くぞ。俺のターン、ドロー!」
亮の力強いターンの宣言を聞いて、研遊はグッと身構えた。
「俺は手札から『融合』を発動!!手札の『サイバー・ドラゴン』二体で融合を行う!」
「なっ!?いきなり来るのか!?」
「出でよ!!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!」
『サイバー・ツイン・ドラゴン』
レベル8 ATK 2800
現れたのは二つの首を持つ機械の白竜。その竜の持つ力は研遊のフィールドのモンスターを易々と超えている。
「更に俺は『強化支援メカ・ヘビーアーマー』を召喚!」
『強化支援メカ・ヘビーアーマー』
レベル3 ATK500
次に現れたのは、赤い戦闘機の様なモンスター。機械竜の隣に並び立ち、司令塔である亮の指示を待っているように見えた。
「そして、『アイアンドロー』を発動!自分フィールドに機械族が二体のみの場合、デッキからカードを二枚ドロー!このカードの発動後、俺はターン終了時まで一度しか、特殊召喚できなくなるがな」
亮は『アイアンドロー』のデメリットを話しながら、デッキから二枚カードを引き抜いた。
「(おいおい、マジか。早速『サイバー・ツイン』が出てくるのか。手札増強までしてるし。あと、『ヘビーアーマー』の効果って確か…)」
亮のプレイングを見ながら、研遊は静かに冷や汗をかいていた。
「『ヘビーアーマー』の効果発動!自分フィールドの機械族モンスターを対象に装備カード扱いとして装備できる!合体しろ、『ヘビーアーマー』!!」
亮の宣言を聞いて、赤い戦闘機は勢いよく飛び立ち、大きな音を立てながら戦闘機から装甲具へと姿を変え機械竜と合体した。
「『ヘビーアーマー』の効果だ!装備モンスターが破壊される場合に身代わりになる効果と相手は装備モンスターを効果の対象に取れない効果を持つ!」
「(くっ、せめて『アクアマリナ』の効果で『サイバー・ツイン』だけでもどうにかしたかったんだけどな。これじゃ、どうすることも出来ない)」
今の置かれた状況を見て研遊は顔をしかめた。『アクアマリナ』はフィールドから墓地へ送られた場合、相手フィールドのカード一枚をバウンスする効果を持つ。しかし、それは対象を取る効果であり、『ヘビーアーマー』を装備した『サイバー・ツイン』をバウンスすることは出来ない。
「行くぞ。俺は『サイバー・ツイン・ドラゴン』で『ジェムナイト・サフィア』に攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
亮の声を受けて機械竜が動き出し、向かって右の首が蒼玉の騎士を向いたかと思うと、その口から光球を吐き出し、蒼玉の騎士を跡形もなく吹き飛ばした。
「『サイバー・ツイン・ドラゴン』は二回の攻撃が出来る!次は『ジェムナイト・アクアマリナ』を攻撃だ!エヴォリューション・ツイン・バースト!第二打ぁ!!」
右の首に続き、左の首も藍玉の騎士の方を向き、口から光球を吐き、先程の騎士と同じ様に跡形もなく吹き飛ばした。
「くそっ!破壊され墓地へ送られた『アクアマリナ』の効果発動!相手フィールドのカードを一枚対象にとって手札に戻す!俺は『ヘビーアーマー』を対象に取り手札へ戻す!」
藍色の騎士がいた場所に藍色の小さな宝石が大量に現れ、機械竜に装備されている装甲に向かって飛んで行った。宝石が当たった衝撃で装甲は外れ姿を消し、亮の手札へと帰って行った。
「(あっさりと破壊されたな。まさか、いきなり『サイバー・ツイン』が来るとは思わなかった。でも、とりあえず攻撃は防げたか)」
研遊は、機械竜の攻撃が終了したことに、一安心し胸を撫で下ろしていたが、
「安心している様だが、まだ俺の攻撃は終わっていないぞ。手札から速攻魔法『融合解除』を発動!俺は『サイバー・ツイン』を対象に取り、融合デッキに戻す!そして、戻した融合モンスターの融合素材一組を墓地から特殊召喚する!甦れ、『サイバー・ドラゴン』!!」
『サイバー・ドラゴン』×2
レベル5 ATK2100
双頭の機械竜が分離し、二体の機械竜へと姿を変えた。
「なっ!?」
「二体の『サイバー・ドラゴン』で攻撃!エヴォリューション・バースト!!」
驚く研遊をよそに、亮は攻撃宣言を行い二体の機械竜は止めを刺すために光球を放った。
「っ!このまま終われるかぁ!!墓地から罠カード『光の護封霊剣』を除外し効果発動!相手はこのターン、ダイレクトアタックが出来なくなる!」
研遊は自身に向かってくる光球を防ぐため、墓地から一枚のカード抜き出した。それと同時に巨大な三本の剣が研遊のフィールドに突き刺さり、放たれた光球を防いだ。
「ほう、いつの間に……。そうか、『手札断殺』で墓地へ送った時か。では、バトルフェイズを終了する」
亮は自身の攻撃を防がれて驚いた様子だったが、冷静に状況を分析していた。一方、研遊の方は何とか攻撃を防げたことで、先程よりも深く胸を撫で下ろした。
「(あ、危なかった…。このカイザー、何考えてんだ。普通、後輩にいきなりワンターンキルしようとするかね)」
研遊は、この学園の帝王に対して、有り得ないといった表情を浮かべたが、当の帝王は研遊の表情に特に気付いた様子もなく、ターンを進めた。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
研遊 LP4000
亮 LP4000
手札 二枚
場 『サイバー・ドラゴン』×2
伏せ 一枚
「俺のターン、ドロー!」
自身のターンが回って来て、研遊は今の状況を見ながら戦略を考えていた。
「(さて、どうするか。『サイバー・ドラゴン』自体の攻撃力は正直そこまで高くはない。だから今一番破壊しないといけないのはあの伏せカードだ。……いや、カイザーって何のカードを伏せるんだ?雑な考えだけど、さっさと破壊させてもらう!)」
やることが決まった研遊は一呼吸おいて、手札から一枚のカードを手に取りターンを進めた。
「俺は『ジェムナイト・アンバー』を召喚!」
『ジェムナイト・アンバー』
レベル4 ATK1600
研遊のフィールドに現れたのは、琥珀の名を持つ雷の騎士。しかし、調子が出ていないのか、どこか覇気が無いようにも見えた。
「そして俺は装備魔法『スーペルヴィス』を『アンバー』に装備する!これにより『アンバー』は本来の力を取り戻す!」
研遊の宣言通り、雷の騎士は覇気を取り戻し、右手に電気の剣を作り上げ、左手からも電気を走らせていた。
「ほう、デュアルモンスターか。中々珍しいモンスターを使うな」
使用したモンスターと魔法カードを見ながら、亮は少し驚いた表情を浮かべた。
「本来の力を取り戻した『アンバー』の効果発動!一ターンに一度、手札の『ジェムナイト』カードを墓地へ送ることでゲームから除外されている自分のモンスターを手札に加えることが出来る!『ジェムナイト・フュージョン』を手札から捨てて、除外されている『オブシディア』を手札へ戻す!」
琥珀の騎士の体が淡く光り、その光が研遊の手札へと集まっていく。その光は一枚のカードへと姿を変えた。
「更に俺は『デュアルスパーク』を発動!レベル4のデュアルモンスターを生け贄にフィールドのカードを一枚対象に取り、そのカードを破壊する!『アンバー』を生け贄に捧げ、俺が破壊するのはそのセットカードだ!」
琥珀の騎士の体から雷が奔り、フィールドに伏せられているカードへ向かって行きそのカードを破壊した。破壊されたのは『聖なるバリア ‐ミラーフォース‐』だった。
「そして、俺はカードを一枚ドローする!(よし!いいカードを引けた!)」
「伏せカードを破壊しつつ、手札を補充したか」
「まだ終わりじゃない!墓地へ送られた『スーペルヴィス』の効果発動!墓地の通常モンスターを対象に取り、特殊召喚する!甦れ、『サフィア』!」
研遊のフィールドに先程破壊された騎士が勢いよく姿を現し、すぐに腕を交差し防御の態勢へと入った。
「そして、墓地に存在する『ジェムナイト・フュージョン』の効果で『ジェムナイト・エメラル』を除外し手札に戻す!」
「そのモンスターは……。そうか、そのモンスターも『手札断殺』の時に墓地へ送ったモンスターか」
このデュエルでまだ姿を見ていないモンスターの名前を聞いて不思議に思ったが、研遊が最初に使用した魔法カード思い出し納得した。
「俺はさっき引いた『吸光融合』を発動!デッキから『ジェムナイト』カードを手札に加える!『ジェムナイト・クォーツ』を手札に!そして、『クォーツ』を手札から捨てて効果発動!デッキから『フュージョン』永続魔法を自分フィールドにセットする!俺は『スキャッター・フュージョン』をセットする!」
研遊がデッキから一枚のカードを引き抜き自分フィールドにセットした。その様子を見て、亮は目を見開いて驚いた。
「『フュージョン』永続魔法をセットできるのか!」
「ええ。ただし、この効果を使用するとこのターンは融合デッキから『ジェムナイト』モンスターしか特殊召喚できなくなります」
「そうなのか。そうなると俺のデッキでは使えないな」
亮は自分自身も『未来融合‐フューチャー・フュージョン』を使用しているため、そのカードをサーチできる『クォーツ』の効果に驚いたが、そのカードを使う際の制約を聞いて少々残念そうな表情を浮かべた。その表情を見て、研遊は苦笑する。
「では、デュエルを続けます!セットした『スキャッター・フュージョン』を発動!このカードは相手フィールドにモンスターが存在するときに発動できます。デッキから融合素材を墓地へ送り、岩石族以外の『ジェムナイト』融合モンスターを融合召喚する!俺はデッキから『ジェムナイト・ラズリー』と『ジェムナイト・ガネット』を墓地へ送る!情熱の石よ、叡智の石と共に我が手中に勝利をもたらせ!融合召喚!勝利の騎士、『ジェムナイト・ルビーズ』!!」
『ジェムナイト・ルビーズ』
レベル6 ATK2500
研遊の声と共に現れたのは、巨大な斧を持った紅玉の騎士。目前の機械竜を倒そうとしっかりと敵を見据えていた。
「カードの効果で墓地へ送られた『ラズリー』の効果発動!墓地に存在する通常モンスターを手札に加える!俺は『ガネット』を手札に加える!そして、『ジェムナイト・フュージョン』発動!手札の『ガネット』と『オブシディア』で融合!情熱の石よ、魔除けの石と交わり、ここに新たな姿を現せ!融合召喚!気品の騎士、『ジェムナイト・ジルコニア』!」
『ジェムナイト・ジルコニア』
レベル8 ATK2900
次に現れたのは巨大な手甲を装備した騎士。先程現れた騎士と同じく、その手甲で機械竜を倒そうと両腕を構える。そして、研遊のターンはまだ続く。
「手札から墓地へ送られた『オブシディア』の効果発動!レベル4以下の通常モンスターを特殊召喚!甦れ、『ガネット』!」
「(苦戦しているようだな、研遊。大丈夫か?)」
現れた騎士が研遊の方を向き静かに尋ねる。その問いに対して研遊が答えようとすると、
「(大丈夫に決まっているだろう!我らがついているのだ!行くぞ『ガネット』!)」
最初に現れていた蒼玉の騎士にセリフを取られてしまった研遊は一瞬面食らったが、優しく微笑み小さく頷いた。
「(全く、頼りになる仲間たちだな。よろしく頼むぞ!!)」
研遊の言葉に二人の騎士は返事をしなかった。しかし、はっきりと力強く頷き相手を見据えた。
「墓地の『ジェムナイト・フュージョン』の効果で『ラズリー』を除外し手札に戻す!これで最後だ!『ジェムナイト・フュージョン』発動!フィールドの『ガネット』と『サフィア』で融合!情熱の石よ、慈愛の石と共に、ここに豊かな実りを生み出せ!融合召喚!繁栄の騎士、『ジェムナイト・マディラ』!」
『ジェムナイト・マディラ』
レベル7 ATK2200
二人の騎士が交わり、現れたのは燃え盛る溶岩をその身に流し、大剣を構える黄水晶の騎士。研遊のフィールドに三体の騎士が並び立ち、主君である研遊を勝利への道へ導こうとしていた。
「一ターンで三体も融合モンスターを並べたのか……」
一方、亮の方はと言うと、新入生である研遊が一ターンに三体もの融合モンスターを召喚したことに驚きを隠せずにいた。
「(遊城十代や須磨研遊、三沢大地に万丈目、それに明日香。今年の一年生は実力者揃いだな。彼らの存在はきっと翔にも良い刺激を与えてくれるだろう)」
今年の新入生に実力者が多い事、そして自身の弟にも成長のきっかけを与えてくれるであろうという事。驚きながらも新入生の彼らが切磋琢磨しながらこの学園で過ごしていくという事を予感し深く頷いていた。研遊は深く頷いた亮を見て、不思議に思いながらも自身のターンを進めていった。
「バトルフェイズ!『マディラ』で『サイバー・ドラゴン』に攻撃!マディラ・ブレイク!」
黄水晶の騎士が大剣を振るい、機械竜に切り掛かった。機械竜は抵抗する間もなく爆発しその身を散らせた。
亮 LP4000→3900
「次は『ジルコニア』でもう一体の『サイバー・ドラゴン』に攻撃!ジルコニア・インパクト!!」
名を宣言された騎士がその剛腕を振るい、機械竜を粉々に粉砕した。
亮 LP3900→3100
「最後は『ルビーズ』でダイレクトアタックだ!ルビー・ブレイクダウン!!」
赤い騎士が身の丈程ある斧を構え、この学園の帝王に向かってその斧を振り下ろした。振り下ろした衝撃で周囲には砂ぼこりが舞った。
亮 LP3100→600
「俺はこれでターンエンドです」
亮 LP600
研遊 LP4000
手札 0枚
場 『ジェムナイト・マディラ』
『ジェムナイト・ジルコニア』
『ジェムナイト・ルビーズ』
伏せ 無し
「俺のターン、ドロー!」
研遊は亮がデッキからカードを引き抜く様子を見て、グッと身体を身構えていた。
「(止めは刺せなかったか。こっちの場にはモンスターが三体並んでるって言っても伏せカードも手札も無いんだ。防御する手段がない状況でこのターンを凌ぐことが出来るか?)」
自身の身を守るすべがないことを考え冷や汗を流す研遊だった。一方、カイザーこと亮はと言うと、
「(ここまでライフポイントを削られたのは久しぶりだな。須磨研遊。彼の実力は相当高いな。ただ、一つだけ気になるのは……)」
亮は直感的ではあるが、自身の感じたこと口にした。
「須磨研遊!」
「は、はい!」
亮がどう動くのかを考えていた研遊は、急に名前を呼ばれ驚いた表情を浮かべ何事かと亮の方へ視線を送った。
「お前、本気でデュエルをしたか?」
「えっ」
亮の問いかけに研遊は更に驚いて目を見開いた。
「本気でデュエル……ですか?」
「ああ。いや、決して手を抜いていると言う訳では無いことは分かっている。しかし、何処か全力ではない……というより何処まで力を出して良いのかを探っている様に見えた。無論、俺の勘違いという事も考えられるが……」
亮の言葉を聞いて、研遊は顔をしかめる。何故ならば亮の言葉に思い当たる節があったからに他ならない。例えば、先程のターンで研遊は『クォーツ』で『スキャッター・フュージョン』をサーチしたが、もし『ブリリアント・フュージョン』をサーチして『ルビーズ』以外の『ジェムナイト』モンスター、例えば『ラピスラズリ』等を融合召喚していれば研遊が勝利した未来を掴んでいたのかもしれない。しかし、研遊はその未来を選ばず今の状況を選択した。その理由を告げるため、研遊はゆっくりと口を開いた。
「すいません、決して手を抜いていた訳では無いんです。俺は……カイザーとデュエルがしたかったんです」
「ふむ、どういうことだ?」
研遊の言葉に耳を傾けながら亮は尋ねた。
「タラレバの話にもなるので信じて貰えないかもしれないんですが、失礼を承知で言わせて頂きます。先程のターン、俺は『スキャッター・フュージョン』ではなく別の魔法カードをサーチしていれば恐らくですが俺が勝っていました」
研遊の言葉を聞いて、亮は「ほう」と小さく呟く。その様子は架空の話で怒っている訳では無く、どういう意味なのかを聞こうとしている様に見えた。
「でも俺はそんな一方的なデュエルをしたい訳じゃない。最初に言った通り、俺はカイザーに気分転換でデュエルをして貰いたくなった。そして、俺はカイザーとデュエルと言う名の会話をしたかったんだ」
研遊は絞り出すように言葉を紡いだ。亮は腕を組み研遊の言葉に耳を傾けた。
「でも、これはただの驕りだ。自分が勝てるからと言ってこんなことをするのは、相手に失礼だ。カイザー、謝って許されることでは無いかも知れない。だけど、このデュエルで気分転換をして欲しかったのは本当だ。それだけでも信じて欲しい」
研遊は言い終わると同時に深々と頭を下げた。元々、研遊は『ジェムナイト』のデッキを使用し、この学園で無双しようなどとは微塵も考えてはいない。寧ろ、この学園の生徒達と共に切磋琢磨し、学園生活を楽しもうと思っていた。それは前世では行えなかったこと。病気のせいで高校時代はイベントには殆ど参加できず、イベントの内容を仲の良い彼女から話してもらうことが多かった。だからこそ、研遊は十代達のイベントに首を突っ込み、自身が送れなかった青春を送ろうとしていた。
しかし、研遊のそんな話など相手からすれば知った事では無い。だから研遊は亮に向かって謝罪し頭を下げた。どんなことを言われるのだろうと研遊は恐れながら亮の言葉を待った。その様子を見ていた亮がゆっくりと口を開いた。
「悔しいな」
「………えっ」
亮の言葉を聞いて研遊は驚きながら顔を上げた。そして、亮の表情を見て更に驚くこととなった。亮の表情はと言うと、なんと笑みを浮かべていたのだった。
「カ、カイザー?今、悔しいって」
「ああ。確かにそう言ったぞ。悔しい、と」
研遊の問いかけに答えながらも、亮は笑顔を崩すことなく言葉を繋いだ。
「この学園で「カイザーだ」「帝王だ」と言われている俺が新入生相手に本気を出させることが出来なかったんだ。こんな悔しいことがあるか?」
「えっと、それは……」
「お前が俺の事を考えてデュエルをしてくれていたことなど十分伝わっている。良い気分転換になった。礼を言うぞ」
亮の言葉を聞いて研遊は開いた口が塞がらずポカンとしていると、その様子を見て亮はフッと笑った。
「デュエルを中断させてすまなかったな。ターンを進めるぞ」
「えっ、あ、はい!」
驚いていた研遊だったが、亮がターンを進め始めたことで再度身構えた。
「俺は『強欲な壺』を発動!デッキからカードを二枚ドロー!そして、『天使の施し』を発動!デッキからカードを三枚ドローし、二枚を墓地へ捨てる!まだだ!『貪欲な壺』を発動!墓地の『サイバー・ドラゴン』二体と『サイバー・ジラフ』『サイバー・ウロボロス』『サイバー・ラーヴァ』をデッキに戻し二枚ドロー!」
「(いやいやいや!どんだけドローするんだよ!『ジラフ』とかは『天使の施し』か『手札断殺』の時に墓地に送ってたんだろうけども!ドローカードを三枚も引き当てるとかどんな引きしてんだよ!!)」
次々とカードを引き抜く亮を見て研遊は顔を引きつらせていた。そして、研遊は最後にドローした二枚の内の一枚に亮が目を光らせていたのを見逃さなかった。
「ふむ、このカードを引いたか。まずは『プロト・サイバー・ドラゴン』を召喚!」
『プロト・サイバー・ドラゴン(サイバー・ドラゴン)』
レベル3 ATK1100
現れたのは先程の機械竜よりも一回り小さい黒い機械竜。その体からは黄色いコードが何本も伸びていた。
「そして俺は装備魔法『魔力の足枷』を『プロト・サイバー・ドラゴン』に装備する!」
「なっ!『魔力の足枷』!?」
亮が一枚の装備魔法を発動し、その装備魔法の名前を聞いて研遊は驚き耳を疑った。
「その様子から察するに、この装備魔法の効果は知っているようだな。『魔力の足枷』の効果により、このカードを装備したモンスターの攻撃力と守備力は1000ポイントダウンする!!」
亮が宣言すると同時に、不気味な顔が彫られた棘付きの鉄球が現れ、鉄球に繋がれていた鎖が機械竜の身体に巻き付いた。巻き付かれた機械竜は余程その鉄球が重たいのかダラリと項垂れるように首を下げた。
『プロト・サイバー・ドラゴン(サイバー・ドラゴン)』
ATK1100→100
「(自ら100にまで攻撃力を下げた…いや、500以下にするのが目的か!!)」
亮が今から行うコンボを察した研遊は、亮が次に使用すると思われる魔法カードを一枚思い浮かべた。その考えが正解か否かはすぐに答えが出た。
「攻撃力が下がった『プロト・サイバー・ドラゴン』を対象に『機械複製術』を発動!対象に取った攻撃力が500以下の同名モンスターを二体までデッキから特殊召喚する!」
「(やっぱり『機械複製術』だったか…。しかも『プロト・サイバー』は…)」
「『プロト・サイバー・ドラゴン』はフィールドに存在する限り『サイバー・ドラゴン』として扱う!よって俺はデッキから二体の『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚する!出でよ、『サイバー・ドラゴン』!!」
亮の宣言と共に現れた二体の機械竜。項垂れている機械竜とは対照的に敵である研遊をしっかりと見据えていた。
「これで最後だ!俺は『パワー・ボンド』を発動!」
「やっぱり引いてるよな…」
力強く宣言した亮を見て、研遊はやはりと小さく笑う。
「自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、機械族の融合モンスター一体を融合召喚する!『サイバー・ドラゴン』二体と『サイバー・ドラゴン』扱いの『プロト・サイバー・ドラゴン』で融合!出でよ、『サイバー・エンド・ドラゴン』!!」
『サイバー・エンド・ドラゴン』
レベル10 ATK4000
現れたのは三つの首を持つ巨大な機械竜。その竜を見上げながら研遊は目を見開いた。
「これが『サイバー・エンド』…。すげえ、何て迫力なんだ」
「『パワー・ボンド』の効果で融合召喚したモンスターの攻撃力は倍となる!よって、『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力は8000となる!」
『サイバー・エンド・ドラゴン』
ATK4000→8000
亮の言葉と同時に強い咆哮を上げる機械竜。その迫力に押され研遊は自然と後退った。そして今、いや『パワー・ボンド』の名前を聞いた時から自身の敗北を理解した。
「流石、カイザーだな。こんなモンスターを召喚してくるなんて。いや、あんなことを言った俺に召喚してくれるだなんて」
「何を言う。先程も言った通り良い気分転換になった」
「それは良かったです」
「次は全力のお前と戦うことを楽しみにしているぞ」
「ええ、次は負けませんよ」
互いに視線と笑みを送る二人。そして、亮は目を閉じた後、目を鋭く光らせ力強く宣言した。
「これで止めだ!!『サイバー・エンド・ドラゴン』で『ジェムナイト・ルビーズ』に攻撃!!エターナル・エヴォリューション・バースト!!」
機械竜の口元がバチバチと光を集めたかと思うと、三つの口から放たれた激しい光線が紅玉の騎士へと降り注いだ。騎士は抵抗もせず跡形もなく消し飛んだ。まるでその場には元々なにも無かったかのように。そして、その光線は本当の止めを刺すため、そのまま研遊へと向かっていった。
「っう、うわぁぁぁあぁぁぁ!!!!」
光線の衝撃に耐えきれず、研遊は後ろへと吹き飛ばされた。
LP4000→0
ピーーーーーー!!!!!!
研遊が仰向けになったと同時に腕に装着されたデュエルディスクから無慈悲な機械音が鳴り響いた。それは研遊の敗北を告げる先程も聞いた音だった。
いかがでしたでしょうか。
主人公が(この小説の時間軸で)1日に2度も敗北するという展開は正直悩みましたが、個人的にはこうなってよかったかなと思っています。
次回も現在執筆中です。更新頻度が遅いですが皆さんが少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。