遊戯王デュエルモンスターズGX ~新たな道を作る者たち~   作:shin.

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今回はデュエルはしません。
短いですが、会話パートになります。
それではどうぞ。


【第12話 敗北、そこから学ぶもの】

 機械竜の攻撃を受け、吹き飛ばされた研遊は目を閉じたまま大の字になり地面に寝そべっていた。小さく呼吸をすると土と僅かな潮の香りが鼻を擽り、優しい潮風が研遊の頬や顔を撫でた。ゆっくりと目を開くと、雲一つない晴天が目に映った。まるで先ほどの攻撃が雲まで吹き飛ばしたかのようにも思えた。そして、その青空は今の研遊の心境を表しているようだった。

 

「(空が青いなぁ…。それにしてもライフを一気に持って行かれたな。一応、ノーダメージだったってのに。いっその事、清々しいまである。……いや、ホントに気分がスッキリしてるな)」

 

 研遊が清々しい気持ちで空を眺めていると、

 

「おい、大丈夫か?」

 

 やや心配そうな声が研遊の耳に入ってきた。その声を聞いて研遊は上半身を起こすと、その止めを刺した張本人の丸藤亮が腕を組んでいた。

 

「すいません、あまりにも空が青くて眺めちゃってました」

 

 研遊は頭を掻きながらアハハと小さく笑い、服に着いた砂利を払いながらよいしょと立ち上がった。その表情は明るく晴れ晴れとしていた。

 

「そうか。確かに良い晴れ具合だ」

 

 研遊の言葉につられ亮は顔を上げ、空を眺めながら小さく笑う。

 

「気分転換になりましたか?」

「ああ、久しぶりに全力を出せた。改めて礼を言う」

 

 だが、亮は研遊に視線を向け笑いながら言葉を続けた。

 

「次は全力のお前と戦うことを楽しみにしているぞ」

「ええ、次は全力でお相手しますよ」

 

 二人は頷きながら自然と右手を差し出し、しっかりと握りあった。そして、いつかは分からないが、必ず再戦する事を約束しその手を離した。

 

「そうだ。カイザーはあの辺りに散歩に行った事はあります?」

 

 研遊はある事を思い出し、指を差しながら亮に尋ねた。亮は研遊が指を差す場所を見て少し考えた後、口を開いた。

 

「いや、あの周囲は行った事が無いな」

「海からの風はここがいいと思いますけど、海の景色ならあの辺りもお勧めです」

「そうなのか、近い内に行ってみるとしよう」

 

 亮の言葉を聞いて研遊は気付かれないように「よし」と小さく頷いた。

 

「じゃあ、俺は寮に戻ります」

「ああ、またな」

 

 亮が軽く手を振り返事をしたことを確認した研遊は、頭を下げた後くるりと踵を返しその場を離れた。

 

 しばらく歩みを進めていると、研遊の背後に二人の騎士が姿を現した。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「研遊殿…」

「おお、『ラピス』に『クリスタ』か」

 

 研遊は振り返り、現れた二人の騎士へ視線を送るが、二人の騎士はどこか落ち込んでいるように見えた。

 

「えっと、その、なんていうかね」

「ん?どうしたんだ?なんか元気がないぞ?」

「『ラピス』は研遊殿を心配しているのだ」

「心配?」

 

 研遊は水晶の騎士の言葉に首を傾げた。水晶の騎士は言いにくそうに言葉を続けた。

 

「研遊殿は先程のカイザーとのデュエルの前に、十代達とのデュエルでも敗北したであろう?一日で二度も敗北するなど、この世界に来てからは経験しておらぬからな」

「あー、確かにな」

 

 騎士の言葉に頷きながら返事をする研遊。騎士の言う通り、研遊はこの世界に来てから授業以外でも沢山デュエルを行なっており、その殆どのデュエルで白星を挙げていた。勿論、全く負けていないというわけでは無いのだが、それでも一日で二回も敗北するというのは、今日が初めてだった。尚且つ、先程のカイザーのデュエルではワンショットキルを浴びせられたのだ。故に研遊を見守ってきた騎士たちが心配になるのも無理もない話だったと言える。

 騎士の言葉を聞いた研遊は手を口へ運び、考えながらゆっくりと口を開いた。

 

「んー、確かに悔しいって気持ちはあるけど、落ち込んではいないよ。さっきも言った通り、結構スッキリしてるし」

「そうなの?」

「ほう?」

 

 二人の騎士は主人の言葉を聞いて首を傾げた。一応、落ち込んでいないことを知って安堵している様子でもあった。そして、研遊は二人の騎士の様子を見ながら話し始めた。

 

「なんていうかさ、俺ってこっちの世界に来てからあんまり本気でデュエルをしてなかった気がするんだよな。いや、極端に手を抜いていた訳じゃ無いんだけど、モブキャラたちならともかく、十代とデュエルしたら『ブリリアント』や『スキャッター』を使わなかったら負けたし、カイザーとのデュエルでいざ『スキャッター』を使っても負けたし。何ならギガントとのデュエルじゃ、負ける寸前まで追い込まれた。十代に負けた時、まだ本気を出さなくてもいいかなって思ってたけど、カイザーとのデュエルでハッキリした。俺は本気出さないと弱いんだって」

 

研遊は自身の気持ちを淡々と話し、二人の騎士は静かに研遊の言葉に耳を傾けていた。

 

「だから俺はもう迷わない。これからは本気でデュエルをしていく。そう決意を固めたからスッキリしてるんだよ。まあ、「本気出してないから負けた」って言ってる様なもんだから、かなりダサいんだけどね」

 

 そう言った研遊は苦笑いを浮かべた。その表情を見て水晶の騎士は口を開いた。

 

「研遊殿がそう決めたなら、拙者は何も言わぬよ。共に戦うのみだ」

 

 言い終わり「はっはっは」と笑う水晶の騎士。その横で瑪瑙の女騎士もゆっくりと口を開いた。

 

「もし、本気を出しても勝てない相手が出てきたらどうするの?」

 

 先ほどの騎士とは打って変わり、心配そうな声で尋ねる女騎士。その騎士の言葉を聞いて、研遊は女騎士の方を向き笑いながら答えた。

 

「その時は…そうだな。もっと強くなるさ。もちろん、皆と一緒にな。だからこれからも力を貸してくれよ『ラピス』。そして『クリスタ』もな」

 

 二人の騎士を交互に見ながら笑顔を向けた。瑪瑙の女騎士は一瞬ぽかんとしていたが、直ぐに笑顔を浮かべた。

 

「うん!私もお兄ちゃんと一緒に強くなる!」

「拙者もだ。共に腕を磨こうぞ」

 

 そう言った二人の声は明るく、最初のような不安そうな声は無くなっていた。研遊も二人の声を聞いて不安がなくなったことを感じ取り優しい笑みを浮かべた。

 

「さてと、今日はもう寮に戻ろうか。カイザーには翔が逃げ出すときの海岸を教えたし、明日そっちの方に向かってくれるだろ」

「ああ、だからさっき海岸の方を指差したのか」

 

 研遊の行動を疑問に思っていた水晶の騎士が、研遊の言葉を聞いて「なるほど」と納得した。

 

「明日はきっと、十代とカイザーがデュエルしてくれるだろ。あー楽しみ」

 

 恐らくではあるが、明日の海岸で主要の人物たちが行うデュエルを観戦できることを楽しみに思いながら研遊は寮へと歩みを進めたのだった。勿論、その道中は二人の騎士と他愛のない話をしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、俺はてっきり『ガネット』と『サフィア』が出てくるかと思ってたんだけど。あの二人はどうしたの?」

「あー、あの二人はだな……」

 

 研遊の疑問に、水晶の騎士はどう説明しようかと悩んでいる様子で言い淀んでいた。しかし、その様子を気にすることなく瑪瑙の女騎士が口を開いた。

 

「あの二人ならね、「あれだけ大見得を切っておいて勝たせることが出来なかった」って落ち込んでるよ。特に『サフィア』なんてキノコでも生えるんじゃないかってくらいウジウジしてるし。『ルマリン』が慰めてるけど、あそこまで落ち込んでるのを見たこと無くて、どう声を掛けようか迷ってたくらいだし」

「お、おう。そうなのか」

 

 女騎士の言葉を聞いて、水晶の騎士の様子に納得した研遊だった。そして、寮に帰ったら、落ち込む二人や慰めた騎士も交えて話をしようと心に決めたのであった。

 




追記のようなものですが、
寮では五人の精霊と主人公が仲良く談笑し
落ち込んでいた二人も元気になっています。
いつか、番外編のような感じで書けたらと思っています。

前回の話を投稿した所、
お気に入りに登録して頂いた方が
増えて密かに感激しています。
皆さま、本当にありがとうございます。
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