遊戯王デュエルモンスターズGX ~新たな道を作る者たち~ 作:shin.
かなり短いです。それではどうぞ。
ピーーーーーーー!!!!!
無機質な機械音が会場に響き渡り、そのデュエルが終了したことを知らせた。機械音が鳴り止み、会場内がシィィンと静寂に包まれた。
「(……あれ?何でこんなに静かなんだ?俺、勝ったよな?)」
研遊が疑問を抱きながら、十代と翔がいる待機所の方へ振り返ろうとした時だった。
「「「「「!!!!!!!!」」」」」
先ほどの静寂が噓のように、観客席からは喝采や拍手が響き渡った。研遊が響き渡る音に驚いていると、腰付近にドンッと衝撃を感じた。何事かと振り返るとそこには、翔が泣きながら研遊の腰に抱き着いていた。
「研遊くーん!!よかったよぉぉ!!」
涙を流しつつも称賛を送る翔の姿を見て、研遊は一瞬呆気に取られたがすぐに笑みを浮かべた。
「あぁ、勝ったぞ翔。ちゃんと見てたか?」
「見てたっすよぉぉぉ!!!」
翔は研遊の声を聞いて更に涙を流しながら抱き着こうとしたため、研遊は笑みを浮かべながら翔を引き剥がした。それと同時に十代が研遊の元へ駆け寄ってきた。
「やったな!ガッチャだ、研遊!!」
十代はいつもの決めポーズと決め台詞を研遊に向けて放った。勿論、デュエルに勝利した称賛と素晴らしいデュエルを見せてくれた事への感謝と二つの意味を込めて。
「ありがとな、十代」
研遊は十代の決めポーズにサムズアップをして返した。そして三人は互いに頷き合い握り拳をコツンと当てて勝利を祝った。
「研遊。勝って良かったんだなぁぁ!!」
「ホント、良かったわ。そして、凄いデュエルだった」
立ち上がったままの隼人は号泣し称賛の言葉を送りながら拍手をしていた。明日香の方も笑みを浮かべながら拍手をしていた。その眼には薄っすらと涙を浮かべていた。
「全く、大したものじゃないか。なぁ、宝石の融合使い」
別の観戦席では、研遊と同じラーイエローの制服を着た生徒、三沢大地が拍手を送りながら感心したように呟いた。
「十代だけでなく、彼のデッキもしっかり対策を練る必要があるな。ライバルが多すぎて困ったことだ」
苦言を漏らす言葉とは裏腹に、どんなカードやデッキでライバルたちを攻略していくのかを考えているその表情は、まるで難しい数式に挑む数学者のようで「難しい問題こそ解き甲斐がある」と言わんばかりにニヤリと笑みを浮かべていた。
「手札一枚からあの盤面か。恐れ入ったな」
また、別の観客席ではこの学園の帝王こと丸藤亮が腕を組み、先程のデュエルを冷静に分析していた。
「須磨研遊…。あれがお前の全力か?どちらにせよ、やはりあの時は全力を引き出せていなかったのか。いずれにしても、決着は付けねばなるまいな」
小さく笑みをこぼしながら「次はどんなデュエルが待っているのだろう」と研遊とのデュエルを心待ちにしている帝王だった。
「な…。ば、ばかな…プロデュエリストが一介の学生に敗れるだと…」
ほとんどの観客席で歓声や拍手が聞こえる中、倫理委員会の女性は目の前に起きた事を受け入れられず唖然としていた。それもそのはず。この女性は羽蛾が負ける事など全く考えていなかったからである。デュエルの前に発言していた通り、研遊がこのデュエルで敗北し、この学園から惨めな姿で去っていくというのが彼女のシナリオだった。だからこそ、このシナリオを確実なものとするために、プロデュエリストの中でも上位にランクインしている羽蛾に安くはない金額を支払い依頼したのだ。しかし、彼女の予想は外れ研遊が勝利を収めた。
「(有り得ない…有り得ない。有り得ない!!)」
そして、彼女はマイクを手に取り信じられない事を言い放った。
「待て!須磨研遊!!今のデュエルは無効だ!!」
彼女の言い放った言葉に、この会場にいる全ての人間が耳を疑った。そして、一斉に彼女の方へと視線を向けた。
「今のデュエルが無効?理由は何ですか?」
研遊は訳が分からず、当然の疑問を口にした。研遊の近くにいた十代と翔も言葉を発してはいなかったが、研遊の疑問にうんうんと頷いていた。また、観客席からも理由を求める声が多数上がっていた。
「り、理由は…。そうだ!イカサマだ!貴様、イカサマを行なっただろう!そうでなければ、貴様のような学生がプロデュエリストに勝てる訳がない!!」
「……はぁ?」
彼女の言葉に、研遊は呆れた顔を隠そうともせず「こいつは何を言ってるんだ」と言わんばかりに溜息をついた。また、会場内でも彼女の言葉を信じている者は殆どおらず、ざわざわとどよめき出していた。
「お前、やっぱりイカサマしてたのか!そうじゃなきゃ、この僕が負けるはずが無いんだ!」
「(イカサマについて、羽蛾から色々言われたくねえなぁ…。『エクゾディア』を船から捨てたり、人のデッキに勝手に『パラサイト』を忍ばせたりしたのはどこの誰だよ)」
いつの間にか立ち上がっていた羽蛾が彼女の言葉に便乗し研遊を指差していた。しかし、羽蛾の方へは目もくれず研遊は彼女を睨みながらゆっくりと口を開いた。
「そこまで言うならちゃんと証拠はあるんですか?まさかまた調べてもいないのに適当な事を言ってるんじゃないでしょうね?」
「う、五月蠅い!とにかく、貴様はイカサマをしたんだ!!だからこのデュエルは無効…」
「ちょっといいかね?」
今まで黙って成り行きを見ていた鮫島校長が、彼女の言葉を遮りゆっくりと口を開いた。そのことに会場にいた全員が驚き口を閉じた。
「私は須磨くんがイカサマをしたとは到底思えない。確かにこの制裁デュエルは退学が掛かっている。だから万が一、デュエルディスクに細工をしていた場合、警報が鳴るように入口に探知機を付けていただろう?最もそれを提案したのは倫理委員会ではなかったかな?私の記憶だとその警報が鳴った覚えは無いのだがね」
鮫島校長の言葉に会場内の人間は驚き、つい十代達や研遊が出てきた入口の方へと視線を向けた。当の研遊たちも後ろを向き入口の方を見ると、確かに普段ならば付いていない機械が入口の上の方に取り付けられていた。先程の会話からこの機械が探知機なのだと全員が理解した。
「(マジか。そんなことまでしてたのかよ。いやホント、倫理って何なんだ?)」
「だ、だがデュエルディスクに細工はせずともイカサマする方法はまだ」
「ほほう。それは一体どんな方法かな?この学園の中ではないが、過去にはリストバンドの中にカードを仕込んだり相手のデッキを盗み見る等、イカサマの方法は確認されている。しかし、須磨くんはリストバンドをしていないし、デュエル前には控室に居て相手のデッキを見たり触ったりすることも出来なかったはずだ」
「ぐ、ぐうぅぅ……」
校長の言葉に言葉を詰まらせる倫理委員会。また、会場内からも野次に近い抗議が聞こえ始めた。
「どう見ても只の言いがかりだー!」
「そうだそうだ―!」
「須磨がイカサマなんてするはず無いだろー!」
「適当な事言うなー!」
会場の抗議に口を開こうとする倫理委員会だったが、証拠や根拠もない思いついた言葉を言い放っただけのため、言葉を紡ぐことが出来ずただただ口をパクパクと動かすだけだった。その様子を見た校長が目を閉じた後、静かに目を開けて倫理委員会の方へ口を開いた。
「今の発言は只の言いがかりという事でよろしいですかな?先程の発言や行動は海馬社長へと報告させて頂きます」
「っ!そ、それは…」
「あとは、そちらで話をつけて下さい。さあ、貴女の役目は終わりです。ここから立ち去って下さい」
言い放った校長は「もう何も言う事は無い」と言わんばかりに、倫理委員会の方へは顔を向けず前を向いた。倫理委員会は何かを言おうとしたが、紡げる言葉などあるわけもなく、肩を落としながら踵を返し会場を後にした。その途中、研遊の方を睨みつけたが、当の本人は気付かない振りをして倫理委員会が会場から出ていく様子を見送った。出て行った事を確認した校長がマイクを手に取り口を開いた。
「さて。改めて十代くん、翔くん、須磨くん。制裁デュエルという名目だったが、素晴らしいデュエルを拝見させてもらいました。当然、退学の件は白紙です」
校長の言葉に会場からは拍手が鳴り響いた。その拍手を受けて十代と翔は照れたような笑みを浮かべ、その二人の様子を見て研遊も微笑ましく笑った。
「ですが、学園の規則を破ったのも事実です。三人には反省文を書いて提出して頂きます。それでこの件を完全に不問とします。いいですね」
「ええー!!マジかよー!」
校長はニコリと笑いながら三人に課題の提出を命じた。校長の言葉を聞いた十代はがっくりと膝から崩れ落ち、崩れ落ちた十代を見て翔はアワアワと焦りを見せていた。研遊は反省文の提出を求められる事は前世の記憶で知っていたため、特に慌てることはなく二人の様子を見て「やれやれ」と笑っていた。また、会場からも十代たちの様子を見てクスクスと笑い声が聞こえた。こうして三人の制裁デュエルは幕を下ろしたのだった。
後日、研遊は風隼に倫理委員会がどうなったのかをそれとなく尋ねた。結果だけを言うと、あの倫理委員会の女性はクビになったとのことだった。あの女性がクビになったのは原作には無い話だったが、今後の展開で倫理委員会が出てくることはない為、研遊は「まあ、いいか」と特に気にも留めず日常を過ごしていくのであった。
というわけで、ようやく制裁デュエルの話が終わりました。
ここまで長くなって申し訳ありません。
次の話も執筆中ですので、今しばらくお待ちください。
余談ですが、
研遊と同じように作者もあの女性というか
倫理委員会は嫌いです。