遊戯王デュエルモンスターズGX ~新たな道を作る者たち~ 作:shin.
今回も会話パートのみとなります。
制裁デュエルから数日経ったある日の放課後。研遊が自分の部屋へ帰る為、アカデミアの廊下を歩いている時だった。
「あ、いたいた!おーい、研遊!」
研遊は呼び止められたことに気付き振り返ると、十代が手を振りながら近づいてきた。
「おお、十代か。あれ、翔は一緒じゃないのか?」
普段、十代と翔は一緒にいることが多いため、てっきり翔も一緒にいるものだと思っていたが、十代の後ろにも翔の姿は見当たらず研遊は尋ねながら首を傾げた。
「ああ、翔は隼人と話があるとかで先に寮に戻ったんだ」
「そうなのか。それでどうしたんだ?」
「あのさ、前から聞こうと思ってたんだけど、研遊ってデュエルの精霊と一緒にいるよな?もしかして見えてるのか?」
十代は疑問を研遊に差し出しながら、自身の右肩付近を指差していた。そこには『ハネクリボー』が半透明の姿で現れており、研遊と目が合うと笑顔になり「クリクリー」と嬉しそうに鳴いた。
「あー…そうだな。十代、ちょっと場所を変えようか」
「おう、いいぜ」
研遊の提案に十代は頷き、二人は廊下を歩いた。そして、誰もいない教室を見つけ二人はその教室へ入っていった。
「さてと。さっきの質問の答えだけど、俺のデッキにはデュエルの精霊もいるし姿も見えている。だから、そこにいる『ハネクリボー』も見えてるよ」
研遊は空いている椅子に座りながら、先ほどの十代の質問に答えた。その回答に十代は「おおっ!」と目を輝かせ、隣を飛んでいる『ハネクリボー』も嬉しそうにクルクルと回っていた。
「やっぱり、そうだったんだな!この間、三人でデュエルした時とか制裁デュエルの時とかで研遊の背後に見えたからさ。もしかしたらと思ったんだ!」
「ま、そうは言っても俺が精霊を見れたり感じ取れるようになったのは、結構最近なんだけどな」
研遊の言葉に十代は「そうだったのか」と頷いた。そして、「それでさ」と十代は言葉を続けた。
「研遊と一緒にいる精霊って一人じゃないよな?最初に見たのは黄色い騎士みたいなヤツで、こないだのデュエルの時は鎧?っていうか甲冑?みたいなやつだったからさ」
「ああ。俺のデッキには五人の精霊がいるよ」
「五人!?そんなにいたのか!」
十代が驚いていると、研遊の後ろにその五人の精霊が姿を現した。ただ、突然現れたため、十代だけでなく研遊も驚き椅子から立ち上がった。
「うわっ!ビックリした!」
「何で研遊も驚いてるんだよ」
「いや、まさか出てくるとは思わなくて。声を掛けようかなって思ってた時だからつい…」
研遊は驚いたことを誤魔化すように、頬をポリポリと掻きながら椅子に座った。
「あっはっは!驚きすぎだぜ、大将」
「『ルマリン』!マスターを笑うんじゃない!」
「『サフィア』!おっきい声出さないで!」
「まあまあ、『ラピス』。落ち着くでござるよ」
現れた精霊たちは赤い騎士を除いてワイワイと話していた。その様子を見て赤い騎士は小さなため息をつき、十代の方を向いて口を開いた。
「十代、俺たちが研遊の精霊だ。今後ともよろしく頼む」
「ああ、よろしくな!それにしても沢山いるな。五人もいるなんて思わなかったぜ」
十代は未だに話している四人の精霊たちを見ながらしみじみと呟いた。その様子を見て赤い騎士は再度ため息をつき、研遊も「やれやれ」と苦笑した。
「(まぁ、五人が多いって言っても十代は後々『ネオス』や『ネオスペーシアン』が仲間になるし、ヨハンも七人の精霊を連れてるし、何なら万丈目には『おジャマ』だけじゃなく攻撃力0の色んな精霊が一緒になるしな)」
後の展開を知っている研遊にとって、自身と一緒にいる精霊たちの数を多いとは全く思っておらず、寧ろ十代達の方が精霊の数が多くなるため少ないかも知れないと感じている程だった。
その後、精霊たちを交えて研遊と十代はデッキのことや戦い方のこと、また授業の話など他愛のない話をしながら過ごしていた。そして、話が一段落着いたところで教室の扉がガラリと開いた。研遊と十代は開いた扉へ視線を向けると、そこには翔と隼人が立っていた。
「アニキ!こんなとこに居たんすか!探したっすよ!」
「研遊も一緒だったんだな。二人して何してたんだ?」
「いや、フツーに雑談してただけだよ。それよりどうしたんだ?」
「もうすぐ晩御飯の時間なのにアニキが帰って来ないから探しに来たんす!」
「ああ、もうそんなに時間が経ってたのか」
翔の言葉を聞いて研遊が窓の外へ目を向けると、日もだいぶ傾いており西日が教室をオレンジ色に染め上げていた。
「十代、そろそろ帰ろうか」
「ああ、また話そうぜ!またな、研遊!」
「また明日な。翔と隼人もまた明日」
十代の言葉に研遊は手を振りながら三人を見送った。三人の背中が見えなくなったことを確認し、研遊もクルリと踵を返しラーイエローの寮へと向かった。そして、夕食を済ませた後は、精霊たちと他愛のない話をしながら夜を過ごしていくのだった。
それからまた数日後、研遊は体育の授業に参加していた。その種目は野球でラーイエローの生徒とオシリスレッドの生徒が対戦をしていた。そして、主人公である十代は随分と調子が良いようで、バッターに立てばヒットを放ち、ピッチャーに立てばストライクを取り、誰の目にも絶好調なのは明らかだった。
「(流石、主人公だな。O谷選手もびっくりの二刀流じゃねえか。あれ?そういえば三沢のやつ、まだ来てないな)」
主人公の活躍ぶりを感心していた研遊だったが、ふと同じラーイエローの秀才である三沢大地の姿が見えない事に疑問を持ち、首を左右に振りながら周囲を見渡していた。
「(あっ、もしかして今日はあの話か?)」
研遊があることに気付いたと同時に、当の本人であるジャージ姿の三沢大地が現れ、慌てた様子で審判を務めている教師に向かって走って行った。
「すいません、遅くなりました」
謝罪する様子を見せた三沢に、教師は簡単な注意だけしてマウンドに三沢を立たせた。そして、バッターである十代とピッチャーである三沢が互いに闘志を燃やし笑みを浮かべていた。
「(ああ、間違いねえわ。今日、っていうか明日は『ウォーター・ドラゴン』の話か)」
ベンチに座り他の生徒を応援していた研遊は、当の二人が笑っている様子を見てポンと手を打った。
「(『ウォーター・ドラゴン』を見る機会って少ないんだよなあ。明日のデュエルと十代と三沢が戦う時ぐらいしか召喚されないしな。見逃さないようにしないと。ただ、それはそれとして)」
研遊は明日行われるであろうデュエルの事を考えながら首をひねらせていた。その理由はというと、
「(明日、万丈目が三沢のデッキを海に捨てちゃうんだよなあ)」
そう。明日、三沢は『ウォーター・ドラゴン』のデッキを使用し万丈目に勝利する。しかし、そこまでの過程で、万丈目は三沢のデッキを海に捨てるという行為を行なってしまう。実際、捨てられたカードは調整用のデッキであり捨てられても物語自体は進むため何ら問題はない。そして、万丈目の方も兄弟たちに圧を掛けられ、クロノスからもやや見放され気味となっている等のプレッシャーから耐え切れず、三沢のデッキを海に捨てしまう。つまり、万丈目側にも多少なりとも同情の余地はあるのだが、それが故に研遊は頭を悩ませていた。
「(正直、カードを海に捨てるなんてことやって欲しくない。万丈目の気持ちも分かるけど、流石にデュエリストとしてやってはいけない行為だと思うし。ただなぁ、仮に止めることが出来たとしたら物語がどうなるのかが分からないんだよなぁ)」
研遊は首を左右に捻り「うーん」と唸りながら頭を抱えていた。次の瞬間、カキーンとボールが打たれた音が鳴り響き、研遊はハッとして顔を上げると三沢がバッターボックスに立っており、十代が投げた球を綺麗に打ち返していた。そして、そのボールはクロノスの顔面に向かって飛んで行った。
「(ありゃ、考え過ぎて攻守が交代している事に気付かんかった。あと、綺麗に吹っ飛んだなクロノス先生)」
研遊はクロノスの方を向きながら、クロノスへ駆け寄っていく十代・三沢・翔の三人が視界に入り、四人のやり取りを見守っていた。左眼にボールが食い込んでいるクロノスが十代と翔を追い払い三沢に何かを話しかけていた。
「(明日のデュエルの事を話してるみたいだな。授業が終わったら三沢に話しかけてみるか)」
暫くすると授業の終わりを告げる鐘が鳴り響き、グランドにいた生徒たちは使用した道具などを片付け、更衣室の方へとゾロゾロと歩きだした。研遊も更衣室で着替えを済ませ、次の授業へ向かう途中で三沢を見つけ近付いて行った。
「お疲れ、三沢。野球も得意だなんて文武両道だな」
「研遊か。あれは計算で導き出しただけさ。だが、誉め言葉は受け取っておく」
三沢は褒められたことが嬉しかったのか、口角が上がっていた。研遊もその様子を見てニコリと笑った。
「そういえば、クロノス先生に何を言われてたんだ?」
研遊は話された内容自体は知っていたが、あくまでも「何も知らない」と言う体で三沢に尋ねた。尋ねられた三沢はと言うと、やや表情をしかめて言いにくそうに口を開いた。
「うーん、それに答えるのは後でもいいか?」
「ああ、大丈夫だぞ」
研遊は「構わない」と言った様子で頷いた。三沢は申し訳なさそうな表情を浮かべ「すまん」と小さく謝った。そして、何かを思いついたように研遊に尋ねた。
「そういえば、今日放課後は空いてるか?」
「特に予定はないぞ」
「じゃあ、研遊にもビッグバンを手伝ってもらおうかな」
「ビッグバン?」
「そう、ビッグバン」
ビッグバンという言葉に三沢はニコリと笑った。その言葉を聞いて研遊は「何の事だったかな」と首を傾げたが、「まあいいか」と思い直し手伝うことを了承した。そして、互いが選択した授業を受けるため、それぞれの教室へと足を運んだ。そして、研遊はその道中で「ああ、ビッグバンってペンキ塗りの事か」と思い出し、一人頷きながら授業を受けるため教室へと向かった。その後ろの廊下の方で、教室で嘲笑を浴びた万丈目が走り去っていったが、研遊は考え事していたこともあり気付くことは無かった。
放課後になり、研遊は一度自室へ戻り道具を置いてから三沢の部屋へ向かった。目的の部屋の前に立つと部屋の中からガシャンと大きな音が聞こえ、急いで扉を開けると部屋の中には顔や頭を白くした十代と三沢と翔の三人が笑いながらじゃれ合っていた。その様子を見て「楽しそうなことやってるな」と笑みを浮かべていると、十代が部屋に入ってきた研遊に気付き声を掛けた。
「お、研遊じゃないか。お前も呼ばれてたのか?」
「ああ。悪いな三沢、遅くなったみたいだな」
「いや、こっちも具体的な時間を言ってなかったんだ。来てくれてありがとう」
研遊の謝罪に顔を白くした三沢が「気にするな」と笑みを浮かべる。その様子を見て研遊は手を上げて返答し袖を捲った。
「で、俺はどこから塗ればいい?」
「研遊はこっちの方を頼む。まだ手付かずの状態なんだ」
「わかった」
研遊は三沢の指示を聞いて一つ頷き、未使用のハケと未開封のペンキ缶を手に持ち、三沢が指差した壁の方向かった。そして、そこから丁寧にハケを使い壁を白く塗り上げて行った。
部屋全体を塗り終えた四人は、シャワー室へ向かい身体に付いたペンキを落とし、身体を綺麗にしてからラーイエローの食堂へ向かった。そして、三沢は十代と翔に「手伝ってくれた礼だ」と言って食堂の料理を振舞った。当の二人は「うまい」と笑みを浮かべながら料理を食べ始め、その様子を見ながら研遊と三沢は顔を合わせニコリと笑った。
「研遊。お前も手伝ってくれたんだし、ご馳走するぞ?」
「いいよ。俺はここの寮生だからいつでも食べれるし。その分、この二人に振舞ってやってくれ」
「そうか。ただ、いつかお礼はさせてくれ。流石に申し訳ないからな」
「ありがとう。何か考えておくよ」
研遊の言葉に三沢は「わかった」と頷いた。研遊も頷き、カップに注がれたコーヒーを飲みながら料理を頬張る二人を眺めていた。ふと、料理を頬張っていた十代が「そういえば」と三沢に向かって話し始めた。
「三沢、クロノス先生に何を言われてたんだ?」
十代のセリフに三沢は少々顔をしかめた。翔は箸を止め十代の言葉に便乗するように「うんうん」と頷いていた。研遊は話の内容は知っていたため、三沢が話し始めるのをジッと待っていた。
「実はオベリスクブルーへの昇級の話が来てるんだ」
「そっか!三沢は勉強の方も優秀だし、試験の時も滅茶苦茶強かったもんな。オベリスクブルーは間違いないな!」
十代と翔は頷きながら三沢の昇級を喜んでいた。一方の三沢はと言うと、二人とは対照的に浮かない表情をしていた。その様子を眺めながら研遊は静かにコーヒーを啜った。
「(三沢も色々と思うところがあって悩んでるからな。ま、俺は明日のデュエルを楽しみにさせて貰うけどさ。ただなぁ…)」
研遊は三人に気付かれないように「ふぅ」と小さくため息をついた。
「(万丈目の件、どうしたもんかね…。決めた。とりあえず、万丈目が向かう岬へ行ってみよう。どうなるのかは…その時次第だな)」
やる事が決まり、研遊はカップに残ったコーヒーをグイっと飲み干し、静かに遠くを見つめていた。
食事を食べ終えた二人は、部屋のペンキが渇いていないからとレッド寮に三沢を招待した。三沢は拒否することなく「お邪魔するぞ」と笑みを浮かべながら了承した。研遊も二人から誘われたが、「やる事があるから」と申し訳なさそうに断ると、十代は「また今度、遊びに来いよ!」と特に気にする様子は見せず、三人はレッド寮へと向かっていった。研遊は三人に手を振り別れを告げた後、自室へ戻り少し早い時間にタイマーをセットして眠りについた。
ピピピピと無機質な音が研遊の部屋に鳴り響くと同時に、研遊はベッドからムクリと身体を起こし、簡単な身支度を済ませある場所へと足を運んだ。勿論その場所とは、万丈目が三沢のカードを捨てるあの岬であった。
研遊が目的地である岬へ行くと、万丈目が立っていた。研遊は「遅かったか?」と顔をしかめたが、万丈目は手に持ったカードの束をジッと睨みつけるように見ていた。三沢のカードがまだ無事だったことに安堵した研遊は、ゆっくりと万丈目に近づいて行った。万丈目は研遊に気付いておらず、目を瞑り歯を食いしばったかと思うと、目を開き手に持ったデッキを海へ投げ捨てようと腕を振りかぶった。
「やめろ万丈目!」
研遊は思わず万丈目の名前を叫び、万丈目がやろうとしている事を止めようとした。名前を呼ばれた本人は驚いた様子で振り被った手を止め、声のした方を向き目を見開いた。
「貴様は須磨研遊!なぜここに居る!?」
「そんなことはどうでもいい。万丈目、今何をしようとした?」
「そ、それは…」
「万丈目。それは三沢のデッキだろ?三沢に返しておくから、俺に預けてくれないか」
「な、なぜ貴様がそのことを!?」
研遊の言葉に更に驚く万丈目。万丈目は三沢のデッキを盗む時、周囲に人の目がないことを確認していたため、研遊の言葉に驚きを隠せなかった。しかし、直ぐに首を振り研遊を睨みつけた。
「いい加減な事を言うな!これは俺様のカードだ!」
「仮にそのカードがお前の物だとしても、いったい何をしようとしてたんだ。まさか海に捨てようだなって思ってないよな」
「ふん!俺のカードを何処に捨てようと俺の勝手だ!」
「万丈目。もし、お前にデュエリストとしての誇りや心があるならそんなことは言わないでくれ。デュエリストならカードを、いや共に戦う仲間を大事にしてくれ」
研遊は悲しそうな表情を浮かべ、懇願するように万丈目に訴えた。研遊の表情を見て万丈目も一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべたが、首を大きく左右に振り怒りの表情へと変わった。
「うるさい!話はそれだけか?なら俺様の前からとっとと消えろ!」
「…わかった。万丈目、デュエルだ。もし、お前が勝ったら俺は何も言わずにここから立ち去る。だが、俺が勝ったらそのカードは俺が貰う。元々、捨てる予定のカードなんだろ?なら俺が貰っても問題はないよな?」
研遊は提案しながらデュエルディスクを起動しデッキをセットした。万丈目も了承した様子でカードの束をポケットにしまった後、デッキを取り出しデュエルディスクにセットした。
「ふん!ラーイエローの貴様がエリートである俺に勝てると思うなよ!プロデュエリストに勝ったからと言って調子に乗るな!叩き潰してくれるわ!」
研遊は悲しそうな表情をしながら、万丈目は怒りの表情を浮かべながら対照的な思いを持つ二人のデュエルが始まった。
「「デュエル!!!」」
というわけで
次回は主人公と万丈目のデュエルです。
現在、執筆中ですので今しばらくお待ちください。
愚痴の様になりますが
会話パートがホントに難しいです。
心情や環境の様子などどうやったら
上手く書けるのか…。
語彙力が欲しいです。
お気に入り登録やしおりを活用して頂き
本当にありがとうございます。
増える度にいつも感謝しております。