遊戯王デュエルモンスターズGX ~新たな道を作る者たち~   作:shin.

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20話まで来ました。
今回もデュエルはせず日常パートとなります。

お暇な時に、お楽しみください。
それではどうぞ。


【第20話 友校デュエル】

 

 レイがデュエルアカデミアを去った数日後。会議室ではノース校との友校デュエルについての話し合いが行われていた。

 

「何故でスーノ!デュエルアカデミアノース校との友校デュエルニーハ、昨年と同じ様にシニョール・亮・丸藤が代表に決まっていたはずナノーネ!」

 

 「納得がいかない!」というように、クロノスが鮫島に対して抗議の意を表していた。しかし、当の鮫島は冷静に言葉を綴った。

 

「それが、向こうの代表が一年生だと言うんでなぁ。しかも、二人だ」

「一年生!?しかも二人!?」

「そう言う訳なので、こちらの代表も一年生の二人が良いだろうという事になってねぇ。どうだろう、丸藤くん」

「俺も構いません」

「うむ。では問題は誰を新しい代表にするかだ」

 

 鮫島が会議室にいる人物に「推薦する生徒はいるか?」という意味を含めた問いかけをした時だった。

 

「…遊城十代。そして、須磨研遊」

 

 話を聞いていた亮が、ポツリとある二人の名前を呟いた。その二人の名前を聞いて、その場にいる全員が驚いたりボソボソと名前を呟いたりしていた。

 

「彼らなら、面白いデュエルを見せてくれると思います」

「うむ、彼らなら実力も申し分ない」

 

 亮は小さな笑みを浮かべながら鮫島に提案した。亮の提案を聞いて鮫島も頷きながら納得した表情を浮かべた。しかし、クロノスはギリギリと歯を食いしばりながら嫌そうな表を浮かべていた。

 

「(嫌なノーネ!シニョール・須磨はともかくとして、ドロップアウトボーイが代表になるなンーテ!誰か代行できるノーハ……。ああ!)」

 

 クロノスは先程の表情とは打って変わり、ニヤリと笑いながら口を開いた。

 

「では私は、シニョール・須磨と三沢大地を推薦するノーネ!」

「ラーイエローの?」

 

 自身が担当するオベリスクブルーの生徒の名前を出さないクロノスに尋ねる鵜様に口を開いた鮫島だったが、クロノスはその様子を気にする事なくテーブルに乗り鮫島の方へと近付いて行った。

 

「三人を戦わせて、勝利数の多い生徒を代表に選ぶというのはどうでショーネ?」

「どう思う?丸藤くん」

 

 クロノスの圧に押されたのか、やや顔を引きつらせた鮫島が亮に尋ね、尋ねられた亮は静かに一度だけ大きく頷いた。それは、十代・三沢・研遊の三人による三つ巴の戦いが決定した瞬間でもあった。

 

 

 

 会議が行われている際、別の場所では無事にデュエルアカデミアに潜入した国崎康介というジャーナリストが更衣室に忍びこみ、ラーイエローの制服に袖を通していた。

 

 

 

 会議が行われた数時間後、とある教室で大徳寺がノース校とのデュエルで代表候補に選ばれた生徒が発表されていた。

 

「え、俺?」

「そうなのニャ。三人が戦って、勝利数の多い生徒が代表の生徒に選ばれるんだニャ」

 

 十代は自分を指差しながら驚きの表情を見せていた。大徳寺も十代・三沢・研遊の三人の顔を見ながら、つらつらと説明をしていた。そして、十代は研遊や三沢に視線を送り、ニカッと笑った。その笑顔につられ、三沢も研遊も笑って返した。

 

「いいデュエルを期待してるニャ」

 

 大徳寺は笑みを浮かべ伝えることは伝えたと、そのまま教室を去って行った。大徳寺が出て行った後、翔や隼人が十代に近づき興奮した様子で口を開いた。

 

「凄いよアニキ!学園の代表なんて!」

「今までオシリスレッドから代表が選ばれたことは無いんだな」

「へへっ……ん?」

 

 楽しそうに話す十代たちの元へ研遊と三沢が近づき、その事に気付いた十代が二人の方を向いた。

 

「三沢、案外早く戦う機会が来たな。研遊も制裁デュエルの時以来だな」

「そうだな。十代とは久々のデュエルだ。腕が鳴るな。三沢もだろ?」

「ああ、あれから俺は日夜研究を続けている。十代の『E・HERO』に研遊の『ジェムナイト』。それぞれに対抗できるデッキをな」

「できたのか!」

 

 三沢のセリフを聞いて、十代が興奮気味に立ち上がった。しかし、三沢は静かに首を横に振る。

 

「いや。だが、デュエルまでには間に合わせるさ」

「楽しみにしてるぜ」

 

 十代が拳を差し出すと、それに乗っかり三沢も拳を合わせた。

 

「三沢、俺も忘れるなよ?」

「勿論だとも」

 

 研遊は十代と同じように拳を差し出し、三沢も先程と同じように研遊の拳に自身の拳を合わせた。

 

「じゃあ、俺はデッキ作りに励むことにする。またな」

 

 三沢は手を振りながらその場を後にした。その場に残った四人は去っていく姿を見送りながら手を振った。

 

「三沢くんのデッキかぁ。どんなんだろ?」

「これはすごいデュエルになる予感がするぞぉ」

 

 翔と隼人が三沢のデッキや三沢とのデュエルを見ることが嬉しいのか声が弾んでいた。

 

「おいおい。俺も居るんだけどなあ…」

 

 翔と隼人の言葉を聞いて、研遊は「よよよ…」と悲しむフリをしながら二人に聞こえるように呟いた。その呟きを聞いて二人は慌てたように手を振った。

 

「も、もちろん、研遊くんの事も忘れてないっすよ!」

「そ、そうなんだな!それにしても…」

 

 隼人は弁明をしながら「うーん」と首を傾げた。その様子を見て三人は不思議に思い代表して十代が口を開いた。

 

「隼人、どうしたんだよ?」

「いや、代表が二人っていうのが気になったんだな。去年はカイザーが選ばれてノース校の生徒とデュエルしたんだけど。何で今年は二人なんだろ?」

 

 隼人の疑問に三人は「確かに」と頷いたが、その疑問の答えは出る訳もなく只々首をひねるばかりだった。

 

「ま、細かいことはいいじゃん!せっかく三沢や研遊とデュエルが出来るんだ!よし、さっそく帰ってデッキの調整だ!」

「そうだな。俺も帰ってデッキを見直そう」

「じゃあ、途中まで一緒に帰ろうぜ!」

 

 十代は力強く宣言した後、教室のドアの方へ歩き出した。三人も顔を見合わせて頷き合い十代の後を追った。その道中、十代達は他愛もない話をしながら、自身の寮へと歩みを進めていた。研遊は三人の背中を見ながら友校デュエルの事を考えていた。

 

「(まさか十代と三沢の戦いの話に、俺が選ばれるとは思ってもみなかったな。純粋に二人とデュエルができるのは嬉しいけど。ただ気になるのは、隼人も言った通り友校デュエルの相手が二人ってことなんだよな。二人のうち、一人は万丈目だと思うけど。もう一人は一体誰だ?)」

 

 研遊は答えの出ない問いを考えながら首を傾げていた。

 

 そう。デュエルアカデミアの代表を決める戦いで、十代と三沢がデュエルを行い、十代が勝利を収める。そして、ノース校の代表には万丈目が選ばれており、十代と万丈目が友校デュエルを行う。というのが、本来の話の流れである。しかし、原作とは違う流れを辿っている事に、研遊が驚きつつ疑問を持つのも無理はない話だった。

 

「(まあ、折角選ばれたんだ。頑張るとしますかね)」

 

 研遊は“これ以上考えても答えは出ない”と思い直し、気持ちを切り替えて代表戦に向けて頑張る事を心に決め、前にいる三人の会話に混ざり笑みを浮かべながら歩みを進めた。

 

 しばらく歩いていると、ラーイエローの制服を着た人物が目に入り、四人は歩みを止めた。その人物はオベリスクブルーの生徒に話しかけるも、相手にされずむしろ邪険に扱われ途方に暮れていた。

 

「なんだか、えらく年を食った生徒だなぁ」

「あれ!あの人は!」

「研遊?知ってる人なのか?」

「ああ、いや、えーっと…」

 

 研遊は翔の呟きを聞いて、改めてその人物を見た瞬間、ある事を思い出し驚きの声を上げた。その様子を見て隼人が尋ねたが、研遊は歯切れの悪い言葉しか出なかった。

 

「(あの人…確か国崎って人だったよな。デュエルアカデミアに潜入した元デュエリストのジャーナリスト。だけど、何でラーイエローの制服を着てるんだ?原作だったらオシリスレッドの制服を着てたはずだろ)」

 

 研遊は自分の知っている話と違うことに驚きを隠せずにいた。

 

 この国崎康介という人物は、先ほど研遊が思った通り、元デュエリストのジャーナリストである。元々はデュエリストとして輝かしい人生を送っていたが、強豪たちとのデュエルに敗北して以降はジャーナリストとして過ごしており、時には自身の知りえた情報を利用し相手を脅すような形で金銭を巻き上げたりすることもあった。この学園に潜入したのも、行方不明になった生徒が多数いる事を知り、そのことを記事や金銭にする為だった。しかし、十代達と触れ合い、更に明日行われる十代と三沢のデュエルを観戦し、負けそうな盤面でもデュエルを楽しむ十代を見たことで、かつてデュエルが好きだった頃の自分を思い出し気持ちを新たにして、この学園を去っていった。ただし、それ以降その姿を見る事は無かったのだが。

 

 ともかく、国崎が潜入したジャーナリストである事やラーイエローの制服を着ている事など、自分の知っている事と知らない事が同時に起きて混乱している研遊だった。隼人の疑問にどう答えようかと研遊が悩んでいると、

 

「あ!アニキ!」

 

 翔の声につられ研遊と隼人が十代の方へ視線を送ると、十代が国崎に近づいて行った。

 

「なぁ、あんた」

「!!や、やぁ……」

 

 十代の声に驚いた国崎は、引きつった笑顔を作り軽い挨拶で答えた。そんな国崎を十代はじっと見つめた後、ニヤリと笑った。

 

「分かった!オッサン、落第生なんだろ!どうにかギリギリでラーイエローを保ってるって感じか?」

「オ、オッサン!?ラーイエロー!?」

 

 十代の言葉に更に引きつった顔をする国崎だったが、十代は気にすることなく言葉を続けた。

 

「いいって、いいって!分かってるよ!頑張ればそのうち進級、そして卒業できるさ!諦めるなよ!」

 

 国崎の肩をポンポンと叩きながら励ましの言葉を送ったが、国崎は何のことか分からず、只々困惑するばかりだった。その様子を見て、研遊は思わず誰にも気付かれないようにクスリと笑った。そして、二人に向かって口を開いた。

 

「十代。折角だから今日はラーイエローの方で晩御飯食べるか?明日の為にしっかり精をつけておかないとな」

「おお!いいのか!」

「勿論だ。翔と隼人も来るだろ?」

「いいの!やったー!」

「それは嬉しいお誘いなんだな!」

 

 研遊の提案に三人は笑みを浮かべた。十代と翔は、以前三沢に食事を振舞われているため、「また食べられる!」と顔を見合わせていた。隼人は初めて他の寮の食事を食べる機会を得た事を喜んでいた。

 

「そちらも良かったら一緒に食べませんか?えーっと(流石に名前は知らない振りをした方が良いよな)」

「あ、あぁ。国崎。国崎康介だ(しまった!つい、本名を…)」

「国崎さんですね。国崎さんも一緒に食べましょう」

「お、おう。よろしく」

 

 動揺して本名を名乗ってしまい焦った表情を浮かべた国崎だったが、研遊は気にすることなく食事に誘い、国崎は戸惑いながらも了承した。

 

「じゃあ、行きますか」

「「「おー!!」」」

 

 研遊の言葉を聞いて、十代達は拳を上げて喜び、ラーイエローの食堂へ向かった。国崎は四人の後ろから付いて行き、その表情はやや険しいものだった。

 

 ラーイエローの食堂に着き、研遊は「注文してくるから席に座って待ってて」と四人に呼び掛けた。四人は頷き空いているテーブルに座り研遊を待った。しばらくして、五人分の食券を持った研遊がテーブルに座り一人ずつ食券を配った。

 

「食券に書かれた番号があそこのパネルに表示されるから、表示された人から食事を取りに行ってね」

 

 研遊が後ろにあるパネルを指差しながら説明し、四人は「わかった」という意味を込めて頷いた。待っている間、翔や隼人はやはり三沢の事が気になるのか、明日の事について話し始めた。

 

「三沢くんは一体どんなデッキで来るんだろう」

「彼の事だ。きっと十代や研遊のデッキを研究し尽くしているだろうな」

「アニキ、研遊くん」

 

 隼人のセリフに心配そうな表情を浮かべた翔は、二人の名前を呼んだ。しかし、当の十代はニカッと笑いながら口を開いた。

 

「三沢がどんなデッキで来ようと、俺はこいつらを信じる」

 

 十代は笑いながら、腰に装着しているデッキケースをポンポンと叩きながら答えた。その笑みにつられ、研遊も笑顔を作った。

 

「そうだな。俺も仲間たちと一緒に三沢や十代と楽しいデュエルをするだけだ。勿論、負ける気は無いけどな」

 

 研遊はデッキケースに手を添えながら答えた。その言葉を聞いて十代は口を開いた。

 

「おう。楽しいデュエルをしようぜ!俺の『E・HERO』達も、きっとワクワクしてるぜ!」

「二人らしいっすね」

「ああ」

 

研遊と十代の言葉を聞いて、翔や隼人も笑みを浮かべた。しかし、その一方で国崎は「やれやれ」といった表情で話を聞いていた。

 

「(フッ。ガキだな。それにしても『E・HERO』か。懐かしいな)」

 

 国崎は十代が話した『E・HERO』という単語を懐かしく感じていた。原作では詳しく語られていないが、国崎はフィールド魔法の『スカイスクレイパー』を使用したような描写が見られていた。つまり『E・HERO』を使用していた可能性が示唆されていた。勿論、あくまで可能性の話であるため、本当の所は不明だが、それでも『E・HERO』に何かしらの思い入れがあるのは確かだった。

 

「『E・HERO』か…」

 

 国崎は思わずポツリと呟いた。その呟きが聞こえた十代が、国崎の方へ視線を向けた。

 

「国崎さんも『E・HERO』が好きなのか?」

 

 十代は同志に出会えたことを喜ぶように、笑みを浮かべながら国崎に問いかけた。

 

「俺は……『E・HERO』なんか。デュエルなんか好きじゃない」

 

 国崎は一瞬だげ悲しそう表情をしたが、すぐにそっぽを向き不貞腐れたように答えた。

 

「えっ、じゃあ何でデュエルアカデミアに?」

 

 翔は国崎の言葉に首を傾げながら、当然の疑問を国崎に投げかけた。

 

「あっ、いやぁ、それは…デュエルに負けてばっかりで楽しくないなぁ…とか?」

 

 国崎は「しまった」と言わんばかりに、しどろもどろなりながら焦った表情を浮かべながら答えた。

 

「ああ。その気持ち、俺にはよく分かるんだな。俺も“自分はダメなんだ”って諦めてたから」

 

 国崎の言葉に隼人が「うんうん」と頷く。しかし、隼人は「でも」と言葉を続けた。

 

「十代のデュエルを見て“俺もまたやりたい!”って思えるようになったんだな!そして、研遊が繋いでくれた大原くんとの縁のおかげで“色んな絵を描きたい”って思ったんだな!」

 

 力強く前を向きながら答えた隼人を見て、十代と研遊は照れたように頬をポリポリと掻きながら笑みを浮かべた。

 

「隼人くん……。そうだよ!国崎さんもアニキや研遊くんのデュエルを見たらきっとワクワクするよ!丁度、学園代表決定デュエルがあるし!」

 

 隼人の様子を見て、翔はガッツポーズをしながら力強く国崎に説明した。しかし、国崎は「あ、ああ」と適当に返事をしただけで、あまり響いてはいないようだった。

 

「(フン。俺は、お遊びに付き合っている暇は無いんだよ。そうだ、こいつらなら何か知ってるかもしれないな)」

 

 国崎は当初の目的を思い出し、「なぁ」と四人に話を切り出した。

 

「ところで、噂で聞いたんだけど。学園の生徒が行方不明になってるってホントかなぁ?」

「幽霊寮のことか?」

 

 国崎の質問に、研遊以外の三人が顔を見合わせ、十代が口を開いた。十代の返答を聞いた国崎が、睨むように十代へ視線を送った。

 

「幽霊寮?」

「いやぁ、詳しい事は分かんないけど」

 

 十代は「へへっ」と誤魔化すように笑った。国崎は「いい情報が手に入った」と不敵な笑みを浮かべた。それと同時にモニターに五人の番号が表示され、研遊がパンッと手を叩いた。

 

「ほら。話もいいけど、腹ごしらえも大事だぞ。早速、取りに行こう」

「おお、待ってました!飯だ飯!」

「アニキ!急がなくても、ご飯は逃げないっすよ!」

 

 十代は食事を受け取るため、席を立って走り出した。俺を後ろから翔と隼人が追いかけ、研遊は座ったまま、国崎に向かって口を開いた。

 

「十代たちが戻って来てから、俺たちも取りに行きましょう。それでもいいですか?」

「あ、ああ。それで構わないよ」

 

 研遊の言葉に国崎は「うん」と頷く。しばらくして十代達が戻り、研遊は「先に食べてて良いから」と言葉を残し、国崎と一緒に食事を取りに行った。研遊と国崎が席に戻ると、三人が美味しそうな表情を浮かべながら食事をしており、特に隼人はよっぽど美味しかったのか、涙目になりながら料理を口に運んでいた。研遊と国崎も席に座り料理を食べ始めた。

 全員が食事を食べ終わり、十代達はレッド寮へと帰って行った。帰る前に隼人は「研遊、本当にありがとう!美味しかったんだな!」と、研遊の両手を固く握り締めながらお礼を言った。

 

 そして、今現在。国崎は当然、ラーイエローの生徒では無いので、「どうしたものか」と首を捻りながら、研遊の後ろをついて行った。研遊も国崎の事情を知っているので「助け舟を出すか」と国崎の方を向き口を開いた。

 

「国崎さん、部屋はどこですか?」

「あー、俺の部屋は…。えーっと…」

「もしかして、今掃除とか模様替え中で入れないんですか?」

「そ、そうなんだよ!」

「なら、今晩は俺の部屋に泊まりますか?勿論、国崎さんが良ければですが」

「それはありがたい!お邪魔させてもらうぜ」

 

 国崎は「渡りに船だ」と言わんばかりに、研遊の提案を了承した。研遊は一つ頷き、自身の部屋へ国崎を案内した。しばらくして、研遊の部屋の前に辿り着いた。

 

「さ、遠慮せずどうぞ。ただ、ベッドは一つしかないので国崎さんは布団で寝て頂きまずが」

「いやいや、布団で構わないさ。ありがとさん」

 

 国崎は手を合わせながら研遊にお礼を言った。研遊は頷き、国崎の寝る布団を敷いた。

 

「さて、と。国崎さんは今から幽霊寮に行くんですか?」

「ええ!?いやぁ、どうしようかな」

 

 研遊は椅子に座り国崎の方を向きながら尋ねた。突然尋ねられた国崎は誤魔化すように「あはは」と笑いながら答えた。

 

「行くのは止めませんが、気を付けて下さいね。幽霊寮は、一応立ち入り禁止区域になってるんで」

「随分と詳しいじゃないか」

「ま、俺も十代も幽霊寮に忍び込んだせいで、ペナルティを食らいましたからね。だから、オススメはしません」

「お、おう。そうなのか(大人しそうに見えたけど、意外とヤンチャなのか?)」

 

 国崎は、研遊の事を先程の三人と比べると大分大人しい印象を持っており、ペナルティを食らったという事に少々驚いた。驚く国崎をよそに、研遊は「そういえば」と口を開いた。

 

「さっき、翔も言ってましたけど、明日のデュエルを観戦するのはおススメしますよ」

「えっ」

「まあ、俺もデュエルするんで俺の方はあまり自信はありませんが。でも少なくとも十代と三沢のデュエルは見て損はないと思います」

「…そうなのか。ま、気が向いたら見る事にするよ」

「ええ、是非とも。じゃ、俺は少しデッキを見直します。国崎さんは好きなタイミングで寝て下さい。気になるなら電気を消しても良いですよ」

「ああ。俺はちょっとトイレに行ってくる。そっちも俺の事は気にせず寝てくれ」

「分かりました(幽霊寮に行くんだな)」

 

 国崎の動向を察した研遊は軽く頷き、国崎の方も手を挙げて返事をしながら部屋を出て行った。国崎が出て行った事を確認し、研遊は机の方を向き直り、机の上にカードを広げた。

 

「さてと。十代は兎も角、三沢とのデュエルか。一体、どんなデッキでくるんだ?」

 

 研遊は、カードを見ながら三沢のデッキの事を考えた。十代は良くも悪くも『E・HERO』のデッキで来るのは間違いないため、ある意味いつも通りに戦えば良いというのが研遊の考えだった。だが、問題は三沢の方である。三沢はデッキを複数所持している。六つの属性をテーマにしたデッキ。そして、原作でも使用した対十代用の七番目のデッキ。もしかしたら、研遊に対応するために八つ目のデッキを作成している可能性も決してゼロではない。少なくとも、研遊のデッキに対策を練ってくることは間違いない。

 

「十代には融合封じとして『封魔の呪印』を使うからな。俺もギガントに使われたから、あのカードの厄介さは身に染みて分かってる。まあ、『スキャッター・フュージョン』か『ブリリアント・フュージョン』を使えばどうにかなる…か?一応『パーティカル・フュージョン』も『吸光融合』もあるから融合ができないってことは無いだろうけど」

 

 研遊は首を捻りながら、戦い方を考えていた。どうしたものかと考えていると、仲間である騎士たちが研遊の背後に姿を現した。現れた事を感じ取った研遊は、椅子に座ったまま振り返り騎士たちの方を向いた。

 

「おっ。皆、出てきたのか」

「うん!お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 姿を現した騎士たちに、研遊は笑みを浮かべながら答えた。研遊の返事に元気良く答えた女騎士がトコトコと歩きながら近づき声を掛けた。

 

「うん?大丈夫って?」

「研遊が大分悩んでいる様だったからな」

「まあ相手はあの三沢だからな。大将も頭を悩ませるか」

 

 研遊が首を傾げていると、その理由を二人の騎士が代わりに答えた。その答えを聞いて研遊は「なるほど」と一つ頷いた。

 

「そういうことか。いや、ある意味で三沢の相手って難しいんだよな。対策はしてくるだろうし、もしかしたら原作にも出てきてないカードを使う可能性だってあるしな。ただ、万が一だけど『ウォーター・ドラゴン』に対を成す炎の龍が出てきたら流石にテンションは上がる」

「未だに、あの龍の正体は分かっておらぬからなぁ」

「マスターの気持ちも分からなくはありませんね」

 

 研遊の言葉に「うんうん」と頷く騎士たち。その様子を見て研遊は小さく笑った。

 

「まあ、俺はいつも通り楽しいデュエルをするだけだ。皆、明日もよろしくな」

 

 研遊が放った言葉を聞いて、騎士たちは大きく頷き姿を消した。研遊は机の方へ向き直り、広げたカードを集め束となったカードを大事そうにデッキケースへと仕舞った。そして、部屋の電気を消しベッドへと潜り込んだ。暗い天井を見ながら、研遊は静かに今日の出来事や明日の事を考え始めた。

 

「(今日は驚いたことがいくつかあったな。代表戦に選ばれた事もだけど、まさか国崎さんがラーイエローの制服を着ているとは。それにノース校の代表が二人っていうのも原作と違う点だ。一体、誰が出るんだろうか)」

 

「うーん」と考える研遊だったが、先程と同じく答えなど出るはずもなかった。そして、徐々に瞼が下がり、眠気が研遊を襲った。

 

「(この際だ。色んなことを楽しもう。明日のデュエルもノース校の代表も誰が来るのかも楽しみだし。その代表の選手とも仲良くなれると良いな)」

 

 研遊は、様々の事を楽しみに思いながら眠りについた。その数十分後、明日香からの警告を受け取ったり幽霊寮の写真を撮ったりした国崎が研遊の部屋へ戻って来た。研遊が寝ている事を確認し、起こさないように静かに布団へ潜った。

 

「(明日は、この学園のコンピューターに繋いで調べてみるか。面白いネタが出てきそうだぜ)」

 

 国崎は「くっくっく」と声を殺しながら静かに笑った。そして、ふとこの部屋を出る前に研遊が言っていた言葉を思い出していた。

 

「(明日のデュエルは観て損はない…か。俺はもうデュエル何でまっぴらごめんだが…)」

 

 国崎が後ろを振り向くと、視線の先には静かに寝息を立てる研遊が目に映った。

 

「(部屋を貸してくれた恩もあるし…。時間があったら見てやるか)」

 

 国崎は誤魔化すように視線を外し眠りについた。しばらくすると、二つの寝息がこの部屋から聞こえてきたのだった。

 

 

 

 レッド寮のとある部屋で、十代は笑みを浮かべながら眠っていた。まるで、明日に行われるデュエルを「ワクワクして楽しみだ」と言っているように。

 

 イエロー寮のとある部屋では、三沢がパソコンの明かりに照らされながら様々なカードを調べていた。時折、手が止まり「このカードは使える」と不敵な笑みを浮かべていた。まるで、「明日の勝利は貰った」と言っているように。

 

 別のイエロー寮の部屋では、研遊は静かに寝息を立てていた。その様子はまるで、「どんな結果になっても、俺は楽しんで受け入れていく」と言っているように。

 

 それぞれの思いを胸に宿し、夜は更けていった。決戦は、明日―――。

 




ようやく友校デュエルの手前まで来ました。

実際の遊戯王GⅩでも21~22が
三沢と十代のデュエルなので丁度いいかなと思います。
同じくらいの話数になったのは、ただの偶然ですが。

今回も読んで頂き、ありがとうございます。
引き続き、頑張って執筆していきますので
何卒よろしくお願いします。

また、しおりを活用して頂いたり
お気に入り登録して頂いたりした方々
本当にありがとうぞさいます。
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