アオハル要素薄くてごめんなさい……。
でもBBQはアオハルですよね……?
次からは濃度上げます許してください。
「それにしてもさぁ、これはヤバいって」
「…………何がだ真白」
ガタイの良い黒服の大男──字面だけみたら堅気じゃないねコレ──と、木張りの古めかしい廊下を歩いて行く。その大男は俺自身の恩師である夜蛾正道だ。
「というか、焚き付けたのはお前だろう」
「ここまでデカいとは思わなかったって話ですよ」
大穴と更地。そんな写真ばかりの資料を見て、ため息を吐いた。
五条悟と夏油傑のガチ喧嘩。反転術式を習得した五条悟は、無下限呪術の常時発動というやべーことをし始めたらしい。この時点で俺や九十九でも勝ちの線が薄いんですが。一方夏油傑は、暫く休んだ後に幾つかの任務をこなして呪霊操術への理解を深めていったとか。どんなことができるかは知らないけど。
「おかげで胃が痛いんだ。……だが、傑の件。本当にありがとう」
「特級術師になってもやはり教え子ですもんね。けど、夏油だからって思っちゃいましたか」
天井を見上げる俺と対象的に、俯く夜蛾さん。夏油は溜め込むタイプのようだから、気づくのが遅れても仕方あるまい。
「運が良かった。九十九が来て、夏油が目に見えて揺れてなきゃこうはならなかった」
「……だな。本当にその通りだ。お陰で夏油も吹っ切れたようだ」
吹っ切れた……かは知らないが、諦めてはいない。五条悟が割り切った最強なら、夏油傑は欲張りな最強であろうとしている。五条悟に出来ないことを唯一できるのはやはり夏油傑しかいない。
「まあ今後は溜まれば喧嘩するだけでしょう。ただ──」
「特級といっても、悟には五条家があるが傑には非術師の親がいる。後ろ盾がないのは問題だ」
上は容赦なく狙うだろう。五条悟だけでも厄介なのに、同年代の親友までも同レベルの特級術師なのだ。今の特級術師は3人。とはいえ、九十九は高専を離れてふらついてるし、五条悟は五条家当主だし、夏油だけが何もない。
「どうするつもりです? 夜蛾さんじゃ出来ないでしょ」
「悟の力は──傑が拒むだろうか」
「必要なら受け入れると思いますけどね。理性と感情が喧嘩して、どっちが勝つか」
対等に立ちたいという思いが強いからこそ。夜蛾さんは夏油傑の心を先に考える。──アイツらはホント、運がいいな。
「それで、結局どーしたんだ?」
「夏油が折れたよ。暫くは五条家が後ろ盾になるそうだ。御三家だし、爺どもだってそう簡単に手出しできないだろうさ」
今ならお持ち帰りでお得、なんていう謳い文句に引き寄せられて買い込んだピザで、ビール片手に優勝──。そのはずだったのに。
「というか何でいるの?」
「たまたま」
んな訳あるかい。仮にも一般人だぞ俺は。ストーカーかよ重たすぎr「ガンッ!」……ハイ。
「ぷはっ、人ん家で飲むビールは美味いね!」
「……はぁ。暇なの?」
「んな訳。でも折角見つけたんだ、昔話に花を咲かせようじゃないか」
ケリをつけたと分かっているから、こいつは容赦なく昔の話をしてくる。遠慮のなさすぎる距離感がどうにも懐かしい。今日日の同僚は何か距離感あるからなぁ。
とはいえ、昔話はやはり殺伐としているし、コイツの場合は呪霊と戦ってどうのこうのばかり。一方の俺も、学校教員や医者などとして働いたときの四方山話をするのがせいぜい。しかしコイツにはそんな普通の話が面白いのか、その日俺はなかなか寝かせてもらえなかったのだった。
「で? もう大丈夫なのかよ」
「ええ、言いたいこと言い合って、今はもう溜まるものはないかと」
それは良かった。まだ思うことはあるが、少なくとも五条悟に対してそれは無くなったということらしい。
そんな俺は、またしても夜蛾さんの頼みによってその結果を高専までわざわざ届けに来ている。郵送でダメなんですか。
「しばらくの間、九十九のやつがちょこちょこ任務を代行してくれるそうだ。高専嫌いのアイツが高専からの任務を受けるの、珍しいんだ。感謝しとけよ〜」
「頼んだ覚えはないですし押し付けたの貴方なんですが……。まぁ、礼はしたいと思います」
夏油は言葉遣いが丁寧なだけで、その本質は五条悟と何ら変わらない。強者の立場で傲慢。この2人を尻に敷く女子がいるってマジ? 別の意味で特級だろ。
「守るべき、大切なもの──。非術師が猿に見えてきてて、何もかもを取り零すところでした。今はただ、貴方に感謝を」
「そりゃどういたしまして。──にしても非術師が猿、ねぇ。どうやら余程追い込まれていたらしいな」
恥ずかしながら、と頭を掻く夏油。その顔色は前よりも血色が良くなっていた。
非術師が猿、というのは言い方こそ極端かも知れないが、強ち間違ってもいないと思う。見えない故に恐れ、見えてしまうが故に排斥される。一部の術師に見られる悲運な出自だが、夏油にしてみれば守ると決めた存在に掌を返されたような感覚だったのか。術師としての正義感が強い、それが夜蛾さんから聞かされた夏油の印象だった。それが裏目になっていたのだ。
「みんながみんな、そうとは限らない。けど一度そう思い始めたら──」
「すべてがそう見えて仕方が無かった。何度も何度も自問自答して覚悟を決めても、猿の不愉快な面はそれを揺るがせてくる」
少し素が漏れてるが、過去のことになったから口にできるのだろう。今の夏油傑は、正しいと思える白の中にいる。もう、誤ることもないだろう。
「守るべきものは見えました。増えることはあっても、もう見失うことも取り零すこともしません」
「──いい顔になったよホント。お前が俺みたいに折れないことを祈る。周りに頼っていけよ夏油。人は1人に耐えられないように出来てるんだ。例え特級でもな」
「肝に銘じておきますよ」
特級術師・夏油傑。呪霊操術を持つフィジカルゴリラ。まだまだ進化の余地ありだ。
──俺は果たして子供の未来と青春を、少しでも守ってやる事ができただろうか。
呪術師から身を引いても、未だ恩師の背中を追い続ける自分を振り返って、そんなことを思った。
「それはそうと、悟のポケットマネーで豪華食材闇バーベキューやるんですけど来ますか?」
「何それ絶対行く」
特級術師たちによる闇BBQ(豪華食材から駄菓子まで)
作者が菌糸類好きなのでやっぱり文中に「──」多い。