九「戻るの?」白「戻らん」   作:けし

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理子ちゃん声がつくともっと可愛いなと思った最新話でした。
あとアオハル成分()


五「まだまだだね」夏「また君は……」

 

「結局星漿体との同化はしたのか? 天元様ってのは」

「さぁ。私の知ったことじゃない」

 

 ほむほむとハンバーガーを口に含む九十九は、心底どうでも良いという口ぶりでそう言った。

 元・星漿体。それに誇りも何もあったものではないが、目の前の女は抗う力があった。術師としての才能を見出されながらもその結末は決まりきっていたはずの少女は、今こうして目の前でジャンクフードをもっしゃもっしゃ。指についたソースをペロリと舐めとる仕草は確かに色気に溢れている──が、忘れるなかれ。この女、九十九由基は史上稀に見るゴリラなのだ。

 

「妙なこと考えたろう」

「キッツいからやめろその仕草」

「お前を殺す」

 

 やろうと思えばマジにやれるから全然冗談になってない。是非とも落ち着いてもらいたい。

 

「さておき、聞く必要あった? それ」

「別にいいでしょ。というかなんでここで俺とお前はメシ食ってんの?」

「今更だね」

 

 全くもってその通りだが、こうも特級術師様とエンカウントするのはおかしいって話。夜蛾さん言ってたけど、お前あちこち飛び回ってるじゃん。連絡もつかんって言うし。高専嫌いなのは仕方ないとして、せめて夜蛾さんくらいと連絡はして差し上げろ。

 

「ヤダよ。ホントは君が高専に寄るのも嫌なんだ」

「それこそ知ったことじゃないよ。というか俺は夜蛾さんの手伝いやらされてんの」

「あんな事があったのにか?」

 

 手が、止まる。

 食べかけのハンバーガーをトレーに置いて、ため息を吐いていた。

 

「終わったことだ。蒸し返すなよ」

「……ごめん、少し興奮してたみたいだ」

 

 踏ん切りはついた事だ。とはいえ術師同士の酒の席で話しても笑い話になってはくれないくらいには悲劇的なので、この話を知っているのは九十九と夜蛾さんだけのはずだ。

 少しだけ申し訳なさそうにする九十九から目を切り、一度置いたバーガーを食べ切ってしまう。セットでつけたコーヒーの苦味が思いの外強かったから、それが少しだけ顔に出ていたらしい。九十九が腹の立つ顔で笑っていた。

 

「つくづく、なんというか。とんでもないクラスだよねアレ」

「全くだ。凄まじい巡り合わせだよ」

 

 2人分のトレーを片付けてきた九十九が戻ってきて、そんなことを言ってきた。

 同級生がいたら幸運。呪術高専はそのレベルで人が集まらない。高専に通うのはほとんどが一般あがりの人間で、元々関わりのあるやつが来ることは少ないと聞く。そんな中で集まった3人がコレなのだ。

 家入硝子、夏油傑、五条悟。それぞれ、天然の反転術式使い、呪霊操術使い、六眼と無下限の抱き合わせ。五条悟に至っては存在が歴史上稀に見るレアイベントみたいなもの。そしてそれと対等に渡り合う一般上がりもおかしい。何ならこの2人を従えてるのが家入硝子な時点でヤバい。

 

「流石の天与呪縛も、彼等には勝てなかったかぁ」

「禪院甚爾だったっけ? 呪力ゼロってのもすげーな」

 

 呪力が無いから却って呪霊が見えるって、どういう論理なんでしょうかね。呪いはいつもいつでも摩訶不思議なものだ。天与呪縛のフィジカルギフテッドとはいうが、呪いありきのあの世界で生きることはできなかったってことなんだろう。九十九が伏黒だよとかいう注釈を加えたが、それはどーでもいいことだ。

 

「一度五条悟を殺しかけたらしいんだけどね」

「なんかヤベー呪具とか使ったんじゃねーの?」

「天逆鉾使われたらしい」

「な〜る」

 

 術式の強制解除なんて食らえばそりゃやりたい放題されるか。

 

「君なら、どう攻略する?」

 

 興味あります、とかいう目を向けてくる九十九。面倒くさいし、時間も頃合いになったので俺は無視して席を立った。

 

「答えないの?」

「たらればの話は無駄だろ。敵対予定もなければ、そもそも闘うこともないしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呪術高専東京校。総監はこちら側にあって、京都の方は御三家の支配が強め。とはいえ対外的には私立の宗教系学校なのでがっつり干渉するのは難しく、主に任務の斡旋で上の連中は学生を動かそうとする。

 

「子供の頃はそんなの知ったことじゃないものな」

 

 流れる任務をこなしてこなして。死なないように祓っていく。特級術師は上の連中にも中々手に負えないから何とかして枷をはめたがるもので、知ったことではないと言いつつも嫌らしい任務に辟易とすることは多かった。

 重たい鉄の扉は体育館のもの。金だけはあるので設備は割と綺麗なのだ。その扉の奥からドムドム、キュッキュと音が聞こえてくる。

 ズ……と開くと、2on2のバスケットボールが行われていた。

 

「あー! また負けたぁ」

「ふ、まだまだだね」

「悟、また漫画の影響受けたね?」

「王子様なんてガラじゃねーだろクズ1号」

「はあぁ!? 王子様できますしぃ! 御三家の御曹司ですしぃ!」

「これバスケなんですが……」

 

 何ともまあ、微笑ましいというかなんというか。人数多いと賑やかなものだと、自分の学生時代の虚しさを思い出しながらそう思った。……というか皆作品知ってんのな。

 

「おや、如月さんじゃないですか。どうしたんですか?」

 

 俺のことに気づいた夏油が、やり遂げたような顔で声をかけてくる。初顔の人間に五条悟たちは神妙そうな顔をするが、それ以外の2人はハッとした顔を見せた。

 

「傑、誰こいつ?」

「初めて見る顔だ〜」

「七海、あの人って」

「多分間違いないです」

 

 四者四様の反応。誰だコイツ感が凄い五条悟たちと、もしかしてみたいなことを言う下級生たち。──ってか下級生の方はもしかしなくてもあの時死にかけてた子たちかな。

 

「あ、あの!」

 

 黒髪の好青年……いささか幼さを覚える元気いっぱいの子が、確信なさげにそう話しかけてきた。

 

「どした?」

「貴方は、あの時僕たちを助けてくれた人……ですよね!」

 

 眩しい。眩しいぞ。良い子過ぎる。なるほど夏油たちが可愛がるはずだと、内心で納得した。一般上がりでもここまでスレてないのは貴重だ。なにせ夏油傑と家入硝子がコレなんだもの、呪術界で純真な後輩は絶滅危惧種だろう。

 そんな子たちの質問──半ば断定されてるが──に、俺は肯定の意を返した。隠す意味もないし。

 

「やっぱり! そうだったよ七海!」

「……あの時は、本当にありがとうございました。貴方がいなければ今頃」

「あーいや、そういうのナシにしよう。感謝は受け取った。それだけで充分だよ」

 

 さっきも言ったが、たらればの話は無駄なのだ。重たい話は好きじゃないし。

 

「七海、それどういう任務だった?」

「あれは間違いなく一級案件でした。土地神が転化した呪いだったんです」

「産土神っていうやつらしいです! 死にかけました!」

 

 あっはっはと明るく笑う灰原とは対象的に、七海や夏油たちの表情は暗い。そりゃそうだと、むしろこの状況で笑う灰原くんのヤバさに呆れる。

 

「それを如月さんが祓った、と」

「たまたまね。今のお前らでもそこそこ苦戦すると思うよ」

 

 術式持ちで、さらには領域も使う。特級案件になってもおかしくないレベルだ。8割方上層部の嫌がらせじゃないかな。昔やられた記憶あるわ。

 五条や夏油たちが俯き、重苦しい空気が流れる。こういう空気は苦手なんだが、どうも原因に思い当たる節があったのかもしれない。ただでさえ首輪をかけられない奴らなんだ。周りから削ろうとするのは当然だろう。

 

「ま、今こうして楽しくやってるし、過ぎたことは忘れろ」

 

 そういうと、ヨシと切り替えた五条悟が、ゴールに振り返りざまのロングレンジ3Pシュートを打ち放った。バスケをよく知らない俺ですら美しいと思うループを描いて決まった。

 

「ソイツの言う通りだろ、癪だけど。傑は気にしすぎなんだって」

「気にしすぎだって? 逆に聞くけど悟、君は気にも留めないのか?」

「あぁ?」

 

 火に油だったかな……。テンポ良く注がれる油に簡単に火がついて、気がつけば消火不能である。五条と夏油は、よく見れば細かい傷が残っている。喧嘩したばかりで場所や人目を少しは弁えたのか、対決手段は1on1になっていた。──術式使うのは反則だろうと、そう思ったりはしたけども。

 

「あのクズどもは置いておいて、何か用があるんですか?」

「見かけただけ。だけどまあ、気分転換にはいいだろう」

「??」

 

 特級案件は九十九が身を粉にして処理してくれているので、時間的に余裕があるはずだ。ならばと、一枚のチラシを家入に見せた。

 

「今なら暇だろ?」

「へぇ。……五条に夏油!」

 

 やはり影のドンか、家入硝子。プライドが高い高いしている2人も、家入にだけは素直に従う。

 

「「祭り?」」

 

 そうやって話し合うこと数分、テンション上がり気味の3人は体育館から去っていった。五条だけ少し困惑気味だったんだけど。縁日初めて? 肩の力抜こうか。

 

「最強の2人は子どもじゃあいられないからな。今のうちに楽しんでおくといい」

「七海! 縁日行く?」

「いや、私は……」

「行こっか!」

 

 ズルズルと引き摺られる七海と、ワクワク顔の灰原。七海は単純に休みたそうだが、まあたまにはいいんじゃないだろうか。

 

「……そういや、久しく行ってないなぁ」

 

 青い春は誰にでもあるが、彩る思い出は人それぞれ。

 最強となる彼らに、せめて幸せなひと時であるようにと、俺は1人となった体育館の入り口で祈ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 





次回『五条悟、初めての縁日』

恐らくテニプリはこの時代にはまだ連載とかされてないと思いますが許してください()
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