午前の授業が終わると、徐に夜蛾先生は告げた。
「授業が終わったら、傑は教務室に来るように」
「ウケるww」
「始末書頑張れよwww」
私は、呼び出しを受けてしまった。悟と硝子は完全に面白がっている。
まあ、真夜中に警報鳴らしちゃったしな……。仕方ないか。
覚悟を決めて教務室に行くと、思いの外心配された。
「傑、何か悩みはないか。寝ぼけていたとはいえ、呪詛師とは何事だ」
「違うんです、先生」
私は、悟や硝子に話していた事を話した。
「ふむ……悟」
ドアに向かって呼びかけると、心配していたらしい悟と硝子が顔を出した。
「どう思う?」
「呪力に乱れはねーよ」
「そうか……。ただの夢であればいいが、気になるな……」
「なんだよ、夜蛾セン」
「おそらくそのうちわかる」
なんだか気になる話の切り方をして、思い出せる限りの事を話すように言われた。
と言っても、話せることなんて殆どないんだけど。
それから、任務に出る。
久々に、廃墟で3人揃っての任務である。
「でもさ。夏油って強いじゃん?」
「なんだい? 藪から棒だね」
「いや、夏油が呪詛師になったら、始末に行かされるの、間違いなく悟だよなーって」
「傑、絶対呪詛師になるなよ!」
「ならないよ! なりたいわけないじゃないか!」
そうやってお喋りしながら任務をこなし、帰りに3人で浴衣を買う。
帰った所で、それぞれ部屋で浴衣に着替え、いざ、お祭りに出陣!
「すぐる! 金魚掬いやろうぜ!」
「それ、飼えるの? 悟」
「食堂の所に水槽置いて、みんなで育てればなんとか?」
「うっわ他力本願!」
「いいじゃん。私も世話するよ。夏油もするよね?」
「仕方ないね」
それから、いっぱい金魚を掬ってストップを掛けたり。
皆んなで、わたあめを食べたり。
焼きそばやりんご飴を食べたり。
射的をしたり。型抜きをしたり。
楽しい時間を過ごす事ができた。
悟の浴衣は格好良かったし、硝子の浴衣は可愛かったし。
食べ物は美味しくて、楽しいことをいっぱいした。
この時、私は心から笑えていたと思う。
でも、心のどこかで、気づいてもいた。これの終わりは必ず来ると。
帰り道、呪専までの道を車で揺られていると、その時が来たことを私は悟った。
「あれ? 傑! 泣いてんの!?」
「あ、ほんとだ」
ボロボロと涙が溢れるのを手のひらで受け止める。
「悟。硝子。帰りたくない。帰りたくないよ……」
「傑?」
わかる。7月7日、24時。それが、シンデレラの鐘の鳴る時間。
「傑!」
「悟。硝子。私の事、止めてくれないか。〇〇村、そして〇〇村。美々子と菜々子、利久を助けてほしい」
そうして、悟と硝子をぎゅっと抱きしめる。
ああ、時計の針が。24時を指す。
そして、私を覆う短冊が全て弾けて、7月8日になった。
私は、呆然としたままで森の中で仰向けで倒れていた。
呪霊は消えていた。逃げられてしまったようだ。全く歯が立たなかったともいう。
「……儚い夢だったな。だけど、いい夢だった」
そうして、私は帰路についた。