さしすの七夕   作:かりん2022

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後編

帰路についた私の道を塞いだのは、悟と硝子だった。

 

「すーぐーる。何してんの?」

「悟。私を殺しに来たのかい?」

 

それならそれでいい。この幸せな空気の残滓を纏ったまま、死にたかった。

 

「そうだよ」

「いいよ、おいで」

 

 私が微笑むと、悟は顔を顰めた。

 

「お前、ほんっと! そういうとこ! で? 昨日までの傑はどうなったわけ?」

「昨日までの私?」

「お前、一昨日何してた?」

 

 私は過去を思い返す。

 

 一昨日? 当然 授業/説法をしていた。

 

 私は目を見開く。

 

 おかしい、記憶が二つある。

 

「バカな。記憶が二つある」

「そうだよ。夏油せーんせ♪」

 

 ドクン。悟に呼ばれて、私の心臓が脈打って、昨日までの私と私の結合が行われていく。

 倒れ込む私を、悟は受け止めた。

 

「お前、ろくな情報残さねーからさ。俺ら、めちゃくちゃ頑張ったんだぜ? 俺も硝子も。お前も!」

「じゃあ、私は本当に過去まで遡ったって事か? そんな事があるわけ……」

「あったんだから仕方ねーだろ。じゃあ傑。早いとこ帰るぞ」

「帰れないよ」

「あ?」

「私は一度君を裏切ったんだ、どんな顔して帰れるんだよ」

「お前は裏切ってない。俺らが止めた」

「でも悟」

「傑。もう大丈夫。だから、帰ろうぜ」

 

 そう言って、悟は私をギュッと抱きしめた。

 

「子供達も待ってる」

「なんて?」

「利久と美々子と奈々子と津美紀と恵」

「あ、ああ。なるほど。そうだね」

「それと私も! 私もいるから!」

 

 自分をアピールする硝子に、私は笑った。

 

「もちろん、硝子にも会いたかったよ」

 

 そうして手を伸ばして、少し躊躇って、その手をきつく握られる。

 

「「おかえり!」」

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年前。七夕の次の日。

 

「悟! 硝子! なんで起こしてくれなかったんだ!?」

「は?」

「七夕祭りがあったのに! 一緒に行く約束してたのに! 起こしてくれなかったなんて! 起きたら七夕じゃなくて8日だった私の気持ちを考えた!?」

「いや、行ったっつの。お前めっちゃ焼きそば食ってたし。射的したし」

「金魚も取ってきたぞ」

「何それ、記憶にないよ?」

「証拠写真あんぞ」

「そういえば、お前未来から来たとか言ってた」

「何それ!? 未来から来た私が、七夕祭りを盗んで行ったのかい!? 酷いよ!」

「お前、昨日ほんとに変だったぞ。よく泣くし、変なこと言ってたし」

 

 その後、入学式で灰原が入ってきて、3人は大いに動揺し、天内理子護衛の時には慌てまくることになる。

 

 それから10年、足りない情報にヒィヒィ言いながら、彼らは奮闘する事になる。

 




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