帰路についた私の道を塞いだのは、悟と硝子だった。
「すーぐーる。何してんの?」
「悟。私を殺しに来たのかい?」
それならそれでいい。この幸せな空気の残滓を纏ったまま、死にたかった。
「そうだよ」
「いいよ、おいで」
私が微笑むと、悟は顔を顰めた。
「お前、ほんっと! そういうとこ! で? 昨日までの傑はどうなったわけ?」
「昨日までの私?」
「お前、一昨日何してた?」
私は過去を思い返す。
一昨日? 当然 授業/説法をしていた。
私は目を見開く。
おかしい、記憶が二つある。
「バカな。記憶が二つある」
「そうだよ。夏油せーんせ♪」
ドクン。悟に呼ばれて、私の心臓が脈打って、昨日までの私と私の結合が行われていく。
倒れ込む私を、悟は受け止めた。
「お前、ろくな情報残さねーからさ。俺ら、めちゃくちゃ頑張ったんだぜ? 俺も硝子も。お前も!」
「じゃあ、私は本当に過去まで遡ったって事か? そんな事があるわけ……」
「あったんだから仕方ねーだろ。じゃあ傑。早いとこ帰るぞ」
「帰れないよ」
「あ?」
「私は一度君を裏切ったんだ、どんな顔して帰れるんだよ」
「お前は裏切ってない。俺らが止めた」
「でも悟」
「傑。もう大丈夫。だから、帰ろうぜ」
そう言って、悟は私をギュッと抱きしめた。
「子供達も待ってる」
「なんて?」
「利久と美々子と奈々子と津美紀と恵」
「あ、ああ。なるほど。そうだね」
「それと私も! 私もいるから!」
自分をアピールする硝子に、私は笑った。
「もちろん、硝子にも会いたかったよ」
そうして手を伸ばして、少し躊躇って、その手をきつく握られる。
「「おかえり!」」
「ただいま」
10年前。七夕の次の日。
「悟! 硝子! なんで起こしてくれなかったんだ!?」
「は?」
「七夕祭りがあったのに! 一緒に行く約束してたのに! 起こしてくれなかったなんて! 起きたら七夕じゃなくて8日だった私の気持ちを考えた!?」
「いや、行ったっつの。お前めっちゃ焼きそば食ってたし。射的したし」
「金魚も取ってきたぞ」
「何それ、記憶にないよ?」
「証拠写真あんぞ」
「そういえば、お前未来から来たとか言ってた」
「何それ!? 未来から来た私が、七夕祭りを盗んで行ったのかい!? 酷いよ!」
「お前、昨日ほんとに変だったぞ。よく泣くし、変なこと言ってたし」
その後、入学式で灰原が入ってきて、3人は大いに動揺し、天内理子護衛の時には慌てまくることになる。
それから10年、足りない情報にヒィヒィ言いながら、彼らは奮闘する事になる。
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