第一話
走る。走る。走る。
「ヴモォォォォォォォォォォ!!!!!!!」
背後から自分に迫っているだろう
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」
既に肉体は限界を迎え、足りない酸素を補充しようと肺が悲鳴をあげる。心臓は爆発するかのように鼓動し血液を全身に行きわたらせようとする。
まだ7にも満たない
走っている間にもあらゆる感情が止まることなく溢れてくる。理不尽にも自分達の生活を奪った怪物に怒り、自らの家族と、友人と、村のみんなともう二度と会えなくなったことに絶望する。
弱い自分が囁く。逃げたところでどうするのか、と。帰る場所が無くなった自分がこれ以上逃げる必要はあるのか、と。
それでも足を動かすことをやめない。
「ぁっ……」
しかし、肉体には限界がある。幼子は木の葉に隠れていた木の根に引っかかり転んでしまう。必死に立ち上がろうとするが、体は言うことをきかない。
「ブモォォォ!!」
オークが右手で振りかぶった棍棒を転ぶように避ける。しかし、オークはまるで狙い通りだと言わんばかりに笑みを浮かべ、左脚で幼子を蹴り飛ばす。
「かはっッ!!!」
幼子の体は容易く浮かび大樹にぶつかる。その衝撃で肺の中の空気が全て抜けていく。朦朧とする意識を必死に繋ぎ止めようとする。
「ブヒッ」
自らを嘲笑う声に目を開けると、
死の恐怖に怯えながらも、何かできないかと思考し続ける。しかし、そこから幼子がどうにかできるわけもない。ただの人の身で怪物に抗うことなど不可能である。まして子供の体ではなおさら。
それでも
怪物が手に持つ棍棒を大きく振りかぶり、幼子は生き絶える。
これは
「よくぞ耐えた、幼子よ。後は
「ブモォ……?」
目の前には男が立っていた。その男は現れると同時にオークが振りかぶっていた棍棒ごと袈裟斬りに斬りすててしまった。怪物の全身を覆う分厚い筋肉などまるで無かったかのように、静かに、滑らかに。何も力を持ってない者にとって絶望の象徴である怪物を何でもないかのように斬ってしまった。
その剣筋は相手を殺すための剣術と言うには余りにも美しかった。
これはありふれた悲劇などではなく、一人の幼子の
読んで下さりありがとうございます。次回以降はもう少し軽い感じの雰囲気になると思います。