ダンジョンで修行するのは間違っていない   作:カユ

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前話にて魔法の種類を放出魔法にするか付与魔法にするか悩んだ結果、付与魔法とすることにしました。
理由は後に本編で語らせていただきます。


第十二話  ヴァルサ到着

 

 

 

タンザ村からヴァルサへの道中、僕はオラリオについてアイズに聞いていた。力を求めるのならやはり将来的には迷宮(ダンジョン)都市たるオラリオには行かなければならないからだ。アイズの説明は言葉足らずではあるが質問の仕方を気を付ければちゃんと聞きたいことが返ってくる。

そうしてオラリオについてある程度聞くことができ、他に何か質問したいことはないかと考えていると、今度はアイズの方が僕に質問してきた。

 

「飛鳥はどうやってそんなに強くなったの?」

 

「僕はフツヌシ様に剣を教えてもらったんだ」

 

「…神様?」

 

不思議そうな顔でフツヌシ様を見るアイズ。恩恵をもらっている僕が、それを授ける側の神様に戦いを教えてもらっていることが不思議なのだろう。

 

「えっと、フツヌシ様が剣神様っていうのは知ってる?」

 

そう言うとアイズはふるふると首を振る。

 

「フツヌシ様はね、剣神様だから当然凄い剣士なんだけど、剣技だけで僕を圧倒できるぐらいなんだ。フツヌシ様は第一級冒険者にも相手によっては勝てるって言ってたんだよ?すごくない?」

 

「ほんとに…!?」

 

驚いたアイズの表情。それを見て普通そうなるよなぁと思う。僕が聞いたのは神の恩恵などについてあまり詳しくない時だったから素直に尊敬の目を向けられたが、レベルの違いなどの力の差を知った今では、それがどれだけ可笑しいことか分かる。

しかし、タンザ村で神様と共闘してその強さを知っているはずのリヴェリア様までもが驚いているのは何故だろうか?

 

「オークを一瞬で倒してしまった時は酷く驚き、剣神だと知っておかしくはないかと己を納得させたが…それほどのものなのか」

 

「はっはっは!!まぁ古代の英雄は神の恩恵(ファルナ)など無しで怪物(モンスター)と戦っていたのだ!剣を極めた(わたし)にできないわけがないのだ!!」

 

「その理屈でいくとそうなの、か?」

 

僕も当時全く同じことを言われた。しかしそう言われてみたら納得できるのかもしれない。かの大英雄アルバートは神の恩恵(ファルナ)を持たぬ身でありながら、精霊の力を借りたとはいえ黒龍の片目を傷つけ世界の果てまで追いやったと言われている。

剣を司る神であるフツヌシ様がそれをできぬ道理はないということだろう。他にも神様の友神であるタケミカヅチ様もできるだろうと言っていた。

武神と言うのはみんなそんな化け物だらけなのか。

 

「アイズと勝負してレベルの差っていうのを理解した僕からしたら意味分からないんだけどなぁ…」

 

「レベル4までなら大抵のやつには勝てると思うが、レベル5だと相手がパワータイプなら、という仮定がつくがな!流石に予備動作が欠片も見えない相手だとこの(わたし)でもどうしようもない!!」

 

いっそ清々しいほどに笑う神様。そんな神様に向かってアイズが突然頭を下げる。

 

「わたしに剣を教えてください」

 

「…いいだろう、しかしヴァルサに着くのは夕方らしいからな。指導は明日の朝からになるぞ?」

 

「大丈夫…です」

 

その余りにも突然な話に僕もリヴェリア様も呆気に取られる。

 

「待てアイズ、急に何を頼んでいるのだお前は?」

 

「…?ここには剣の修行をしに来た。教わるのなら剣神様が一番良い」

 

「確かにそうだが…!!というか神フツヌシはそれで良いのか?!」

 

「構わんぞ、飛鳥に指導しているのに一人増えようが変わらないだろう?まぁそれ以上に娘に関しては飛鳥の事で恩があるからな!そのくらいのことは構わないとも!!」

 

「それはありがたいが…これはまた迷宮(ダンジョン)のこと以外でも教育が必要か…」

 

「な、なんで…?!」

 

リヴェリア様の後半の呟き声にアイズが酷く怯えたような顔をする。

リヴェリア様はため息を吐き真面目な顔をしてアイズに向き直る。

 

「本来他派閥の神相手に頼み事をするというのはそう簡単なものじゃない。まして神フツヌシは飛鳥という眷属がおり、その剣技というのはそのファミリアの宝とも言えるものだ。対価無しで教えを請うなど言語道断、いやそもそも教えてもらえることは普通ないだろう」

 

「でも、教えてくれるって言った…!!」

 

「そうなのだが…まぁ今回は特例とも言えるものだ。私たちが教えていなかったのが悪いが、本来はこのようなことは許されないことなんだ。分かったかアイズ?」

 

「…分かった」

 

素直に頷くアイズ。それにしても『教育』という言葉に強い拒否感を示していたようだが、アイズは勉強は好きじゃないのだろうか?

 

「しかし、他派閥から指導してもらうというのに礼をしないわけにはいかない。なにか私たちにできることはないだろうか?」

 

「ぶっちゃけるとファミリアとかいう意識は(わたし)にはあまりないからな。本当に今回の件は飛鳥へのお礼として教えてもよいのだが…」

 

「技…というのはそのファミリアの大事な財産だ。その程度のことでそこまでして貰うわけにはいかない」

 

「お前も大概妖精(エルフ)らしく頭が固い、いやこの場合は高潔というべきか?…まぁそこまで言うのであれば貸し一つ、と言うのはどうだ?現在のオラリオ最強の一角に貸しを作れるというのだ。それだけで十分だろう?」

 

「…感謝する、神フツヌシよ」

 

フツヌシ様とリヴェリア様のいわゆる大人の会話、というやつが終わったようだ。しかし、リヴェリア様の話した事は僕も知らなかったファミリアの常識といったことであり、こちらとしても聞けてよかったことだ。

神様は貸し一つなんて言っているが、実際大したことを言うつもりはないだろう。

 

 

それからは明日からが楽しみなのか、アイズがワクワクした様子で普段どんな鍛錬をしているか聞いてきた。そして僕の普段の一日を語ると、リヴェリア様は僕が【求道者(ソード・アトラクティッド)】によって睡眠時間すらも削って鍛錬と勉強しかしていないことに痛ましそうな顔をし、アイズはその効果についてとても羨ましがっていた。そして己のスキルについてそう簡単に他人に言うんじゃないと説教をされた。

 

これまでのことでリヴェリア様がとても良い人であると言うのは理解していたが、改めてお母さんみたいだなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きましたよ!ここが剣士の聖地ヴァルサです!!」

 

御者の声に窓から顔を出す。

視界に入るは8M(メドル)ほどの高さの壁と城門。その前には数台の馬車と旅人と思しき人々が並んでいる。世界の中心と言われるオラリオだとこれとは比べ物にならないほどの高さの城壁があるらしいが、人生において村しか見たことないような僕には、ニ階ほどの高さの石の壁が横にずっと続いていることだけでも十分に驚嘆を禁じ得ない。

 

「もう日も沈もうとしている。まずは宿を取らないか?アイズが世話になる以上同じ宿に泊まれば色々と都合が良いと思うのだが…何処に泊まるかはそちらに合わせよう」

 

「大変情けないが妖精の王族(アールヴ)が泊まるような宿となると、ちとこちらの予算が厳しいのだが…」

 

言葉の通り情けない顔のフツヌシ様。路銀は多く持ってきているとはいえ、流石に貴族や王族が泊まるような高級宿に三週間ほど滞在できるほどの大金は無い。

 

「私は確かに王族ではあるが今は冒険者だ。遠征ならテントに泊まったりするのだ。むしろそのような高級宿に泊まるつもりは元からないぞ?」

 

「それなら良かった!とはいえ高級宿とまではいかないが多少グレードの良い宿を取るつもりだから安心してくれ」

 

御者が門番と話し終え、馬車は城門の下をくぐり抜ける。

 

「それでは、私はここで失礼させていただきます!タンザ村を助けていただいたことは本当にありがとうございました…!」

 

城門のすぐ近くにあった馬車乗り合い場へと着き馬車から降りると、ここまでお世話になった御者さんにお互い別れの挨拶をする。

 

僕たちは宿を探しに町をぶらぶらと歩く。

道行く人の多くが腰に剣を下げていることにこの町の特色を感じる。

通りには大きな道場が幾つか見える。そこからは今日の鍛錬を終えたと思しき汗をかいた男性たちが帰路についているのが見える。そうした心身ともに疲れた者たちをターゲットにした屋台なども多くあり、忙しなく呼び込みの声があちこちから聞こえる。

 

「凄いな…オラリオの外でこれほど多くの剣士がいるところは中々見たことない」

 

「それには(わたし)も驚いてるな!通常戦士というのは戦いが無ければ一箇所の地には留まらないものだ。しかし剣士の聖地という町の噂は聞いていたが…いやはや思っていた以上に強者がおるかもしれんなぁ!」

 

フツヌシ様の言葉に一人の剣士として自然と胸が踊る。

これほど多くの道場があるということは様々な流派の技を見ることができるということなのだ。それは必ず己の糧となるだろう。

 

「むっ!この良い匂いはシチューか?匂いがするのは…あちらに違いない、行くぞ!」

 

突然立ち止まったかと思うとそう叫び少し狭い方の道に行く神様。僕達はそれに慌ててついていく。

大通りから外れた小さな道の両側には同じく小さな多種多様の店が並んでいる。

 

「フツヌシ様!そんな匂いだけで決めていいんですか?!」

 

「飛鳥よ、うまい飯の宿に外れは無い!食というのは肉体が資本の戦士にとっては大事なものだ。何よりうまい飯は鍛錬で疲れた心を癒してくれるものだ!!」

 

そう断じる神様。その言葉には説得力がある。

確かに普段の食事は神様と二人で作るのだが、凝った料理が多く美味しいものが多いのだ。

更に進んでいくとこの町の住宅街なのか、多くの家々が視界に入る。

 

「というわけで、此処で構わないなリヴェリア!」

 

「元よりそちらに任せると言っているからな。しかし貴方のお墨付きなら楽しみにしようじゃないか」

 

着いた宿の前にはアカシア亭と書かれている小さな看板。その外観は民家のように町に溶け込んでおり、遠くから見たら宿だと気づくことはないだろう。

そうして神様を先頭にドアを開けて中に入る。

 

アカシア亭の壁や天井は少し橙色がかった木材が使われており、暖かみを感じさせた。

この宿は優しそうな老夫婦の二人が営んでいるようだ。話を聞けば老後の趣味の一つとして経営しているので、敢えてあまり目立たないようにしているらしい。彼らにニ・三週間ほど泊まるみなを伝えると、早速夕食を戴くことになった。

 

「お待たせしました。当宿自慢のアカシア亭の兎煮込みシチューになります」

 

「おおっ!じつに美味そうだ!」

 

「…良い匂い」

 

暴力的なシチューの匂いが僕らを襲う。木を素材とした皿には荒目に切られた野菜と大きい兎肉が入っている。

その湯気と共に立つ芳醇な匂いに食欲を刺激され思わず唾を飲み込む。

食事の合図をし、スプーンで一口。

 

「うまい!!」

「おいしい…!」

 

僕とアイズの声が被る。目が合うとお互いに頷き合う。

これは人生で食べてきた中で一番美味しいかもしれない。やはりプロというのはここまで凄いのだろうか。

そのコクのあるとろりとしたスープにうっとりとする。じっくり煮込まれたであろう兎肉は驚くほどの柔らかさで、その淡白な味にシチューの味がよく染み込んでいる。

そうしてゆっくりと味わうように食べる。

 

 

「終わっちゃった…」

 

とても残念そうな声が耳に響く。そちらを見るとアイズがその眉尻を下げ、とても悲しそうな顔をして空になってしまった木の容器を見ている。

僕はゆっくり食べていたが故にまだ三分の一ほど残っている己のシチューを見る。

 

「…?」

 

「僕もうお腹いっぱいだからさ、良かったらこれ食べる?」

 

「いいの…?!」

 

気がつけば僕は容器をアイズに差し出していた。それもう何の迷いもなく。彼女の悲しそうな顔に耐えられなかった。

 

「ありがとう」

 

「っ!!…ど、どういたしまして」

 

彼女の少し口元が緩んだ笑み。

その破壊力はあまりにも強烈だった。

意識が飛ばずに返事をした僕を褒めてほしい。まだ会って2日ほどしか経っていないが、そんな中で初めてみた彼女の笑顔はあまりにも可愛かった。

 

そうして意識は飛ばさなかったが、先ほどの笑顔を思い出し一人悶々としていると、視線を感じた。

 

そこには微妙な顔をしてこちらを見ているリヴェリア様とにやにやしているフツヌシ様がいた。

 

「…別にアイズを甘やかしたりはしなくてもいいんだぞ?」

 

「すみません…」

 

「まぁまぁ、飛鳥は同年代の女の子と今まで関わりがなかったから免疫が無いのだろう。ましてやアイズほどの可愛らしい娘となると初めてじゃないか?」

 

 

神様の揶揄いの言葉と視線に耐えきれず僕は顔を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ!フッ!フッ!」

 

剣を掲げ、振り下ろす。

ひたすらそれを繰り返す。一振りごとに良くない点を洗い出し修正する。しかし、軌道がブレないことを意識すると今度は振り下ろしが遅くなる。

けれど、それで良いのだ。一振り一振りに集中し繰り返す内にそれらのズレは少しずつ整っていくことをこの一年でよく知っている。

 

「…999!…1000!!」

 

心の中で数えていた数の終わりを口にする。

素振りはウォーミングアップでもあり、とても大事な基礎だ。戦いを生業とするのなら実戦の方が重要かもしれないが、剣士として技を極めたいのならこういった単純なことこそ大事にしなければいけない。

一度剣を置き休憩を取る。

 

昨日は夕食をとった後は、各自部屋に戻り就寝までの数時間の間は自由時間となった。

スキルの効果もあり睡眠時間がニ・三時間ほどでよい僕は、物音を立てないでいい瞑想をしていた。フツヌシ様は雑念を消すというのは意識しない限りできないものであり、一朝一夕では身に付かないものだと言っていた。だから毎日繰り返してその切り替えを修得することは、実戦においての剣の冴えを支える一つの要因となるとも。

 

今はまだ四時ほどの早朝と言える時間。太陽が東に見えることはなく辺りは真っ暗だ。

冬から春へと季節を移している時期ではあるが、この時間の早朝ともなると真冬の如き寒さだ。

しかし【ステイタス】が多少緩和してくれ、素振りによって暖まった体はもう先程の寒さを感じさせない。

 

置いていた剣を取り立ち上がる。

今度は実戦を想定した動きを入れていく。己が理想の剣士(フツヌシ様)になった姿を思い浮かべ剣を振るう。ここでは先程の素振りと同じように、丁寧さに重きを置いたものだ。

瞑想で培った集中力を活かし意識を研ぎ澄ませる。

 

───足りない

 

神様の剣を意識する。

芸術のように美しくも力強い剣。あの日の僕を魅了した軌跡をなぞる。

 

 

ほんの少しずつであるが近づいていく。絶望を覆す剣に、あの日の憧憬に。

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

───今のは会心の一振りだった。

まだ神様には遠く及ばないけれど、今までで一番綺麗に振れた。

 

 

 

 

 

 

 

「お…とう…さん?」

 

 

 

 

脱力した僕の耳に入る呆然とした声と、からんと何かを落とすような音。

 

そちらに見えたのは口を半開きに立ち尽くしているアイズの姿。

その手は力が抜けたように開いている。彼女の下に転がる一本の剣。

 

 

「ごめん、もしかして起こしちゃった?」

 

「……」

 

声をかけるも何も返事がこない。様子が可笑しいアイズに近づきもう一度声をかける。

 

「アイズ、大丈夫?」

 

「…っ!ごめん、ボッーとしてた」

 

彼女はようやく僕に気付くと、手を強く握り締め顔を(うつむ)ける。

今にも泣きそうな表情。その姿は何処かいつもより幼く見える。

 

「…がう、おと…さん…は」

 

僕に聞こえないほどの小さな声で呟くアイズ。顔を上げたかと思うと急ににとんでもない提案をする。

 

「…頭、撫でて」

 

「えっ?」

 

「はやく…!」

 

アイズの縋るようなその表情に思わず彼女の指示通りに手を伸ばす。

 

ぽすっと頭に手を置く。金色に輝く髪は見た目通りとてもサラサラで絹のような手触りだ。

十数秒ほどそうして撫でていると彼女は少し安心したようにしていたが、何かを否定するように首を振る。

 

「…やっぱり違う」

 

自分に言い聞かせるかのような彼女の言葉。今度ははっきりと聞こえた。『違う』とはどういうことだろうか?なにと『違う』のだろうか?

一連の流れが一つも理解できずに困惑する僕。

 

「ありがとう、もう部屋に戻る」

 

「どういたしまして?」

 

剣を拾ったかと思うとスタスタと宿の方へ歩いていくアイズ。

 

 

 

 

 

 

「………何でアイズここに来たの?」

 

後に残されたのは疑問を抱きただただ立ち尽くす僕の姿だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この小説は完全趣味であり作者の妄想を具体的にする為に書いていて、物語としては冗長な日常シーンも多くなりますので、そこは了承ください。

アプリゲームのキャラエピソードとか衣装エピソードとかああ言うのめちゃくちゃ好きなんですよね。つまり何が言いたいかというと作者が好き勝手に書きたいこと書きます。

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